医療保護入院とは?精神科病院への入院・退院の要件は?費用・期間・措置入院との違いなどをわかりやすく解説【専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
医療保護入院とは、精神障害のある人を対象とした入院形態の一つで、本人に代わって家族等の同意を得て行われるもの です。この記事では、医療保護入院の対象、要件、手続き、入院から退院後までの流れ、費用や受けられる助成金などについてわかりやすく解説します。
監修: 渡部伸
行政書士
親なきあと相談室主宰
社会保険労務士
慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。
親なきあと相談室主宰
社会保険労務士
医療保護入院とは?わかりやすく説明します!
医療保護入院とは、精神保健福祉法(正式名称「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)により定められた精神科病院への入院形態の一つです。
まず、精神保健福祉法に基づく精神科病院への入院の形には、次の4つがあります。
・本人の同意を得て行う「任意入院」
・自傷他害のおそれのない本人の家族等から同意を得て行う「医療保護入院」
・自傷他害のおそれのある場合に都道府県知事の措置により行う「措置入院」
・本人や家族から同意を得られていないが、急を要するため72時間以内に限り入院する「応急入院」
この記事では、二つ目の「医療保護入院」を紹介します。
医療保護入院は、精神障害のある人を対象に、本人からの同意がない場合(本人が拒否した場合など)に家族等から同意を得ることで始まる入院治療のことです。精神保健指定医(または特定医師)の診察の結果、医療や保護のために入院が必要な状態であるにもかかわらず、病状から本人の同意が得られない場合に、家族等の同意を得て行われるものです。
ただし、本人に同意を求められる状態である場合には、本人に対して入院治療の必要性等を十分に説明し、可能な限り本人の同意を得る「任意入院」となるように努めなければならない、とされています。 本人の同意が得られず家族等からの同意による医療保護入院となった場合は、本人に対して入院措置となる旨や本人から退院を求める「退院請求」などについて、書面で知らせる必要があります。
・本人の同意を得て行う「任意入院」
・自傷他害のおそれのない本人の家族等から同意を得て行う「医療保護入院」
・自傷他害のおそれのある場合に都道府県知事の措置により行う「措置入院」
・本人や家族から同意を得られていないが、急を要するため72時間以内に限り入院する「応急入院」
この記事では、二つ目の「医療保護入院」を紹介します。
医療保護入院は、精神障害のある人を対象に、本人からの同意がない場合(本人が拒否した場合など)に家族等から同意を得ることで始まる入院治療のことです。精神保健指定医(または特定医師)の診察の結果、医療や保護のために入院が必要な状態であるにもかかわらず、病状から本人の同意が得られない場合に、家族等の同意を得て行われるものです。
ただし、本人に同意を求められる状態である場合には、本人に対して入院治療の必要性等を十分に説明し、可能な限り本人の同意を得る「任意入院」となるように努めなければならない、とされています。 本人の同意が得られず家族等からの同意による医療保護入院となった場合は、本人に対して入院措置となる旨や本人から退院を求める「退院請求」などについて、書面で知らせる必要があります。
医療保護入院の制度は、平成26年の法改定により以下のような変更がありました。
・「保護者の同意」ではなく、「家族等の同意」を要件とする
・精神科病院の管理者に、精神保健福祉士等の設置や地域援助事業者との連携、退院促進のための体制整備を義務付ける
「家族等」とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人を指します。以前は「保護者の同意」でしたが、保護者にあたる家族の高齢化等に伴い、負担が大きくなっている等の理由から、保護者に関する規定が削除されました。
・「保護者の同意」ではなく、「家族等の同意」を要件とする
・精神科病院の管理者に、精神保健福祉士等の設置や地域援助事業者との連携、退院促進のための体制整備を義務付ける
「家族等」とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人を指します。以前は「保護者の同意」でしたが、保護者にあたる家族の高齢化等に伴い、負担が大きくなっている等の理由から、保護者に関する規定が削除されました。
医療保護入院は、精神科病院への入院制度のひとつです。「精神科と心療内科の違いは?」と疑問に感じる方は、以下の記事も参考にしてみてください。
心療内科と精神科の違いは?頭痛や吐き気、倦怠感でも受診可能?対象になる病気や障害、治療の流れや費用について【精神科医が回答】
医療保護入院の平均的な期間は?
