ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?支援の対象、方法、気をつけたいポイントについて【専門家監修】

ライター:医師・専門家監修|発達障害・支援のキホン
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11017007270

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、人が社会でほかの人と関わりながら生きていくために欠かせないスキルを身につける訓練のことを指します。神経発達症(発達障害)のある子どもなどに対して効果があるとされ、学校や療育施設、病院などで取り入れられています。場合によっては家庭など日々の生活でも応用することのできるこのSSTについて、今回は詳しくご紹介します!

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、人が社会で生きていくうえで必要な技術を習得するための訓練のことです。

人は生まれてからたくさんの人と出会います。その関わりの中で無意識的に、「してはいけないこと」、「した方がいいこと」などの暗黙のルールを身につけていくのです。ところが発達障害のある場合などは、それらをスムーズに身につけられないケースがあります。

たとえば、「ゲームのルールが守れない」というのも一つの例でしょう。「周りの人がこうしているから自分もこうしよう」と自然に判断できたり、「ルールは守らなければいけない」と注意をされてすぐに改善できるようであれば、あまり心配する必要はありません。その集団内での行動の善し悪しを周りの様子から推察したり判断することが苦手で、注意をされてもなお同じことを繰り返してしまう場合においてSSTは有効な改善手段の一つとなりうるのです。

SSTでは、たとえば「ゲームのルールが守れるようになるという」目標に対して
・ゲームは負けることもあるということを知る
・負けても楽しいという感覚を身につける
・悔しくても自分の感情をコントロールする
といった小さなステップをつくります。

その一つひとつの過程を丁寧に踏み、ゆっくりと社会性を身につけさせていくのがSSTなのです。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)はどこで受けられるの?

SSTは病院や療育センターで専門家から受けることもできますが、学校や家庭など、どんな環境でも行うことができます。そのため、 SSTを実施できる人もトレーナーやセラピストなどに限られません。学校の教師や保護者など、日頃から子どもと接している人でも、日常的にSSTを取り入れることは可能です。

しかし、子どもの特性や支援の内容によっても、最適な方法は変わってきます。それぞれのケースに合わせて実施場所、実施者を適切に選択していくと良いでしょう。
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ソーシャルスキルトレーニング(SST)の対象

SSTは、社会で人と関わりながら生きていくことに困難を伴う人全般を対象としています。

たとえば、
・指示を理解したり、判断したりするのが苦手
・得意なことと不得意なことに大きく偏りがある
・自分の行動をコントロールするのが苦手
・人とのコミュニケーションが苦手
・運動が苦手
・情緒に不安定さがある
などの困難さがある場合、SSTの対象でとなるといえます。

SSTは子どもだけではなく大人が受けられるものもありますが、ここでは主に子どもに対するSSTを取り上げていきます。
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ソーシャルスキルトレーニング(SST)の方法

SSTの中には多くの実践方法があります。今回はそのうちのいくつかの例をご紹介します。

ゲーム

ゲームには「ルールを守る」「勝ち負けの結果を受け止める」「仲間と相談や協力をする」などの多くのソーシャルスキルの要素が含まれています。子どもが楽しみながら社会性を身につけることができるのでとても有効な手段です。指導の担当者は、それぞれの子どもにとって何が目標なのかを常に意識しながらゲームを進めていくことが重要となります。

ディスカッション、ディベート

ディスカッションやディベートは、相手の意見をしっかりと聞きつつ、自らの意見を述べる必要があるため、言葉のキャッチボールをする訓練としてすぐれています。子どもが興味をもてるテーマ選びや、参加人数、時間などを考えながら行うと良いでしょう。

ロールプレイ

どんな場面でどんな振る舞いをすればいいのかということを、指導担当者や子ども同士が実際に演技したり、人形を用いて演じることで、実際の場面での適切な振る舞いを学んでいきます。対象となる子どもにとって、現在課題となっている言動や場面を、多少アレンジしながら行うのがより効果的です。

共同行動

工作、調理など、「何かを作って遊ぶ」「何かをつくって食べる」といった楽しいゴールに向かう過程で、ほかの人との相談、役割分担、助け合いといった、社会生活に必要なスキルを学んでいきます。

ワークシート、絵カードなど

ワークシート、絵カードなどを用いることで現在の子どもの課題になっている言動を、意識化していくこともSSTの方法の一つです。ワークシートや絵カードに描かれている絵が表す出来事の様子を子ども自身が読むことで(文字の読めない小さい子どもの場合は大人が読んであげることで)その場面での振る舞いを学ぶことができます。
これらで扱う場面や題材は、目の前の子どもの行動に合わせてきちんとアレンジし、オリジナルなものをつくると効果的です。

このように、SSTはさまざまな手段を通して実践をすることができます。次はさらに具体的なSSTの例について日常生活と対人関係とに分けてご紹介します。

日常で取り入れられるソーシャルスキルトレーニング(SST)

