アスペルガー症候群の子どもの接し方は?子育ての困難と対処法まとめ 

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アスペルガー症候群の子どもの接し方で悩んでいませんか? こだわりが強かったり、こちらの意図を理解してくれなかったりといった育てにくさを感じている親も少なくありません。アスペルガー症候群の子育ての困難と対処法をまとめましたので、一緒に確認していきましょう。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員

アスペルガー症候群の子どもの困難さと対処法

アスペルガー症候群(AS)は対人コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらい障害で、知的障害や言葉の発達の遅れがないものを言います。

文部科学省はアスペルガー症候群を以下のように定義しています。

アスペルガー症候群とは、知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないものである。なお、高機能自閉症やアスペルガー症候群は、広汎性発達障害に分類されるものである。

出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
アスペルガー症候群の子には、様々な特性があります。そのため生きる上での困難さが生じるときがあります。一方、逆に特性を活かして活躍することもできます。たとえばこだわりが強く、興味のあることを掘り下げていく集中力は大きな強みです。こだわること自体が問題なのではなくて、環境や接し方を工夫することで、その特性を活かすこともできるのです。

ここではアスペルガー症候群の子が感じることの多い困難と具体的な対処法を見ていきましょう。

相手の立場に立って考えたり、発言することが苦手

アスペルガー症候群の人は人の気持ちに共感したり、想像したりすることが苦手な傾向があります。相手の気持ちを考えずに、思ったことをストレートに口に出してしまって相手を傷つけたり怒らせたりしてしまうこともあります。対人関係が上手に構築できないので、孤立しやすく周りからも偏見の目で見られることも多いです。

【対処法】
「君太ってる」「臭いね」など、相手を傷つけるような発言をした場合は「そんなこと言っちゃダメ!」とは叱らずに「そんなこと言われたら○○さんは悲しいと思う」「○○さんは傷つくんじゃないかな?」と相手の気持ちを認識できるように促してあげましょう。また「○○さんには太ってるって言わないでね」とはっきり伝えると、理解して次から言わないようにできます。様々なパターンについて具体的な対処を知ることで、相手の気持ちを理解し、言っていいことと悪いことの区別をつけられるようになります。

感覚過敏で反応しすぎてしまう/特定の刺激が苦手

アスペルガー症候群のある子は感覚に過敏さを持つ人が多く、電車の音や騒音などにとても強く反応してしまうことがあります。赤ちゃんの泣き声などにも強い拒否反応を示し、自分が癇癪を起したりパニックになったりする子もいます。また、体に触れられることを嫌ったり、水が嫌でお風呂に入りたがらなかったりなど、少しの刺激でも本人のストレスに繋がってしまい、パニック状態を起こしてしまうこともあります。

【対処法】
無理に触ろうとはせず、機嫌がいい時や心の準備ができているような時に声かけをしてあげましょう。「今からお風呂に入ろうね、お風呂で○○して遊ぼうか」「今から背中を触るね」など、いきなり体を触らずに声かけしてあげると心づもりができるようになります。にぎやかな場所へいく場合はイヤーマフやノイズキャンセラーを使用してみたり、なぜその音が鳴るのか、どうして賑やかなのかを落ち着いているときに説明してあげるとよいでしょう。それでも嫌がる場合は無理をせず、騒音を避けてあげるのも一つの手です。

具体的な言い方でないと理解が難しい

普通の人が理解できる会話であっても、アスペルガー症候群の子は言葉の意味が読み取れず、理解できないことがあります。代名詞や比喩、あいまいな表現が苦手です。例えば「あそこの本を取って」と言われても「あそこ」が何を意図しているのかがわからないことが多いです。また、相手の表情やしぐさをよみとり行動するのも苦手と感じる子が多いです。

