発達障害の原因は?広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害それぞれ原因に違いはあるの?

発達障害の原因は?広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害それぞれ原因に違いはあるの?のタイトル画像

発達障害の原因はなんなのでしょうか?発達障害の原因は遺伝的要因の可能性があるとされていますが、それはどのような意味なのでしょうか?今回は現在までの研究結果からわかってきた発達障害を引き起こす原因とともに、もし発達障害かも、と思った場合どうしたらいいかわかりやすく説明します。

6077ad2b372d5a152de8191d73e3e4480c620035 s
発達障害のキホン
262358 View
5a9f9be3a4c4f2b420bb57b06f1121b9c3f754e5 s
監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
目次 発達障害とは 発達障害の原因は? 発達障害はどうやって発症するの? 広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害、それぞれの原因は? 発達障害を検査する方法はあるの? 発達障害は治療できるの? まとめ

発達障害とは

発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで起きる障害を指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現します。

2005年4月に制定された発達障害者支援法では発達障害は以下のように定義されました。

この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/001.htm
発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。

広汎性発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などのコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という障害名に統合されています。

また『DSM-5』ではADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、学習障害は限局性学習症/限局性学習障害という診断名となります。

これらの発達障害の中には知的障害が併存する場合もあります。
発達障害の原因は?広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害それぞれ原因に違いはあるの?の画像
Upload By 発達障害のキホン

発達障害の原因は?

発達障害の原因は完全にはわかっていません

発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となって生じます。

ですが、その詳細なメカニズムや、なぜその脳機能障害が引き起こされるのかははっきりとは解明されてはいません。研究が進み、発達障害の一部について証明された事実であったり、関連が指摘された要因については少しずつわかってきました。ですが発達障害の症状は様々であり、原因も多様であると考えられ、全ての人に当てはまる原因はないのではないかとも言われています。

一方で、かつて言われていた「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といった心因論は現在では医学的に否定されています。

以下に、現在考えられている発達障害の原因とそのメカニズムをご紹介します。

遺伝的要因と環境要因が相互に影響して脳機能障害が起きると考えられる

発達障害の原因はまだはっきりとは解明されていないものの、発達障害を引き起こす脳機能障害には遺伝的要因が関連している可能性が指摘されています。

例えば、広汎性発達障害に関しては、1970年代から盛んに双生児研究が行われ、一卵性双生児間では発現率が5~7割ほどという研究結果が多くあります。この数値は二卵性双生児の場合より高いと言われています。

一卵性双生児は遺伝子情報が同じです。その一卵性双生児で一人が広汎性発達障害だと二人とも広汎性発達障害になる可能性が高いという結果が出たことは、何らかの遺伝子要因が広汎性発達障害と関連があることを示唆しています。

また現在では、遺伝子研究が進み、染色体の一部分の重複により生じる発達障害があることや、それに関連する遺伝子がいくつか発見されています。

ですが、一卵性双生児間での一致率が100パーセントではないことなどから、発達障害が単純な遺伝的要因だけで発現するわけではなく、現在では関連する遺伝子が複数あることもわかってきました。

また、「親の育て方」という説や、MMRワクチンの接種が原因とする説など、研究の結果否定された環境要因もありますが、子どもの心身は、胎児期から発達期にとる睡眠や栄養、周りの人との関わりといった様々な要因によって支えられ、発達していきます。そのため、環境要因が全く関わりがないと考えることはできません。

これらのことから、現在、発達障害にはなんらかの遺伝的要因が関わっているが、その他のさまざまな環境要因と複雑かつ相互に影響し合って発現するという考えが主流になっています。

つまりある特定の遺伝子があれば必ず発症するというわけではなく、また遺伝的な要因と言っても親から子へ単純に遺伝するという意味ではないのです。さらに発達障害は、1つの原因による1つの道筋ではなく一人ひとり違った道筋を経て発症すると考えられ、全ての人にあてはまる要因を解明するのは難しいのではないかとも言われています。
発達障害の原因がわかった?!話題の研究チームに詳細を聞いてきたのタイトル画像

関連記事

発達障害の原因がわかった?!話題の研究チームに詳細を聞いてきた

発達障害はどうやって発症するの?

