アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の治療・療育

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の療育

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)は現在のところ、根本的な治療法はありません。しかし療育によってアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の症状や特性を緩和させたり、困りごとを軽減したり、子どもの得意なことを伸ばしたりできることもあります。
療育は、社会的な自立をめざしてスキルを習得したり、環境を整えたりするアプローチのことです。発達障害を専門とする病院や児童発達支援事業所などで行われることが多いです。療育は、目的や分野によってさまざまな種類があります。

具体的な方法を以下でご紹介します。

■TEACCH(ティーチ、Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)
TEACCHとは、自閉スペクトラム症(ASD)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムです。

■応用行動分析、ABA(エービーエー、Applied Behavior Analysis)
人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、問題の解決に応用していくアプローチです。療育だけでなく教育や福祉、スポーツ分野などでも使われています。

■SST(エスエスティー、ソーシャルスキルトレーニング)
社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し自己管理をするためのトレーニングです。

これらのほかにも、様々なプログラムが行われています。
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薬物療法

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の特性による症状や、統合失調症や強迫性障害といった併存している疾患の症状を緩和させるため、薬を処方される場合もあります。

しかし、薬には副作用もありますし、人によって合う合わないがあります。主治医の先生と信頼関係を築き、よく相談した上で納得して治療を進めるとよいでしょう。また、適切な用法や用量を守ることが大切です。

接し方で大きく変わる! アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)のある子どもへの接し方のポイント

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)がある子どもには、どのように接すると良いのでしょうか。
アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)がある子どもはこだわりが強い、コミュニケーションを取るのが苦手など、さまざまな特性がありますが、適切な声かけ、環境調整などを行うことで、困りごとを軽減できることもあります。
以下に具体的な接し方のポイントを5つまとめました。

1.アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の特性を理解する

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)がある子どもは人とコミュニケーションをとったり、対人関係を築いたりすることが苦手な傾向があります。また、人や物に対する興味の偏りや強いこだわりがあることもあります。
専門機関での療育や周囲の支援により苦手なことは緩和されることもありますし、特性を生かし、優れた集中力や記憶力を発揮することもあります。
まずは、周りの人が正しくアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)について理解をすることが大切です。

2.相手の感情を理解できるようにサポートする

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)がある子どもは、人の気持ちを理解することが苦手なことも多く、思ったことを悪気なく口に出してしまうこともあります。

ただ叱るのではなく、「○○と言われると悲しい気持ちになるんだよ」「●●ちゃんは傷つくんじゃないかな?」など相手の感情を説明したうえで、「●●ちゃんに○○のことは言わないでね」と、はっきり具体的に伝えると理解しやすいこともあります。

3.ネガティブな気持ちを受け止めながら励ます

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の特性が、うまく周囲に理解されなかったりすることで、悩んだり落ち込んだりしてしまうこともあります。そんなときは「うまくいかなくてつらいんだね」とネガティブな気持ちをそのまま受け止めましょう。そして「自分は何があってもあなたを愛しているし、あなたが大好き」と肯定し、励ましてあげてください。

4.伝え方を工夫する

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の特性がある子どもは、比喩や遠回しの表現を理解したり、相手の表情をよみとったりするのが苦手なことが多いです。指示するときやコミュニケーションをとるときは、その子にとって分かりやすい方法で伝えましょう。

■指示は分かりやすくはっきりと
分かりやすく短い言葉で具体的に指示を出しましょう。「椅子に座ろうね」「電気を消してね」など、一つずつ指示することも大切です。

■言葉は省略せずに伝える
「履いて」ではなく「青い色の靴を履いてね」などと省略せずに指示を出すことも効果的です。「あれ」「そっち」などの指示語の使用もできるだけ避けましょう。

■視覚的にも分かりやすい方法で伝える
言葉での指示だけでは理解が難しい場合もあるため、ジェスチャーや写真、イラストなどを使って、視覚的にも分かりやすい方法で伝えるとよいでしょう。手づくりカードを持ち歩けば、場所や環境が違っても落ち着いて行動することができるかもしれません。

■「いつもと違う」は事前に伝える
急な予定の変更に対応するのが難しいことも多いため、予定はあらかじめ伝えるようにしましょう。

5.「叱る」のではなく「教える」ように努める

誰かを傷つけるような言動をとったときに、ただ叱るだけでは、「そもそもなぜだめなのか」が伝わりづらく、また「叱られた」というネガティブな気持ちだけが残ってしまいやすいです。叱るのではなく、教えるというスタンスのもと、「なぜだめなのか」「代わりにどのような行動をとればよいのか」などを具体的に教えるとよいでしょう。

一度にいくつかの物事に取り組むのではなく、一つひとつこなしていけるように課題を提示しましょう。また、あいまいな表現はさけ、短い言葉で指示をだしましょう。

また、「ダメ」「○○しなさい」など否定形や命令形の言葉を使うと、本人は、怒られているのではないかと感じてしまうこともあるため、避けるようにしましょう。

特性を理解し、良いところを伸ばしましょう

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)は、「社会的なコミュニケーションの困難さ」「限定された反復的な行動や興味、活動」などの特性があり、日常生活でさまざまな困難に直面することがあります。しかし、適切な声かけ、環境調整などを行うことで、それらを軽減し、長所や強みを伸ばすこともできるかもしれません。

子どもにとっても保護者にとっても、日々の生活での負担を軽減していくためには、子どもの特性を正しく理解し、何に困っているのかを把握したうえでサポートすることが大切です。
悩んだり困ったりしたときは一人で抱え込まずに専門機関に相談し、子どもの特性や成長に向き合いながら接していきましょう。
参考文献: 小野寺敦子 『ゼロから教えて 発達障害』 2012年 かんき出版
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