ICFの活用方法
このように、ICFを活用すると生活機能や障害の分類だけではなく、「現段階でどのような状況があるのか」、「その状況を作り出している要因にはどのようなものがあるのか」を総合的に判断することができます。さらに、状況やその状況を作り出している要因を理解することによって、「障害」による「生きづらさ」の改善を図ることもできるのです。
ここでは、実際に通常学級に通う小学生の女の子を例に挙げてICFの活用方法を紹介します。
ここでは、実際に通常学級に通う小学生の女の子を例に挙げてICFの活用方法を紹介します。
小4女子の主な基礎情報
・障害名 未熟児網膜症(視力 右0.05 左0.02)
・教育歴 幼稚園卒業後○○小学校の通常学級に入学。学年相応の学習。(※中学校を卒業したら盲学校入学を希望)
・教科書や板書、普通文字のプリントが読みにくい。
・視知覚の障害(図形と素地、形の恒常性、空間における位置)がある。漢字の読み書きが苦手。理科の実験・観察や体育での球技種目に参加することが難しい。
・慣れた道を通れば、単独通学が可能。歩行時、段差箇所等でつまずくことがある。
・混雑する場所や不慣れな場所は、周りの様子がよく見え不安な気持ちになることがある。
・親しい友達がいる。しかし、見えにくさがあるため消極的になり、友達と一緒に遊ぶことが少ないが、性格は素直で明るい。
・身辺の事柄の処理は確立している。
・音楽が得意。3歳より母親の送迎でピアノ教室に通っている。
・下駄箱の位置を昇降口入り口近くに設置してほしい(保護者)。
・学力を身につけたい(本人)。
上記のような状況を、分類に従って評価したのち、構造的にあらわしたのが下の図です。なお「心身機能・身体構造」、「活動」の項目において振られている数字は障害の程度を表しています。
このように、ICFでは実際の状況を洗い出した後に、全体を構造的に把握して、さらなる改善への行動につなげることができます。これは、担任の先生にとって役に立つだけではなく、他の教科を指導する先生や保護者、他の関係者のコミュニケーションをスムーズに行う際にも重要なコミュニケーションツールとしても考えることができます。
まとめ
今回見てきたように、ICFは「人が生きること」を広い視点から眺め、評価するための分類法です。人が生きていく上で障壁を感じるとき、それは必ずしもその人に存在する障害の有無のみでは理解することはできません。
ICFでは人が生きていく上での障壁を個人に存在する障害としてのみとらえるのではなく、その人に存在する個性と周りの環境の関わりとを考えた上で、よりよいサポートを可能にしていく考え方なのです。
ICFでは人が生きていく上での障壁を個人に存在する障害としてのみとらえるのではなく、その人に存在する個性と周りの環境の関わりとを考えた上で、よりよいサポートを可能にしていく考え方なのです。
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