医療保護入院の入院期間の平均は、どのくらいなのでしょうか?平成27年度の全国調査では、入院診療計画書の医療保護入院の入院期間は、以下のような結果でした。
・1~2ヶ月未満:8.7%
・2~3ヶ月未満:26.9%
・3~6ヶ月未満:40.1%
このことから、医療保護入院の入院期間は、3か月前後が多いのではないかと考えられています。
なお、2022年の「精神保健福祉法」の改正により、医療保護入院の入院期間は、最長6か月(入院開始から6か月までの間は3か月以内)の上限が設けられています。
・1~2ヶ月未満:8.7%
・2~3ヶ月未満:26.9%
・3~6ヶ月未満:40.1%
このことから、医療保護入院の入院期間は、3か月前後が多いのではないかと考えられています。
なお、2022年の「精神保健福祉法」の改正により、医療保護入院の入院期間は、最長6か月(入院開始から6か月までの間は3か月以内)の上限が設けられています。
医療保護入院の利用者数は?
医療保護入院の届出数は、令和3年時点で約18.5万人であり、前年に比べて0.8%増加しています。入院者数のうち、もっとも多いのは「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」の患者です。
統合失調症とは?症状や特徴、原因、治療法、薬などについて詳しく解説します
医療保護入院のメリット・デメリットは?
「医療保護入院のデメリットはあるの?」と気になる方もいるかもしれません。
医療保護入院について、当事者の視点の調査では、以下のような報告があり、医療保護入院のデメリットを感じる方もいると言えるでしょう。
医療保護入院について、当事者の視点の調査では、以下のような報告があり、医療保護入院のデメリットを感じる方もいると言えるでしょう。
・医療保護入院を経験したことで親子関係に悩むという考えに共感を示す回答:83%
・「なにがあっても入院は絶対にしたくない」という意見に共感を示す回答:65%
出典:【報告書】当事者の視点から期待するーこれからの入院制度についての意識調査ー
医療保護入院は、本人の同意がない状態で始まる入院治療であることから、本人視点では上記のような心情を抱く可能性はあるかもしれません。本人または家族として、不安に思う点や疑問点については、担当医や精神保健福祉士 など医療機関の担当者にしっかり相談するとよいでしょう。
また、メリットについては、入院により以下のような治療を受けられることが挙げられるでしょう。
・清潔を保ち、規則正しい生活ができる
・バランスのよい食事が提供される
・精神療法や薬物療法、心理教育、リハビリテーションなど、専門的な治療が受けられる
・精神面だけでなく、身体的な疾患の治療も受けられる
そのほか、退院後の生活についても支援が行われます。
・清潔を保ち、規則正しい生活ができる
・バランスのよい食事が提供される
・精神療法や薬物療法、心理教育、リハビリテーションなど、専門的な治療が受けられる
・精神面だけでなく、身体的な疾患の治療も受けられる
そのほか、退院後の生活についても支援が行われます。
医療保護入院・退院をするための要件は?家族等の同意は必要?
入院の要件は?
