自閉症は遺伝する確率があるの?きょうだい、父親、母親との関係は?

2016/07/18 更新
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自閉症は遺伝的な要因の関与の可能性が高いと言われていますが、医学的に証明されている訳ではありません。家族に自閉症の人がいると、遺伝の確率や原因について気になる方も多いと思います。今回は自閉症の遺伝と両親からの遺伝・きょうだい(兄弟・姉妹)との関連性についてお伝えしたいと思います。

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発達障害のキホン
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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員

自閉症とは?

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発達障害の種類と概念図
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自閉症は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴があると言われています。

世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では広汎性発達障害というカテゴリーのもと、自閉症という障害名が使われています。一方、2013年に発行されたアメリカ精神医学会のアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉症のという障害名は廃止され、自閉症スペクトラムの障害名のもとに統合されました。

そのため、今後自閉症という名称での診断は少なくなることが予想されますが、自閉症という名称は現在も一般的であり、また発達障害者支援法などの法律や文部科学省・厚生労働省などでも使用されています。以上をふまえ本記事では、下記の文部科学省の定義で示されるような概念における「自閉症」についてご紹介します。

自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。

出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
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自閉症の原因は何?

様々な議論が交わされていますが、自閉症の原因はいまだ特定されていません。しかし、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられており、しつけや愛情不足といった親の育て方が直接の原因ではないことがわかっています。

脳機能障害を引き起こすメカニズムとして、遺伝的な要因が原因の一部であると推測されています。何らかの先天的な遺伝要因に様々な環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。

関連する遺伝子や環境要因については、現在さまざまな研究が進められていますが特定には至っておらず、また複数の要因や組み合わせが存在すると考えられます。それらがさまざまな道筋をたどって自閉症の特性となって現れると言われているのです。そのため全ての人にあてはまる唯一の原因はないとも考えられています。
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自閉症の原因は?遺伝する確率はあるの?

自閉症は親から子どもへ遺伝するの?確率は?

自閉症に関しては、双生児研究や家族間での一致率に関する研究が活発に行われ、遺伝子が近いほど一致率が高くなる傾向があるといわれています。このことからも、現段階で医学的な根拠はありませんが、自閉症の発現に何らかの遺伝的な要因が関係している可能性が高いと考えられます。

ですが、これまでの研究で自閉症は単一の遺伝子が原因で起こる「メンデル型遺伝疾患」と呼ばれるタイプではなく、複数の遺伝子の変化が影響して起こる「多因子遺伝疾患」であることも推測されています。

つまり親の遺伝子が単純に子どもに遺伝して自閉症になるわけではないということです。自閉症の遺伝要因は原因の一部にすぎず、自閉症のある親から、自閉症ではない子どもが生まれることもあれば、両親とも定型発達の場合でも自閉症のある子どもが生まれることもあるのです。

遺伝する確率については、現在のところ不明です。親が自閉症だった場合で子どもも自閉症である確率も、調査によって数値がまちまちで確かな結果は出ていません。このことも、遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、偶然性に左右される部分が多いことを示唆していると言えるでしょう。

きょうだい(兄弟・姉妹)で自閉症である確率は?

きょうだいに自閉症の人がいる場合はその弟妹も自閉症である確率はあるのでしょうか?きょうだい間での自閉症の一致率に関しては、以下のような報告があります。

一卵性双生児のうちの1人が自閉症の場合に、もう1人も自閉症である割合は、報告によって差がありますが91~96%、二卵性では0~24%と、大きな開きがあります。兄弟姉妹では、1人が自閉症と診断された場合その兄弟姉妹が自閉症である割合は一般よりも高く、5~10%くらいと言われています。

(服部 陵子/著『Q&A家族のための自閉症ガイドブック―専門医による診断・特性理解・支援の相談室』明石書店,2011年/刊 P.19より引用)

出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4750333808/
医学的にはっきりした結論は出ていませんが、遺伝子配列が同じ一卵性双生児で一致率が高いことから、やはり遺伝的要因の関与が推測されます。一方で遺伝子配列が一致しても100%発現するのではないこともわかりました。これは遺伝要因と環境要因の相互影響説の根拠の一つとも言われています。

また、きょうだいに自閉症の人がいる場合、一般より発現率が高くなる傾向があると言われていますが、遺伝的要素が強かったとしても、必ず自閉症が現れるわけではありません。兄・姉の特徴の全てがそっくりそのまま次に産まれてくる子どもに伝わるとは限りません。きょうだいだけでなく両親や祖父や祖母に顔が似ていたり、遺伝子の突然変異により両親にはない特徴が子どもにみられたりなど、受け継がれる要素や表れ方はさまざまです。

もし、きょうだいに自閉症の子どもがいても、本人はそうでないこともあります。またきょうだいに自閉症のある人がいなくても自閉症の子どもが生まれてくる可能性もあるのです。つまり生まれてくるまで自閉症かどうかはわからないのです。

自閉症は男女で発現率が違う?

調査によって数値にばらつきはありますが、自閉症は男性の発現率が女性に比べ高い傾向があると言われています。

男女比は3~4:1で男子に多いと考えられてきたが、近年の調査では男女比の差は少なくなりつつある。

(岡崎祐士/総編集『ICD-10精神科診断ガイドブック』中山書店、2013年/刊 P.587より引用)

出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4521737056/
男性と女性では脳の構造が違うことや、染色体の違いから、男性の方が自閉症の発生率が高いのではないかという説もありますが、原因はまだはっきり分かっていません。

一方、男性と女性では症状にも少し違いがあり、男性は「コミュニケーション能力が低い」「言語の発育不足」などの症状がよりみられるといわれています。ところが女性の場合は男性と比べて症状が軽いので、自閉症であるとわかりくく、気づかないまま暮らしている人もいると推測されます。そのため統計に反映されていないのでは、という可能性も指摘されています。そのため、実際のところ4:1よりは男女差は少ないとする研究者もいます。

自閉症を検査する方法はあるの?

現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査ではわかりません。これは自閉症の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。

自閉症の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいに何らかの症状をきっかけに専門機関を受診し、医師によって自閉症だと診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などの様々な検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いです。

自閉症の原因はまだ解明されていない

現在の医学では、自閉症の原因は完全には解明されていません。自閉症については現在研究がさまざまな角度から盛んに行われ、検査法や治療法を含め原因の解明が切望されています。その中で、遺伝要因と環境要因の相互影響説といった輪郭がおぼろげながら見えてきたといえます。

遺伝するかどうかというのは本人や家族にとって大きな関心事でしょう。また遺伝的要因が関係していると聞くと、不安を感じるかもしれません。しかし、現段階でわかっている範囲でも、自閉症の発現は様々な要因が複雑に影響しあい、いわば偶然性が大きいといえるのです。少なくとも「遺伝のせいで自閉症が発現した」というのは正確ではありませんし、単純に親から子へと遺伝するのではないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。また「親の育て方のせい」というのも医学的に否定されています。

自閉症は早期に症状に気づき、早期に療育や環境調整といった支援を始めることで、本人の生きづらさがかなり緩和できることがわかっています。個々のケースにとって原因をあれこれと追及し悩むことは、子どもの成長や支援にとってはあまり有益ではないかもしれません。周りや本人が適切な対処法を学ぶことによって、どうすれば本人にとって生きやすい環境が作れるかを考えていきましょう。
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自閉症スペクトラムがよくわかる本
本田 秀夫 (監修)
講談社
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