発達障害は遺伝するの?親子、きょうだいに発達障害がある場合【専門家監修】

ライター:医師・専門家監修|発達障害・支援のキホン
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28208000016

発達障害は脳の機能的な問題が関係して生じる疾患で、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)などの種類があります。
発達障害の原因は現在のところ明確になっていませんが、きょうだいや双子などの研究により遺伝的な要因が関係していると考えられています。
このコラムではさまざまな統計や研究結果を踏まえ、発達障害と遺伝の関係について解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

発達障害とは? 発達障害の原因は?

発達障害の種類と概念図
発達障害の種類と概念図
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発達障害とは、脳の機能的な問題が関係して生じる疾患で、学習面や行動面などで年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルの獲得が難しいことにより、日常生活や社会生活において障害が起こっていることを指します。その症状は、低年齢の発達期において発現することが多くあります。

発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けてASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)の3つに分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)に知的障害(知的発達症)を併存している場合もあります。

(障害名の表記について)
ASD(自閉スペクトラム症)……以前は「自閉症」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事ではASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。

ADHD(注意欠如多動症)……以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事ではADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

LD・SLD(限局性学習症)……学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。
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発達障害の医学的な原因は完全には分かっていません

発達障害のある人にはさまざまな特性があり、コミュニケーションや行動面で困りごとが生じることも多くあります。しかし、周囲の人にとって発達障害自体が分かりにくいことから、トラブルがあったときなどにしつけ不足や育て方のせいだと誤解されることがあります。

しかし、しつけ不足や愛情不足、育て方が直接の原因ではないことが分かっています。現在、発達障害の医学的な原因ははっきりと解明されているわけではありませんが、多くの研究から発達障害は脳の機能障害によるものとされています。

脳機能障害を引き起こすメカニズムは、何らかの先天的な遺伝要因にさまざまな環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。

たとえばASD(自閉スペクトラム症)の関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。

発達障害と遺伝の関係は?原因となる遺伝子はあるの?

発達障害の原因に関しては現在も研究が続けられていますが、遺伝も一つの要因と考えられています。といっても、特定の遺伝子があれば必ず発達障害が生じるわけではありません。

これまでの研究から、発達障害は単一の遺伝子が原因で起こる「メンデル型遺伝疾患」と呼ばれるタイプではなく、複数の遺伝子と環境要因が影響して起こる「多因子遺伝疾患」であることが推測されています。

発達障害は父親、母親から子へと遺伝するの?

発達障害の親子間の遺伝についても研究がされいます。なお、親に発達障害があったとしても、確実に子どもに遺伝するわけではないとされています。

先述したように発達障害の遺伝要因は原因の一部にすぎません。発達障害のある親から発達障害ではない子どもが生まれることもあれば、両親とも定型発達の場合にも発達障害のある子どもが生まれることもあります。

なお、親から子へと遺伝する確率については、現在のところ不明です。親に発達障害がある場合で子どもも発達障害である確率も、調査によって数値がまちまちで確かな結果は出ていません。このことも、遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、偶然性に左右される部分が多いことを示唆していると言えるでしょう。

きょうだいに発達障害がある場合、遺伝の確率は?

きょうだいや、双子の場合の発達障害がある確率についてもさまざまな研究が行われています。

ASD(自閉スペクトラム症)のある研究においては、遺伝子が一致する一卵性双生児の場合は一人にASD(自閉スペクトラム症)がある場合はもう一人も50~85%の確率でASD(自閉スペクトラム症)があるという結果も出ています。

しかし、遺伝子が完全一致しない二卵性双生児の場合は約20%と数値に大きく開きがあります。このことから、遺伝子が近いことが発達障害の要因となると考えられています。

ただし、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも100%の確率で発現するわけではないため、遺伝要因以外に環境要因も深く関わっていると推測されています。
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発達障害は男女で発現率が違うの?

医学的には、実際には発達障害の発現率は、男性の方が多いといわれていますが、割合や発生理由に関しては、諸説あるとされています。近年、女性の発達障害については表れる症状や特性に男性とは違いがあり、発達障害の状態像にも性差があるからではないかとする説もあり、研究が進められています。

以下が、「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD・SLD(限局性学習症)」それぞれの男女の発現率に関して現段階で分かっていることです。
■ASD(自閉スペクトラム症)

男女比は4:1で男子に多いと考えられてきましたが、最近の研究によると、女性の脳の構造として、男性よりも多くの遺伝変異の耐性があることが発現率に影響しているのではないかともいわれています。また、男性と女性では症状にも違いがあるのではないかと考えられています。女性の場合、幼児期にはASD(自閉スペクトラム症)の特性が目立っていても、発達に伴い特性が目立たなくなるという研究結果もあります。
参考:Impact of autism genetic risk on brain connectivity: a mechanism for the female protective effect
https://academic.oup.com/brain/article-abstract/145/1/378/6288451?login=true
参考:A behavioral comparison of male and female adults with high functioning autism spectrum conditions
https://www.nise.go.jp/cms/resources/content/7056/seika13.pdf
■ADHD(注意欠如多動症)

