広汎性発達障害(PDD)は遺伝する確率があるの?きょうだい、父親、母親との関係は?

2016/01/18 更新
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自身や家族が発達障害の場合、遺伝するのかどうか気になることがあると思います。広汎性発達障害の原因や遺伝に関するはっきりとした結論はないのですが、様々なデータがあるのは事実です。今回は広汎性発達障害の原因や遺伝に関する説や検査方法などをご紹介します。

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発達障害のキホン
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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員

広汎性発達障害(PDD)とは

広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリでは、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。

広汎性発達障害は、最新の診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。広汎性発達障害の障害名、症状の中には自閉症スペクトラム障害の概念では除外されたものも含まれています。

ですが、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明します。

広汎性発達障害は親から子どもへ遺伝するの?確率は?

広汎性発達障害は遺伝的要因と環境要因が複雑に影響し合って発現するという説が主流になっています。遺伝性の関与を研究するための双生児研究や家族間研究が進められていますが、現在のところ研究によって数値がまちまちで、親子の遺伝確率の数値は明確にはわかっていません。

二卵性双生児と一卵性双生児を比較してみると、一卵性双生児のほうが広汎性発達障害の発現率は高いという報告があります。一卵性双生児は基本的な遺伝子配列が同じなので、この結果は遺伝子が近いほど、広汎性発達障害を発現しやすいということを意味し、広汎性発達障害の遺伝的要因説の根拠となっています。ですが、広汎性発達障害の原因は一つの特定の遺伝子によるのではなく、広汎性発達障害の原因となりうる様々な関連遺伝子が重なることによる多因子遺伝と呼ばれるタイプであると考えられています。この関連遺伝子自体は多くの人が持っていると言われています。

これらの広汎性発達障害の要因となる何らかの遺伝子が重なり、さらに様々な環境要因が相互に影響したとき、脳機能に障害が起こり、症状が現れるとされています。その際に両親の遺伝子配列が要因の一部となっていることもありますが、それは広汎性発達障害に限らず、すべての病気や障害に言えることです。つまり、親から子に単純に遺伝するということではないのです。よって、親が「広汎性発達障害」だからといって、子どもにも100%遺伝するとは限らないのです。
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発達障害の種類と概念図
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広汎性発達障害の原因は何?

現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。また、かつて言われたような親のしつけや愛情不足といった子育てのしかたによるという説は、医学的に否定されています。

広汎性発達障害に含まれる各症状の原因については下記の通りです。どの症状も正確な原因は解明されていませんが、各症状における原因は下記のように議論されています。 

自閉症の原因

自閉症は脳の機能障害が原因と考えられていて、これには複数の遺伝子と環境要因が関わっており、最近では父親の高齢化で自閉症の確率が高まるという研究報告や、妊娠時の体内環境の要因などが関連すると言われることもあります。しかしながら、これらは全てはっきりしたメカニズムが分かっておらず、医学的根拠については解明されていません。

アスペルガー症候群(AS)の原因

アスペルガー症候群も自閉症と同様に脳の機能障害である可能性が高いとされていますが、その全てが解明されている訳ではありません。小脳や脳内物質の異常、環境ホルモンやウィルス感染、成長環境での心理的要因など国内外で様々な研究が進められており、アスペルガー症候群の原因について医学的な裏づけを研究している段階です。

レット障害(レット症候群)の原因

レット障害(レット症候群)はほとんどが女児に見られる発達障害で、X染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因と言われていましたが、1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見されました。その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。稀に男児で発現する場合もありますが、ほとんどは遺伝子の異常で流産や死産してしまう可能性が高いと見られています。

病因:最初の報告から、ほとんどの患者が女児であるためX染色体性優性遺伝が疑われていましたが、遺伝子連鎖解析によりX染色体長腕のXq28と連鎖がある事がわかり、この領域に存在するMethyl-CpG-binding protein 2 gene(MECP2)がRTTの主な原因遺伝子である事がわかりました。

