高機能自閉症とは?アスペルガー症候群とは違うの?症状や診断基準、障害者手帳の取得について紹介します!【専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
高機能自閉症は対人関係や言語の発達の遅れ、限定された興味やこだわりがありますが知的発達の遅れを伴わない障害です。高機能自閉症は近年の研究によって症状が発達過程で変化し、アスペルガー症候群と同様の症状になることが分かってきました。診断基準や障害者手帳が取得できるかなど詳しく紹介していきます!

監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。
LITALICO研究所 客員研究員
高機能自閉症(HFA:High Functioning Autism)/自閉スペクトラム症(ASD)とは?
高機能自閉症(自閉スペクトラム症)とは、「社会的コミュニケーションの困難さ」「限定された反復的な行動や興味、活動」などの特性が見られる障害です。『DSM-5』で「自閉スペクトラム症」の名称のもとに統合されましたが、それ以前は、知的障害を伴わないものと定義されていました。
言語発達の遅れがあるかどうかは、2歳までに単語を習得しているかどうか、3歳までにコミュニケーション的な語句を用いているかどうかが基準になります。また、知的発達の遅れを伴わないとは、IQ70~IQ95以上など様々な基準がありますが、概ねIQ70以上である場合を示します。
文部科学省では高機能自閉症を以下のように定義しています。
言語発達の遅れがあるかどうかは、2歳までに単語を習得しているかどうか、3歳までにコミュニケーション的な語句を用いているかどうかが基準になります。また、知的発達の遅れを伴わないとは、IQ70~IQ95以上など様々な基準がありますが、概ねIQ70以上である場合を示します。
文部科学省では高機能自閉症を以下のように定義しています。
高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
ICD-10精神科診断ガイドブック
中山書店
Amazonで詳しく見る

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
医学書院
Amazonで詳しく見る

高機能自閉症の特徴
高機能自閉症は対人コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があるため対人関係がうまくいかなかったり、限定された物事へのこだわりなどが強く表出されたりする特徴があります。言語の発達に遅れがありますが、知能の発達に遅れはありません。
■社会性と対人関係の障害
・あいまいなコミュニケーションが難しい
言われたことをそのままの意味で受け取ってしまうため、冗談が通じにくいことがあります。顔の表情を読み取ることも苦手な人もいます。見たまま、思ったままに発言をしてしまうと、相手を傷つけてしまうこともあります。
・相手の気持ちを理解することが難しい
想像することが苦手なため、相手が何をどう考えているのかを想像して行動を調整することに困難さがあります。一方的に自分の興味分野の話をし続けてしまったり、関心ない話には一切興味を示さないことがあります。
・場の暗黙の空気を読むことが難しい
その場や集団内で共有されている暗黙の共通ルールや慣習を察して行動することが難しい傾向があります。そのため、そうした場の"空気"を共有している人たちから見ると、自己中心的と取られがちな言動をしてしまうこともあります。
■幼児期に言語能力の発達の遅れ
・年齢に応じた言語やコミュニケーション能力の獲得に遅れがある
2歳までに単語を習得し、3歳までにコミュニケーション的な語句を用いることができていない場合、言語発達に遅れがあると言われています。
・幼児期後期から言語能力は遅れて発達する
自閉症は話し言葉(言語能力)の明らかな発達の遅れ、ないしは完全な欠如があるといわれています。しかし、高機能自閉症の人の場合、話し言葉の発達が遅れているだけで、発達過程で豊富な語彙を扱えるようになります。音程、抑揚、速さ、アクセントなどにも問題なく発話することができます。
■限定的な反復行動
・限定された物事へのこだわり・興味が強い
一度興味を持ったものに対しては、過剰といえるほど熱中する傾向があります。一般的に法則性や規則性のあるものを好み、特定の領域に関しての知識や高い集中力をもっています。しかし、集中しすぎるあまり、物事をやめられなくなることもあります。
・記憶力が高い
興味のある物事に関しては大量の情報を記憶して、引き出すことができます。一方で、興味がない領域に関しては覚えられず、すぐ忘れてしまうなど、アンバランスが生じることがあります。
・自分独自の行動ルールへのこだわりが強い
自分の決めた予定や手順などに強いこだわりを示すことがあります。その予定や手順を急に変えられることが苦手で、いつものパターンにこだわることもあります。無理に変更しようとすると混乱してしまうこともありますので、事前に変更を予告すると混乱せずに行動することができます。
高機能自閉症とアスペルガー症候群は同じ?
知的機能に遅れがなく対人コミュニケーションに困難さがある発達障害として、アスペルガー症候群があります。高機能自閉症と似た特性がありますが、高機能自閉症とアスペルガー症候群はどういった違いがあるのでしょうか。
アスペルガー症候群は知能・言語の発達に障害がありません。一方の高機能自閉症は知的発達における遅れや障害はありませんが、言語発達において遅れがあります。この症状の違いが臨床的な診断の際に用いられてきました。
しかし、近年の研究によって、2~3歳頃にみられた高機能自閉症とアスペルガー症候群の言語能力の差は、時間の経過とともに縮まっていくことが分かりました。
また、高機能自閉症は年齢を重ねて言語が身に付き始めると、アスペルガー症候群と変わらない特徴や症状がみられることが分かりました。以上のことから近年、両者はあまり区別しないで扱われることが多くなってきました。
そこで、以下の項目では、高機能自閉症とアスペルガー症候群をあわせてご説明していきます。
アスペルガー症候群は知能・言語の発達に障害がありません。一方の高機能自閉症は知的発達における遅れや障害はありませんが、言語発達において遅れがあります。この症状の違いが臨床的な診断の際に用いられてきました。
しかし、近年の研究によって、2~3歳頃にみられた高機能自閉症とアスペルガー症候群の言語能力の差は、時間の経過とともに縮まっていくことが分かりました。
また、高機能自閉症は年齢を重ねて言語が身に付き始めると、アスペルガー症候群と変わらない特徴や症状がみられることが分かりました。以上のことから近年、両者はあまり区別しないで扱われることが多くなってきました。
そこで、以下の項目では、高機能自閉症とアスペルガー症候群をあわせてご説明していきます。

アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)とは?特徴と相談先/専門家監修