学習障害(LD)の原因は?遺伝する確率はあるの?

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学習障害の原因はまだはっきりとは解明されていません。学習障害や他の発達障害の原因には、遺伝や環境など、様々な説があります。今回は学習障害の原因とされているいくつかの要因と、気になる遺伝についての情報をまとめました。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員

学習障害(LD)とは?

学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことです。英語ではLearning Disabilityと呼ばれ、LDと略されることも多いです。

文部科学省は学習障害を以下のように定義しています。

基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。

出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
学習障害は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力全てに困難があるわけではなく、一部の能力だけに偏って困難がある場合が多いです。その困難がどのように現れるかによって、主に「読字障害(ディスレクシア)」「書字表出障害(ディスグラフィア)」「算数障害(ディスカリキュリア)」の3つに分類されます。

学習障害は先天性の障害なの?

学習障害の原因は、医学的にはまだはっきりとは解明されていません。

しかし、遺伝的要因がそもそもの素因だと言われています。そこに様々な環境要因が重なり相互に影響することで、脳機能障害となって発現し、それが得意・不得意の偏りの原因となると言われています。つまり、学習障害は親の子育てのしかたや子ども自身の努力不足といった後天的なものによるものではなく、先天性の障害だと言われているのです。生まれつきある脳機能の偏りが成長・発達過程のどこかで学習障害の症状となって現れるという説が近年主流になっています。

学習障害の症状の発現時期については、目立った症状が見られるようになるのは学習を開始してからだと言えます。また、幼少期の特性の偏りは単にその子どもの苦手や不得意に分類される可能性があり、区別が難しいため診断が遅れる傾向があります。したがって、学習障害の発現時期についても特定するのは非常に難しく、はっきりとは解明されていないのが現状です。

学習障害の原因は?

学習障害をはじめ、発達障害が発現する原因ははっきりとは分かっていません。子どもの学習障害が発覚した親の中には「しつけが悪かった」「育て方が悪かった」と自分を責める方も少なくはありません。しかし、しつけや育て方は直接の原因ではなく、こうした心因論は誤りであることがわかっています。

では、学習障害の原因は何なのでしょうか?様々な説がありますが、現在有力視されているのが遺伝的要因と環境的要因の相互影響です。なんらかの先天的な遺伝的要因があり、それが胎児期や出生後の脳や心身が発達する間に様々な環境が重なることで影響しあい、脳機能の偏りを引き起こしていると考えられています。その環境要因についても出生児の低体重や乳幼児期の病気など、様々な要因が関係があるのではないかと考えられ研究されていますが、まだはっきりとはわかっていません。

学習障害の症状の原因は?

文部科学省の定義でも以下のように触れられているとおり、学習障害の症状を引き起こす具体的な脳機能障害としては、中枢神経のトラブルが仮説の中でも最も有力と言われています。

学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。

出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
中枢神経は脳や脊髄、体の様々な部分の働きを指令する部分です。そのため中枢神経のトラブルは学習障害の困難を引き起こすのではないかと考えられています。この説の検証が難しい理由は、医学的に検査を行っても分からないほどの小さな異常が原因とされているからです。

学習障害は親から子どもへ遺伝するの?

学習障害の遺伝については、はっきりとした結論はまだなく、確率についての明確なデータはありません。しかし、学習障害の原因が脳の先天的な要因だとされているため、遺伝の可能性もあるのではと考えられています。

ですが、それは特定の遺伝子が親から子へ遺伝して発現するという意味ではありません。なんらかの遺伝的要因に、そのほかの要因が重なった場合に、複雑に影響し合って発現するため、親が学習障害の場合、子どももそうなるといった単純な遺伝ではありません。両親とも定型の場合でも子どもが学習障害である可能性もあるのです。

学習障害を検査する方法はあるの?

学習障害があるかどうかを出生前の妊娠中の段階で検査する方法はまだ存在しません。その理由は、学習障害の原因がまだはっきりと解明されていないことと、脳の異常を出生前に検査することが大変難しいからです。

出生後にも、血液検査や遺伝子検査などの生理学的な検査で学習障害を判断することはできません。学習障害は、何らかの学習をするようになって初めて症状となって現れます。それに気づいた場合、医療機関で問診や知能検査・心理検査などを総合して判断されるのです。

学習障害の治療法はあるの?

学習障害は、特性の偏りを判断することでぐっと対処しやすくなります。読字障害、書字表出障害、算数障害などのタイプの中にも一人一人により細かな得意・不得意の個性が存在します。ある子どもは文字自体を読めているが文字を音にするのが苦手だったり、ある子どもは文字を読めても作文や日記など長い文章を構成するのが苦手など、困りごとは人によって様々です。

これらの特性の偏りによる個性は専門機関での検査と診断で発見することができます。それをもとに、その子に合った対応法を探します。個性に合った対応法は子どもがやる気や達成感を感じるための大切な入り口となります。その子にあった方法で学ぶことや、ソーシャルスキルトレーニングなども本人の能力を高める対応法として存在しています。

例えば、現在ではパソコンやタブレットなどのICT(情報通信技術)の力を借りて、学習上の困難を減らすこともできます。例えば、活字を読むのが苦手な子の場合は、パソコンなどに教科書の音声を読み上げてもらうことが可能です。また字を書くのが苦手な子の場合でも、キーボードを利用したり、黒板をカメラで撮ることもできます。このように、本人の苦手意識を減らしながら学習を進めていくようにしましょう。

2016年4月からは障害者差別解消法によって合理的配慮が実施され、障害のある子どもに対して学校などで配慮がなされるようになりました。学習障害はツールを使ったり環境調整を行うことで、その子の学習における困難さを軽減することができます。その子にあった対応をすることで、本人の生きづらさが解消するので、まずは環境を整えることから始めましょう。

まとめ

学習障害はまだまだ原因が分からないことが多く研究段階にあります。しかしその子の特性を理解しその子に合った対応をすることで、生きづらさを減らし困難に感じることを徐々に減らしていくことができます。

学習障害を「障害」ととらえずに「特性」のひとつと考えるようにしましょう。また、治療して克服しなければならないものと思い込まず、どうすれば過ごしやすい環境を作れるかを第一に考え、工夫や代替ツールの利用によって解決策を考えてみましょう。環境を整えることで、特性を逆に活かすことも可能になります。

今後テクノロジーが進歩することによって、学習障害による生きづらさはかなり軽減できると思われます。学習障害について正しい知識を得、一人一人に合った対処と合理的配慮をすることで、誰もがのびのびと過ごせるようになるとよいですね。
怠けてなんかない! ディスレクシア~読む書く記憶するのが困難なLDの子どもたち
品川 裕香 (著)
岩崎書店
うちの子は字が書けない (発達性読み書き障害の息子がいます)
千葉リョウコ (著),‎ 宇野彰 (著)
ポプラ社
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