【大人の広汎性発達障害】仕事での困りごと・対処法まとめ

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広汎性発達障害の方の中にも働いている方はたくさんいます。どのような仕事に就いているのでしょうか?どのような困難に直面し、どのように対応しているのでしょうか?広汎性発達障害に向いている仕事や向いていない仕事、仕事の探し方や困りごとに対する対処法などをまとめました。

発達障害のキホン
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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
目次 広汎性発達障害で働いている人はどのくらいいる? 大人の広汎性発達障害、いつ診断された?きっかけは? 広汎性発達障害の人が向いている仕事は?向いていない仕事とは? 広汎性発達障害の人の仕事の探し方 広汎性発達障害の会社への報告 広汎性発達障害の仕事での困りごとと対処法 まとめ

広汎性発達障害で働いている人はどのくらいいる?

現在働いている広汎性発達障害の人についてくわしい統計やデータはありません。しかし、厚生労働省がまとめた「平成25年度障害者雇用実態調査」によると、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は身体障害者が43万3,000人(前回34万6,000人)、知的障害者が15万人(前回7万3,000人)、精神障害者が4万8,000人(前回2万9,000人)となっています。前回の20年度の調査に比べると、障害者の雇用数は年々増加傾向にあることが分かります。

これらは広汎性発達障害に関する調査ではありませんが、広汎性発達障害の中には知的障害や精神障害を抱える方もいますので、上記調査に含まれている方もいます。そのため、広汎性発達障害を抱えながら働いている人も年々増えていると言えるでしょう。

また就職率は年度によってかなりばらつきがありますが、「新規求職申込件数」は2005年から2010年までにおいて増加傾向にあります。その中でもアスペルガー症候群は約4倍、またそのほかの自閉症とアスペルガー症候群を併発している人・広汎性発達障害の診断を受けている人は約11倍もの新規求職申込件数となりました。このことから、働きたい人、また実際に就職する人も増えていると考えられます。

大人の広汎性発達障害、いつ診断された?きっかけは?

私の息子が同じく広汎性発達障害者です。本人はうすうす自分がそうであると思っていたようですが、最近専門医にかかって、診断されました。専門医にかかったのは、就職した先で自己嫌悪に苦しんで自分を追い詰めて、適応障害になって休職をしたのがきっかけです。(要は二次障害ですよね)今は同じ職場で復帰訓練中です。

出典:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13133316963
適切な治療やサポートを受けられない場合、広汎性発達障害の主症状とは異なる合併症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような症状や状態を、一般的には「二次障害」と言うこともあります。これには、うつ病、不安障害、不登校やひきこもり、アルコールなどの依存症などが含まれます。

広汎性発達障害者の人の中には大人になるまで気づかない人も多いのですが、気づくきっかけとなるのは、仕事の環境に適応できず不安障害、うつ病などの気分障害、睡眠障害などに陥ってしまう、いわゆる二次障害の発現です。それらをきっかけに心療内科などを受診し、広汎性発達障害と診断される場合もあります。

大人になってから診断される人の多くは、子どもの頃から自分と他人の違いに違和感をもっていたり、他人と比べて上手くできない経験があり、それらを理由に自ら検査を受けに行く人も多いです。

兄が広汎性発達障害です。3歳頃から学習障害と診断され、その後大人になってから広汎性発達障害と診断されたそうです。

出典:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13118500253
小さい頃には違う障害名で診断されていて、大人になってから広汎性発達障害と診断された人もいます。発達障害の診断は難しく、その症状が重複することもあり、病院によって違う診断を下されたという人もいます。また、成長によって言語能力や運動能力などが発達し、定期的に受ける検査で診断名が変わることも多くあるので、変化を感じた時や違和感・気になったタイミングで再受診することもいいかもしれません。

広汎性発達障害の人が向いている仕事は?向いていない仕事とは?

