きょうだい(兄弟・姉妹)で広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)になる確率は?

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の遺伝に関しては、双生児研究や家族間での一致率に関する研究が活発に行われています。現段階で医学的な根拠は明らかになっていませんが、自閉スペクトラム症の発現には何らかの遺伝的要因が関与していると考えられています。
一方で、これまでの研究では一卵性双生児と二卵性双生児それぞれの調査の結果の差異から遺伝子配列が同じ一卵性双生児での一致率が高いという報告がされていましたが、近年の研究では、その差異は研究を始めた当初よりも小さいのではないか、という結果もあり、ASD(自閉スペクトラム症)の発現には、遺伝要因に加えて環境要因との相互作用を考慮したほうがよいという考え方が強くなってきています。
きょうだいにASD(自閉スペクトラム症)のある人がいる場合、一般より発現率が高くなる傾向があるという研究結果があります。しかし、遺伝的要素が強かったとしても、必ずそのきょうだいにASD(自閉スペクトラム症)があらわれるわけではありません。受け継がれる要素や遺伝要素のあらわれ方はさまざまです。現在のところ1,000を超える候補遺伝子が報告されていますが、ASDのリスク増加を十分に説明する遺伝的変異は特定されてはいません。
参考:Genetic heritability and shared environmental factors among twin pairs with autism
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21727249/
参考:The genetic basis of non-syndromic intellectual disability: a review
https://link.springer.com/article/10.1007/s11689-010-9055-2
参考:Sibling Recurrence Risk and Cross-aggregation of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Autism Spectrum Disorder
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2717035

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)は男女で発現率が違う?

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の統計データによると、8 歳の子ども 36 人に 1 人 (男子の約 4%、女子の約 1%)がASD(自閉スペクトラム症)であると推定されるという結果が出ており、男子の発現率は女子の発現率の約4倍となっています。アメリカのデータではありますが、世界的に見ても広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)は男性の発現率が高いとされています。ただし、女性は見過ごされやすく、未診断である場合が多いといわれています。
出典元:CDC「Data and Statistics | Autism Spectrum Disorder (ASD) | NCBDDD」(英語サイト)
https://www.cdc.gov/ncbddd/autism/data.html
参考:砂川芽吹 「自閉症スペクトラム障害の女性は診断に至るまでにどのように生きてきたのか : 障害を見えにくくする要因と適応過程に焦点を当てて 」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/26/2/26_87/_pdf

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)を検査する方法はあるの?

羊水検査やエコー写真などによって、出生前の妊娠中の段階で広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)を検査する方法は今のところなく、出生後も血液検査や遺伝子検査といった生理学的な方法で検査することはできません。

一般的に子どもになんらかの症状や特性が現れてから、さまざまな心理検査や知能検査、保護者(親)に対する問診、子ども(本人)の行動観察、学校や家族からの情報提供などによって診断が行われます。
診断基準は主に『DSM-5-TR』や『ICD-10』などが用いられます。診断はさまざまな情報や検査の結果から総合的に行われ、経過を見ながら慎重に行われます。
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