言語療法・言語聴覚療法とは?対象の障害、具体的な内容、子どもに対して自宅でできるトレーニングなどを紹介

ライター:発達障害のキホン
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言語療法・言語聴覚療法とは、話す、聞く、食べるなどの機能に障害のある子どもや大人に対して行われるリハビリテーションのひとつです。言語聴覚士を中心に、医師や作業療法士、子どもの場合は教師なども含めたチームで実施されます。
ここでは、言語療法が対象とする障害、具体的な訓練内容、言語療法を受けることのできる施設などについて紹介します。

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監修: 中嶋理香
日本福祉大学 教育心理学部 教授
発達心理学、発達臨床心理学をベースに保育士、教師、保護者と共に「子どもの生きにくさ」を考えることを基本にし、活動。コミュニケーション支援や食べる機能の発達支援を実践している。
目次

言語療法・言語聴覚療法とは?

言語療法とは、言葉を話したり聞いたりする機能に障害がある人に対して、日常生活を円滑に送るために行われるリハビリテーションのことです。言語療法は、英語ではspeech and language therapyと表記され、しばしばSTと呼ばれています。

言語療法の対象は、言語機能の障害、話し言葉の障害ですが、食べたり飲み込んだりする嚥下(えんげ)機能の障害も対象です。聞こえに関する障害のリハビリも行われる場合には、言語聴覚療法とも呼ばれています。

言語療法は言語聴覚士を中心に行われる

言語療法は、主に専門家である言語聴覚士により行われます。言語聴覚士は、文部科学省または厚生労働省が指定する養成校で学び、言語聴覚士国家試験に合格している「話す」「聞く」「食べる」のリハビリに関するスペシャリストです。英語でSpeech-Language-Hearing Therapistと表記し、こちらも略すとSTとなります。

言語聴覚士は対象者に対して、各種検査と状態の評価を行い、リハビリのための訓練メニューを組み立てていきます。言語訓練には状態によって、絵カードやプリントなどのツールが用いられるほか、最近では、スマートフォンやタブレット端末のアプリを活用した例も見られます。

また、言語療法は、言語聴覚士を中心としながらも、医師などの医療専門職、介護福祉士などの保健・福祉専門職、心理専門職、子どもの場合は教師など学校関係者などと連携し、チームで連携しつつ行われます。
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言語療法の対象となる障害

言語療法の対象となる障害はいくつかあります。
主なものとしては、

・言語発達性遅滞(子どもの言葉の遅れ)
・吃音
・脳機能の障害による言語障害(失語症、高次脳機能障害など)
・構音障害
・音声障害
・嚥下(えんげ)、咀嚼(そしゃく)の障害
・きこえの障害(聴覚障害)

などです。言語療法ではこれらに対して検査を行いその結果から個々人にあったリハビリの計画を立てていきます。

言語発達遅滞(子どもの言葉の遅れ)

言語発達遅滞とは子どもの言葉の遅れを指し、生活年齢から予測される平均的な発達状態よりも、言葉の表出や理解が大幅に遅れていることをいいます。

言語発達遅滞の原因はさまざまありますが、「ことばの鎖(Speech Chain)」という「会話」に関わる一連の流れ(話し手が頭の中でメッセージを考え、声と言葉を使って相手に伝え、これを聞き手が聞き、聞き手の頭の中でメッセージを解読するという流れ)のいずれかに原因がある場合が多く、耳の聞こえに関する問題や、言葉の理解に関する問題、発達障害や知的障害(知的発達症)など認知機能に問題がある場合などが考えられます。

また、ただ言葉が出るのが遅れているだけという場合もあります。これには大きく分けて2通りあり、ひとつ目は、その子の言葉を獲得するスピードが「ゆっくりなだけ」というものです。子どもの成長のスピードは個人差が大きく、その場合、乳児期の時点では言葉が遅れていても、年齢が進むにつれて、遅れが目立たなくなることも多いと言われています。実際に乳幼児期に言葉の遅れがあっても、多くは5歳ごろには周りに追いつくという調査もあります。

もうひとつは、発達や聴覚になんらかの障害があり、その兆しとして言葉が遅れる場合です。この場合には、治療や言語療法を受けることになります。
参考:田中裕美子「ことばの遅れと言語発達障害」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/42/1/42_16/_pdf/-char/ja
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吃音

吃音とは同じ音を繰り返したり、言葉が円滑に出ずに詰まったりする状態を指します。例えば、「みみみみかん」と同じ音を繰り返したり、「みーかん」と音が引き延ばされたり、「……みかん」など、言う言葉がとっさに出てこず、詰まったりします。

吃音には発達性吃音と獲得性吃音の2種類があり、9割の人は発達性吃音だと言われています。発達性吃音は2歳から5歳あたりの子どもに見られることが多く、その発症率は5%程度とされています。

一方の獲得性吃音は、脳の損傷や心的ストレスなどが原因となり、10代後半以降の子どもや大人に多く見られます。
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脳機能の障害による言語障害

脳機能の障害による言語障害とは、発語や発声や運動器官に問題がないものの、脳の言語機能・高次の認知機能の障害が起こることにより、聞いた言葉を理解できなかったり、言いたい言葉が口から出なくなってしまう障害のことです。

