広汎性発達障害(PDD)の原因は?遺伝する確率はあるの?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン

広汎性発達障害の主な原因は何でしょうか?親から子どもへ遺伝する確率はあるのかどうかも気になりますよね。そんな広汎性発達障害の疑問についてまとめました。発現時期や検査方法、治療法などもご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。
目次

医学的に広汎性発達障害(PDD)の発現時期は分かっているの?

広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)の診断カテゴリでは、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。

広汎性発達障害は、なんらかの先天的な遺伝要因と様々な環境要因に起因する何らかの障害が脳が発達する時期に起こり、それが成長段階で「広汎性発達障害」として発見されるとされています。要は先天的な素因によって起こる発達障害の一つとして医学的には捉えられています。広汎性発達障害は親のしつけや育て方の問題で広汎性発達障害が起こっているわけではないことがわかっています。

広汎性発達障害は、だいたい3歳までの幼児期に何らかの症状が現れると言われています。広汎性発達障害の子どもをもつ親が、言語能力の遅れやこだわりなどの症状から何らかの疑いをもつ時期についても3歳未満が多いとされています。また、1歳半検診や3歳児健診などの乳幼児健康診断で広汎性発達障害を含む発達障害に関する何かしらの指摘があり、その後医師の診断により判明することもあります。

中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。

※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
参考:ICD-11 | 世界保健機関(WHO)
https://icd.who.int/en/

広汎性発達障害の原因は?

現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。

なお、広汎性発達障害という診断名は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)の診断基準では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断カテゴリに変更されています。以下の各症状の中には、自閉症スペクトラム障害の概念から除外されたものも含まれています。

しかし、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明します。

以下の図で広汎性発達障害に含まれている各症状の原因について、それぞれご紹介します。
発達障害の種類と概念図
発達障害の種類と概念図
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自閉症の原因

自閉症は脳の機能障害が原因と考えられていて、これには複数の遺伝子が関わっており、最近では父親の高齢化で自閉症の確率が高まるという研究報告や、妊娠時の体内環境の要因などが関連すると言われることもあります。しかしながら、これらは全てはっきりしたメカニズムが分かっておらず、医学的根拠については解明されていません。
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自閉症の原因は?遺伝する確率はあるの?【専門家監修】

アスペルガー症候群(AS)の原因

アスペルガー症候群も自閉症と同様に脳の機能障害である可能性が高いとされていますが、その全てが解明されている訳ではありません。小脳や脳内物質の異常、環境ホルモンやウィルス感染、成長環境での心理的要因など国内外で様々な研究が進められており、アスペルガー症候群の原因について医学的な裏づけを研究している段階です。
アスペルガー症候群(AS)の原因は?遺伝する確率はあるの?【専門家監修】のタイトル画像

アスペルガー症候群(AS)の原因は?遺伝する確率はあるの?【専門家監修】

レット障害(レット症候群)の原因

レット障害(レット症候群)はほとんどが女児に見られる発達障害です。レット障害についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。

女性の性染色体はXX型、男性はXY型であるため、レット障害は女児に多いと考えられています。また、男児の場合、遺伝子の異常で流産や死産してしまう可能性が高いですが、男児のレット障害も少数ながら報告されています。
レット症候群|難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4367

小児期崩壊性障害(CDD)の原因

小児期崩壊性障害(CDD)はヘラー症候群とも呼ばれますが、その原因は現段階では解明されていません。今まで話していた子どもが言葉を話さなくなるなど精神発達の退行が症状として現れますが、脳や神経系の感染症などを発現後に小児期崩壊性障害となるケースも多く、脂質代謝異常や結節性硬化症など、さまざまな疾患と関連があると考えられています。
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小児期崩壊性障害とは?症状・原因・治療法・療育法は?他の障害との違いは?

特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)の原因

特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)は特定不能とあるように、特定の原因は不明とされています。一部では遺伝要因と環境要因による相互作用ではないかと考えられています。自閉症やアスペルガー症候群の診断基準には当てはまらないが、その特徴を一部持っているという場合に診断されることが多いです。
PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?自閉症やアスペルガーとの違い、診断・支援方法は?【専門家監修】のタイトル画像

PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?自閉症やアスペルガーとの違い、診断・支援方法は?【専門家監修】

広汎性発達障害は親から子どもへ遺伝するの?

広汎性発達障害は先天的な遺伝的要因が関与している可能性が高いと言われています。双生児研究や家族間研究が盛んに行われてきました。以下のようなデータがあります。
広汎性発達障害の一卵性双生児における一致率は70~90%であり、その遺伝率は90%とされている。よって広汎性発達障害は遺伝因子がその発症に大きな役割を果たしていると考えられている。

(橋本亮太、安田由華、大井一高、福本素由己、高村明孝、山森英長、武田雅俊 「モデル動物を用いた発達障害病態解析」 2009年より引用)
出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbp/20/3/20_3_229/_pdf
一卵性双生児の場合、基本的な遺伝子情報は同じです。その一卵性双生児間で一人が広汎性発達障害である場合、もう一人も広汎性発達障害であるという確率が90%と高いことは、遺伝的要因が影響していると言われている根拠の一つとなっています。一方で、一致率が100%でないということは、遺伝以外の要因があることも示唆しているのです。

つまり、広汎性発達障害は遺伝的要因が関係している可能性がありますが、必ずしも単純に親から子どもへ遺伝するというわけではありません。また。遺伝する確率や詳しい原因については研究段階で、発現するメカニズムなどは解明されていないのが現状です。

障害のある親から障害のない子どもが産まれる場合もありますし、親族の広汎性発達障害のない場合でも障害のない親から障害のある子どもが産まれる場合もあります。きょうだい間でも上の子が広汎性発達障害だったからといって、下の子も必ず広汎性発達障害になるとは限りません。
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