回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)とは?診断や症状【医師監修】
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)とは、傷つくことや失敗を極度に恐れ、仕事や恋愛など生活に支障をきたすことが特徴の障害です。症状の特徴は日本人の性格によくみられるものですが、自分には逃げ癖があると自己肯定感が下がってしまったり、社会生活が困難になるほど悩みを抱えている場合、専門機関からの適切な支援が必要です。この記事では、回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の症状や症状を克服するためにできること、治療法、本人や周囲の心がけについて解説していきます。
産業医
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)とは
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の特徴
回避性パーソナリティ障害(または回避性人格障害)は現在、「回避性パーソナリティー症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「回避性パーソナリティ障害」といわれることが多くあるため、ここでは「回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティー症)」と表記します。
診断にあたっては、以下のような症状が4つ以上みられるか、その症状が成人期早期までにあらわれているかが確認されます。
・批判や拒絶されることに強い恐怖心を抱きほかの人との接触が生じる活動(仕事を含む)を避ける
・好かれているかわからなければ対人関係を持ちたがらない
・恥をかくのを恐れ親しい相手に対しても遠慮をしがち
・社会的に批判、拒絶されないかとても気にする
・自信がなく新しい対人関係を築こうとしない
・自分自身に長所がないと思い込んでいる
・異常なほど引っ込み思案で、新しい行動をすることなどを恐れる
回避的パーソナリティの傾向は、日本特有の奥ゆかしさや恥の文化と重なります。他人の評価や反応を必要以上に気にして人前にあまり出たくないというパーソナリティを持つ日本人は多く、これらの基準に当てはまるからといって必ずしも「障害」とはいえないこともあります。
例えば、診断基準である『DSM-5-TR』はアメリカの基準であるため、日本の社会の仕組みや文化的背景を考慮しないと必ずしも治療を必要としない人にまで治療をしてしまうかもしれません。
しかしこれは裏を返せば、日本では回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)は理解されやすく、受け入れられやすい土壌があるということも意味しています。
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回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の治療法は?
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)に向いている仕事とは? 症状を克服するためにできることは?
回避性パーソナリティ障害回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)に向いている仕事とは
反対に、個人の作業が中心の仕事は、コミュニケーションによるストレスが少なく、回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の人にとっても取り組みやすいものといえるでしょう。
プログラマー、デザイナー、ライター、データ入力などの仕事は、在宅でできるものも多く、スキルを積めばフリーランスとして独立することも可能です。
また、ポスティング、ビルメンテナンス、清掃、在庫管理などの仕事も、比較的、他者との関わりが少なく、仕事の手順を覚えれば失敗のプレッシャーにさらされることも少ないことから、不安を感じずに仕事に集中することができる可能性があります。
□個人作業の割合の多い仕事
□大きな責任を問われない仕事
□在宅勤務やバーチャルオフィス活用など、柔軟な働き方ができる職場
こうした条件で仕事探しをしてみると、働きやすい仕事が見つかりやすくなるかもしれません。
本人が心がけることは?
「等身大の自己」を形成するためには、どんなに小さなことでも自らチャレンジして、成功体験を積み重ねることが必要です。不安や恐れ、迷いは一度横に置いてみて、チャンスが巡ってきたときはまず実行してみましょう。小さなことでもチャレンジを続けることで、失敗の恐れや不安は次第に消えていくはずです。
また、うまくいく経験ばかりを求めないことも大切です。失敗は成功より価値のある体験で、次につながる学びだと考えましょう。「失敗してもまたやってみればいいや」と気楽に構えてみてください。
どうしても一歩を踏み出せないときは、背に腹は代えられない状況を作ってみるというのも一つの方法です。これまでの自分を守ってくれるものがなくなると、一歩踏み出して動き出したというケースは多いようです。
例えば、引きこもりの青年が、その子をずっと心配していた父親が亡くなるとその年のうちに仕事をはじめ、以来ずっと仕事を続けているというケースもあるそうです。