あいさつをする

あいさつは、人とのコミュニケーションには欠かせないものです。ところが子どもの中にはどこでどのようにあいさつをすればよいかが分からなかったり、あいさつの言葉を口に出すのが恥ずかしかったりと、さまざまな理由からあいさつができない子どもがいます。

適切なタイミングで適切なあいさつの言葉を発することができるようになるためには、「大人が積極的にあいさつをする」こと、「あいさつを強要しないように気をつけること」が大切です。「あいさつをすることは気持ちがよいこと」「相手の気持ちがうれしくなること」ということを子どもが肌で感じられるような環境をつくっていくとよいでしょう。

最初は小さな声で顔を見れなかったとしてもできたことに対してたくさんほめてあげましょう。成功を体験を重ねながら少しずつ大きな声や、顔を見ながら言えるようにスモールステップで近づけていきます。

順番を守る

公園の遊具に乗るとき、バスに乗るとき、お店に並ぶときなどに、つい並んでいる人の間に入ってしまったり、「一番」じゃないといやだと駄々をこねてしまったりする子どもがいます。一番であろうとすること自体は決して悪いことではありません。しかし順番を守ることができないと、そこからけんかに発展してしまったり、相手から嫌な印象を持たれてしまったりとトラブルになってしまう可能性があります。

そうならないために大人ができることは、「順番を守る必要がある場面の前に、声掛けしてお約束をしておく」、「子どもが順番を守れたときにほめる」などです。順番を守れなかったからといって叱るのではなく、自然に順番を守れるようになるために日々の生活から習慣を身につけていくことが重要です。

対人関係におけるソーシャルスキルトレーニング(SST)

相手の気持ちを察する

子どもの中には、相手の気持ちを理解することが苦手な子どもがいます。相手の表情から気持ちを読み取ることが苦手だったり、共感するということが苦手だったりと理由はさまざまですが、時にはそれが人との関わりにおいてネガティブに働いてしまうことがあります。

そんな子どもがうまく相手の気持ちを読み取れるようになるために、多くのSSTの方法が考えられています。たとえばゲームを用いたもの、ロールプレイを用いたもの、絵カードを用いたものなどです。「嫌なことをされたとき自分はどう思うか、その嫌なことを実際にされている相手はどんな気持ちか」を考えたり、今相手が考えていることを意識的に想像したりする訓練をすることです。学んだことを実際の生活の中で相手の気持ちについて尋ねてみたり、それを理解したうえでどのように振舞うかを話し合ってみたりすることが大切です。

会話をする

上記に挙げたように、相手の気持ちを理解することが難しい場合などは、相手を傷つける言葉を言ってしまったり、相手にとって興味のない話をひたすら話し続けてしまったりという言動につながってしまうことがあります。相手の気持ちをくみ取り、適切な話題・話す時間・使う言葉を選んで進めていく会話は、多くのステップを含んだソーシャルスキルなのです。

多くの要素を含む会話だからこそ、その訓練は「決められた質問(自分の名前など)に答える練習をする」というものから「「シナリオに従って言葉のキャッチボールの練習をする」というもの、「おしゃべりタイムを設けて振り返りを行う」というものなど多岐にわたります。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)で大切にしたいポイント

多くの所でさまざまな指導者によって実践されているSSTですが、SSTを行うためには気をつけたいポイントがあります。ここではそのうちの2つをご紹介します。

ほめる

社会性を身につけている大人から見ると、社会のルールに従うことのできていない子どもの行動は目につくものとしてとらえられるかもしれません。しかし、子どもにとって叱られたり注意をされたりすることはうれしいことではありません。それどころか、叱るという行為は社会性を鍛えるのに逆効果の場合もあるのです。

子ども楽しみながら自然に社会性を身につけていくためには、できないことを叱るのではなく、できたことを認めてほめることが重要なポイントになります。

スモールステップを踏んでいく

冒頭でも述べたようにSSTを必要とする子は、生まれてから育っていく中で自ら周りの人を観察して、社会性を身につけていくのが苦手な子どもです。そのため、一般的に当たり前だと思われる会話や行動・思考が自然にできないケースも少なくはありません。

同時に、その子がそれまで積み上げてきた「当たり前」も存在します。その当たり前を変えるのには長い時間と、多くの小さなステップを踏まなければなりません。指導する側に立つ人は、長い目で物事をとらえ、ゆっくりと成長を見守っていく姿勢が必要なのかもしれません。

まとめ

今回は子どもの社会性を訓練するSSTについてご紹介しました。SSTには多くのトレーニング方法があるため、今回紹介したものはごく一部です。

しかしSST全体において言えるのは、一つの目標に対して多くのステップをつくり、一歩一歩進んでいくことが大切だということです。上で少しふれたように、たとえば「会話が苦手」という一つのケースの中には、「相手の気持ちを読み取ることができない」「相手の言っていることの意図が汲み取れない」「自分がどんな言葉を使って返答したらよいかが分からない」というような多くの要素が含まれています。

最初から「会話がうまくなる」という急激な変化を求めるのではなく、苦手なことを一つひとつ解消しながら本人の感じる「生きづらさ」に対応していけると良いでしょう。
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