ずりばいしない、ハイハイに進まない…。理由は?

まずは、寝返りはできるのにずりばいしないという赤ちゃんには、どんな理由があるのか考えてみましょう。

うつぶせの姿勢が苦手

首がすわった直後の赤ちゃんにとっては、首で頭の重みを支えることは負荷が大きいものです。首だけでなく肩や背中に十分な筋力が備わらないうちに赤ちゃんをうつぶせにすると、頭を持ち上げた姿勢を維持できず、頬や顔面が床についてしまいます。うつぶせによる頭の重みや息苦しさを嫌う赤ちゃんもいるし、うつぶせが苦手なうちは窒息の危険性もあるので、目は絶対に離さないでください。苦しそうに泣くときは無理強いせず、短時間であお向けに戻してあげてください。

次に、うつぶせは嫌がらないのにずりばいしない、首がすわっているのにハイハイに進まない、という赤ちゃんについて考えてみましょう。

腰すわりが不充分

ずりばいは腰がしっかりすわっていなくても始まる動きですが、安定してすわっているほうがより楽にできるそうです。ずりばいからハイハイへの過渡期であれば、誰かの支えがなくても手を使わずにお座りの姿勢がとれ、ぐらぐらしないことを確かめましょう。ぐらぐらする間はハイハイをする段階ではないので、腰がすわる時期まで見守りましょう。

ハイハイは、手をつかずにお座りできるくらい腰が安定して初めて可能になります。ずりばいを嫌がらない赤ちゃんであれば、しっかり腰がすわるにつれ、お腹を持ち上げた四つ這いの体勢をとることが増えていくでしょう。四つ這いのままゆらゆらする姿勢には、重心をコントロールする練習の効果があります。その姿が見られたら、ハイハイはもうすぐです。

筋力の不足

上半身を肘や腕で支えて移動するずりばいには、首や肩だけでなく腹筋、背筋が必要です。腰すわり同様、ずりばいは下半身の筋力もあるほうがスムーズです。また、腰すわり後の赤ちゃんがハイハイをするにも、全身の適度な筋力発達は欠かせません。筋力は日々の暮らしの中で徐々についていきます。

ずりばい前なら、うつぶせの赤ちゃんの背中をマッサージしたり、両腕を前に伸ばして上半身を支える姿勢を促してみたりしてください。この姿勢をとらせるときは肩関節を脱臼する可能性があるので、強く腕をひっぱらないようにご注意ください。赤ちゃんに無理のない範囲で姿勢を援助してあげましょう。背中を反らす姿勢は、赤ちゃんの腕力と背筋が鍛えらます。

ハイハイ前で腰すわりが不安定な間は、お座りの赤ちゃんを両脇をしっかり支えて、ゆっくりと左右に傾ける動きを取り入れてみてください。赤ちゃんが背中と腰、お尻でバランスをとる練習になり、腰回りの筋肉を鍛えることもできます。ただしこちらもやりすぎは禁物。未熟な腰の神経や筋肉に負担をかけすぎないよう、赤ちゃんのご機嫌をみながらサポートしてあげてください

筋力が弱い赤ちゃんの一部には、脳性麻痺(まひ)、自閉スペクトラム症や、筋ジストロフィー、先天性ミオパチーなどの疾患を持っている可能性もあります。しかし、赤ちゃんがハイハイをしないという点だけで障害や疾患があるという判断はできませんが、心配な場合は自己判断をせず、専門機関に相談しましょう。

移動する意欲が低い

神経や筋力が十分に発達していても移動する意欲がないのかもしれません。体を動かしたい、気になるものがある、誰かのそばに行きたいといった気持ちが薄いうちは、自力で移動しようとは思わないものです。

好奇心や探究心は心の成長に伴いある程度は自然に現れるものですが、心地よく五感が刺激される働きかけが多いほど意欲は旺盛になります。呼びかけに反応し、近づいてきたらほめてあげる、といった関わりを増やしていくことも、赤ちゃんのずりばいの意欲を促すかもしれません。
参考書籍:久保田競/著『能力と意欲を伸ばす積極育児法』(主婦の友社,2004)
https://www.amazon.co.jp/dp/4072423122

ほかの移動方法で満足している

赤ちゃんにとっての移動手段はずりばいだけに限りません。移動をしたいだけなら抱っこしてもらう、寝返りをするという方法もあります。

赤ちゃんにとってそのときにできるいちばん効率のよい移動方法がずりばいでないならば、ずりばいはしないということも十分に考えられます。その場合でもずりばいを促したいのであれば抱っこを控える、うつぶせのときに前後左右から呼ぶなど、各方向に興味を持たせ、自分で動くことの便利さを赤ちゃんに気づかせるような関わり方を増やしてあげましょう。

環境が整っていない

ずりばいやハイハイをしやすい環境とは、
安全に動き回れる平らなスペースが十分にあることが重要です。障害物を片づけたり、適度な明るさと温度であること、見てみたい、触ってみたいという意欲を引き出すかもしれません。