まずは自分が「やってみたい」と思うことから、少しずつチャレンジを重ねていきましょう。
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の人は、「自分は何をやってもダメだ」という否定的な自己イメージを持っています。他者からの評価にも非常に敏感であるため、周囲の人は言葉のかけ方に配慮する必要があります。けなしたり、否定したり、拒絶したりといった対応は、自信を喪失させ、症状の悪化を招くため、避けなければなりません。
逆に、小さなことでも何かに成功したときは、良かった点を褒めることが本人の自信につながります。結果だけでなく、その過程や意欲、姿勢自体を褒めるのがよいでしょう。
◆本人の主体性を尊重する
誰にとっても、自分が望まないことをさせられるのは気が重いものです。ましてや、それがうまくいかずに叱責されたりしたら、怒りが湧くこともあるでしょう。回避性パーソナリティの人は、こうした場合にも「自分がいけなかったんだ」「私に能力がないから」と、意思に無関係なことをさせられたことよりも、自分を責める傾向があります。こうしたことが続けば、自尊心は深く傷つき自己肯定感が失われてしまいます。
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)を持つ人は、積極的にチャレンジをしたり、自分から率先して挙手をするタイプではありません。だからといって、周りが先回りして本人の意思決定を横取りするのは考えものです。主体性や気持ちを尊重し、本人が意思表示をするのを待つことが大切です。自分の人生に決定権と責任を持つことが自立へとつながります。本人が行動や意思決定を躊躇している場合は、周りは第三者のような距離で程よく背中を押すとよいでしょう。
◆回避の慢性化・全般化を防ぐ
回避はストレスや傷つきに対する自然な反応です。極限まで頑張らせようと無理強いすると回避行動が全般化してしまうことがあります。全般化とは、回避があらゆる場面にまで及ぶことです。たとえば、慣れた仕事は着実にこなせていた人に、次のステップとなる新しい業務を強要した結果、これまでしっかりできていた日常業務にまで回避行動が見られるようになったりするのも、全般化の一例です。趣味や好きなことにまで後ろ向きになって引きこもってしまったり、親や友人など親しい人との関わりまで断とうとしたり、全般化が進むと、回避行動が長引き、慢性化していく悪循環に陥ってしまいます。
全般化を防ぐには、「疲れたときは休めばよい」ということを伝え、適度に逃げ場をつくってあげることが大切です。
回避の反応が長引いている人に対しては、第三者の力を借りて風穴を開けたり、本人がやりたいと思っていたことを突破口にしてみることが有効です。失敗やつまずいたことにはこだわらず、うまくいかなかったらまた考える、というようなおおらかなスタンスでじっくり焦らず取り組むのがよいでしょう。
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回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の原因は? 発達障害との関連は?
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の遺伝的要因と環境的要因
消極的な性格や不安が強い性格が遺伝していることも考えられますが、かつては活発な子どもだったにもかかわらず、あることをきっかけに回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)となることもあるため、環境要因も大きく影響していると考えられます。
発達障害とパーソナリティ障害(パーソナリティ症)の関連は?
発達障害自体がパーソナリティ障害(パーソナリティ症)へと発展するのか、それとも発達障害の抱える困難がパーソナリティ障害(パーソナリティ症)になりやすい要因となるのかは未だ解明されていません。
ですが、発達障害がある人に対しては、本人の特性を理解し、できるだけポジティブな社会心理体験が積めるように配慮することが特に重要だといえるでしょう。
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)とほかの障害との関連
以下では、回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)と共通の症状を持つパーソナリティ障害と、各障害との違いについてまとめました。
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)
依存性パーソナリティ障害(依存性パーソナリティ症)
シゾイドパーソナリティ障害(シゾイドパーソナリティ症)/統合失調型パーソナリティ障害(統合失調型パーソナリティ症)
猜疑性パーソナリティ障害(猜疑性パーソナリティ症)
そのほかの併発しやすい精神疾患
・抑うつ症群(うつ病など)、双極症及び関連症群(双極症Ⅰ型、双極症Ⅱ型など)
・不安症群(社会不安症、全般性不安症など)
があります。
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の疑いを感じたら
受診する医療機関は、精神科、精神神経科、心療内科などです。「相談」のつもりであっても、形式は「受診」になるため、できるだけ本人を連れていくようにしましょう。