学童期にADHD(注意欠如多動症)と診断される子どもの割合は男の子のほうが女の子よりも多く3:1~5:1の比率といわれています。男の子は多動の症状が多く見られており、女の子は不注意の症状が多く見られています。この症状の差から女の子の場合、ADHD(注意欠如多動症)の症状が分かりづらいため、見逃されてしまうことも少なくありません。そのため、この男女の比率の差は、実際はもう少し小さいのではないかともいわれています。成人期でのADHD(注意欠如多動症)の男女比は1:1に近いといわれています。しかし、このような性差の理由はまだはっきりとは解明されていません。
参考:Gender differences in adult ADHD: Cognitive function assessed by the test of attentional performance
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7561166/
■LD・SLD(限局性学習症)

LD・SLD(限局性学習症)は男女どちらにも発現する可能性のある障害ですが、男性に発現する確率の方が高いことが分かっています。発表されているデータの数値は調査によってまちまちですが、その発現率は女性の約2~3倍であるというデータも発表されています。男性はその中でも読字障害が多く、その確率は女性の数倍ともいわれています。ですが、男性にLD・SLD(限局性学習症)が多い理由は分かっていません。
参考:The Prevalence and Gender Differences in Specific Learning Disorder
https://www.intechopen.com/chapters/70206

発達障害を診断する方法

現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で発達障害が判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では分かりません。これは、発達障害の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。また、生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいともいわれています。

発達障害の人の多くが幼児の頃から12歳くらいまでの間に何らかの症状をきっかけに専門機関を受診し、医師によって診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などのさまざまな検査を総合的に判断して行われます。そのほかには、MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断されます。

医療機関では、多くの場合は、精神医学的な診断基準に基づき、保護者や本人に問診に問診をしたり直接行動観察をしたりして、症状から判定します。アメリカ精神医学会の『DSM-5-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版改訂版)を用いて診断が行われます。また、必ずしも1つの障害しかないということではなく、複数の障害を併発している可能性もあります。

それぞれの障害の診断基準にとって診断されることが基本ですが、基準の解釈には医師によってばらつきが生じることもあります。ばらつきの原因として、診察では医師が子どもの様子を観察しますが、診察室は子どもにとって非日常的な空間のため、普段と様子が違うことが考えられます。
乳幼児期の診断はとても難しい場合があります。正確な診断のためには日常生活の様子などをくわしく医師に伝えることも大切です。
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発達障害とは?特徴・症状・分類や診断方法について【専門家監修】

困りごとを減らすために

発達障害のある子どもは行動やコミュニケーションなどに特性があり、日常生活や集団生活でさまざまな困りごとが生じるといわれます。

困りごとを減らすには、家庭だけで対応するのではなく専門機関への相談や支援を活用していくことが大切です。

発達障害の相談先

地域には発達障害について相談できる窓口が設置されています。

主なものとして、
●子ども家庭支援センター
●児童相談所
●市町村保健センター
●発達障害者支援センター
●児童発達センター
などがあります。また、このほかにも自治体の子育て窓口でも相談できる場合があります。自治体のホームページに掲載されていますので、確認してみるとよいでしょう。

相談窓口では発達障害における困りごと解消のためのアドバイスや、児童発達支援などの支援機関の紹介をしてもらうことができます。

発達障害の支援

発達障害のある子どものへの支援として、児童発達支援や放課後等デイサービス、特別支援教育があります。

児童発達支援と放課後等デイサービスは発達障害など障害のある子どもを対象とした通所型の支援のことで、日常生活や集団生活に適応するためのプログラム提供などのサポートをしています。未就学児が児童発達支援、就学児が放課後等デイサービスの対象となります。

それぞれ詳しくは以下の記事をご覧ください。
児童発達支援とは?サービスや費用、手続きの流れなど【専門家監修】のタイトル画像

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特別支援教育は学校における支援制度のことで、障害のある子どもを対象として特性に合わせた教育が行われます。特別支援学校、特別支援学級、通級による指導などの種類があり、就学相談を通して子どもに適した学び方を選んでいきます。

就学相談については以下の記事もご覧ください。
就学相談とは?通常学級・通級・特別支援学級・特別支援学校について【専門家監修】のタイトル画像

就学相談とは?通常学級・通級・特別支援学級・特別支援学校について【専門家監修】

まとめ

発達障害を発症する要因は一つではなく、遺伝や環境などさまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

少なくとも「遺伝のせいで発達障害が発現した」というのは正確ではありませんし、単純に親から子へと遺伝するのではないことが研究の結果にも示されています。

目の前の子どもにとって大切なことは、どうしたら本人の困りごとが減らせるか、特性を生かしていけるかという対応方法を考えてみることです。そのためにも一人で悩むのではなく、地域の専門機関への相談や支援を活用していくとよいでしょう。
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