発達障害は遺伝する確率があるの?きょうだい、父親、母親との関係は? 男女での発生率は?

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発達障害の原因は遺伝的要因が関連しているといわれています。では、発達障害は遺伝する確率があるのか、父親・母親との関係性も気になると思います。また、きょうだいの両方が発達障害なる可能性はあるのでしょうか?さまざまな統計や研究結果を踏まえ、発達障害と遺伝の関係について見ていきましょう。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
目次 発達障害とは 発達障害の原因は? 発達障害は親から子へと遺伝するの? きょうだいで発達障害になる確率は? 発達障害は男女で発現率が違うの? 発達障害を診断する方法 まとめ

発達障害とは

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発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、学習面や行動面などで年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルの獲得が難しいことで起きる障害を指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現します。

発達障害の定義は日本では平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。

この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/001.htm

これらの規定により想定される、法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80-F89)」及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)」に含まれる障害であること。
 なお、てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とするものである。

出典:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06050816.htm
発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。

広汎性発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などのコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という障害名に統合されています。

また『DSM-5』ではADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、学習障害は限局性学習症/限局性学習障害という診断名となります。

自閉症やADHDなどの発達障害の中には知的障害が併存する場合もあります。

発達障害の原因は?

発達障害の医学的な原因は完全にはわかっていません

発達障害にはさまざまな障害が含まれますが、身体障害などとは違い、周囲の人にとって発達障害自体がわかりにくいことから、発達障害の特性から本人ができないことやとトラブルがあった時などに親のしつけ不足や愛情が足りていないせいだ、育て方が悪いからだと思われがちです。

しかし、決してしつけ不足や愛情不足、育て方が直接の原因ではないことがわかっています。現在、発達障害の医学的な原因ははっきりと解明されているわけではありませんが、多くの研究から発達障害は先天的な脳の機能障害によるものとされています。

脳機能障害を引き起こすメカニズムとして、遺伝的な要因が原因の一部であると推測されています。何らかの先天的な遺伝要因に様々な環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。

たとえば自閉症スペクトラムの関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。

ただし、かつて広汎性発達障害に含まれていたレット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。そのため自閉症スペクトラム障害の概念から除外されました。

現在、その他の発達障害についても関連する遺伝子や環境要因に関して、それぞれ研究が進められていますが特定には至っていません。またその遺伝子も一つではなく、複数の要因や組み合わせが存在すると考えられます。それらがさまざまな道筋をたどって発達障害の特性となって現れると言われているのです。そのため全ての発達障害のある人にあてはまる唯一の原因はないとも言えるのです。

発達障害は親から子へと遺伝するの?

親から子へと遺伝する遺伝的要因はあるのでしょうか?

発達障害に関しては双生児研究や家族間での一致率に関する研究が活発に行われ、遺伝子が近いほど一致率が高くなる傾向があるといわれ、これらのことから家族性があるとは言われています。「家族性」とは、その障害のある人がいる家系の場合、ない家系より発現しやすい傾向があるということですが、これもまだ研究段階ではっきりと確率が出ているわけではありません。

家族間では遺伝による体質と、生育環境が似ているため、このような傾向が出るのではないかと考えられていますが、体質や環境要因が相互に、複雑に影響して発現するのではないかと言われています。

これまでの研究で発達障害は単一の遺伝子が原因で起こる「メンデル型遺伝疾患」と呼ばれるタイプではなく、複数の遺伝子の変化が影響して起こる「多因子遺伝疾患」であることも推測されています。

つまり、親の遺伝子が単純に子どもに遺伝して発達障害が起こるわけではないということです。発達障害の遺伝要因は原因の一部にすぎず、発達障害のある親から発達障害ではない子どもが生まれることもあれば、両親とも定型発達の場合でも発達障害のある子どもが生まれることもあるのです。

この親から子へと遺伝する確率については、現在のところ不明です。親が発達障害だった場合で子どもも発達障害である確率も、調査によって数値がまちまちで確かな結果は出ていません。このことも、遺伝要因と環境要因の相互影響が複雑で、偶然性に左右される部分が多いことを示唆していると言えるでしょう。

きょうだいで発達障害になる確率は?

きょうだいや、双子の場合の発達障害児の確率についてもさまざまな研究が行われています。

遺伝子が完全に一致する一卵性双生児の場合、ふたりとも発達障害をもつ割合は75~85%といわれています。もし、遺伝子のみで発達障害が出現するのであれば、100%の確率になるはずです。
 遺伝子が異なる二卵性双生児の場合は、5~10%と低くなります。

中山 和彦・小野 和哉 (著)『図解 よくわかる大人の発達障害』(ナツメ社,2010年)より引用

出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4816349723
これらの数値は報告されている様々な研究の一例ですが、このような研究から発達障害は兄弟・姉妹で発現する確率がないとは言い切れないということが分かります。また、同じ遺伝子を共有した生まれてきた一卵性双生児でも片方が発達障害であっても、100%の確率で発現するわけではないこともわかりました。

きょうだいは遺伝的な要因となりうるリスク遺伝子を体質として共通してもっている可能性や同じ養育環境で成長していくことから影響を受ける「家族性」があるため、遺伝子が近い家族であるほど一致率が高くなる傾向があると推測されています。

しかし、環境要因などの偶然性に左右される可能性も大きいため、例え同じ遺伝子を持っている一卵性双生児であっても、きょうだいに発達障害のある人がいるからと言って、同じく発達障害を100%発症するとも言えないのです。

発達障害は男女で発現率が違うの?