広汎性発達障害の人が向いている仕事

広汎性発達障害の人の中には、こだわりを持ち、パターン化されたものを好む人が傾向としては多いそうです。そのため、同じ作業を繰り返すルーティンワークで強みを発揮する場合があります。一度仕事のやり方を覚えると効率よくこなす人も多く、職場で高評価を受けることが多いのもこのルーティンワークです。

併存する知的障害の重さや一人一人の特性にもよりますが、職種としては工場作業や組み立て・梱包、スーパーマーケットの品出し、レストランやファストフード店での食器洗い、クリーニングや清掃業務、データ入力などが挙げられます。また、ある特定分野で天才的な能力を持つ人も多く、芸術家や学者、研究者として活躍している人もいます。

障害者の人が参加する「全国障害者技能競技大会」通称「アビリンピック」に出場する人の能力は、障害の無い人と比べても高いと言われており、その能力を活かして仕事をしている人もいるそうです。受賞者の多くがそれらを活かし、一般企業で働いています。

広汎性発達障害の人が向いていない仕事

急な予定変更や臨機応変な対応が苦手なため、接客業などは向いていないと感じる人も多いと考えられます。もちろん中には人と接することが好きで楽しみながら接客業をされている人もいます。また、長文の会話を理解するのに時間がかかったり、暗黙の了解や曖昧な表現が苦手なことから、会話を必要とする職業は一般的に不向きと言えます。

例えば、営業職などは高度な会話スキルや対人スキルを必要とします。スケジュールも固定されていないため臨機応変な対応が必要となり、苦手と感じる方が多いようです。大人になるまで広汎性発達障害と気づかなかった人の中には、営業職に就職したけれどうまくいかず、周りからすすめを受けて病院で検査した方もいます。

広汎性発達障害の人の仕事の探し方

広汎性発達障害の人が仕事を探す場合、広汎性発達障害でない人と同じ方法で探す方法もありますが、特に診断を受けている人は、公的な支援などを受けることも検討してみましょう。

■ハローワーク・地域障害者職業センターを活用する
まず、最寄のハローワークでの相談をおすすめします。ハローワークには障害者のための専門職員や相談員が配置されています。窓口は障害者雇用の窓口になります。そこでご自身の障害や特性について伝え、仕事を探していること、仕事で不安に感じていることなどの相談をします。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。

自分で探したいという方は、ハローワークに障害者専用のインターネット検索も設けられています。まずはそちらで探してみて、やってみたい仕事があれば相談するという手順もよいでしょう。

「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べられるところも紹介してもらえます。

就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、自治体や、自治体の指定を受けた事業者が、就労移行支援事業所を運営しています。この就労移行支援は障害者手帳を取得していなくても支援を受けることができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。
また、就労移行支援事業所を探す際には、複数の事業所を掲載した検索サイトなども参考にすることができます。
就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。広汎性発達障害の人は他人とのコミュニケーションが苦手なため、ジョブコーチの存在は本人にとっても会社にとっても仕事を円滑に進める手助けとなります。事業主に対する相談や援助も行なってくれるので、ハローワークや地域障害者職業センターを通して仕事を探す方法がおすすめです。
■障害者雇用制度を利用する
精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得している場合、いわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。

・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる
・障害者職場適応訓練を受けられる 
など、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。

ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからと言って必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。

広汎性発達障害の会社への報告

会社へ広汎性発達障害であることを報告するかどうかはとてもデリケートな問題です。会社に報告する人が多くなってきていることは事実ですが、周りや会社には報告しないことを選択している人も少なくありません。しかし報告をすることによって周りからの理解が得られ、離職率が低下するということも考えられます。

報告した際のメリットとしては、サポートを受けやすくなったり、フォローしてもらえるようになるということがまずあげられます。また業務の相談もしやすくなると思いますし、以前より職場環境を快適に感じることにつながるかもしれません。しかし中には偏見を持ったり、あまり障害に対して理解をしてくれない人もいると思います。そのため、障害があるという報告をする場合は人を選んで報告し、仕事のどういうところで具体的にフォローが必要かを伝えるのが良いと思います。

どのように報告すべき?