【対処法】
「椅子に座ろうね」「電気を消してね」など、指示は一つずつ短く出すようにしましょう。その子の混乱を防ぐことができます。「履いて」などと省略せずに「靴を履いてね」、「青い色の靴」、「マジックテープの靴だよ」などと具体的に指示を出すことも効果的です。また、アスペルガー症候群の特性を持つ子は、比喩や遠回しの表現を理解するのに困難を示すことが多いです。代名詞を使わず、わかりやすく短い言葉で具体的に指示を出してあげましょう。具体的な指示を出された場合はきちんと行動できることが多いです。

変化が苦手で臨機応変な対応が難しい

こだわりが強いのはもちろん、アスペルガー症候群の子は変化が苦手な場合が多いです。規則や法則など、一定の安定したルーティーンを好むため、少しでも自分のマイルールを侵されることを嫌がることがあります。よって、イレギュラーな対応や予定の変更についていくことができず、癇癪やパニックを起こしてしまうときもあります。

【対処法】
予定の変更はできるだけ事前に伝えます。「○時になったら○○するよ。約束ね」と一緒に時計を見て予定を確認し、一つ一つ理解を促すようにスケジュール管理を行うようにしましょう。言葉で言っても理解しづらそうなときは「目で見てわかる」イラストや写真など視覚的な手がかりを使うと効果的です。

傷付きやすい

相手のことを考えずに平気で傷つけるようなことを言ってしまう一方、自分自身が傷つきやすいという傾向があります。言われたことを素直に言葉通りに受け取ってしまうので、だまされたり、それがトラウマになったり心に傷を負ってしまうこともあります。叱られることも同様で、なぜ叱られているのか理解するのに時間がかかるうえ、「叱られた」というネガティブな気持ちだけが残ってしまいます。

【対処法】
理解できない場合は、周りが悪いと周囲のせいにして自分を守ろうとしてしまうこともあります。自分がなぜ叱られているのか、どんな理由があるのかをゆっくり説明して、その子が納得するまで話をしてあげましょう。否定語「ダメ」「いけない」や命令形「○○しなさい」は、たとえ日常会話で使っていたとしても、怒られているのではないかと感じてしまうことが多いです。そういう意図でなくても本人は「怒られてしまった」と自信を無くしがちです。

このような言葉を感情的に使うのではなく、よくない理由や解決法などを絵や文字といった視覚的な手がかりを使いながら、どうすれば次にうまくいくか一緒に考えて理解してもらうことが大切です。

アスペルガー症候群の子どもへの接し方は?子育てのコツ

家での接し方のコツ

アスペルガー症候群の子はルールや規則性を好みます。家で接する場合は、その子のスケジュールを一緒に考えてそれを実行に移すようにしていくといいでしょう。朝は○時に起きる、起きたらまずは顔を洗って歯を磨く、服を着替える、ごはんを食べる、など、その子がスムーズに動けるようにスケジュールを組みます。

好きなことやゲーム、ネットなどに対しては集中しやすく、やめることが困難になる場合もあります。そんなときには、時間や場所などのルールを先に決めて、それを守ることを教えるようにしましょう。

ルールが守れたら、たくさんほめてあげましょう。

学校や学びごとに関するコツ

勉強は特に得意不得意に激しく差が出てしまうので、その子に合わせた学習方法を一緒に進めてあげることが大切です。規則に則ってコツコツと勉強を進めることはできますが、自分で予定を立てて段取りし、管理するのは苦手です。予定を組むときは一緒に考えてあげるようにするとよいでしょう。本人が勉強しやすい環境を作ってあげることが大切なので、得意科目と苦手科目をバランスよく取り組めるようにスケジュールを立ててあげましょう。

本人が夢中になれることを継続させてあげると、その能力がぐんと伸びることがあります。興味を持ったお稽古ごとなどがあれば積極的にすすめてあげましょう。また、学習障害(LD)との合併も多く、苦手さに配慮した教材や学習方法が必要です。