医療保護入院となる入院の要件は以下の通りです。
◇精神障害があり、本人に自傷他害のおそれがない
医療保護入院の対象は、精神障害のある人で、本人に自傷他害の可能性がないときにとられる入院形態です。本人が周りの人や自分を傷つける可能性のあると判断された場合には、措置入院という方法がとられることがあります。
◇医師により入院が必要と判断されるが、本人が入院に同意できる状態でない
精神保健指定医の診察で入院が必要と判断されるにもかかわらず、本人が病状から入院の必要性を適切に判断することが難しいような状態 のときに医療保護入院が検討されます。本人からの同意が得られる場合には「任意入院」という形態になります。
また、医療保護入院が必要かどうか判断する医師は、基本的には精神保健指定医に限定されます。精神保健指定医とは、精神科入院に関する診察や判断を行うために、必要な知識や技能をもつと認められた医師です 。特に医療保護入院のように本人の同意がない状態で始まる入院などは、本人の人権が適切に守られることを前提に、厳格な医療的判断が必要である ため、精神保健指定医が判断を行う決まりになっています 。
また、緊急その他やむを得ない場合、精神科2年を含む4年以上の臨床経験があるなどの条件を満たしている特定医師が診察する場合があります。特定医師による診察の場合、入院は12時間までとされています。
◇家族等から入院の同意が必要
医療保護入院は、本人の同意に代わって、家族等が入院に同意が必要です。「家族等」とは、配偶者や親権のある者、扶養義務者です。そのほかには、後見人や保佐人(判断能力の十分でない人の法的行為を支援する人)も「同意をすることのできる家族等」に含まれます。何らかの事情で該当者がいない場合等には、市町村長が同意の判断を行います。
◇精神障害があり、本人に自傷他害のおそれがない
医療保護入院の対象は、精神障害のある人で、本人に自傷他害の可能性がないときにとられる入院形態です。本人が周りの人や自分を傷つける可能性のあると判断された場合には、措置入院という方法がとられることがあります。
◇医師により入院が必要と判断されるが、本人が入院に同意できる状態でない
精神保健指定医の診察で入院が必要と判断されるにもかかわらず、本人が病状から入院の必要性を適切に判断することが難しいような状態 のときに医療保護入院が検討されます。本人からの同意が得られる場合には「任意入院」という形態になります。
また、医療保護入院が必要かどうか判断する医師は、基本的には精神保健指定医に限定されます。精神保健指定医とは、精神科入院に関する診察や判断を行うために、必要な知識や技能をもつと認められた医師です 。特に医療保護入院のように本人の同意がない状態で始まる入院などは、本人の人権が適切に守られることを前提に、厳格な医療的判断が必要である ため、精神保健指定医が判断を行う決まりになっています 。
また、緊急その他やむを得ない場合、精神科2年を含む4年以上の臨床経験があるなどの条件を満たしている特定医師が診察する場合があります。特定医師による診察の場合、入院は12時間までとされています。
◇家族等から入院の同意が必要
医療保護入院は、本人の同意に代わって、家族等が入院に同意が必要です。「家族等」とは、配偶者や親権のある者、扶養義務者です。そのほかには、後見人や保佐人(判断能力の十分でない人の法的行為を支援する人)も「同意をすることのできる家族等」に含まれます。何らかの事情で該当者がいない場合等には、市町村長が同意の判断を行います。
退院の要件は?
医療保護入院の場合、どのように退院の判断がされていくのでしょうか。退院できないケースというのは、どのようなものがあるのでしょうか。
入院時に決めた入院期間を迎えると、退院や引き続きの入院の必要性について「医療保護入院者退院支援委員会」にて議論されます。 引き続き入院が必要と判断される場合には、入院期間の延長の手続きがとられます。
なお、精神科病院の管理者から、家族等に入院期間の更新について必要な事項を通知したものの、一定期間を過ぎても家族等から「不同意」の意思表示がなかった場合には、「同意を得たもの」とみなすことができることになっています。
入院時に決めた入院期間を迎えると、退院や引き続きの入院の必要性について「医療保護入院者退院支援委員会」にて議論されます。 引き続き入院が必要と判断される場合には、入院期間の延長の手続きがとられます。
なお、精神科病院の管理者から、家族等に入院期間の更新について必要な事項を通知したものの、一定期間を過ぎても家族等から「不同意」の意思表示がなかった場合には、「同意を得たもの」とみなすことができることになっています。
医療保護入院の費用はどのくらい?医療費の助成はある?
