「普通」ってなんだろう?子どもと関わるときに大切にしたい「インクルーシブ教育」という考え方

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インクルーシブ教育・特別支援教育研究者の野口あきなです。このコラムでは、みなさんが子育てする上で役立つ情報をお届けしていきます。

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みなさんはじめまして。野口あきなと申します。
大学でインクルーシブ教育の研究をしながら、これまで300名以上の指導員の育成に従事、過去1,000名以上のお子さまの指導に携わってきました。

たくさんの親御さんとも面談をし、悩みや困り事を伺い一緒に考えさせていただき、私の知っている具体的方法をお伝えさせていただいております。

発達ナビのコラムでは、みなさんがお子さまを育てる上で役立つ情報をお届けできればと思いますが、初回では自己紹介もかねて、私がインクルーシブ教育を研究することになった経緯をお話できればと思います。

インクルーシブ教育って?

近年「インクルーシブ教育」や「インクルージョン」という言葉をよく耳にする機会があるかと思いますが、「インクルーシブ教育とは、障害のある子と障害のない子が一緒に学ぶこと」と、誤解されがちです。

インクルーシブ教育とは、誰もが異なることを前提とし、すべての学び手のニーズに対応することができる教育のことを指します。

つまり、「通常」「特別」と分けて考えるのではなく、だれもが異なるニーズがあることを前提とした上で、そもそもの教育を捉えなおす必要があります。

「多様なニーズ」の中にもちろん障害のある方のニーズも含まれますが、その他にもいじめられている子や、いじめている子、体罰や虐待を受けている子、外国からきた子、引っ込み思案な子、あまり集団になじめない子、一つの場に落ち着いていることが難しい子、しゃべりだしたら止まらない子…などいろいろなニーズがあります。

「多様性を前提とし、異質な人を排除するのではなく、共に学び共に過ごす教育」

それを目指すのがインクルーシブ教育であり、私が研究している専門領域となります。

なぜそれを研究することになったのか。その背景には私自身の海外での経験があります。

「優等生」だったのに、ある日突然「マイノリティ」になった

私はもともと小さい頃からこだわりの強い性格でした。小さなルールでも守らないと恐怖心にさいなまれたり、学校から帰ったあとにやることがルーチンで決まっていて、例えばピアノの練習をするべきタイミングでできないと癇癪を起こしたり・・・随分育てにくい子だったと母から聞いています。

その反面、学校では優等生のイメージで通っていました。

当時私が通っていた学校では、「授業中背筋をのばして着席し続けていること」「テストで100点を取ること」が「良い子」の象徴であったため、「私も良い子でいなきゃ」「私もみんなと同じように適応しなくてはならない!」と半ば脅迫観念のようなものに駆られて過ごしたように思います。
そんな小学生時代、転機が訪れました。
小学6年生の時、父の転勤がきっかけで、アメリカに行くことになりました。

向こうに行ってから、もちろん言葉は通じないし考え方も日本とは真逆・・・今までと全く違うアメリカの地に馴染むため、必死に努力をしました。

しかし、もともとは日本人。
どんなに努力をしてもアメリカ人になれません。

埋められない”違い”を目の前に、だんだんと疎外感を感じるようになり、「自分はマイノリティな存在なんだ」と認識するようになっていました。

今思えばこの時から、学校教育に対する関心を持ち始めていたように思います。「一度社会からはみ出したら、元に戻れない」ことに対する理不尽さに、反発心を持っていたのです。

9.11をきっかけに、「アメリカ人になること」をやめた

アメリカ人になりたい。
どうやったら、アメリカ人になれるのか。

そればかりを考え、なんとかアメリカの社会に順応するよう努力する日々が数年続きました。

そんな私が変わったきっかけは、9.11。
私がちょうど高校一年生の頃でした。

衝撃的な事件を前に、町の人たちは軒先にアメリカ国旗の旗を出したり、学校でも生徒がことあるごとに胸に手を当て宣誓をする姿が見られるようになりました。周囲の人たちの「アメリカ人であること」に対する主張が、今までよりもより強く、急に沸き立っていたのです。

それまでの私だったら、周囲のアメリカ人たちといっしょに宣誓をしていたでしょう。

でもその時、「アメリカ人であることを主張する」アメリカ国民の流れに対して、違和感を感じる自分がいることに気が付きました。

・・・私はきっと、アメリカ人にはなれない。

だったら自分は何者なのか?と、改めて自分自身の存在に向き合うようになりました。

これまでの自分をがんじがらめにしていた「“普通”に適応しなくては、生きていけない」という価値観からやっと抜け出せるようになり、むしろ、異質を排除せずにみんなが尊重しあえる社会を構築していきたい、と強く感じるようになりました。

同じクラスにいた、脳性まひの少年

私が通っていたアメリカの高校は、高校から単位制の形をとっていました。必修科目以外は、大学のように、自分の興味に合わせてカリキュラムを選択することができます。

私が高校3年間で選択したのは、発達心理学や教育など、「人の成長」に関わるものばかり。

自分がマイノリティーになった経験も大きくあったと思いますが、アメリカに転校してすぐの頃に出会った脳性まひの子も、私のキャリア選択において大きな影響を与えてくれました。

日本では、脳性まひなど、障害のある子どもたちは通常学級とは別の場所で学ぶことがほとんどかと思います。でも、アメリカでは、その脳性まひの少年も、私たちと同じクラスの中で、一緒に学んでいました。

その光景は当時の私にとってはとても新鮮で、「なんで今まで出会ったことがなかったんだろう?」と疑問を抱くようにもなったのです。

特別支援教育を勉強することに

そのような経緯から、次第に「教育」に関する関心が強まり、特別支援教育から、日本全体の教育を変えていきたい、と思うようになりました。

目標が決まってから、最先端の特別支援教育を学ぶために筑波大学を受験。今も筑波大学の大学院で研究を続けています。

インクルーシブ教育で得られるもの

最初にお伝えしたように、インクルーシブ教育とは、個々の多様性を尊重していくことを前提としています。

多様性のある環境の中で過ごすと、自分にとって何が大切で、どうやって生きていきたいのか?を日々探る機会が自然と増えていきます。

「自分は何をしている時が楽しいか?」
「自分は何がしたいのか?」
「自分にとって、何が大切か?」

そういった問いの積み重ねが、自分の個性を大切にしながら生きていくことにつながりますし、結果的に相手の個性を尊重することにも繋がります。

これは社会で生きていくときに、誰しもにとって重要な考え方だと思います。

私はインクルーシブ教育を広めていくことで、一人ひとりが自分の個性を大切にしながら幸せに生きていけると信じ、日々研究を続けています。
では、その子の個性を引き出すために、具体的にどうしたらいいのでしょうか?

次回のコラムでは、親御さんが子どもとの接し方を考える時に大切な視点について、お話ししていきたいと思います。
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