発達障害と遺伝の関係は?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン

発達障害に関する研究は今も続いており、遺伝的な要因も関連しているという結果もあります。さまざまな統計や研究結果を踏まえ、発達障害と遺伝の関係について見ていきましょう。

監修者井上雅彦のアイコン
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。
目次

発達障害とは

発達障害の種類と概念図
発達障害の種類と概念図
Upload By 発達障害のキホン
発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、学習面や行動面などで年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルの獲得が難しいことで起きる障害を指します。その症状は、低年齢の発達期において発現することが多くあります。


発達障害の定義は日本では平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。

※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。

発達障害とは、発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。
出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm
発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD(学習障害/限局性学習症)」の3つに分類されます。ASDやADHDなどの発達障害がある人の中には、知的障害(知的発達症)を併存している場合もあります。


※「LD(学習障害)」は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、一般的には最新版DSM-5以前の診断名である「LD(学習障害)」と呼ばれることが多くあるため、ここでは「LD(学習障害/限局性学習症)」と表記します。

※「広汎性発達障害」に含まれていたと自閉スペクトラム症やアスペルガー症候群などは、のコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と同様に『ICD-11』では「自閉スペクトラム症(ASD)」の分類に統合されています。

発達障害を図解つきで分かりやすく説明!分類や原因や相談先、診断など【専門家監修】のタイトル画像

発達障害を図解つきで分かりやすく説明!分類や原因や相談先、診断など【専門家監修】

発達障害の医学的な原因は完全には分かっていません

発達障害にはさまざまな障害が含まれます。身体障害などとは違い、周囲の人にとって発達障害自体が分かりにくいことから、特性から本人ができないことやとトラブルがあったときなどにしつけ不足や愛情が足りていないせいだ、育て方が悪いからだと誤解されることがあります。

しかし、しつけ不足や愛情不足、育て方が直接の原因ではないことが分かっています。現在、発達障害の医学的な原因ははっきりと解明されているわけではありませんが、多くの研究から発達障害は先天的な脳の機能障害によるものとされています。

脳機能障害を引き起こすメカニズムとして、遺伝的な要因が一部にあるとも推測されています。何らかの先天的な遺伝要因にさまざまな環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。

たとえば自閉スペクトラム症の関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。

ただし、かつて広汎性発達障害というカテゴリーに含まれていたレット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。そのため自閉スペクトラム症の概念から除外されました。

現在、そのほかの発達障害についても関連する遺伝子や環境要因に関して、それぞれ研究が進められていますが特定には至っていません。またその遺伝子も一つではなく、複数の要因や組み合わせが存在すると考えられます。それらがさまざまな道筋をたどって発達障害の特性となって現れると言われているのです。そのため全ての発達障害のある人にあてはまる唯一の原因はないとも言えるのです。
発達障害の原因は?広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害それぞれ原因に違いはあるの?【専門家監修】のタイトル画像

発達障害の原因は?広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害それぞれ原因に違いはあるの?【専門家監修】

発達障害の二次障害とは?原因や症状、対応方法について詳しく解説します【専門家監修】のタイトル画像

発達障害の二次障害とは?原因や症状、対応方法について詳しく解説します【専門家監修】

発達障害は親から子へと遺伝するの?

親から子へと遺伝する遺伝的要因はあるのでしょうか?

発達障害に関しては、家族間での一致率に関する研究行われ、遺伝子が近いほど一致率が高くなる傾向があるとは言われています。障害のある人がいる家系の場合、ない家系より発現しやすい傾向があるということですが、これもまだ研究段階ではっきりと確率が出ているわけではありません。

家族間では遺伝による体質と、生育環境が似ているため、このような傾向が出るのではないかと考えられていますが、体質や環境要因が相互に、複雑に影響して発現するのではないかと言われています。

これまでの研究で発達障害は単一の遺伝子が原因で起こる「メンデル型遺伝疾患」と呼ばれるタイプではなく、複数の遺伝子の変化が影響して起こる「多因子遺伝疾患」であることも推測されています。

つまり、親の遺伝子が単純に子どもに遺伝して発達障害が起こるわけではないということです。発達障害の遺伝要因は原因の一部にすぎず、発達障害のある親から発達障害ではない子どもが生まれることもあれば、両親とも定型発達の場合にも発達障害のある子どもが生まれることもあるのです。

この親から子へと遺伝する確率については、現在のところ不明です。親に発達障害がある場合で子どもも発達障害である確率も、調査によって数値がまちまちで確かな結果は出ていません。このことも、遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、偶然性に左右される部分が多いことを示唆していると言えるでしょう。

きょうだいで発達障害がある確率は?

きょうだいや、双子の場合の発達障害がある確率についてもさまざまな研究が行われています。
研究の結果から発達障害はきょうだいで発現する確率がないとは言い切れないということが分かってます。また、同じ遺伝子を共有した生まれてきた一卵性双生児の場合でも一人に発達障害があっても、もう一人に100%の確率で発現するわけではないことも分かりました。

追加する

バナー画像


年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。