ICF(国際生活機能分類)とは?ICFの考え方からその活用法まで、分かりやすくご紹介します!

2017/01/31 更新
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ICF(国際生活機能分類)とは、人間の「生活機能」と「障害」を判断するための「分類」の方法を示したものです。人間の生活を障害の有無のみではなく、活動や参加の状況、また周囲の環境など広い視点から理解し、サポートにつなげることを目的としています。ここでは、ICFについて詳しくご説明するとともに、その目的や活用方法をご紹介します。

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大きな可能性を秘めた分類法、ICF(国際生活機能分類)

誰もが助け合いながらともに生きていける社会。そんな社会を実現するために、近年は「障害者差別解消法」の施行や「インクルーシブ教育」の普及など、多くの取り組みが行われています。

これらの取り組みの基本的な考え方には、「社会での<生きづらさ>を抱えた人がより良い生活を送るためには、その人自身の変化だけではなく、社会全体のサポート体制を構築していくことが欠かせない」というものがあります。

今回ご紹介する「ICF(国際生活機能分類)」は、生活機能や障害の状況の分類分けを提供すると同時に、「障害」のある状態を、本人を含めた社会全体でよりよくするための重要な要素をたくさん盛り込んでいます。

お医者さんや学校の先生、介護など様々な分野で働いている人たちが、より充実したサポートを提供していくのに重要となるICF(国際機能分類)について、詳しく見ていきましょう。

ICF(国際生活機能分類)とは

ICFはInternational Classification of Functioning, disability and Healthの略で、日本語では国際生活機能分類と呼ばれています。2001年に世界保健機関(WHO)によって採択されました。

ICFはその名にもある通り、人間の「生活機能」と「障害」を判断するための「分類」の仕方を示したものです。

ここでいう「生活機能」とは簡単に言うと、「人が生きていくこと」を指しています。ご飯を食べたり運動をしたり、社会に参加したり、それらをする能力はすべて「生活機能」ということができます。

これに対し、ICFでは「生活機能」が何らかの理由で制限されている状況を「障害」としています。心身機能に障害がある場合に加え、たとえば「コミュニケーションをとることが困難」な状況や、「仕事をすることができない」といった状況も、活動や参加に「障害」がある状況としてとらえられます。そんな「生活機能」と「障害」の状況を細かく分類分けして、示しているのがICFです。

加えてICFでは、生活機能や障害の状況に影響を与える要素として「環境因子」と「個人因子」(※注1) を挙げ、「環境因子」も同じように分類分けをしています。つまり「生活機能」を作り上げている要因も分類分けすることで、「人が生きること」を広い視点から総合的に理解することを目指しているのです。

(※注1) 現段階では「個人因子」は分類分けされていません。

ICIDHからの歴史的変遷

ICFの考え方はどのようにして生まれてきたのでしょうか。ここではICFを理解するのに欠かせない「ICIDH(国際障害分類)」という考え方について触れながらご説明します。

ICIDHとは International Classification of Impairments, Disabilities and Handicapsの略で日本名を国際障害分類と言います。ICFと同じくWHOによって定められ、ICFが採択される約20年前の1980年に作られました。

「生活機能」を分類しているICFに対してICIDHは、その名の通り「障害」を分類する分類法です。障害を「心身レベルの障害」、「能力レベルの障害」、そして「社会レベルの障害」という3つのレベルに分類をしたことが画期的でした。

しかしICIDHの考え方には問題点が多く挙げられ、その中の一つとして「障害が直接的に社会的不利につながるという認識がなされてしまう」という問題点がありました。

本当であれば障害のある人が「買い物の困難さ」に直面する原因には、その人の抱える障害だけではなく、お店にエレベーターがないことや、途中で手を貸してくれる人がいないことなど、いろいろな要因が存在します。ところがICIDHでは、障害があることが「買い物の困難さ」という社会的不利を生み出す唯一の原因としてとらえられてしまう危険性があったのです。

そこで考え出されたのがICF(生活機能分類)です。その人の生活機能を、障害だけではなく環境を含めた広い視点からポジティブな視点も含めてとらえることを目指して作られました。

医学と社会の「統合モデル」としてのICF

これまでは人間の障害や生活機能を考える際に、「医学モデル」と「社会モデル」という考え方が主流でした。

「医学モデル」では、病気やけがなどが直接障害を引き起こすものとして理解されるため、障害への対応には医療が必要不可欠なものとされています。一方で「社会モデル」では、障害が周囲の環境によって作り上げられるものとされているため、社会の環境を変えることが障害をなくすことにつながるとの考え方がされています。