■失語症
失語症とは「言葉の記憶喪失」のような状態であり、いったん獲得された言語知識が脳の損傷により失われてしまうことです。失語症では、言語中枢に障害が現れるため、話すことのほか、相手の言ったことを理解することや文字の読み書きにも障害が現れます。

■高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、脳の記憶や知覚をつかさどる認知機能の障害のことで、脳卒中や交通事故による頭部の損傷などが原因となります。さまざまな面で影響が出てきますが、言葉においては「言いたい言葉がうまく出てこない」「聞こえているが理解ができない」などの影響があります。

構音障害

構音障害とは、身体の中の音を作る機能に障害があり、思ったように発音ができない状態のことです。器質性構音障害、運動障害性構音障害、機能性構音障害という種類があります。

■器質性構音障害
怪我や疾患などが原因で、音を作る器官の変形や欠損が起きることで発音に影響が生じることを、器質性構音障害と言います。先天性と後天性があり、先天性のものは口蓋裂など、後天性のものはがんによる手術などが原因となります。

■運動障害性構音障害
パーキンソン病や脳卒中など、発音に関する運動をつかさどる神経の疾患が原因で起こるのが、運動障害性構音障害です。口や舌の動きをコントロールできないことで、発音に影響が出てきます。

■機能性構音障害
脳や神経に異常が見られないのに発音に問題がある場合を、機能性構音障害と呼んでいます。学齢期になってもさ行やか行を正しく発音できない、赤ちゃん言葉が続く、子どものころに身につけた発音の間違いが大人になっても直らないなどの症状があります。

嚥下(えんげ)、咀嚼(そしゃく)の障害

言語療法では、口腔の機能、つまり食べることに関する障害も対象となります。食べることに障害があると、食べ物が気管に入っておこる肺炎(誤嚥性肺炎)や食べ物による窒息など命にかかわる可能性があるほか、低栄養による体力・免疫力の低下が起こった結果、食べる喜びに影響することもあります。

きこえの障害(聴覚障害)

音や声が聞こえない、あるいは聞こえにくい障害です。病気や怪我などさまざまな原因があります。
大人の場合は加齢によって聞こえづらくなり、アナウンスや電話が聞こえないなど生活に支障をきたすことがあります。また、子どもが生まれつき耳のきこえが悪い場合、コミュニケーションや言葉の発達の面に遅れが生じることがあります。
言語聴覚療法では、難聴などの「聞こえ」に関する疾病や障害のリハビリも行います。

言語療法の具体的な内容とやり方

言語療法の全体的なやり方として、まず言語聴覚士を中心にどのような問題が問題が起こっているか、何がその原因なのかを評価し、それぞれに合った訓練メニューを組み立てて実行していくという流れで行われます。

言語療法の種類

言語療法には多くの種類があり、障害の程度やその人の状況に合わせて言語聴覚士が訓練メニューを設定します。言語聴覚士と対象者による個別支援が多いですが、中には集団訓練として、発声やコミュニケーションの支援などを複数人で行うこともあります。

また、言語療法は病院や事業所で受けることが多いですが、最近では、Zoomなどを用いた遠隔指導も行っています。言語聴覚士により自分でもできる訓練メニューやリハビリ後の生活の工夫などの指導も行われます。

言語療法の内容とやり方

ここでは障害ごとによく行われる言語療法の具体的な内容を紹介します。

■言語発達遅滞(子どもの言葉の遅れ)
言語発達遅滞(子どもの言葉の遅れ)への具体的な言語療法については、第4章の「子どもの言語療法と自宅でできるトレーニング方法」で説明します。

■吃音
現在、吃音については確立された治療法というものがありません。 一般的には、言語聴覚士による言語訓練、カウンセリング、認知行動療法などが行われることがあります。

■構音障害
構音障害の言語療法では、正しい息の吐き出し方を練習するブローイング訓練や、舌の筋肉や運動機能を鍛える口腔筋機能療法、正しい音を身につける構音訓練法などのリハビリが行われます。
また、構音障害の原因によっては外科手術や歯科医師が発声を促す装置を装着するという場合もあります。

■嚥下障害
嚥下障害の言語療法では、食べるための筋肉を鍛えるなどの間接訓練と、実際に食べ物を使用した直接訓練があります。間接訓練では口の体操をする、ガムをかむなどで運動機能を刺激し、直接訓練では専用の食器などを使って実際に食べる練習を行います。さらに、その人の嚥下機能の状態で楽しく、おいしく食べられる物を提案してもらうこともあります。また、言語療法を通してその人に合った一口の量の把握などスムーズに食事をする方法も探っていきます。

■失語症
失語症の言語療法では、絵カードなどを用いて日常生活でよく使う言葉の理解や想起を促したり、発声したりするリハビリが行われます。絵カードとは、「リンゴ」や「座る」などのイラストと文字言葉がセットで描かれているカードで、視覚的に言葉を認識しやすくしたものです。また、言葉だけでなくジェスチャーなど言葉以外でコミュニケーションを取る練習もしていきます。

■高次脳機能障害
高次脳機能障害の言語療法では、パズルなどのプリントやゲームなどを用いた注意力向上の支援、記憶力の維持向上の支援や記憶力を補うためのプリントやアプリの使い方の練習などを行っていきます。
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