ASD息子、「楽しい勉強しかしたくない」高2進路相談で爆弾発言!担任の先生が考えた作戦とは…?大学選びの過程も公開

ライター:寺島ヒロ
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息子のタケルは、大分市の私立の中高一貫校に通っていました。高校受験はしていませんが、進路特集に合わせて、高校でタケルと進路指導を受けたときのことについて書いてみようと思います。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

進路指導は高校2年生から

わが家のASDのある息子タケルは、大分市の私立の中高一貫校に通っていました。その学校を選んだのは、進学指導について実績があったことと、少人数制で先生方の面倒見がいいという評判があったためです。実際に通ってみると、1クラスしかないので、とても静かだったこと、ずっとクラス替えがなく人間関係の変化が少なかったことなどが大変良かったなと思いました。

本格的な進路の指導は、高校2年生のときに受けました。タケルの目標は、子どものころから「生き物ハカセ」になること。希望の学部は理学部となります。
 
2年生の2学期の三者面談の資料とするため、夏休み前に「希望の学部が決まっている人は、大学名も書いてください」と書かれたプリントをもらったのですが…。

大学名といわれても…

いきなり志望する大学名を聞かれて困惑する親ふたりと息子
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大学のレベルとか評判みたいなことは私たちにはよく分からないので、オープンスクールに行って障害のある学生への支援の様子を見て決めよう!ということにしました。なお、プリントはいったん白紙のまま提出しました。

オープンスクールに行こう!

オープンスクールとは、大学がキャンパスを高校生などに開放し、学校の様子やカリキュラムを知ってもらうために開くイベント。大体、夏休みから秋ごろにかけて開催されます。
いざオープンスクールに行こうと、インターネットで調べてみると、理学部はあちこちの大学にあるけれど、基礎研究をやる生物学科となると実はそう多くないことが分かりました。
 
生命学科、生物化学科、生物環境科…などは、タケルに言わせると似てるけど微妙に違うのだそうです。
とりあえず、タケルの興味のありそうな研究をしている6校に絞り、順番に回っていくことにしました。

が、結局は6校も行くことはなく、2校目にオープンスクールに行った公立の学校をタケルは気に入り「ここを受けたい!」「浪人してもいい!」と、いうことになりました。
なったのですが…

苦手科目を克服しないと…!

さて志望校も決まり、意気揚々と挑んだ2学期の三者面談。
担任の先生から極端に苦手な教科があることの指摘を受ける。
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英語の点数が極端にへこんだチャート表を背景に、ギャーと叫ぶ母(寺島)
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発達障害のある子どもの場合、興味のない教科は極端にできないということは「あるある」ですが、タケルも例にもれず、英語だけが極端に苦手だったのです。
先生によれば、数学など問題数の少ない教科は、例えば4問しか出ない場合、2問見たことのない問題が出ると50%しか点が取れないことになる。しかし英語は問題数が多いのでこういう失敗が少ない上、70%ぐらいは暗記で解けるので、大学受験においては非常に重要とのこと。
先生は「英語が普通の点数になれば合計点がぐんと上がります。伸びしろと思って頑張りましょう!」と言ってくれたけれど…
タケルはしぶ~い顔…

そして爆弾発言が…!

いい笑顔で「英語は楽しくないから勉強したくない」と言い放つタケル
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英語の大切さを説明する先生と、かたくなに嫌がるタケル(受験生)
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そう、タケルは楽しいから勉強しているだけ…!

大学に行くのも、良い環境で勉強や研究ができるからいいなあ、とぼんやり思っているだけ。あれとあれをやっておくと次にこれが有利になって、これがあればいい点が取れて…みたいな受験のプロトコルを踏まえて言っているわけではないのです。
どんなにテストができても、研究への情熱があっても、タケルはタケル。学校からもらう入試対策のプリントなど「興味がないから」読んでるはずはありません…。

英語は重要だと分かってほしい!先生の作戦とは!?

結局、先生との「英語、頑張れ」の話は平行線のまま、その場は終わり…。私はタケルに、受験での英語の重要性を理解してもらうにはどうしたらいいのかなあ…と頭を抱えていました。
ところが…
数日後、タケルが朝早く起きて英語の勉強しているのを見かけました。今まで、家では英語の勉強なんて全然やっていなかったのに!
「学術論文は英語じゃないといけないから、もっと点数取れるようになっておけって。それで、とりあえず英検を目指せって、先生に問題集もらったから」と、タケル。
 
目からうろことはこのこと…!たくさんの受験生を見てきた先生は、タケルには「受験において英語が重要だ」ということの理解が難しいことを見抜き「理解してもらう必要はない。英語の実力をつけさえすればいい」と考えたのでしょう。
 
目標を設定して、こなすべき具体的な課題を与えるというのもタケルの特性にかなっています。さすが先生だ!!と感心しました。
なお、その翌年、タケルは英検を2級まで取得し、希望の大学にも合格することができました。タケルも頑張りましたが、やはり先生の作戦のおかげだよなあと思います。

執筆/寺島ヒロ
(監修:井上先生より)
思春期に「勉強する意味が感じられない」と言うお子さんは少なくありません。寺島さんとタケルさんのように、事前に大学で学べることを調べてオープンスクールに行くというプロセスはとても大事です。将来やりたいことが決まっているお子さんはオープンスクールに行くことで現実感を持てますし、その分野の第一線で活躍している先生たちと話すことでやる気が出やすくなります。合わせて、自分がやりたい分野では論文を英語で書く必要がある、英語で書かれている文献が多いといったことが分かると、自分で勉強できるようになりますね。
志望校が決まれば、高校や塾の先生との勉強方法や対策についての相談もスムーズです。また、オープンスクールでは障害学習支援室などがあるかも確認すると良いでしょう。
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