ずりばいとは?何か月ごろから始まる?ずりばいの練習法、ハイハイとの違い、ハイハイしない理由や発達障害との関係なども解説【小児科医監修】

ライター:発達障害のキホン
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「ずりばい」とはハイハイの前段階にあたり、腹ばいで移動するほふく前進のような動作です。うつぶせに慣れたころに始まる「ずりばい」は、赤ちゃんにとってどんな意味をもつのでしょうか?このコラムではずりばいをしない、時期が早い、遅いといった不安とその理由、練習方法などを調べてみました。一般的な発達の順序、発達相談をしたいときの手順も併せて紹介します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

ずりばいとは?

ずりばいとは、赤ちゃんの首すわりが安定して、うつぶせや寝返りに慣れたころに始まる移動のための動作です。このほふく前進のような動作が始まると、赤ちゃんは自分の意思で前後左右に自由に方向転換し、移動できるようになります。
赤ちゃんの移動手段の変化の図
赤ちゃんの移動手段の変化の図。寝返り、ずりばい、お座り、ハイハイ、歩く
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わが子がずりばいをしないことで不安になる方もいるかもしれませんが、実はずりばいは赤ちゃんにとって絶対に必要な成長のステップではありません

※なお、この記事内では手のひらを「手」、「腕」は肩下から手首まで、「脚」は脚の付け根から足首までと定義します。

1.寝返り
寝返りは首がすわりうつぶせの姿勢に慣れた赤ちゃんに見られる動作です。首すわり完了の目安は、うつぶせの姿勢で自分から首を持ち上げ、左右に動かせること。うつぶせの時期と重なるよう下半身の動きが活発になり、ふとしたきっかけで腰と脚の動きが連動すると、赤ちゃんは寝返りをします。横方向のみではありますが、赤ちゃんにとっては初めて自力で移動する体験です。寝返りに不慣れなうちは仰向けからうつぶせになることができても、うつぶせから仰向けに戻ることができず、もがくこともあります。

2.ずりばい
お腹をつけたまま腕や脚の力で前後左右に動けるようになった状態が「ずりばい」です。赤ちゃんに動きたい気持ちがありうつぶせに慣れていれば、腰がすわる前やハイハイに必要な筋力が十分でない時期でも始まる動きです。左右の腕の筋力発達が非対称だったり腕と脚の動きを連動させることに慣れていないうちは、後ろに下がったり同じ場所をぐるぐる回ったりすることもあります。ずりばいができるということは、自由に方向転換ができるようになったことを意味します。活動範囲の広がりに合わせて、危険物を片づけるなどの安全対策をしておきましょう。この「ずりばい」のステップをとばす赤ちゃんもいます。

3.お座り
お座りは移動を伴う動作ではありませんが、ハイハイには欠かせないステップです。最初のうちは背中が丸まっていたり手で上半身を支えたりしますが、次第に支えなしで座れるようになります。この段階から手で上半身を支える動作を徐々に覚え、腰でバランスをとる感覚をつかんでいきます。支えなくても安定してお座りの姿勢をとれるようになって初めて、腰と下半身を使った移動が可能になるのです。

4.ハイハイ
両手で上半身を支え、ひざ立ちで腰とお尻を持ち上げられるようになったら、手脚でバランスをとり、重心を移動する練習が始まります。四つ這いの姿勢で体を前後にゆらす動きが続いたらハイハイが始まる日も近いでしょう。四つ這いの姿勢で重心をコントロールでき、両手脚を連動して動かせるようになると、いわゆるハイハイの完成です。ハイハイしはじめは動きもぎこちなく、方向転換も移動もおぼつかないでしょうが、上達するのに時間はかかるものです。温かく見守ってあげましょう。

5.歩く
ハイハイが始まったあと、赤ちゃんはヒザ立ちから足の裏で体重を支える動作を覚え、歩き方を体得していきます。つかまり立ち、つたい歩き、一人立ち、一人歩きなど、順番や過程には個人差があります。足の裏でバランスをとる経験を積む過程では、足の裏と手の平をついた姿勢の「高這い」というハイハイをする赤ちゃんもいます。立ち始めは、足の裏でバランスをとることが上手にできないうちは転びやすいので、後頭部を強く打たないように見守ってあげてください。
参考書籍:細谷良太/監修 『はじめての育児』(学研パブリッシング,2013)
https://www.amazon.co.jp/dp/405800066X/
参考書籍:小西行郎/監修 『0~3才 心と脳をすくすく育てる本』(学研パブリッシング,2009)
https://www.amazon.co.jp/dp/4054042465

ずりばいとハイハイの違いは?

