ノーマライゼーションとは?ノーマライゼーションの歴史や時代背景、身近な例を紹介します!

ライター:発達障害のキホン
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ノーマライゼーションは、どの人にとっても「当たり前のことを当たり前に」を実現するために、社会の環境側を整備していこうという考えです。この記事では、社会福祉の基本原理であるノーマライゼーションの解説、理念が生みだされた歴史的背景などについて詳しくお伝えします。他にも、ノーマライゼーションが生まれた経緯やユニバーサルデザインなどの身近な例を紹介します。

目次

ノーマライゼーションとは

ノーマライゼーションとは、障害の有無や程度にかかわらず、自らの意思に基づいて生活のあり方を選択できる、多様性と選択性のある生活を送ることができる社会の実現、「当たり前のことを当たり前に」の実現のために、社会の環境を整備していこうという理念です。

そもそも、当たり前とはどういうことでしょうか。
・基本的な人権が保障されている。
・自分のできる範囲で、身のまわりのことをする。
・自らの意志にもとづいて行動する。
・個人としてアイデンティティを確立する。
・一生を通じて一人の人間として成長する。


ノーマライゼーションの考えでは、障害があるかどうかや、その障害が軽度か重度かに関係なく、誰もが同じように上記のような権利や生活環境を享受できる社会が当然の姿だと考えられています。

ノーマライゼーションは、障害のない人が障害のある人を特別視するのではなく、障害のある人でも普通の生活を送れる環境を整えて、共に協力しながら生活していくことを目指しています。
参考書籍:ベンクト ニィリエ/著『再考・ノーマライゼーションの原理ーその広がりと現代的意味』現代書館 (2008年)/刊
https://www.amazon.co.jp/dp/4768434835

ノーマライゼーションのよくある誤解

ノーマライゼーションは、シンプルで誰にとっても理解しやすい考えですが、誤解を招きやすい考えでもあります。よくある誤解を解き、ノーマライゼーションを正しく理解しましょう。

◇「ノーマライゼーションとは人間を“正常”にすること」ではない
ノーマライゼーションは、障害のある人の行動をなかば強制的に障害のない人に合わせるということではありません。ノーマライゼーションとは、障害のある人が社会で生活している多くの人と同様に多様性と選択性のある生活を送るためのものです。ノーマライゼーションでは、その社会の実現のために必要な支援は社会側がすべきだと考えられています。

◇「ノーマライゼーションは特別な支援をなくすこと」ではない
ノーマライゼーションは、障害のある人が支援を受けずに生活できるようにするということではありません。例えば、目が悪くてもメガネやコンタクトなどの補助器具があるおかげで不自由なく生活できます。ノーマライゼーションは、障害のある人が不自由なく生活できる助けになる支援・サービスを推奨している考えです。

◇「ノーマライゼーションは軽度な障害にのみ適用される考え」ではない
ノーマライゼーションの考えは、重度の障害を抱える人にも適用されます。ノーマライゼーションの原理は、重複障害者が当たり前のことをするためにはたくさんの支援が必要になると指摘しています。

◇「ノーマライゼーションは完璧を目指すもの」ではない
ノーマライゼーションは、誰もが完璧に自立した生活を送れる社会を目指す考えではありません。一人ひとりの、障害や能力などに応じて最適な支援や環境を整えることを目指す考えです。
参考書籍:ベンクト ニィリエ/著『再考・ノーマライゼーションの原理ーその広がりと現代的意味』現代書館 (2008年)/刊
https://www.amazon.co.jp/dp/4768434835

社会福祉の基本原理 ノーマライゼーションの歴史

デンマークにおけるノーマライゼーションの誕生

ノーマライゼーションはデンマークで生まれました。ノーマライゼーションの誕生に偉大な功績を残した人物が、バンク・ミケルセンです。彼はデンマーク社会省で働きながら、1951年に結成された知的障害児親の会に共感します。

知的障害児親の会は以下の3つのことをスローガンとして掲げていました。
・1500人収容する大型施設を20~30人の小規模な施設にすること
・社会から分離されていた施設を親や保護者の生活する地域に作ること
・ほかの子どもと同じように教育を受ける機会を作ること


ミケルセンは、親たちの願いを象徴的に表現する言葉として「ノーマライゼーション」を採用しました。

ミケルセンの活躍もあり、1959年に世界で初めて「ノーマライゼーション」という言葉が用いられた「知的障害者福祉法」がデンマークで制定されました。

世界へのノーマライゼーションの広がり

ノーマライゼーションは今日では、世界的に社会福祉の基本原理として広がっています。これに大きく貢献したのは、スウェーデンのベンクト・ニィリエです。

彼が、普通の生活を測るものさしとしてノーマライゼーションの基本原理を明らかにし、英文にしたことで各国に広がりました。

また、1981年の「国際障害者年」の制定もノーマライゼーションの理念が広がる大きなきっかけになりました。「国際障害者年」の制定は、国連が障害のある人々の問題を世界的な規模で取り上げ、啓蒙を行う世界最初の出来事でした。

日本でのノーマライゼーションの広がり

日本でノーマライゼーションが理解されはじめたのは1970年代ですが、「国際障害者年」の制定をきっかけに広く知られるようになりました。

「国際障害者年」の制定は日本の社会福祉政策を後押しし、「障害者のすみよいまちづくり推進事業」や「障害者プラン ノーマライゼーション7か年戦略」が発表されました。

「ノーマライゼーション7か年戦略」には、7つのガイドラインが盛り込まれましたが、その一つにバリアフリーの推進がありました。バリアフリーとは、障害のある人の社会参加や、自分らしく生活するときに妨げになる障壁をなくすことです。

例えば、多くの駅でエレベーターやエスカレーターの設置が行われていることもバリアフリーの一つだということができます。

バリアフリーの推進は障害のある人がノーマルな生活を送るために重要なことであり、2006年に制定された「バリアフリー新法」など現在でも継続的に行われています。
参考書籍:野村 武夫/著『ノーマライゼーションが生まれた国・デンマーク』ミネルヴァ書房 (2004年)/刊
https://www.amazon.co.jp/dp/4623039463
参考: 厚生白書(昭和61年版)第1編 第2章  社会サービスの新たな展開
https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/kousei/1986/dl/03.pdf
次ページ「ノーマライゼーションの基本原理」

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