動きやすい服装であるかもチェックしてみてください。ハイハイには上下が分かれた服のほうが適しています。赤ちゃんが楽に動き回れ、動くこと自体を楽しめるような環境づくりをするのもよいかもしれません。

股関節に問題がある

まれに股関節脱臼が考えられます。大腿骨の先端が骨盤におさまらず、外れていたり外れかけている状態です。「脚のつけねの皺の数が左右で明らかに違う」「左右の脚の長さが違う」「股関節が開きにくい/開きすぎる」「足を曲げた状態で股を広げるとポキポキ音がする」などの特徴がありますが、ハイハイ前後の時期の乳児の股関節脱臼は発見が難しく、専門家でも診断に時間がかかることもあるそうです。治療方法は確立されているので、まずは最寄りの小児科や整形外科に相談することをおすすめします。
参考リンク:先天性股関節脱臼予防パンフレット - 日本小児整形外科学会
http://www.jpoa.org/wp-content/uploads/2013/07/pediatric3.pdf

知覚機能の未発達

まれに、聴覚や視覚が弱いケースが考えられます。これらの機能は1ヶ月と3~4ヶ月の乳幼児健診でもチェック項目に入っているので、ずりばいの時期に入る前に経過観察を指示されているなら、これも原因の1つでしょう。医師からの指摘がない場合でも、追視(対象物を目で追うしぐさ)が少ない、呼びかけに対する反応が薄いと感じることがあるなら、専門機関に相談し、医師の診断を必ず受けてください。
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ずりばいもハイハイもしないまま立ってしまうのは問題?

結論からいうと、ずりばいやハイハイをしないまま一人歩きに移行することは問題はありません。乳児期後半に腰すわりを経て一人歩きへと進んだのであれば、その赤ちゃんにとってはハイハイよりも歩くという動作が適していたということなのでしょう。

乳児期後半になってもハイハイをしない赤ちゃんの中で、座ったままの姿勢でお尻をズリズリとすりながら移動する赤ちゃんがいます。これは「シャフリング」といわれる移動手段です。シャフリングベビーには座った姿勢で移動をしたがる以外にも、以下のような特徴があるそうです。

1. 首すわりから腰すわりまでの神経発達は定型的
2. 寝返りを始める時期が遅い、もしくは寝返りをしない
3. うつぶせの姿勢を嫌う
4. 足を床につけるのを嫌がる(足の裏を触られるのを嫌がる)
5. 脇を支えて持ちあげても脚は伸ばさず、お座り姿勢のまま
6. 一般的なハイハイはしない

シャフリングは腰がすわってからつたい歩きを習得するまでの期間に発生します。シャフリングをしている期間は1~5ヶ月強と赤ちゃんごとに幅があり、短期間のシャフリングのあとハイハイに移行する赤ちゃんと、数ヶ月間のシャフリング後につかまり立ち、つたい歩きに移行する赤ちゃんがいるそうです。
参考:1歳6カ月児健診におけるshuffling babyの疫学的調査(P41より)
https://doi.org/10.11251/ojjscn1969.18.484

シャフリングベビーになる原因、発達障害などとの関係は?

シャフリングベビーになる原因は現在の医学では解明されていません。
ほとんどのシャフリングベビーは、遅くとも2歳までに歩き始め、その後の発達は定型発達児と変わりなく成長していくのは前述の通りです。シャフリングベビーの中には、ごくまれに発達障害や神経系の疾患がシャフリングの原因となっているケースがあります。

定型発達のバリエーションとしてシャフリングする赤ちゃんと、障害や疾患を由来としてシャフリングをしている赤ちゃんを見分けるには、まず以下の4点にあてはまるかを観察する必要があります。

1.ミルクの飲みが悪い
2.泣き方が弱い
3.首のすわりが悪く抱っこするとぐらぐらする
4.手指の発達が遅い

これら4つの特徴は「低緊張」と呼ばれる状態の赤ちゃんに見られるものですが、低緊張のためシャフリングをしていると推測される赤ちゃんでも、ただちに疾患や障害があるという診断はできません。なぜなら低緊張の状態は、時間の経過や日々の運動遊びでも改善できることがあり、一過性の場合もあるからです。

低緊張と見られる状態でシャフリングをする赤ちゃんは、さらに以下の3点についても注意しながら見ていきます。

・言葉の理解が遅い
・手指の発達が遅い
・表情の発達が乏しい

この中の1つ以上思い当たることがあれば、脳性麻痺(まひ)、自閉スペクトラム症などの発達障害や疾患に由来するシャフリングである可能性があります。この場合はまず冷静に専門家に相談し、診断や支援を求めることをおすすめします。受診のきっかけがつかめない場合は、予防接種や乳幼児健診の機会を利用して、まずは小児科医に相談してみてはいかがでしょうか。
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シャフリングベビーとは?特徴や発達障害について/医師監修マンガ

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