会社や同僚へ障害の報告をする場合は、下記のポイントに注意して行うようにしましょう。

■手順
・まずは信頼できる直接の上司や同僚に相談し、どの範囲の人たちに公表するのかを決める
・自分がどのような障害でどんなサポートが必要かを簡潔に報告する

■伝える点
(例)
・人間関係が上手に構築できない場合があること
・会話を表面通りに受け取りやすい、明確な支持がないと行動しづらいこと
・一つに集中すると、周りが見えなくなりやすいこと
・スケジュール管理やタスク管理が苦手なこと
・自分では気がついていない点があるため、注意や支持を促してほしいこと など

人によって特性が異なるため、あくまで自分の特性に応じた内容を伝えるようにしましょう。

■注意するべき点
(例)
・障害だからサポートしてもらって当たり前といった、一方的な報告にならないこと
・障害の理解、把握を報告したら、自分なりの解決策を提示すること
・その解決策が正しいかどうか、上司や同僚に確認してもらうこと
・仕事が好きなこと、挑戦してみたいこと、そのためにはどうしたらよいのか具体的な目標を一緒に考えてもらう など

どんなことが苦手で、仕事をする上で困っているか、どんな配慮やサポートがあれば力を発揮できるか、事前によく考え、具体的に伝えるとよいでしょう。

広汎性発達障害の仕事での困りごとと対処法

急な予定変更に対応できない

広汎性発達障害の人は急な変化や変更が苦手な傾向にあります。しかし、どのような仕事でも予定変更はあるでしょう。そのため、周囲に説明するなど、事前に適切な対処法を取りましょう。

【対処法】上司や同僚に予定変更が分かった時点で必ず報告してもらうようにお願いをしたり、できるだけ急な変更がないように相談しましょう。席替えなどの環境変化が苦手な場合には、同じ席にしてもらうことが可能か、相談してみましょう。

仕事においては困難な場面に遭遇することも多いので、まずは広汎性発達障害について周りに理解を深めてもらうことが大切です。相談するのを怖がらずに、自分にとって働きやすい環境を作れるように周りの人に協力してもらいましょう。

こだわりが強く納期に間に合わない

広汎性発達障害には一つのことが気になり出すと、いつまでも頭から離れないという特徴があります。こだわりが強いために自分の思い通りに仕事ができないとなかなか仕事を進められず、納期に間に合わないこともあります。

【対処法】タイマーやアラームを利用して、「◯◯は◯時までに終わらせる」と紙に書いて目のつく所に貼りましょう。時間管理を工夫して、自分が時間を意識しながら仕事を進められる環境を作りましょう。また、自分でスケジュールを作成するのが苦手な場合は、他の人に進捗目標などのスケジュールを作ってもらうなどの協力を依頼してみましょう。

社交辞令や暗黙の了解が分からない

コミュニケーションや想像力に障害があるため、社交辞令や暗黙の了解、お世辞や皮肉などの曖昧な表現の理解が難しい人もいます。

【対処法】職場の人に広汎性発達障害について理解してもらうことが一番重要です。具体的な指示を出してもらったり、はっきり言葉や文字にして伝えてもらうよう周りに働きかけることが大切です。また、自分が苦手なことを理解して、社交辞令やお世辞についてはどうすればいいのか他の人に教えてもらったり、言葉の解釈をパターンで覚えてみる、など自分にとってわかりやすい方法で勉強してみるのも一つかもしれません。

複数の指示を上手くこなせない

広汎性発達障害の人の中には、同時に複数の物事を考えることが苦手な人もいます。業務が重なってしまうと、何から手をつけていいのかわからなくなってしまいます。

【対処法】やることリストを作り、優先順位をつけて目に見える所に貼るなどの工夫をしてみましょう。また、1つの仕事が終わってから次の仕事の指示を出してもらうことが可能か、上司に相談してみるのもよいでしょう。自分にも上司にもわかりやすいように、進捗や日々の目標設定などを日報で管理すると仕事が進みやすい場合もあります。

まとめ

広汎性発達障害の人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。中には、職場の方から虐待をうけてしまうこともあります。本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、虐待に気づいた場合、周りの人が障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能ですし、またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。

障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。

広汎性発達障害だからといって、仕事ができないわけではありません。広汎性発達障害の人の中にも、働いている人はたくさんいます。大切なことは、自分の特性を理解し、またそれを周囲に理解してもらうことで、自分に最適な働き方を見つけることです。

広汎性発達障害の特性は人によって様々なので、自分の得意・不得意に合った仕事や働く環境を見つけることが大切になります。ハローワークや障害者職業センターを通して障害者枠で就職したり、ジョブコーチをつけてもらうなど、うまく地域のリソースを使いながら、あなたにとって働きやすい仕事や環境を探してみましょう。
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