医療や教育の専門家はたくさんいるけど、「うちの子専門家」はあなただけ

医療や教育の専門家はたくさんいるけど、「うちの子専門家」はあなただけ
Upload By 田中千尋(発達ナビ編集部)
:お子さんに合った支援ツールをたくさん発明してきた楽々かあさんですが、プロフィールに「うちの子専門家」と名乗られるのは、そうした経験があってのことなんですか?

:あの肩書きは、自分の経験というだけでなく、育児に対する私の考えや願いも込められている肩書きなんです。一般の仕事の場合、どんな仕事でも10年やればプロの域になるかと思います。それと同じで、“お母さん業”も我が子のことに膨大な時間を費やしてるのだから、ある種のプロだと思うんです。だから、お母さんは「うちの子専門家」。

特に、発達障害傾向のあるお子さんだと、それだけたくさん手も時間もかかるので、毎日お子さんのことにエネルギーも体力も時間もお金も使って子育てしていると思うので。

もちろん私も、専門家の先生たちのことはすごく頼りにしています。だけど、お医者さんは体の専門家だし、カウンセラーさんは心の専門家だし、学校の先生は教育の専門家であって、ご自分の専門外のことも含めた、その子のすべてを見ることはできないんですよね。

お母さんは、我が子が生まれてから今日までの間ずっと、発達の凸凹に限らないその子の全部を見てきたので、その子の真の専門家だと思うんですね。 

今、親と学校の連携という言葉がよく聞かれますが、学校の先生がお母さんのことを「その子の専門家」として見てくれれば、そしてお母さん業が専業でも兼業でも「プロ」としてもっと認められれば、学校連携もうまくいくんじゃないかなって思います。

なので、この肩書きを名乗っているのは自分のことだけでなく、周りのお母さんや先生に対しての願いも込めてのことなんです。私がプロフィールに「うちの子専門家」と書くことで、この考え方がちょっとでも広まっていけばなあと思っています。

子どもの凸凹を大事にできると、自分のことも愛せるようになる

:空気が読めないことも息子さんの長所の一つだとおっしゃっていましたが、楽々かあさんは、お子さんの特性を常にポジティブに捉えられているように感じます。

:自分の特性がポジティブに活きるかネガティブに作用するかって、その人のコンディション次第だと思っているんですよね。だから、「声かけ変換表」みたいにポジティブに言い換えするとか、本人や周囲の人も凸凹をより良い方向に捉えて活かしていけるように、いい面と悪い面の両面見ながらも、ややポジティブ寄りの発信をするように心がけています。

:そのポジティブさは、楽々かあさんのもともとの性格から来るものなんですか?

:いえいえ、もともとの性格は全然楽天的じゃないんですよ。子どものときにはすごく真面目で内向的で不安の強い子でした。

こういう考えができるようになったのは、うちの子たちを育てていく中で、子どものできているところや「ここだけはできた」っていう、良い面に視点をフォーカスする訓練をしてきただけなんですよね。

やっぱり親っていうのはどうしても、子どものことを一生懸命考えれば考えるほど、できなかったことや続けられなかったことに目がいってしまうものですから。

たとえば遊園地とかに連れていくとしますよね。最初の2、3時間は楽しく遊べていたけど、帰ろうといった途端に子どもに泣かれて暴れられてしまうこともあります。そこまでの楽しかった時間は忘れて、最後は怒っちゃったことしか心に残らないし、それまで楽しかったのが全部吹きとんじゃうとか。

:子育てをする親御さんなら何度となく経験しそうなことですね…

:そうなんです。心がけているのは「それまでは楽しかったね」って、よかったところを見ることです。さっきの遊園地の出来事のように、たとえ途中でできなくなっても、できたところまでをちゃんと認めてあげるとか、気になることがあっても「これでオッケー!」とか「まあいいか~」とか、前向きな言葉を自分に言い聞かせながらやってますね。 

:なるほど…できたところまでをちゃんと認めてあげる。

:こういう考えができるようになったのは、子育てをするなかでの私自身の変化でもあります。

自分を好きならきっと、たいていのことはなんとかなるよ

自分を好きならきっと、たいていのことはなんとかなるよ
Upload By 田中千尋(発達ナビ編集部)
:お子さんがこれからどういう風に育っていったらいいなと思いますか?

:やっぱり、うちの子たちには自分のことを好きでいてくれていれば、とにかくそれでいいと思っていて。自分を好きでいてくれれば試行錯誤しながらも道を切り開いていけるし、たいていのことはなんとかなるよって気がするんです。

自分に欠点や苦手があったとして、その欠点を見ようともしていなければ、そもそも工夫をしようっていう発想も行動も生まれませんよね。でも、凸も凹も含めて自分のことを好きでいられれば、たとえ失敗してうまくいかなかったり、周りの理解が得られなかったりしたことがあっても、自分で世界を切り開いていけると思っています。

それに、自分を肯定的に捉えることができると、他人に対しても寛容になれると思うんです。多少こだわりが強くても、それも含めてお互いさまだねって。だから、他人との関わりという意味でも、まず自分を好きでいてくれることが大事。

:「凸の部分も凹の部分も愛おしく思えるようになれば世界を肯定的に見られるようになる」と書籍に書かれていたことと繋がりますね。

:欠点は「克服する」ばっかりに重点を置くと自分も苦しくなっちゃうので。工夫しながらうまく付き合うっていうのがいいかなって。欠点も長所も同じぐらい大事にできたらいいなと思います。
次ページ「お子さんが無事に生きていることは、親御さんが「めちゃくちゃ」頑張ってきた証拠だから」

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