発達障害が発症し、それが明らかになるまでには以下のようなステップがあります。

1. 発達障害のもととなる脳機能障害が生じる

発達障害はなんらかの遺伝的要因をもつ、つまり発達障害になりやすい体質が先天的にある人が、胎児期や出生後に脳や心身が発達する中で様々な要因の影響を受け、脳機能障害を生じることで起こると言えます。

2. 脳機能障害により認知や感覚の偏りを引き起こされる

そうした脳機能の障害や偏りによって、認知の方法や感じ方に違いが生まれ、それが様々な行動特性を引き起こすのではないかと言われています。

例えば、情動を認知したりコントロールをする前頭葉や扁桃体などの機能に障害があり、そのために気持ちのコントロールやコミュニケーションをとるのが難しいのではないかという説もあります。

また、発達障害のある人は記憶の仕方に特性があるといわれています。そのために非常に記憶力が高かったり、ワーキングメモリと呼ばれる情報の処理や記憶の仕組みにトラブルがあったりする人がいます。

刺激を認識する機能になんらかのアンバランスが生じる人もいます。たとえば刺激を感じやすい感覚過敏や、逆に刺激を感じにくい感覚鈍磨がある場合もあります。

3. 発達の遅れなどの症状が現れ、問題や困りごとが明らかになる

発達障害の症状の発現時期は人によって異なります。最近では早期にそのリスクを発見するため、特に自閉症スペクトラムや広汎性発達障害などではアイ・トラッキング・システムなどを使い、初期症状を見つけるための研究も進められていますが、一般的には症状が顕著に発現するのは幼児期頃からと言われています。

乳児期には周りの子どもとコミュニケーションをとったりすることもあまりなく、また個人差も大きい時期なので、はっきりとはわからないことも多いのですが、集団参加や社会的な機能が要求される時期になると、行動面や対人関係・社会性の側面でなんらかの症状が目立ち始めると言われています。

きっかけとしては以下のような場合に、発達障害がある可能性に気づき、なんらかの支援を受けることが多いようです。

・1歳半や3歳健診などの乳幼児健康診査や小児科などで発達の遅れを指摘される
・園や学校に進んで集団生活がはじまり、コミュニケーションなどで困りごとが起きる
・子育ての悩みを相談する


また、学習障害の症状の発現時期については、目立った症状が見られるようになるのは読み書きを覚え始める就学前の年齢になり、学習を開始してからだと言えます。また、幼少期の特性の偏りは単にその子どもの苦手や不得意に分類される可能性があり、区別が難しいため診断が遅れる傾向があります。

障害が軽度の場合や特に困りごとが起きなかった場合など、見過ごされてそのまま成長することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して発達障害に気づく人もいます。

広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害、それぞれの原因は?

広汎性発達障害/自閉症スペクトラムの原因

自閉症スペクトラム(ASD)や広汎性発達障害に含まれるグループについては、現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。

最も中心的な関連遺伝子と考えられているのが、シナプスの形成とシナプスの機能にかかわるタンパク質をつくるために必要な情報にかかわる遺伝子です。
 たとえば、シナプスの形成に関与する遺伝子であるNLGN3やNLGN4、これらと機能的にかかわりの深いSHANK3などが自閉症スペクトラムとの関連が指摘されています。つまり、シナプスにおける神経伝達の軽微な異常によって、自閉症スペクトラムに見られる精神発達に障害が引き起こされると考えられています。

(飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊 p.95~96より引用)

出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4772611444/
上記を含め、自閉症スペクトラムの関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。

かつて広汎性発達障害に含まれていたレット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。そのため自閉症スペクトラム障害の概念から除外されました。

また、広汎性発達障害や自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の症状を引き起こすと考えられる脳機能の偏りとしては以下のような説があります。

1. 脳領域間の機能的連結低下

脳内のネットワークの連結機能がうまくいかず、定型発達の人の場合と比べて機能が低下していることから自閉症スペクトラム障害になるのではないかという説があります。

2. 社会的な活動をするための脳の部位の機能異常

人の脳には部位ごとに役割があります。その中に社会的な活動をするために使う部位もあり、以下のような部位に異常が起きたり働きが弱かったりするため、うまく人の表情や感情が理解できないのではないかと言われています。

・扁桃体(へんとうたい)…人の表情を認識し感情を読み取る部位です
・紡錘状回(ぼうすいじょうかい)…紡錘状回は人の顔を認識する部位です
・上側頭溝…人の目や口などの部位の動きを認識する部位です
・前頭葉…前頭葉にはミラーニューロンと呼ばれる神経が存在しており、人に対する「共感」の感情に関わっています

3. 小脳の異常

小脳は、平衡感覚や強調運動などに関わっていると言われています。そのため小脳に異常が起きると、バランス感覚をあまり持てなくなると言われています。ほかにも、小脳に異常が起きると感情や認知にも影響があるのではないかと報告されていますし、自閉症スペクトラム障害の中には実際に小脳への異常が見られた人もいます。

4. 脳内物質の異常

自閉症スペクトラム障害では、脳内物質に異常があるという報告があります。普通の人と比べて、血中オキシトシンが低い、セロトニンが高い、血中グルタミン酸が高いという違いが見られたという研究があります。
広汎性発達障害(PDD)の原因は?遺伝する確率はあるの?のタイトル画像

関連記事

広汎性発達障害(PDD)の原因は?遺伝する確率はあるの?