友人関係、対人関係のコツ

対人関係の構築は、アスペルガー症候群の子が最も苦手とすることの一つです。焦らずにその都度教えていくようにしましょう。一つ一つの場面が学ぶ機会になります。子どもが間違った発言をしてしまった場合はその場で訂正するようにします。「言ってはダメ!」と叱るのではなく、なんと言えばよかったか、どのようにふるまえばよかったかを理解できるように具体的に教えていきましょう。

■表情を読むコツ
相手の表情を読むコツを繰り返し訓練して覚えていきましょう。例えば様々な表情のカードを見せながら、「これは“怒る”だね」「これは“嬉しい”だね」などと、表情と感情のマッチングをしていきます。また、絵本や簡単なイラストで描かれたストーリーをみながら、「どうしてこの人は怒っていると思う?」と聞くことで、様々な状況における感情と表情を読み取る練習をしていきます。

■会話のコツ
自分の好きなことを一方的にしゃべってしまう傾向があるので、「会話とは相手との対話である」ということを教えてあげましょう。話すときは、相槌をうつことなどを教え、一呼吸置いたのちにきちんと質問で返したり、相手との受け答えができるような流れに持っていくようにしてみましょう。しゃべりたいことをずっとしゃべらせるのではなく、会話のコツを教えてあげましょう。

■相手の意図を把握するコツ
言われたことを鵜呑みにしてしまうところがあるので、それを読み取る訓練が必要です。絵本やマンガの人物など視覚的な手がかりを使うとわかりやすいでしょう。専門機関にも指示を仰ぎながら、自宅でもできる訓練法を聞いておくとよいでしょう。

アスペルガー症候群の子どもに接する際に注意するべきこと

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アスペルガー症候群の子は失敗や叱責をされることが多くなると、そうなると自分の殻に閉じこもりがちになります。自己肯定感が下がり、自分を責めたりそれを周囲のせいだと悲観したりしてしまうことがあります。頭ごなしにできないからと叱ったり、理由を話さずに原因だけを追及したりするのは避けましょう。アスペルガー症候群の子と接する際に最も大切なことは、その子の「自尊心」を傷つけないように支援することです。

【注意点 1.頭ごなしに叱らない】
なぜ叱られているか理解できないうえに、ネガティブな気持ちだけが残ります。また、理由がわからないと反発しやすいです。なぜ叱られているのかを理解させるところから始めましょう。自分がどうして怒られているのかがわかるようになれば、素直に大人の話を聞き入れてくれます。

【注意点 2.叱るよりも説明する】
上記同様、叱るよりも「どうしてそうなっているのか」という現状を把握させましょう。これを繰り返し行うことで、自分で考える力をつけるという目的もあります。

【注意点 3.こちらの要求を一方的に押し付けない】
対人スキルの習得が困難なため、どうしても「これはこうしなさい」と大人の意見を押し付けがちですが、これも避けるようにしましょう。大切なのは正しい意見を押し付けるのではなく、子ども自身に考えてもらいながら理解させることです。

【注意点 4.受け止めて褒めてあげる】
傷つきやすく、ネガティブになりがちなのも特性です。子どもが親に受け止められ、褒められることや成功体験を積むことで自分に自信もつきますし、信頼関係も築けるようになります。

アスペルガー症候群とうまく向き合う方法を見つけましょう

アスペルガー症候群はその子に合った環境を作ることで、周りも本人もより接しやすくなります。また、周りが接し方を工夫することで、本人の生きづらさを軽減させてあげることにもつながります。どうすれば本人も周りも理解、工夫できるかというところに焦点を当ててみましょう。

療育やトレーニングについては、専門機関でその都度相談しながら、そのほかの悩みや今後の展望なども担当医やサポーターに相談しましょう。子育てにおけるヒントがあらゆる角度から見つけられるかもしれません。
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shizu (著),‎ 平岩 幹男 (監修)
講談社
ゼロから教えて発達障害
小野寺 敦子 (著)
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