ICFの考え方は、これまでの「医学モデル」と「社会モデル」を統合するものということができます。つまり、障害を個人と周囲の環境双方からとらえ、人間の状況を全体的に理解することを目指しているのがこのICFなのです。

ICFを構成する要素

ICFでは人の生活機能を「心身機能・身体構造」、「活動と参加」という2つの要素から構成しています。そして、その生活機能に相互に影響を与えあう背景因子として「環境因子」と「個人因子」の2つを挙げています。

ここではそれぞれの要素がICFにおいてどのように説明されているか、そしてどのような項目のもとで分類分けされているかをご紹介します。初めに、生活機能を構成している「心身機能・身体構造」と「活動と参加」の2つの要素についてです。

生活機能と障害

生活機能は初めにも触れたように、「人が生きていくこと」を指しています。反対に生活機能が制限されているとき、人の生活にはなんらかの「障害」が伴っているということができます。

ICFでは生活機能を構成している「心身機能・身体構造」と「活動と参加」に関する項目が合わせて1,000個以上存在します。「心身機能・身体構造」は「.0:機能障害なし」から「.4:完全な機能障害」までの5段階で評価され、「活動と参加」の部分は「.0:困難なし」から「.4:完全な困難」までの5段階で評価されます。

それぞれの項目では機能や活動状況などが詳細に記載されていますが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。
◇心身機能・身体構造
心身機能とは身体の生理的、心理的機能のことを指しています。見ることや聞くこと、呼吸をすることや音声を発することなどの能力がはかられるのがこの項目です。

身体構造とは、身体のそれぞれの器官や、肢体とその構成部分などのことを指します。つまり、脳や呼吸器、骨や皮膚など、身体の各部分の位置や大きさなどが分類されています。

◇活動と参加
活動とは、生活上の目的を持った具体的な行いのことを指しています。読むことや書くことに加え、コミュニケーションをとることや家庭生活を行うことなどがここに含まれます。

参加とは、家庭や社会などへの関わりのことを指しています。働くことやスポーツをすること、地域の中で何か役割を果たすことなどが、参加の中に含まれています。

ICFでは、活動と参加は「実行状況」と「能力」の2つにおいて評価することが大切だとしています。「実行状況」とは現在「している」活動であり、「能力」とはすることが「できる」活動です。

たとえば「調理」という活動に関して、それを現在の状況で実行しているかと、実行できる能力があるかは異なる場合があるでしょう。両者をそれぞれで評価し、その程度の差をはかることは、その後の活動へのヒントにもなることがあるのです。

背景因子

人がどのような状態で生きているか、どのような障害を感じながら生きているか、を判断するためには、どうしてそのような状況になっているのかを的確に判断する必要があります。ICFでは状況を作り出している要因を「環境因子」と「個人因子」に分けています。

ICFでは背景因子の中で「環境因子」のみを分類分けしていますが、評価の際にはプラスの状況とマイナスの状況どちらも評価できるようになっています。つまり、環境が生活機能に良い影響を与えている場合は「+0:促進因子なし」から「+4:完全な促進因子」の5段階で程度を評価することができ、逆に環境が生活機能にマイナスの影響を与えている場合は「.0:阻害因子なし」から「.4:完全な阻害因子」の5段階でレベルを評価することができます。
◇環境因子
環境因子は、人の生活機能に影響を与える外的な要因です。たとえば、建物の設備、交通機関のバリアフリー状況などの物的な環境が例として挙げられます。それだけではなく、環境因子には家族や友達、世間の人の目などの人的な環境や、医療や保健などのサービスも制度的な環境として含まれています。

◇個人因子
個人因子とは、その人に固有の特徴のことを指しています。この個人因子に関しては、現在のICFでは分類分けされていませんが、年齢や性別、民族などの基本的な特徴に加えて、社会的状況や人生体験なども、この個人因子として生活機能の分類に含めることができます。

ここで注意しておきたいのは、環境や個人的な要因が、生活機能にマイナスの影響を与えるものとしてのみとらえられるべきではなく、プラスの影響も与えるものとして理解される必要があるということです。

ICFの生活機能モデル

以上で説明したように、ICFは人の生活機能を的確にとらえるための分類を提供しています。しかし、ICFの考え方を最大限に活用するためには「心身機能」や「環境」の状況をバラバラに評価するだけでは十分ではありません。

