発達障害は遺伝するの?親子、きょうだいに発達障害がある場合【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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発達障害は脳の機能的な問題が関係して生じる疾患で、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)などの種類があります。
発達障害の原因は現在のところ明確になっていませんが、きょうだいや双子などの研究により遺伝的な要因が関係していると考えられています。
このコラムではさまざまな統計や研究結果を踏まえ、発達障害と遺伝の関係について解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

発達障害とは? 発達障害の原因は?

発達障害の種類と概念図
発達障害の種類と概念図
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発達障害とは、脳の機能的な問題が関係して生じる疾患で、学習面や行動面などで年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルの獲得が難しいことにより、日常生活や社会生活において障害が起こっていることを指します。その症状は、低年齢の発達期において発現することが多くあります。

発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けてASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)の3つに分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)に知的障害(知的発達症)を併存している場合もあります。

(障害名の表記について)
ASD(自閉スペクトラム症)……以前は「自閉症」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事ではASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。

ADHD(注意欠如多動症)……以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事ではADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

LD・SLD(限局性学習症)……学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。
発達障害を図解つきで分かりやすく説明!分類や原因や相談先、診断など【専門家監修】のタイトル画像

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発達障害の医学的な原因は完全には分かっていません

発達障害のある人にはさまざまな特性があり、コミュニケーションや行動面で困りごとが生じることも多くあります。しかし、周囲の人にとって発達障害自体が分かりにくいことから、トラブルがあったときなどにしつけ不足や育て方のせいだと誤解されることがあります。

しかし、しつけ不足や愛情不足、育て方が直接の原因ではないことが分かっています。現在、発達障害の医学的な原因ははっきりと解明されているわけではありませんが、多くの研究から発達障害は脳の機能障害によるものとされています。

脳機能障害を引き起こすメカニズムは、何らかの先天的な遺伝要因にさまざまな環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。

たとえばASD(自閉スペクトラム症)の関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。

発達障害と遺伝の関係は?原因となる遺伝子はあるの?

発達障害の原因に関しては現在も研究が続けられていますが、遺伝も一つの要因と考えられています。といっても、特定の遺伝子があれば必ず発達障害が生じるわけではありません。

これまでの研究から、発達障害は単一の遺伝子が原因で起こる「メンデル型遺伝疾患」と呼ばれるタイプではなく、複数の遺伝子と環境要因が影響して起こる「多因子遺伝疾患」であることが推測されています。

発達障害は父親、母親から子へと遺伝するの?

発達障害の親子間の遺伝についても研究がされいます。なお、親に発達障害があったとしても、確実に子どもに遺伝するわけではないとされています。

先述したように発達障害の遺伝要因は原因の一部にすぎません。発達障害のある親から発達障害ではない子どもが生まれることもあれば、両親とも定型発達の場合にも発達障害のある子どもが生まれることもあります。

なお、親から子へと遺伝する確率については、現在のところ不明です。親に発達障害がある場合で子どもも発達障害である確率も、調査によって数値がまちまちで確かな結果は出ていません。このことも、遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、偶然性に左右される部分が多いことを示唆していると言えるでしょう。

きょうだいに発達障害がある場合、遺伝の確率は?

きょうだいや、双子の場合の発達障害がある確率についてもさまざまな研究が行われています。

ASD(自閉スペクトラム症)のある研究においては、遺伝子が一致する一卵性双生児の場合は一人にASD(自閉スペクトラム症)がある場合はもう一人も50~85%の確率でASD(自閉スペクトラム症)があるという結果も出ています。

しかし、遺伝子が完全一致しない二卵性双生児の場合は約20%と数値に大きく開きがあります。このことから、遺伝子が近いことが発達障害の要因となると考えられています。

ただし、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも100%の確率で発現するわけではないため、遺伝要因以外に環境要因も深く関わっていると推測されています。

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