総務省・発達障害者支援実態調査まとめ①: 早期発見はうまくいっているの?

ライター:発達ナビニュース
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総務省が発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告の実施を行いました。発達ナビでは「早期発見に関すること」「発見後の支援と引継ぎに関すること」「専門的医療機関の確保に関すること」の全3回に分けて詳しくお伝えします。

目次

総務省による初の発達障害者支援実態調査

2017年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。

約12年前となる2005年4月、「発達障害者支援法」が施行され、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの「発達障害」のある児童生徒が乳幼児期から切れ目なく適切な支援が受けられるよう、国、都道府県及び市町村の責務や求められる取組が定められました。
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「発達障害者支援法」改正、押さえておきたい7つのポイントまとめ

この発達障害者支援法が制定されるまで、発達障害は、身体、知的及び精神の各障害者制度の谷間に置かれ、必要な支援が届きにくい状態となっていました。

しかし同法の施行により、発達障害の早期発見、発達支援(医療的、福祉的及び教育的援助)サービスの提供、学校教育における支援、就労の支援、発達障害者支援センターの設置などが進められてきました。法の施行後、発達障害に対する理解や支援の取組が進展したとの一定の評価がなされています。

一方、今回の総務省勧告では、
・発達障害の早期発見の不十分さや市町村による発見状況の差
・障害児に対する「個別の指導計画」「個別の教育支援計画」の未作成
・進学過程での支援の途切れ
・専門的医療機関の不足
などの課題が残っていることが指摘されました。

発達ナビでは、この総務省による発達障害者支援に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告について、「早期発見に関すること」「発見後の支援と引継ぎに関すること」「専門的医療機関の確保に関すること」の全3回に分けて詳しくお伝えします。

発達障害早期発見の重要性と早期発見の場としての健診

現在、適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等といった二次障害を未然に防止するという観点から、発達障害の早期発見と適切な支援の実施はとても重要だと考えられています。
発達障害者に対する適切な支援がなされない場合、その特性により生じる問題に周囲が気づかずに、無理強い、叱責などを繰り返すことで失敗やつまずきの経験が積み重なり自尊感情の低下等を招き、更なる適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等、二次的な問題としての問題行動(以下「二次障害」という。)が生じることがあるとされている。
(生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)
出典:http://www.soumu.go.jp/main_content/000458761.pdf
こうした二次障害を未然に防止する上で、発達障害者を早期に発見し、早期に適切な発達支援につなげていくことが特に重要であることから、国及び地方公共団体は、発達障害の早期発見のため必要な措置を講ずるものとされている。
(発達障害者支援法第3条第1項)
出典:http://www.soumu.go.jp/main_content/000458761.pdf
また、早期発見の機会としては、
1歳6か月児健診、3歳児健診、5歳児健診などの乳幼児健診や、就学時健診が該当します。
市町村は、母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条及び第13条に規定する健康診査(以下「乳幼児健診」という。)を、市町村教育委員会は学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第11条に規定する就学時の健康診断(以下「就学時健診」という。)を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならないものとされている。
(発達障害者支援法第5条第1項及び第2項)
出典:http://www.soumu.go.jp/main_content/000458761.pdf
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調査で分かった早期発見の取り組みにおける課題点

厚生労働省は乳幼児健診において、広汎性発達障害を早期に発見するためのツールとして、2歳前後の幼児に対して自閉症スペクトラムのスクリーニング目的で使われる、親記入式の質問紙であるM-CHATや、広汎性発達障害の支援ニーズを評価するための評定尺度であるPARSの活用・普及を図っています。

そして就学時健診を行うにおいて、市町村教育委員会に対し発達障害の早期発見に十分留意するよう求めてはいますが、具体的な方法は特に示してはいません。

今回の調査の結果、健診時に発達障害が疑われる児童を見逃しているおそれが指摘されています。というのも調査対象となった31市町村で、市町村ごとの発達障害が疑われる児童の発見割合をみると、1歳6か月児検診では0.2%から48.0%まで、3歳児検診では0.5%から36.7%までと、市町村ごとで発達障害が疑われる児童の発見割合にかなりのばらつきがある検診で発達障害が疑われる児童の発見割合が1.6%を下回る市町村については、発見に漏れがある可能性が高いのではと考えられます。

また、厚生労働省が早期発見ツールとして普及を図っているM-CHAT及びPARSの活用がされている市町村は、31市町村のうち5市町村にとどまりました。

総務省は厚生労働省に対し、乳幼児健診における発達障害が疑われる児童の発見のための市町村の取組実態を把握するとともに、発達障害が疑われる児童を早期発見する有効な措置を講ずることを勧告しています。

文部科学省に対しては、就学時健診時における発達障害の発見の重要性を改めて周知徹底するとともに、就学時健診における具体的な取組方法を示すことを勧告しています。
次ページ「発達障害早期発見のための保育所・学校の取り組み」

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