広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の人の仕事の探し方

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の人が仕事を探す場合、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)でない人と同じ方法で探す方法もありますが、特に診断を受けている人は、公的な支援などを受けることも検討してみましょう。

■ハローワーク・地域障害者職業センターを活用する
まず、最寄のハローワークでの相談をおすすめします。ハローワークには障害者のための専門職員や相談員が配置されています。窓口は障害者雇用の窓口になります。そこでご自身の障害や特性について伝え、仕事を探していること、仕事で不安に感じていることなどの相談をします。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。

自分で探したいという方は、ハローワークに障害者専用のインターネット検索も設けられています。まずはそちらで探してみて、やってみたい仕事があれば相談するという手順もよいでしょう。

「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べられるところも紹介してもらえます。

就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、自治体や、自治体の指定を受けた事業者が、就労移行支援事業所を運営しています。この就労移行支援は障害者手帳を取得していなくても支援を受けることができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。
また、就労移行支援事業所を探す際には、複数の事業所を掲載した検索サイトなども参考にすることができます。
参考:LITALICO仕事ナビ 全国の就労移行支援事業所
https://snabi.jp/ikou
就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の人は他人とのコミュニケーションが苦手なため、ジョブコーチの存在は本人にとっても会社にとっても仕事を円滑に進める手助けとなります。事業主に対する相談や援助も行なってくれるので、ハローワークや地域障害者職業センターを通して仕事を探す方法がおすすめです。
参考:若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム|厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/11/dl/s1106-3c_0002.pdf
障害者就業・生活支援センター
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000146182.pdf
発達障害者支援センター:出典 国立障害者リハビリテーションセンター
http://www.rehab.go.jp/ddis/
■障害者雇用制度を利用する
精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得している場合、いわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。

・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる
・障害者職場適応訓練を受けられる 
など、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。

ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからと言って必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。
平成30年度障害者雇用実態調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05390.html

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の会社への報告

会社へ広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)であることを報告するかどうかはとてもデリケートな問題です。会社に報告する人が多くなってきていることは事実ですが、周りや会社には報告しないことを選択している人も少なくありません。しかし報告をすることによって周りからの理解が得られ、離職率が低下するということも考えられます。

報告した際のメリットとしては、サポートを受けやすくなったり、フォローしてもらえるようになるということがまずあげられます。また業務の相談もしやすくなると思いますし、以前より職場環境を快適に感じることにつながるかもしれません。しかし中には偏見を持ったり、あまり障害に対して理解をしてくれない人もいると思います。そのため、障害があるという報告をする場合は人を選んで報告し、仕事のどういうところで具体的にフォローが必要かを伝えるのが良いと思います。

どのように報告すべき?

会社や同僚へ障害の報告をする場合は、下記のポイントに注意して行うようにしましょう。

■手順
・まずは信頼できる直接の上司や同僚に相談し、どの範囲の人たちに公表するのかを決める
・自分がどのような障害でどんなサポートが必要かを簡潔に報告する

■伝える点
(例)
・人間関係が上手に構築できない場合があること
・会話を表面通りに受け取りやすい、明確な支持がないと行動しづらいこと
・一つに集中すると、周りが見えなくなりやすいこと
・スケジュール管理やタスク管理が苦手なこと
・自分では気がついていない点があるため、注意や支持を促してほしいこと など

人によって特性が異なるため、あくまで自分の特性に応じた内容を伝えるようにしましょう。

■注意するべき点
(例)
・障害だからサポートしてもらって当たり前といった、一方的な報告にならないこと
・障害の理解、把握を報告したら、自分なりの解決策を提示すること
・その解決策が正しいかどうか、上司や同僚に確認してもらうこと
・仕事が好きなこと、挑戦してみたいこと、そのためにはどうしたらよいのか具体的な目標を一緒に考えてもらう など

どんなことが苦手で、仕事をする上で困っているか、どんな配慮やサポートがあれば力を発揮できるか、事前によく考え、具体的に伝えるとよいでしょう。

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の仕事での困りごとと対処法

急な予定変更に対応できない

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の人は急な変化や変更が苦手な傾向にあります。しかし、どのような仕事でも予定変更はあるでしょう。そのため、周囲に説明するなど、事前に適切な対処法を取りましょう。

【対処法】上司や同僚に予定変更が分かった時点で必ず報告してもらうようにお願いをしたり、できるだけ急な変更がないように相談しましょう。席替えなどの環境変化が苦手な場合には、同じ席にしてもらうことが可能か、相談してみましょう。

仕事においては困難な場面に遭遇することも多いので、まずは広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)について周りに理解を深めてもらうことが大切です。相談するのを怖がらずに、自分にとって働きやすい環境を作れるように周りの人に協力してもらいましょう。

こだわりが強く納期に間に合わない

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)には一つのことが気になり出すと、いつまでも頭から離れないという特徴があります。こだわりが強いために自分の思い通りに仕事ができないとなかなか仕事を進められず、納期に間に合わないこともあります。

【対処法】タイマーやアラームを利用して、「◯◯は◯時までに終わらせる」と紙に書いて目のつく所に貼りましょう。時間管理を工夫して、自分が時間を意識しながら仕事を進められる環境を作りましょう。また、自分でスケジュールを作成するのが苦手な場合は、他の人に進捗目標などのスケジュールを作ってもらうなどの協力を依頼してみましょう。

社交辞令や暗黙の了解が分からない

コミュニケーションや想像力に障害があるため、社交辞令や暗黙の了解、お世辞や皮肉などの曖昧な表現の理解が難しい人もいます。

【対処法】職場の人に広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)について理解してもらうことが一番重要です。具体的な指示を出してもらったり、はっきり言葉や文字にして伝えてもらうよう周りに働きかけることが大切です。また、自分が苦手なことを理解して、社交辞令やお世辞についてはどうすればいいのか他の人に教えてもらったり、言葉の解釈をパターンで覚えてみる、など自分にとってわかりやすい方法で勉強してみるのも一つかもしれません。

複数の指示を上手くこなせない

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の人の中には、同時に複数の物事を考えることが苦手な人もいます。業務が重なってしまうと、何から手をつけていいのかわからなくなってしまいます。

【対処法】やることリストを作り、優先順位をつけて目に見える所に貼るなどの工夫をしてみましょう。また、1つの仕事が終わってから次の仕事の指示を出してもらうことが可能か、上司に相談してみるのもよいでしょう。自分にも上司にもわかりやすいように、進捗や日々の目標設定などを日報で管理すると仕事が進みやすい場合もあります。
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