医療保護入院について、健康保険が適用される費用については、3割以下の自己負担額となります。医療費の7割以上は健康保険で支払われますが、費用を負担することが難しい場合もあるかもしれません。
入院費用がかさむ場合には、以下の制度を利用することにより医療費の補助を受けることができる場合があります。
入院費用がかさむ場合には、以下の制度を利用することにより医療費の補助を受けることができる場合があります。
心身障害者医療費助成制度
各行政が行っている身体や精神等に一定以上の障害のある人を対象とした医療費助成の制度です。保険診療の医療費の自己負担額の一部または全額が助成されます。自治体によって、呼称が異なることがあります(「重度障害者医療費助成」「重度心身障害者医療費助成制度」等)。
この制度は都道府県や市町村が実施しているもの であり、対象者の要件は自治体により異なります。例えば、以下のような方を対象としていることがあります。
・身体障害者手帳1級から3級の方
・療育手帳A1またはA2の交付を受けている方
・精神障害者保健福祉手帳1級の交付を受けている方
小児も対象になるかどうかについても、自治体によって異なります。例えば、「乳幼児医療費助成制度」に登録している方は対象外としている自治体 もあれば、「子ども医療費よりも重度心身障害者医療費の制度が優先」としている自治体 もあります。
また、本制度は所得制限があることもあります。本人の所得だけでなく、配偶者あるいは扶養義務者のいずれかの所得が所得制限基準額よりも多い場合、助成を受けられない自治体 もあります。詳細は自治体によって異なりますので、ご利用を検討する際には、お住まいの自治体のホームページなどで確認しましょう。
この制度は都道府県や市町村が実施しているもの であり、対象者の要件は自治体により異なります。例えば、以下のような方を対象としていることがあります。
・身体障害者手帳1級から3級の方
・療育手帳A1またはA2の交付を受けている方
・精神障害者保健福祉手帳1級の交付を受けている方
小児も対象になるかどうかについても、自治体によって異なります。例えば、「乳幼児医療費助成制度」に登録している方は対象外としている自治体 もあれば、「子ども医療費よりも重度心身障害者医療費の制度が優先」としている自治体 もあります。
また、本制度は所得制限があることもあります。本人の所得だけでなく、配偶者あるいは扶養義務者のいずれかの所得が所得制限基準額よりも多い場合、助成を受けられない自治体 もあります。詳細は自治体によって異なりますので、ご利用を検討する際には、お住まいの自治体のホームページなどで確認しましょう。
高額療養費制度
高額療養費制度は、主に医療機関の窓口で支払う医療費が1か月(1日から末日まで)の上限額を超えた場合、その超過分が支給されるというものです。 上限額は、所得や年齢に応じて定められており、医療費の家計負担が重くならないための制度です。
高額療養費制度は、窓口で支払った後に申請することで、上限額の超過分の払い戻しを受けることができますが、受診した月から支給まで3か月以上かかります。
ただし、マイナ保険証や限度額適用認定証を利用すると、窓口での1か月の支払いが自己負担限度額までにすることができます。
このほかにも、全国健康保険協会による高額医療費貸付制度や、各自治体独自の助成制度な どがあります。自治体の保険医療課や医療助成課、障害福祉課などに訪ねてみるとよいでしょう。
高額療養費制度は、窓口で支払った後に申請することで、上限額の超過分の払い戻しを受けることができますが、受診した月から支給まで3か月以上かかります。
ただし、マイナ保険証や限度額適用認定証を利用すると、窓口での1か月の支払いが自己負担限度額までにすることができます。
このほかにも、全国健康保険協会による高額医療費貸付制度や、各自治体独自の助成制度な どがあります。自治体の保険医療課や医療助成課、障害福祉課などに訪ねてみるとよいでしょう。