発達障害のある子どもを「通常学級」に入れるときに気をつけたい3つのポイント

ライター:立石美津子
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お子さんが発達障害と診断されていると、小学校の進級先を「特別支援学級」にするのか、「通常学級」にするのか、すごく悩んでしまいます。生徒数も多い通常学級で発達障害のある子が過ごす場合、保護者として注意したいポイントについてお話したいと思います。

通常学級でも「合理的配慮」が義務化 、しかし現実は…?

こんにちは。『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。

2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、一人ひとりの困りごとに合わせた「合理的配慮」を行うことが義務化されました。

これによって、学校の通常学級でも、障害のある児童に対して個別のきめ細かい対応を教員側が行うことが求められるようになりました。

たとえば、文字の読み書きに困難がある児童には、タブレットや音声読み上げソフトで学習することを可能にするなど、一人ひとりの凸凹に合わせて、困難を解消する措置をとるのが合理的配慮です。
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合理的配慮とは?考え方と具体例、合意形成プロセスについて【専門家監修】

ただし、これで学校側の支援体制がすぐに変わるというわけではありません。地域、学校、教師の指導力の差もあります。発達障害児について全教員が豊富な知識を持って正しい対応ができているかどうかも疑問です。

教育現場の体制が一気に変わるわけではありませんので、誰もが学びやすいユニバーサルな通常学級の実現までには、まだまだ遠い道のりがあります。この法律ができたことで安心するのではなく、「通常学級に入れることはどんなことなのか」を親がしっかり把握しておかなくてはならないと思います。

生徒数も多い通常学級で、発達障害のある我が子は大丈夫?親が気をつけたい3つのポイント

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(C)今井久恵, すばる舎
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文部科学省の規定で、小学校の1年生の人数は一クラス35名となっています。2年生からは40名。非常勤のスタッフが加配という形で人員が多くなることもありますが、基本、教師1名:生徒40名が通常学級です。

担任教師は、学習指導要領のカリキュラムに沿って授業を行っています。乱暴な言い方ですが、生徒がわかっていようといまいと、「学期終わりの翌年3月までには○○の単元まで」と、授業を進めなくてはならないわけです。

また、通常学級では特別支援学校とは異なり、障害のある児童それぞれの特性や課題に合わせた、「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」の作成義務はありません。
「学級編制の仕組みと運用について(義務)」|文部科学省
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/07/29/1295041_2.pdf
通常学級と特別支援学級と特別支援学校で、1学級あたりの生徒数、個別の指導計画の策定義務、担任の資格を比べた表
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専門性もあり熱心な先生が自主的に指導計画・支援計画を作成してくれることも無くはないですが、未だ多くの通常学級では、十分な個別の対応を期待することは難しいと思います。通級制度や特別支援教室を週に何回か利用するという形で支援を受けるのが現実的でしょう。(*特別支援教室は東京都で平成28年度から順次取り入れている制度)

こうした前提を踏まえて、「うちの子は通常学級でがんばれそうかな?」と悩んでいる保護者の方に向けて、通常学級で適応できるかどうかの見極めポイントを3つご紹介します。

45分、落ち着いて座っていられるか?

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小学校の授業は1コマ45分です。つまり、45分間は席に着いて机上での勉強に集中できること、さらに教師の指示に従い、集団行動がとれることが前提となってきます。

これらができないと、叱られる回数が増えたり、他の生徒達からも奇異の目で見られたりして、子どもの自己肯定感が下がってしまうおそれがあります。

これが難しい場合は、加配の支援員を付けてもらえるよう相談する、通級や支援級の利用も視野に入れる、学校の外で療育に通うなどして、子ども自身のスキル獲得を支援する、などの手段も考慮に入れてみてください。

一方、教室を脱走するなどの積極奇異型ではない受動型の発達障害の子の場合、椅子にじっと座ってはいられますが、座っていてもファンタジーの世界に没頭して、まったく授業を聞いていない場合もあります。

このタイプの子どもは、教師にとっては扱いやすい子どもではありますが、放置されるおそれもあります。

授業内容を理解できているかどうかを保護者の方でも注意しながら、担任や支援員にも、意識的に気にかけてもらえるよう働きかけることが重要です。

9歳の壁を乗り越えられるか?

小学校の授業内容は、3年生から急に難しくなります。

1、2年生のうちは、機械的な計算問題や漢字の書き取りが中心になるので、まだ何とかついていけていても、抽象的な思考・理解が求められる単元が入ってくる3年生以降でつまずく子がいます。

学習面のつまづきに関しては、小学校入学時だけでなく、3年生に上がる時期の「9歳の壁」にぶつかっていないか注意してみることが大切です。

友達とうまくコミュニケーションがとれるか?

幼稚園、保育園時代はまだ周りの友達も幼児です。“みんな仲良し”が通用します。
けれども、小学生になると友達関係が複雑化します。グループを作ったり秘密を持ったりします。

勉強はなんとかなってもコミュニケーションがうまくとれない、相手との距離感がわからないなどで、仲間外れになり、いじめのターゲットとなることもあります。

通級指導教室や、学外の放課後等デイサービスを利用してソーシャルスキルトレーニングを受けるなど、その子の対人関係を支援する方法を考えましょう。
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障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめ

通常学級が学級崩壊状態になったとき、親としてどうすれば良いか?

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授業参観に行くと、3~4名の子どもがウロウロ席を立ち、授業自体が成り立たずに学級崩壊している光景を、目にすることがあります。

もちろん、教師の指導力の問題や家庭の躾が原因のこともありますが、少なからず、発達障害児と呼ばれる子ども達が一定のパーセンテージいます。そして、教師がどんなに努力してもクラスがまとまらない状況になっていることがあります。

担任教師は自分の無力さを感じ、保護者からクレームを受け、責任感に押し潰され、ストレスを溜め鬱病になり、辞めていく…。そんなケースもあります。

「教員数、担任のスキル不足でグレーゾーンの子どもの対応が通常級の中でうまくできない」
「特別支援学級に在籍して、手厚い指導を受けた方がよい、知的な遅れのある子どもが通常学級にいる」
「食事、トイレなどの身辺自立が難しい重度の子どもが特別支援学級にいる」

などなど…学校側と子ども・家庭側のスキルや要望のミスマッチが重なっていくと、学校現場は混乱してしまいます。

学校選びは原則、親の意向が優先されます。親側の「こういうクラスで過ごさせたい」の思いだけでなく「我が子にとって適切な教育環境かどうか」を念頭に、公開授業や授業見学日に足しげく通い、客観的に観察する目を持ちましょう。
次ページ「通常学級での環境整備は、保護者からの働きかけも大切」

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