ずりばいとハイハイを厳密に区別する場合、ポイントになるのはお腹をつけたままかどうかです。脳から伸びる運動神経は、頭から首、腕や背中、腰、脚という順で上から下、中央から末端へと発達していきます。そのため、ずりばいは首がすわり、頭と肩から手指までの運動神経がつながれば可能になる動きですが、ハイハイはさらに腰がすわり、腰と脚を使って胴を支えられるようになって初めて可能になる動きです。

また、ずりばいは機能的にまだ歩けない時期の赤ちゃんが試みる移動方法で、「移動したい」という意思が先行して体を動かす状態だといわれています。
参考書籍:小西行郎/監修 『0~3才 心と脳をすくすく育てる本』(学研パブリッシング,2009)
https://www.amazon.co.jp/dp/4054042465
ずりばいもハイハイも赤ちゃんの移動手段の1つである点は同じですが、1章の図で説明した通り、赤ちゃんが生まれてから歩き出すまでの移動方法の完成形は二足歩行です。ずりばいでは主に腕と手を使って移動するため、ハイハイやつたい歩きに比べると手と腕の使い方のバリエーションは少なくなります。しかし、腰がすわって下半身でバランスを取りながら移動できるようになるにつれ、腕と手を移動に使う必要性は減っていきます。

代わりに手は物をつかむ、つまむといった、道具を扱うための動きを習得する段階に入ります。手指の使い道が増えていく過程で、移動を担う体のパーツが下半身にシフトしていくのです。言いかえれば、ずりばい期は主に上半身の力、ハイハイ期は主に下半身の力で移動をしている状態だといえます。
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ハイハイの時期はいつ?ハイハイしないで立つのは問題あり?ハイハイの練習方法や相談先を紹介します【医師監修】

ずりばいはいつごろから始まるの?

第1章で紹介した赤ちゃんの移動方法の変化を、この章では「時期」という観点から説明していきます。

厚生労働省が作成した母子健康手帳の省令様式には生後6~7ヶ月の発達チェックに「寝返りをしますか」、生後9~10ヶ月には「ハイハイをしますか」との問いがあります。ずりばいは寝返りとハイハイの間に出現する移動手段なので、目安は8ヶ月前後と考えられます。
参考:母子健康手帳の様式(省令様式部分)|こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/techou
しかし、実際の赤ちゃんの発達は十人十色で個人差がとても大きく、赤ちゃん自身の個性や成長のスピードにあわせたタイミングで訪れます
それでもずりばいがいつ始まるかが気がかりで不安がぬぐえない場合は、日々の暮らしの中で今その赤ちゃんがどの発達段階なのかをしっかり観察することを意識するとよいでしょう。その赤ちゃんらしい発達を考えるなら「今生後何ヶ月」という時期よりも、早産だった、成長曲線のカーブの上がり方がゆるやかだったなど、周産期から現在までにその赤ちゃんにどんな特徴があったか理解することも、ずりばいに至るまでの見通しをつけるのに役立ちます。

このような情報は、専門家に相談をする際にも必要とされます。赤ちゃんの成育歴や発達状況、暮らしぶりについての情報があればあるほど、ずりばいを「しない」という現状にどのような理由、問題があるのかを見極める際に役に立ちます。
参考書籍:榊原洋一、小西行郎、開一夫、小林美由紀/監修『赤ちゃんの「脳」がわかる育児BOOK』(成美堂出版,2009)
https://www.amazon.co.jp/dp/441530575X
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