総務省・発達障害者支援実態調査まとめ②: 発達障害発見後の支援と引継ぎについて

ライター:発達ナビニュース
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総務省が発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告の実施を行いました。発達ナビでは「早期発見に関すること」「発見後の支援と引継ぎに関すること」「専門的医療機関の確保に関すること」の全3回に分けて詳しくお伝えします。

総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11032003420
2017年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。

前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。
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総務省・発達障害者支援実態調査まとめ①: 早期発見はうまくいっているの?

今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。

発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは

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発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。
(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用
特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。
また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。

(5) 「個別の指導計画」の作成
特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。
また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。

特別支援教育の推進について(通知)
出典:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm
なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。
法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/190/pdf/s051900361900.pdf

支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?

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しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。

この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。

そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。

未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。

また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。

そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。
問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。
出典:http://www.soumu.go.jp/main_content/000458761.pdf
一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。

総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。
次ページ「継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…」

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