いきなり病院に行くことに抵抗がある場合には、各市区町村にある保健所の保健センターで相談することもできます。また、各都道府県に設置される精神保健福祉センターでもメンタルヘルスに関する相談事業を行っています。
企業や学校のカウンセラーは、その人が所属している組織の内情にも通じているため、より適切なアドバイスをもらえる可能性が高いでしょう。また、連携している医療機関を紹介してもらえる場合もあります。
回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の治療法
一般的には精神療法と薬物療法が中心になりますが、必要に応じて家族療法や福祉・医療関係施設でのデイケアなどの社会療法も同時に行われます。一人ひとりの治療目的に合わせて、複数の治療を組み合わせます。
1.個人精神療法
1週間に1~2回、30分から1時間程度、治療者が患者さんと面接する形で行うのが一般的です。内容に関しては個々の治療者の判断によるところが多く、統一のガイドラインはありません。
この治療法においては、以下の3点を患者さんと周囲の人々が理解する必要があります。
・効果が表れるのに時間がかかる治療法であり、数年におよぶこともある
・誰にでも効果が期待できるものではない
・治療者との相性や信頼関係が効果を左右する
個人精神療法は、精神科医が行うもっとも基本的な治療法の1つではありますが、「絶対的な治療法」であるという過度の期待を持つと、効果を感じられないと治療を投げ出してしまったり、治療者を疑ったりと逆に治療が困難になってしまうことがあります。
個人精神療法は、その場しのぎではなく問題を根本から改善しようとするものです。時間はかかりますが、本人が治療の意思を持って、治療者と信頼関係をしっかり結んで治療を継続していくことが必要です。
また、回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の基盤となる気質を「森田神経質」と呼ぶことがあり、その治療法として「森田療法」があります。
森田神経質のある人は、不安や恐怖を「あってはならないもの」として排除しようとするあまり、かえってそれにとらわれてしまうという悪循環に陥っています。この悪循環を断つために、不安や恐怖を「あるがまま」受け入れる姿勢を身につけようとするのが森田療法です。
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2.集団精神療法
同じ障害を持っている人とのコミュニケーションは、障害による問題に気付くきっかけになります。それを自分にあてはめて考えられるようになると、徐々に認知のゆがみやクセを修正していくことにつながります。
また、集団精神療法での仲間体験は、患者さん自身の自己肯定感を持たせることにつながり、他人とコミュニケーションの取り方を練習する機会にもなります。
3.家族療法
具体的には、治療者が家族全員と面接を行ったり、患者さんの付き添いで来院した際に話を聞いたりします。患者さんに思いをうまく伝える言葉のかけ方や、患者さんの気持ちを安定させるための振舞い方など、適切な対応法を治療者から指導します。
なお家族療法は、患者さんが未成年のときに行われるのが一般的です。患者さんがある程度の年齢に達している場合は、患者さん自身が家族から自立する方向で治療が行われる傾向にあります。
4.薬物療法
使われることのある薬の種類と働きは以下の通りです。
■抗精神病薬
脳に働きかけて、興奮を静めたり、心を安定させます。
■抗うつ薬
気持ちの落ち込みをやわらげ、心を楽にします。
■抗不安薬
不安感や緊張感をやわらげます。頓服として不安な場面・場所で服用することもあります。
■そのほか
睡眠のリズムが乱れているときは睡眠薬を、そのほか衝動を抑えるために気分安定薬が使われることもあります。
ここでも、「薬を飲むことで、障害がすぐに良くなる」という過度な期待を寄せないことが大切です。また、服薬の決まりをきちんと守り、量や種類に不安があるときはきちんと主治医に相談しましょう。
5.認知行動療法
そのうえで、場面の振り返りやロールプレイングなどを通して、認知の仕方、行動の取り方を実践的に学びます。回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の人が悩んでいるさまざまなことが、いかに主観的な心配にすぎないかを本人に気付かせて、問題の解決を目指します。
近年は簡易型の認知行動療法の研究・開発が進んでいます。具体的には、当事者や仲間がお互いに支え合うサポートグループ・プログラム、短時間で相談に乗る相談センターや電話相談、コンピュータ支援型認知行動療法が実際の現場で活用されています。
まとめ
周りの人に相談したときにも、共感を得られやすい点は、回避性パーソナリティ障害(回避性パーソナリティ症)の克服を後押ししてくれる支えともなるでしょう。また、自己理解を深めれば、日々のちょっとした心がけでも、不安感や生きづらさを軽減しやすい障害でもあります。
大切なのは、「等身大の自己」を受け入れることです。何かを始めるときには、不安や心配もつきものです。でも、恐れすぎずに、小さくてもチャレンジする勇気を持ちましょう。そして、どんなに些細なことでも、目標が達成できたら自分を褒め、認めてあげることが大切です。
ただし、生活に支障が出る程の症状が出ているときは専門機関に相談することをおすすめします。医療機関などで適切なサポートを受けることが、克服への近道になることもあります。
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