それぞれの項目を独立したものとして評価するだけではなく、各項目がどのように関わりあっているのか、どこを改善すれば生活機能がよりよい状況になるのか、を考えていくことがICFの考え方では重要です。そこで、ICFの要素の関係性を分かりやすく示したのが次のICFモデルです。
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このモデルにおいて注目すべきなのは、それぞれの要素をつなぐ矢印が、すべて双方向に向いていることです。たとえば「エレベーターがない」という環境要因が「地域の活動に参加できない」という参加の制限につながる可能性がある一方で、「地域の活動に毎週参加している」という参加が「エレベーターの設置」という環境の変化につながる場合もあります。双方向の矢印はこのようなお互いが影響しあう可能性を示しているのです。

また、この関係性は必ずしも2つの要素間での関わりのみではありません。1つの要素がもう1つの要素に影響を与え、さらに他の要素にまで影響を与えるという場合もあります。

たとえば、「点字ブロックの設置」という環境の変化が「駅まで一人で行くことができるようになる」といった活動の変化につながり、やがて「隣の駅で行われている講演会に一人で参加する」といった参加を促進することもあるかもしれません。さらに参加という体験がその人自身の自身につながれば、個人因子の変化が見られるようになるということも考えられます。このように、すべての因子がすべての因子に影響を与える可能性があるというのもICFの考え方の特徴です。

しかし忘れてはならない点は、これらの要素は相互に影響しあう前にそれぞれが独立したものであるという点です。たとえば身体に疾患があった場合、その疾患がその人の能力や健康状態にどのような影響を与えるかは必ずしも予測できるものではありません。

ICFを利用する際は、1つの要素を評価したことで他の要素を決めてしまうのではなく、はじめにすべての要素をバラバラに検討してから、それぞれの関係性を見ていくことが大切なのです。

ICFの活用方法

このように、ICFを活用すると生活機能や障害の分類だけではなく、「現段階でどのような状況があるのか」、「その状況を作り出している要因にはどのようなものがあるのか」を総合的に判断することができます。さらに、状況やその状況を作り出している要因を理解することによって、「障害」による「生きづらさ」の改善を図ることもできるのです。

ここでは、実際に通常学級に通う小学生の女の子を例に挙げてICFの活用方法を紹介します。

小4女子の主な基礎情報

・障害名 未熟児網膜症(視力 右0.05 左0.02)
・教育歴 幼稚園卒業後○○小学校の通常学級に入学。学年相応の学習。(※中学校を卒業したら盲学校入学を希望)
・教科書や板書、普通文字のプリントが読みにくい。
・視知覚の障害(図形と素地、形の恒常性、空間における位置)がある。漢字の読み書きが苦手。理科の実験・観察や体育での球技種目に参加することが難しい。
・慣れた道を通れば、単独通学が可能。歩行時、段差箇所等でつまずくことがある。
・混雑する場所や不慣れな場所は、周りの様子がよく見え不安な気持ちになることがある。
・親しい友達がいる。しかし、見えにくさがあるため消極的になり、友達と一緒に遊ぶことが少ないが、性格は素直で明るい。
・身辺の事柄の処理は確立している。
・音楽が得意。3歳より母親の送迎でピアノ教室に通っている。

・下駄箱の位置を昇降口入り口近くに設置してほしい(保護者)。
・学力を身につけたい(本人)。

出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4863421419
上記のような状況を、分類に従って評価したのち、構造的にあらわしたのが下の図です。なお「心身機能・身体構造」、「活動」の項目において振られている数字は障害の程度を表しています。
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このように、ICFでは実際の状況を洗い出した後に、全体を構造的に把握して、さらなる改善への行動につなげることができます。これは、担任の先生にとって役に立つだけではなく、他の教科を指導する先生や保護者、他の関係者のコミュニケーションをスムーズに行う際にも重要なコミュニケーションツールとしても考えることができます。

まとめ

今回見てきたように、ICFは「人が生きること」を広い視点から眺め、評価するための分類法です。人が生きていく上で障壁を感じるとき、それは必ずしもその人に存在する障害の有無のみでは理解することはできません。

ICFでは人が生きていく上での障壁を個人に存在する障害としてのみとらえるのではなく、その人に存在する個性と周りの環境の関わりとを考えた上で、よりよいサポートを可能にしていく考え方なのです。
ICF 国際生活機能分類―国際障害分類改定版
障害者福祉研究会
中央法規出版
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