認知行動療法(CBT)とは?メカニズムや形式、体験談まとめ【専門家監修】

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心を楽にするために、物事の受け止め方や考え方、行動に働きかける精神療法があるのをご存知でしょうか?「認知行動療法」と呼ばれ、精神疾患に対して治療効果と再発予防の効果があると、科学的に認められています。通院のほかにご家庭でできる方法などありますので、あわせてご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

認知行動療法とは

認知行動療法にはさまざまな定義がありますが、広義の定義としては以下のようなものがあります。
認知行動療法とは,行動科学と認知科学を臨床の諸問題へ応用したものと定義されます。複数の理論とそこから生まれた多数の技法を包含した広範な治療法として発展しています。

引用:日本認知・行動療法学会
出典:http://jabt.umin.ne.jp/cbt/
認知行動療法は英語ではCognitive Behavioral Therapyと表記され、しばしばCBTと呼ばれます。

認知行動療法では、認知や行動の両面からアプローチし、良い循環を起こせるように働きかけていきます。医師やセラピストとの対話、ホームワーク、インターネットプログラムなどを通して、認知や行動のパターンを変えていきます。

認知行動療法とは、さまざまな定義がありますが、
『悩んでいる方が陥っている悪循環に対して、学習の法則に従い、良い循環への変化を目指す行動療法と、不安や抑うつ、強迫観念などの原因は認知のくせにあると考え、それを変えることでストレス軽減を目指す認知療法をあわせたのが認知行動療法である』
と説明することもできます。

認知行動療法が有効な精神疾患は?

認知行動療法は、精神疾患に対して治療効果と再発予防の効果が科学的に認められています。次のような疾患が代表的なものとして挙げられます。うつ病、不安症群(パニック症・社交不安症・PTSDなど)、不眠症、摂食障害(摂食症)、統合失調症などです。

人間はどのようにして物事をとらえているのか?

認知行動療法の仕組みを理解するには、人間がどのように物事や状況をとらえるのかを知ることが近道となります。果たして人間は、どのようにして物事をとらえているのでしょうか。まず物事の捉え方のメカニズムを知る上で重要な、"認知"と"自動思考"という2つの言葉についてご説明します。

"認知"とは?

認知とは、物事の受け取り方や考え方のことをいいます。認知行動療法はこの認知に働き掛け、心のストレスを軽くします。

"自動思考"とは? ストレスとの関係性

認知の中には、自動思考というものがあります。自動思考とは、いろいろな状況で瞬間的に沸き起こる思考や考えのことをいいます。

日ごろ行動するときにはあまり意識していませんが、私たちが何気なく考えることには独特なくせがあります。例えば"友人に挨拶したのに挨拶を返されなかった"とすると、"何か悪いことをしたかもしれない"、"嫌われたかもしれない"とふっと頭に思いつくのが自動思考です。
認知には、何かの出来事があった時に瞬間的にうかぶ考えやイメージがあり「自動思考」と呼ばれています。「自動思考」が生まれるとそれによって、いろいろ気持ちが動き行動することになります。ストレスに対して強い心を育てるためには「自動思考」に気付いて、それに働きかける事が役立ちます。

引用:うつ病の認知療法・認知行動療法|厚生労働省
出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
認知行動療法では、認知(自動思考)や行動、体調、感情が密接に関係していると考えられています。

私たちはさまざまな状況や出来事が生じるとき、それぞれに対して無意識に認知をし、うまくストレスと付き合うことで対応しています。その際、環境と私たち自身は相互に関係しています。
起きた出来事に対する認知が、感情や行動、体調などにも影響を与えることを表す図
起きた出来事に対する認知が、感情や行動、体調などにも影響を与えます。
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私たちは日頃、さまざまなストレスに囲まれて生活しています。一般的にストレスは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態をいいます。

ストレスの要因としては身体的なもの、精神的なもの、社会的なものの3種類が挙げられます。
そもそもストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。
外部からの刺激には、天候や騒音などの環境的要因、病気や睡眠不足などの身体的要因、不安や悩みなど心理的な要因、そして人間関係がうまくいかない、仕事が忙しいなどの社会的要因があります。
つまり、日常の中で起こる様々な変化が、ストレスの原因になるのです。
たとえば、進学や就職、結婚、出産といった喜ばしい出来事でも、変化であり刺激ですから、ストレスの原因になることもあるのです。

引用:ストレスって何?|こころの情報サイト
出典:https://kokoro.ncnp.go.jp/health_howtocare.php
私たちは通常、ストレスが生じた場合でも的確な認知や行動をすることで、それを乗り越えていくための思考を働かせることができています。そのため、自分自身の体調や感情に大きな悪影響を生じさせることなく、周囲に良い循環が生まれるよう立ち振る舞うことができます。この思考は日常無意識にしている表層的なことであり、上述の通り心理学的用語で自動思考と呼んでいます。