医学的には、実際には発達障害の発現率は、男性の方が多いと言われていますが、割合に関しては諸説あります。またこの理由に関しても諸説あるとされています。近年、女性の発達障害についてはあらわれる症状や特性に男性とは違いがあり、発達障害の状態像にも性差があるからではないかとする説もあり、研究も進められています。

以下が、自閉症、ADHD、学習障害それぞれの男女の発現率に関して現段階でわかっていることです。
■自閉症
男女比は3~4:1で男子に多いと考えられてきましたが、近年の調査では男女比の差は少なくなりつつあるとも言われています。

理由としては、男性と女性では症状にも少し違いがあり、男性は「コミュニケーションの困難」「言語の発育不足」などの症状がより見られやすいからだといわれています。女性の場合は男性と比べて症状が表に出にくい傾向があり、自閉症であるとわかりくく、気づかないまま暮らしている人もいると推測されます。そのため、自閉症の女性は統計に十分反映されていないのでは、という可能性も指摘されており、実際のところ4:1よりは男女差は少ないとする研究者もいます。
■学習障害(LD)
学習障害は男女どちらにも発現する可能性のある障害ですが、男性に発現する確率の方が高いことが分かっています。発表されているデータの数値は調査によってまちまちですが、その発現率は女性の約4倍であるというデータも発表されているのです。男性はその中でも読字障害になる確率が一番高いとされていて、その確率は女性の数倍とも言われています。ですが、男性に学習障害が多い理由ははっきりと分かっていません。
■ADHD
ADHDも男女によって発現率の違いがみられます。男女による違いは男:女の比率は4:1とされています。この比率の差は脳の働きや仕組みが男女によって異なるからではないかと推測されています。

また、性別によって症状にも違いがあります。男の子は多動の症状が多く見られており、女の子は不注意の症状が多く見られています。この症状の差から女の子の場合、ADHDの症状が分かりづらいため、見逃されてしまうことも少なくありません。そのため、この4:1という男女の比率の差は実際はもう少し小さいのではないかとも言われています。

ADHDであることが診断される年齢が男の子は8歳前後、女の子が12歳前後と差があります。この診断年齢の差も、女の子の場合は発達障害であることに気づくことが遅れやすいことに関係があるとされています。

発達障害を診断する方法

現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で発達障害が判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査ではわかりません。これは、発達障害の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。

発達障害の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいに何らかの症状をきっかけに専門機関を受診し、医師によって診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などの様々な検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いです。

医療機関では、多くの場合は、精神医学的な診断基準に基づき、保護者や本人に問診に問診をしたり直接行動観察をしたりして、症状から判定します。アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)など、国際的な診断基準の定義を用いて診断が行われます。また、必ずしも1つの障害しか持っていないということではなく、複数の障害を併発している可能性もあります。

それぞれの障害の診断基準に沿って診断を下すことが基本ですが、基準の解釈には医師によってばらつきが生じることもあります。ばらつきの原因として、診察室で見ることのできる子どもの姿がその子どものすべてではないので、乳幼児期の診断はとても難しい場合があります。正確な診断のためには日常生活の様子などをくわしく医師に伝えることも大切です。

まとめ

発達障害の原因を探ることは、治療法の開発・研究のためにはとても大切であり、世界中の研究者が日々、研究を進めています。その成果は少しずつ明らかになってはいるものの、いまだにわからないことも多いのが現状です。また、発達障害が発症する道筋は一つではなく、複雑な要因が絡み合っていると考えられるため、すべての人に当てはまるたった一つの原因は今後もわからないのではないかという考え方が主流となっています。

そんななか、遺伝的要因が関係していると聞くと、不安を感じるかもしれません。また、遺伝するかどうかというのは本人や家族にとって大きな関心事でしょう。

しかし、現段階でわかっている範囲でも「親の育て方のせい」というのも医学的に否定されていますし、発達障害の発現は様々な要因が複雑に影響しあい、いわば偶然性が大きいため、その人に発達障害があるかどうかは予測できないといえるのです。また得手不得手や特性のようなものは人間だれしもが持っています。

少なくとも「遺伝のせいで発達障害が発現した」というのは正確ではありませんし、単純に親から子へと遺伝するのではないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。

目の前の子どもにとって大切なことは、どうしたら本人の困りごとが減らせるか、特性を生かしていけるかという対応方法を考えてみることです。一人ひとりの子どもの発達障害の特性は様々なバリエーションがあります。本人の成功体験を積み重ねながら、今のよりよい環境を大切にすることが重要です。保護者や支援者が一人で悩み考えるのではなく、地域の相談機関や専門家と繋がりながら解決していきましょう。
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