ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如多動症)・LD・SLD(限局性学習症)、それぞれの原因は?
ASD(自閉スペクトラム症)の原因
ASD(自閉スペクトラム症)について、現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。脳の機能的・器質的な違いが生じる背景については、ASD(自閉スペクトラム症)にはさまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を特定することはできてはいません。また、遺伝子の要因だけでなく、生まれる前や周産期の影響などが関連している可能性も考えられています。
ASD(自閉スペクトラム症)においては、いくつかの認知仮説があります。1つは、「心の理論」と言われるものに障害があるのではないかという仮説です。「心の理論」とは、相手の行動を見て相手の考えを予測し解釈するという心の動きを指します。
もう1つの仮説は、「中枢性統合の弱さ」です。これは、情報処理の過程において、全体を統合するのではなく部分に着目する傾向から、自分や相手の状況等を包括的に把握することが難しいのではないかという仮説です。そのために、対人関係の難しさが生じたり、社会的ふるまいが難しかったりする可能性が考えられています。
ほかにも「実行機能」という、「なにかをやり遂げる」ための認知・感情・行動を制御する力に難しさがあるのではないかという研究もあります。
ミラーニューロンの機能不全があるとする説もあります。ミラーニューロンは他人の行動を観察したときに、自分がその行動を実行しているかのように反応する神経細胞です。ASDにおいては、ミラーニューロンの機能が低下しており、他人の行動や感情を理解する能力が影響を受けているのではないかと考えられています。
ASD(自閉スペクトラム症)においては、いくつかの認知仮説があります。1つは、「心の理論」と言われるものに障害があるのではないかという仮説です。「心の理論」とは、相手の行動を見て相手の考えを予測し解釈するという心の動きを指します。
もう1つの仮説は、「中枢性統合の弱さ」です。これは、情報処理の過程において、全体を統合するのではなく部分に着目する傾向から、自分や相手の状況等を包括的に把握することが難しいのではないかという仮説です。そのために、対人関係の難しさが生じたり、社会的ふるまいが難しかったりする可能性が考えられています。
ほかにも「実行機能」という、「なにかをやり遂げる」ための認知・感情・行動を制御する力に難しさがあるのではないかという研究もあります。
ミラーニューロンの機能不全があるとする説もあります。ミラーニューロンは他人の行動を観察したときに、自分がその行動を実行しているかのように反応する神経細胞です。ASDにおいては、ミラーニューロンの機能が低下しており、他人の行動や感情を理解する能力が影響を受けているのではないかと考えられています。
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ADHD(注意欠如多動症)の原因
ADHD(注意欠如多動症)についても、原因はまだ解明されていませんが、単一の要因ではなく、さまざまな要因が関連していると考えられています。
特に研究段階ではあるものの、ドパミン(※1)およびノルアドレナリン系(※2)の差異が関連しているのではないかと言われています。
(※1)ドパミン:神経伝達物質の一つで、快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たしている。
(※2)ノルアドレナリン:交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質。ノルアドレナリンが放出されると、交感神経の活動が高まり、体を活動に適した状態にする。
特に研究段階ではあるものの、ドパミン(※1)およびノルアドレナリン系(※2)の差異が関連しているのではないかと言われています。
(※1)ドパミン:神経伝達物質の一つで、快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たしている。
(※2)ノルアドレナリン:交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質。ノルアドレナリンが放出されると、交感神経の活動が高まり、体を活動に適した状態にする。
参考:ドパミン|e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-047.html
ADHD(注意欠如多動症)の症状を理解する理論モデルとして、実行機能、報酬系機能、時間処理機能の障害があるというTriple Pathway Modelが提唱されています。
実行機能障害は、計画、情動制御、作業記憶などの障害に関連しています。タスクの管理や時間の管理、目標達成の困難さに影響を与えます。
報酬系機能障害は、報酬を魅力的と感じる効果が持続しない、報酬が得られない時に他のことに気が逸れることに関連しています。長期的な報酬よりも、短期的な利益を優先する傾向があり、学習や計画立てが困難になることがあります。
時間処理機能障害は、時間的な長さ、段取りなどを知覚する機能の障害であり、段取りをつけて物事をこなすことが困難になることがあります。
実行機能障害は、計画、情動制御、作業記憶などの障害に関連しています。タスクの管理や時間の管理、目標達成の困難さに影響を与えます。
報酬系機能障害は、報酬を魅力的と感じる効果が持続しない、報酬が得られない時に他のことに気が逸れることに関連しています。長期的な報酬よりも、短期的な利益を優先する傾向があり、学習や計画立てが困難になることがあります。
時間処理機能障害は、時間的な長さ、段取りなどを知覚する機能の障害であり、段取りをつけて物事をこなすことが困難になることがあります。
LD・SLD(限局性学習症)の原因
LD・SLD(限局性学習症)においても、原因は解明されていませんが、脳の機能障害を前提として研究が行われています。
中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されていますが、教育の経歴や学習環境が直接の原因となるものではないとされています。
中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されていますが、教育の経歴や学習環境が直接の原因となるものではないとされています。
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発達障害は治療できるの?