自閉症の原因は?遺伝する確率はあるの?のタイトル画像

関連記事

自閉症の原因は?遺伝する確率はあるの?

アスペルガー症候群(AS)の原因は?遺伝する確率はあるの?のタイトル画像

関連記事

アスペルガー症候群(AS)の原因は?遺伝する確率はあるの?

ADHD(注意欠陥・多動性障害)の原因

ADHDの症状が起こる確かな原因はまだ解明されていませんが、ADHDには複数の関連遺伝子が素因としてあり、それらが様々な道筋をたどって、このような特有の脳機能の偏りを引き起こし、ADHDの症状につながるのではないかと言われています。

現在有力だとされている素因は脳の前頭野部分の機能異常です。近年の研究から、ADHDの人は行動等をコントロールしている神経系に機能異常があるのではないかと考えられています。

前頭葉は脳の前部分にあり、物事を整理整頓したり論理的に考えたりする働きをします。この部位は注意を持続させたり行動などをコントロールさせたりします。ADHDの人は、この部分の働きに何らかのかたよりや異常があり、前頭葉がうまく働いていないのではないかと考えられています。

前頭葉が働くためには、神経伝達物質のドーパミンがニューロンによって運ばれなくてはいけません。しかしADHDの人の場合ニューロンによってドーパミンがうまく運べず前頭葉の働きが弱くなってしまい、それが原因で「多動」「衝動」「不注意」の3つの特徴が現れると考えられています。

ADHDの人は五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向がありますが、それも前頭葉の働きが弱いからだと言われています。思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまい感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となると考えられています。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の原因は?遺伝する確率は?のタイトル画像

関連記事

ADHD(注意欠陥・多動性障害)の原因は?遺伝する確率は?

学習障害(LD)の原因

学習障害の症状を引き起こす具体的な脳機能障害としては、中枢神経のトラブルが仮説の中でも最も有力と言われています。

脳は無意識に感覚器官から入ってきた情報を処理し、整理して記憶します。そして必要に応じてその情報を取り出します。文字を読んだり書いたり、計算をしたりといった学習にはこれらの働きが必要です。中枢神経は脳や脊髄、体の様々な部分の働きを指令する部分であり、これらの情報処理を担っています。そのため、この機能のトラブルが学習障害の困難を引き起こすのではないかと考えられています。

この説の検証が難しい理由は、医学的に検査を行っても分からないほどの小さな異常が原因とされているからです。
学習障害(LD)の原因は?遺伝する確率はあるの?のタイトル画像

関連記事

学習障害(LD)の原因は?遺伝する確率はあるの?

発達障害を検査する方法はあるの?

当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
あわせて読みたい関連記事

あわせて読みたい関連記事

発達障害のキホンを知る

発達障害のキホンを知る

【図解】発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?分類・原因・相談先・診断についてイラストでわかりやすく解説します!のタイトル画像

【図解】発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?分類・原因・相談先・診断についてイラストでわかりやすく解説します!

発達障害は外見からはわかりにくい障害です。定義や特徴も複雑で、イメージしにくいかもしれません。この記事ではイラスト図解で、発達障害にはどん...
発達障害のこと
51100 view
2018/08/28 更新
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状の分類と年齢ごとの特徴 、診断方法や治療まとめのタイトル画像

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状の分類と年齢ごとの特徴 、診断方法や治療まとめ

ADHDは不注意、多動性、衝動性の3つの症状がみられる発達障害のひとつです。注意欠如・多動性障害とも呼ばれます。子どもの20人に1人、成人...
発達障害のこと
4406123 view
2017/08/30 更新
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?のタイトル画像

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、自閉症やアスペルガー症候群などが統合されてできた診断名です。コミュニケーションに困難さがあり、限定さ...
発達障害のこと
2137311 view
2016/09/29 更新
【図解】学習障害(LD)とは?イラスト図解でポイントを解説!のタイトル画像

【図解】学習障害(LD)とは?イラスト図解でポイントを解説!

学習障害(LD)がある子どもはどのような状態で、何に困っているのかご存知ですか?イラスト図解とポイント解説で、学習障害とはどんな障害なのか...
発達障害のこと
26738 view
2018/09/06 更新
放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。