しかし、認知の表層である自動思考に歪みが生じる場合があります。その場合、ストレスを克服する一連の循環がうまく働かないため、不適応を起こしてしまうことがあります。自動思考とは、普段無意識的に行っているものなので、そこに歪みが生じるということに気づくことは少なく、結果としてストレスが重くのしかかり、うつ病やパニック障害といった精神疾患を発症する場合があります。

これらの精神疾患の治療法にも使われている「認知行動療法」では、こうした自動思考に問題が生じ、ストレスがうまく受け流せない状態を、出来事を受け止めたときの認知に歪みが生じている、もしくは偏りが生じていると捉えます。そして気分や行動に悪影響をもたらし、自分では気づかないうちに負のスパイラルに陥ってしまいます。

この認知のゆがみを修正し、考え方の幅を広げ、より柔軟に対処することができるようになることを目的として認知行動療法を行います。

認知行動療法の流れとは

ここでは、うつ病に対する認知行動療法を例に解説します。うつ病に対する認知行動療法にも複数の種類の治療技法やプログラムがありますが、その一つを取り上げてみます。

認知行動療法は困っている問題や環境について考えるとともに、それに対する認知や行動の修正を図り、ストレスを軽減することで、より柔軟・自由な考え方・行動へと変えていきます。

では具体的に認知行動療法はどのように進めていくのでしょうか。厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」を参考に、認知行動療法の進め方の一例をご紹介します。

例として授業中に強いストレスを感じ、恐怖感や気分の落ち込み、頭痛などを感じる中学1年生の場合を見ていきます。
参考:厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/16968

1. ストレスの整理

現在どのようなストレスがあるのか整理します。

例: 授業中、特に数学の時間に強いストレスを感じる

2. ストレスの要因と感情の動きを確認

どういった状況で問題が起き、それによりどのような気持ちになるか確認します。

例:数学の授業には練習問題を解く時間が設けられている → 進めていくと分からない問題があり、先生に質問したいと感じる → しかし先生はほかの生徒と話しているので質問することができない → 質問できず無力感をおぼえ、惨めな気持ちになる

3. 自動思考の影響を確認

勝手に浮かんでくる思考である自動思考が、気持ちや行動にどのように影響しているか確認します。

例: "どうして勇気を出して先生に呼んで質問できないのか"と、自分を責めてしまう。また"これ程まで消極的な私はうまく人と付き合っていけるのか"、と不安になる。さらに"この程度の問題が解けないのか"と自分を責め、絶望感にさいなまれる

4. 自動思考のくせを特定

自動思考の特徴的なくせとしてどのようなものがあるか考えます。

例:私自身を過小評価し、根拠のない決めつけをしがち

5. 自動思考と現実の比較/練習

自動思考の内容と現実の間にはどのような違い・差があるでしょうか。少しずつ現実にそった見方に変えることができるように練習をします。

例:先生に質問できないからといって人間関係をうまく構築することができないとはいえない。また解いている練習問題のなかには難易度の高い発展問題も含まれており、解けない問題があっても自分を責めるようなことではない

6. できることから練習

考え方が変わってきたら、問題を解決する方法や人間関係を改善する方法を練習して、いまできることから取り組みます。

例:先生に相談し、授業の後に質問する時間をつくってもらう。また近くに座っている友達に質問して教えてもらう
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認知行動療法にはどんな形式がある?

認知行動療法には個人で行われる認知行動療法、集団で行われる認知行動療法、インターネットや本を用いて行われる認知行動療法の3つがあります。

個人で行われる認知行動療法

個人で行われる認知行動療法とは、専門医と1対1で直接認知行動療法を受けることをいいます。個面接の回数は本人の状況やほかの併存する疾患などにより増減することがあります。
認知行動療法のすべてがわかる本 (健康ライブラリー イラスト版)
清水 栄司 (監修)
講談社
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集団で行われる認知行動療法

集団で行われる認知行動療法とは、数人のグループをつくり、複数の人々でセッションを受けることをいいます。

似たような状況にいる人が集まることで助け合いながら治療を行えると共に、他の人の意見を聞くことで客観的な視点を養うことができます。

Webサービスや本を用いて行われる認知行動療法

最近はWebサービスや本でも認知行動療法を行うことができます。その中でも、教材を使って自分で行うセルフヘルプ(自助)形式の認知行動療法と、セラピストと共に取り組むアシスト付きのセルフヘルプ(自助)形式の認知行動療法に分類することができます。

こころの病気の種類や症状により、効果的な形式はそれぞれ異なります。専門医と相談しながら、無理なく続けることのできる自分に合った形式を選ぶよう心がけましょう。

認知行動療法を受けるには

どのようにしたら認知行動療法を受けることができるのでしょうか。受診先や費用などをご説明します。

認知行動療法はどこで受診するの?

