自分はアスペルガーかもと気づいた父と家族の漫画「プロチチ」

ライター:鈴木希望
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私が自閉症スペクトラムの診断を受けたのは2年前。きっかけは、息子が通っていた保育園で発達障害の可能性を指摘されたことでした。そのためにいろいろ調べてはいたのですが、「発達障害についてもっと楽しく知りたい!」という思いは日々強まる一方。周りに気持ちを伝えて回っていたところ、漫画好きの友人が教えてくれたのが、この本だったのです。

自分をもっと知りたい!と思っていたときに…

以前コラムにも書きましたが、私は自身と息子に自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の診断が出たことで、救われたような気持ちになった人間です。

ですから受け入れることに全く抵抗を感じず、「じゃあ、より暮らしやすくするにはどうしたらいいかな?」「自分の『アスペっぽい部分』ってどんなところだろう?もっと知りたい!」とワクワクしていたほどでした。(笑)

そんな矢先、漫画好きの友人から連絡がありました。

「ノゾミちゃん、アスペルガーなんだよね?アスペルガーの主人公の漫画を最近読んだんだけど、面白かったよ!」

そのときに勧められたのが『プロチチ』だったのです。
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『プロチチ』その内容とは

あらすじをご紹介しますね。

生真面目で融通の利かない主人公・徳田直(とくだなお)は、対人関係でトラブルばかり。仕事をしても長続きせず、無職。

一家の大黒柱として働くのは、優しい妻・花歩(かほ)の役目。

主人公の直は、専業主夫として生まれたばかりの息子・太郎のお世話に励もうとするものの、時間にこだわりスケジュール通りにならないことで不安に襲われます。
パニック、そしてフラッシュバックを起こした際に浮かんできた「発達障害」というキーワード。直は、自分がアスペルガー症候群である可能性に気づくのです。
主人公の直がフラッシュバックを起こすシーンを読んだとき、社会人になってから診断された私には、その姿も内容もあるある過ぎて泣き笑いしそうになりました。

その他にもこの漫画には、「ああその考え方、わかる…」と頷く場面が多々あります。逢坂みえこ先生、アスペルガーのことをよく調べておいでです。

それから、主人公の妻・花歩も、とても魅力的なのです。

「確かにアスペルガーの特性に当てはまることだらけね。そんなあなたのことを知りたいと思った」と受け入れるのです。

人との会話を避けている直に、「直ちゃんの話はユニークなのにもったいない!」と笑いかけ、直が人と関わっていけるよう、通訳のようにサポートしていくのです。

本当に素敵。

憧れてしまいます。

直は自信を徐々に取り戻し、それまでは「障害」でしかなかったアスペルガーの特性を「直らしい魅力」に転化させ、社会との関わりを深めていく、そんなストーリーでした。
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大人のアスペルガー症候群、アスペルガー症候群での仕事での困りごとや対処法まとめ【専門家監修】

描かれているのは「自分らしさを見つけ出す姿」

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28208001320
全4巻を通して発達障害と明確に診断される場面はありませんが、

私は「診断って、自分の特性や困りごとの対応法を知るきっかけにもなるけど、それが全てじゃないんだよなあ」と再確認するに至りました。

というのも、自分の特性を把握したあと、それと向き合うことなく「出来ないことは仕方ないから…」と開き直り、全てを放棄していたら、生きづらさや過ごしづらさは、みじんも変わらないのです。

主人公・直は「自分はアスペルガー症候群の可能性があるのか!性格が悪いわけでも努力が足りないわけでもなかったんだ!」と気づいたあと、自分なり向き合いさまざまな工夫をし、時には助けを求めていました。

そうすることで、自分を取り巻く現実を変えて行ったのです。

元々アスペルガーであることを悲観していなかったわたしですが、漫画の中で直が成長する姿を見て大いに勇気づけられたものです。


『プロチチ』には、発達障害と定型発達、男と女、親と子、独身者と既婚者、勤め人、無職、シングルマザー…様々な立場の人が関わり合い、時には衝突しながらも相手を認め、そして自分らしさを見つけ出す姿が描かれています。

「他者を認めることは自分を知ること」

「剥がせないラベルだと思っていた立場や特性は、その人の持っているカードのひとつにしか過ぎない」

ということがしみじみ感じられる、優しい作品でした。

発達障害云々を抜きにして、「男性視点の育児漫画」として読んでも楽しめますので、私のおススメです!
逢坂みえこ『プロチチ』
https://www.amazon.co.jp/dp/406352390X
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