出典:http://www.nanbyou.or.jp/entry/4367

小児期崩壊性障害(CDD)の原因

小児期崩壊性障害(CDD)はヘラー症候群とも呼ばれますが、その原因は現段階では解明されていません。今まで話していた子どもが言葉を話さなくなるなど精神発達の退行が症状として現れますが、脳や神経系の感染症などを発現後に小児期崩壊性障害となるケースも多く、脂質代謝異常や結節性硬化症など、さまざまな疾患と関連があると考えられています。

特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)の原因

特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)の原因は不明とされています。一部では遺伝要因と環境要因による相互作用ではないかと考えられています。自閉症やアスペルガー症候群の診断基準には当てはまらないが、その特徴を一部持っているという場合に診断されることが多い診断カテゴリーのため、その症状や障害の重さも人によってさまざまで、原因も全ての人に当てはまるものはないのではないかと考えられます。

きょうだい(兄弟・姉妹)で広汎性発達障害になる確率は?

広汎性発達障害の一卵性双生児における一致率は70~90%であり、その遺伝率は90%とされている。よって広汎性発達障害は遺伝因子がその発症に大きな役割を果たしていると考えられている。

(橋本亮太、安田由華、大井一高、福本素由己、高村明孝、山森英長、武田雅俊 『モデル動物を用いた発達障害病態解析』 2009年より引用)

出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbp/20/3/20_3_229/_pdf
このように一卵性双生児の場合、高い確率で二人とも広汎性発達障害になるという研究があります。しかし、障害がきょうだい共に発現するかについての具体的な確率の数値はありません。遺伝的要因の可能性が有力視されているのは事実ですが、兄・姉が広汎性発達障害がある場合でも、必ずしも弟・妹が広汎性発達障害を発症するとは限りません。

広汎性発達障害は男女で発現率が違う?

『DSM-5』において、広汎性発達障害(PDD)のほとんどが「自閉症スペクトラム障害(ASD)」に分類されました。レット症候群(障害を除く広汎性発達障害と自閉症スペクトラム障害はほぼ同じ群を指していると言えます。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の統計データによると、自閉症スペクトラム障害は男子で42人に1人・女子で189人に1人という結果が出ており、男子の発現率は女子の発現率の約5倍となっています。アメリカのデータではありますが、世界的に見ても広汎性発達障害は男性の発現率が高いとされています。

また、レット障害(レット症候群)に関してはほとんどが女性に発現します。

広汎性発達障害を検査する方法はあるの?

羊水検査やエコー写真などによって、出生前の妊娠中の段階で広汎性発達障害を検査する方法は今のところありません。原因遺伝子が確定されているレット障害(レット症候群)に関しては、出生後に遺伝子検査ができる場合もあります。しかし、その他の広汎性発達障害については、出生後も血液検査や遺伝子検査といった生理学的な方法で検査することはできません

一般的に子どもになんらかの症状や特性が現れてから、様々な心理検査や知能検査、保護者(親)に対する問診、子ども(本人)の行動観察、学校や家族からの情報提供などによって診断が行われます。診断基準は主に『DSM-5』や『ICD-10』などが用いられます。診断はさまざまな情報や検査の結果から総合的に行われ、経過を見ながら慎重に行われます。

まとめ

広汎性発達障害の発現原因はまだ解明されていない段階で、遺伝的要因や環境要因など様々な研究が進んでいます。近年、レット障害(レット症候群)の主な原因遺伝子が発見されるなど、成果も上がっています。

ですが、今後、遺伝の可能性が判明したり、羊水検査などができるようになったとしても、100%断定できることは遠い未来なのではないかと考えられます。また、遺伝子変異から症状を予測することは現在のところ困難であるともいえます。

そのため、遺伝などの可能性を考えたり原因を探ることは、一人ひとりの支援について考える場合、あまり効果があるとは言えないかもしれません。今、目の前にいる広汎性発達障害のある人がどんな困りごとを抱えているかを考え、一緒に解決していくことが大切ではないでしょうか。そのためにも障害に関する知識を得て、早期に、療育や環境調整といった支援につなげられるように心がけましょう。
自閉症スペクトラムがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)
本田 秀夫 (監修)
講談社
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