まずかかりつけの病院や精神科、メンタルクリニックなどの医療機関で相談し、ご自分の症状を踏まえて認知行動療法を受けるべきかどうか相談しましょう。専門機関での治療が必要と言われた場合は紹介状を書いてもらいましょう。

診察前に、保健所や精神保健福祉センターなどで相談するのも有効です。詳しくは次のサイトをご覧ください。
「かかりつけ医」の見つけ方・探し方 | 厚生労働省
https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/mitsukeru.html

認知行動療法にかかる費用は?

認知行動療法の治療費は、保険診療か自由診療かにより治療費には大きな違いがあります。医師による治療は場合によっては保険診療となることもあります。

2010年4月からうつ病の治療としての認知療法・認知行動療法が保険適応となりました。2016年4月からは、うつ病だけでなく、社会不安障害・強迫症・パニック症・PTSDも保険の対象となっています(2023年9月現在)。
精神科専門療法|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196295.pdf
一方、治療が自由診療の場合に治療費はすべて自己負担となり、病院によって費用にばらつきもあります。

家庭でもできる?認知行動療法とは

認知行動療法を自分で試してみたい方や症状が軽いために本格的な治療を必要としない方には、本を用いて行われる簡易な認知行動療法を試してみるのもひとつの手です。

低価格で始めることができるので、気軽に試してみることができます。まずやってみて、認知行動療法が自分にあっているかどうか確かめるのも良いかもしれません。おすすめの本をいくつかご紹介します。

セルフヘルプ方式の実践の参考になる本

セルフヘルプ方式を実践できる本があります。本に直接書き込み、ノートとして使います。
こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳
大野 裕 (著)
創元社
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子どもと若者のための認知行動療法ワークブック―上手に考え、気分はスッキリ
ポール スタラード (著), 下山 晴彦 (翻訳)
金剛出版
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心がスッと軽くなる 認知行動療法ノート ―自分でできる27のプチレッスン
福井 至 (監修), 貝谷 久宣 (監修)
ナツメ社
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認知行動療法の体験談

認知行動療法の体験談をご紹介します。
認知行動療法を受けておいて良かったな…と思うのです。
多分認知行動療法を経験していなかったら、ここまで上手く気持ちの切り替えができるようにはならなかったはずです。
時間もお金(自費診療)もかかったし……
自分の考え方が変わった実感はすぐに持てなかったけれど……
5年以上前の時間とお金の投資が、確実に今になってちゃんと実を結んでいることを思う
出典:https://h-navi.jp/posts/165431/
ADHDとASDの二次障害で適応障害になってからずっと週一で心療内科受診、月二回認知行動療法のカウンセリングを受けています。
(中略)
カウンセリングでは「リフレイミング」をトレーニング中です。これはマイナスな出来事をプラスの視点で捉え直す思考法(例. 「車を木にぶつけた」➡︎「人じゃなくてよかった!」)で、この訓練を始めてから少しだけ心が楽になりました。心理士の先生曰く、「物事をどう捉えるかを決めるのは他の人じゃなくてあなたなんだからね。自分を追い込んでしまう捉え方は損なんだよ。」
出典:https://h-navi.jp/posts/57439/
※「適応障害」は現在「適応反応症」という診断名に変更されました。

認知行動療法を通して考えのくせを見つけ、より柔軟な考え方に変えることができます。複数人で行うグループ形式や専門医との1対1、ワークブックの利用にはそれぞれ特色があるので、自分に合った認知行動療法のやり方を探しましょう。

まとめ

認知行動療法にはさまざまな定義がありますが、広義の定義としては以下のようなものがあります。
認知行動療法とは,行動科学と認知科学を臨床の諸問題へ応用したものと定義されます。複数の理論とそこから生まれた多数の技法を包含した広範な治療法として発展しています。

引用:日本認知・行動療法学会
出典:http://jabt.umin.ne.jp/cbt/
薬物療法ほど広く普及していませんが、近年は認知行動療法を行う病院も徐々に増えてきています。ご興味のある方は保健所、精神保健福祉センターに相談するか、書籍などで見てみましょう。
保健所管轄区域案内 | 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/
全国の精神保健福祉センター一覧 | 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html
認知行動療法はさまざまな種類があり、どのような方法がよいかは患者さんの症状や状態によって適応すべき技法は異なります。
既にほかの治療を行っている人は必ずかかりつけ医に相談し、少しずつ治療を進めていきましょう。

認知行動療法は他の治療法と比べて、進みが速く効果が出やすいといわれています。しかし治療の進度は人それぞれで、症状や利用する医療機関などにより治療にかかる時間・効果はさまざまです。あせらず、じっくり認知行動療法に取り組みましょう。

参考

認知行動療法とは | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/cbt/guidance/about
心の健康 | 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html
参考:認知行動療法とは|日本認知療法・認知行動療法学会
http://jact.umin.jp/introduction/
参考:うつ病の認知療法・認知行動療法|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
理学療法ジャーナル 2014年 12月号 特集 認知行動療法
医学書院
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参考:「認知行動療法の理論と基本モデル」|塚野弘明、岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要(14) P.451-459(2015)
https://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11844473
認知行動療法のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)
清水 栄司
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