根本的な原因が解明されていないため、薬や手術などによる根本的な治療法は存在しません。しかし、症状を緩和させたり、本人の困りごとを改善したりする方法はいくつかあります。例えば環境調整を含めた心理・社会的アプローチや症状を和らげるための薬の使用などです。
療育(発達支援)や教育
療育とは障害(またはその可能性)のある子どもに対し、それぞれの困りごとをふまえ、その子に合ったアプローチで発達を促し、日常生活や園・学校などの社会生活で過ごしやすくできるようにサポートする取り組みです。「発達支援」とも呼ばれています。
療育(発達支援)では、障害のあるお子さんが社会的に自立できるように、身辺自立や苦手なことを伸ばすことを意識した働きかけや、コミュニケーションなどの社会的スキルを得られるように助けます。
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発達障害のある子どもへの療育の内容と効果、療育を受けられる施設を解説【専門家監修】
ペアレントトレーニングという、子どもとのより良い関わり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、子どもの発達促進や行動改善を目的とした保護者向けのプログラムを受けられる場合もあります。
ペアレントトレーニング(ペアトレ)とは?種類や効果など/専門家監修
また、特別支援教育や通常の教育のなかでも環境調整や合理的配慮を行いながら、一人ひとりに合わせた支援が行われます。本人の意思を尊重しながら、いいところを伸ばせるような関わりが大切です。
薬による治療
特にADHD(注意欠如多動症)の症状を一時的に軽減する方法として、服薬を取り入れることもあります。不注意、多動・衝動性の薬物治療としては、主に中枢神経刺激薬が使用されます。
服薬により、注意や衝動性といった特性の影響でこれまで取り組みづらかった活動へ参加しやすくなったり、行動上の困りが軽減し意欲や自尊心の向上につながったりすることもあります。
ほかに興奮などに対しては抗精神病薬や、気分の変動には気分安定薬などが使用される場合があります。
しかしながら薬には合う合わないもあり、副作用も個人差があります。薬の利用は主治医とよく相談し、納得した上で用法・用量を守って進めるようにしましょう。
ADHD(注意欠如多動症)においても、教育的支援が第一とされています。行動面や生活面、学習面において、保護者や先生、支援者と共に一人ひとりに合った支援やサポートを検討していくことが大切です。
服薬により、注意や衝動性といった特性の影響でこれまで取り組みづらかった活動へ参加しやすくなったり、行動上の困りが軽減し意欲や自尊心の向上につながったりすることもあります。
ほかに興奮などに対しては抗精神病薬や、気分の変動には気分安定薬などが使用される場合があります。
しかしながら薬には合う合わないもあり、副作用も個人差があります。薬の利用は主治医とよく相談し、納得した上で用法・用量を守って進めるようにしましょう。
ADHD(注意欠如多動症)においても、教育的支援が第一とされています。行動面や生活面、学習面において、保護者や先生、支援者と共に一人ひとりに合った支援やサポートを検討していくことが大切です。
まとめ
発達障害の原因を探ることは、治療法の開発・研究にもつながるため、世界中の研究者が日々、研究を進めています。
発達障害の原因は少しずつ明らかになってはいるものの、いまだにわからないことが多いのが現状です。また、発達障害は、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられるため、特定の要因については今後もわからないのではないかという考え方が主流となっています。
子どもと関わる上では、本人の困りやその背景を理解し、その子に合った環境調整や支援を検討していくことが大切です。保護者や支援者が一人で悩み考えるのではなく、地域の相談機関や専門家と連携しながら一緒に考えていけるとよいでしょう。
発達障害の原因は少しずつ明らかになってはいるものの、いまだにわからないことが多いのが現状です。また、発達障害は、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられるため、特定の要因については今後もわからないのではないかという考え方が主流となっています。
子どもと関わる上では、本人の困りやその背景を理解し、その子に合った環境調整や支援を検討していくことが大切です。保護者や支援者が一人で悩み考えるのではなく、地域の相談機関や専門家と連携しながら一緒に考えていけるとよいでしょう。
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