LD・SLD(限局性学習症)の原因は?遺伝する確率はあるの?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
LD・SLD(限局性学習症)の原因は?遺伝する確率はあるの?【専門家監修】のタイトル画像

LD・SLD(限局性学習症)の原因はまだはっきりとは解明されていません。LD・SLD(限局性学習症)や他の発達障害の原因には、遺伝や環境など、様々な説があります。今回はLD・SLD(限局性学習症)の原因とされているいくつかの要因と、気になる遺伝についての情報をまとめました。

監修者井上雅彦のアイコン
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

LD・SLD(限局性学習症)とは?

LD・SLD(限局性学習症)とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことです。英語ではLearning Disabilityと呼ばれ、LDと略されることも多いです。

文部科学省はLD・SLD(限局性学習症)を以下のように定義しています。
基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
出典:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/13966...
LD・SLD(限局性学習症)は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力全てに困難があるわけではなく、一部の能力だけに偏って困難がある場合が多いです。その困難がどのように現れるかによって、主に「読字障害(ディスレクシア)」「書字表出障害(ディスグラフィア)」「算数障害(ディスカリキュリア)」の3つに分類されます。
医学的な診断基準とされるDSM-5-TRでは、現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名が用いられています。

限局性学習症(SLD)は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。読むことやその内容を理解することの困難さ、書くことの困難さ、数の理解や計算をすることの困難さなど大きく3つの分類があります。これらの困難が、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習における面のみでの困難であること、という場合に限り診断されます。
学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。

現在でも以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記しています。

LD・SLD(限局性学習症)は先天性の障害なの?

LD・SLD(限局性学習症)の原因は、医学的にはまだはっきりとは解明されていません。

しかし、遺伝的要因がそもそもの素因だと言われています。そこに様々な環境要因が重なり相互に影響することで、脳機能障害となって発現し、それが得意・不得意の偏りの原因となると言われています。つまり、LD・SLD(限局性学習症)は親の子育てのしかたや子ども自身の努力不足といった後天的なものによるものではなく、先天性の障害だと言われているのです。生まれつきある脳機能の偏りが成長・発達過程のどこかでLD・SLD(限局性学習症)の症状となって現れるという説が近年主流になっています。

学習障害の症状の発現時期については、目立った症状が見られるようになるのは学習を開始してからだと言えます。また、幼少期の特性の偏りは単にその子どもの苦手や不得意に分類される可能性があり、区別が難しいため診断が遅れる傾向があります。したがって、LD・SLD(限局性学習症)の発現時期についても特定するのは非常に難しく、はっきりとは解明されていないのが現状です。

LD・SLD(限局性学習症)の原因は?

LD・SLD(限局性学習症)をはじめ、発達障害が発現する原因ははっきりとは分かっていません。子どものLD・SLD(限局性学習症)が発覚した親の中には「しつけが悪かった」「育て方が悪かった」と自分を責める方も少なくはありません。しかし、しつけや育て方は直接の原因ではなく、こうした心因論は誤りであることがわかっています。

では、LD・SLD(限局性学習症)の原因は何なのでしょうか?様々な説がありますが、現在有力視されているのが遺伝的要因と環境的要因の相互影響です。なんらかの先天的な遺伝的要因があり、それが胎児期や出生後の脳や心身が発達する間に様々な環境が重なることで影響しあい、脳機能の偏りを引き起こしていると考えられています。その環境要因についても出生児の低体重や乳幼児期の病気など、様々な要因が関係があるのではないかと考えられ研究されていますが、まだはっきりとはわかっていません。

LD・SLD(限局性学習症)の症状の原因は?

文部科学省の定義でも以下のように触れられているとおり、LD・SLD(限局性学習症)の症状を引き起こす具体的な脳機能障害としては、中枢神経のトラブルが仮説の中でも最も有力と言われています。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
出典:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/13966...
中枢神経は脳や脊髄、体の様々な部分の働きを指令する部分です。そのため中枢神経のトラブルはLD・SLD(限局性学習症)の困難を引き起こすのではないかと考えられています。この説の検証が難しい理由は、医学的に検査を行っても分からないほどの小さな異常が原因とされているからです。
算数障害とは?チェックリストや症状、診断、対処法まとめ【専門家監修】のタイトル画像

算数障害とは?チェックリストや症状、診断、対処法まとめ【専門家監修】

「書くのが苦手」はディスグラフィア(書字表出不全)かも?症状、原因、困りごと、対処法まとめ【専門家監修】のタイトル画像

「書くのが苦手」はディスグラフィア(書字表出不全)かも?症状、原因、困りごと、対処法まとめ【専門家監修】

ディスレクシア(読字不全)とは?症状の特徴や生活での困りごとは?のタイトル画像

ディスレクシア(読字不全)とは?症状の特徴や生活での困りごとは?

次ページ「LD・SLD(限局性学習症)は親から子どもへ遺伝するの?」

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。