15年の歳月を越えて、『光とともに…』新装版が伝える自閉症児と家族の生きる物語

2017/04/17 更新
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2001年から約10年に渡って連載された、自閉症児とその家族の歩みを描いたマンガ『光とともに…』が15年の時を経て、新装版として発売されました。この記事では、新装版に再録された「誕生・幼児編/保育園編」(1巻)と「小学校低学年編(2巻)の見どころに触れながら、物語を紹介します。
制作協力: 秋田書店
記事中画像: ©戸部けいこ・秋田書店

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鈴木悠平
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自閉症の子どもと家族の成長を描いたマンガ『光とともに…』新装版が発売!

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皆さんは、『光とともに…』というマンガをご存知ですか?2001年から9年間に渡って連載され、自閉症のある少年、東(あずま)光(ひかる)くんとその家族の歩みを描いた漫画です。

自閉症のある子どもに特有の症状と、それゆえに起こる日常生活上の困難や、家族の葛藤、周囲の人たちの偏見と理解、児童福祉サービスや学校での特別支援の様子などが、綿密な取材によってリアルに描かれたことが反響を呼び、これまで累計260万部が発行されています。

マンガの原作ではなく、篠原涼子さん主演のテレビドラマ版でご覧になった方もおられるかもしれません。2004年の放映当時、私は実家暮らしの高校生でした。水曜日夜22時からの放送だったようで、晩ごはんを食べてから夜寝る前の時間に毎週テレビを眺めていた記憶がぼんやり残っています。主題歌の「万華鏡キラキラ」(RYTHEM)の切ないサビのメロディーだけは、今でもはっきりと脳内再生されるものですから、きっと何かの印象が私の心に残っているのでしょう。

さて、そんな『光とともに…』ですが、著者の戸部けいこさんはご病気のため、物語の完結を迎えずして2010年にこの世を去られています。物語が完結したのは、2016年のこと。かつて連載を掲載していた雑誌「フォアミセス」の3月号において、戸部さんの同期で盟友の河崎芽衣さんがペンを入れた完全完結版が掲載されました。この完結編がきっかけで「初めて『光とともに…』を知った」という読者の声も多く寄せられたそうです。

発売開始から15年以上の月日が経っていること、自閉症をはじめとする発達障害への認知・関心の高まりや、自閉症と診断される子どもが年々増えている現状を踏まえ、新たな母親世代に対して、改めて『光とともに…』を知ってもらうべく、これまでの単行本版よりもお求めやすい価格設定の新装版を発売されることとなりました。

新装版『光とともに…~自閉症児を抱えて~』は、2017年4月1日の発売。光くんの誕生から幼少期を描いた「誕生・幼児編/保育園編」と「小学校低学年編」の2冊の同時刊行となります。

ドラマ版主演の篠原涼子さんも帯に推薦メッセージを寄せる『光とともに…』新装版、私も改めて読んでみました。

「お願い、"ママ"って呼んで!」願いむなしく、下された診断は…

新装版の1巻目は「誕生・幼児編/保育園編」。光くんが生まれてから保育園を卒業するまでの日々が描かれます。

東京都内のマンションに暮らす、東幸子(さちこ)さん。職場の憧れであった雅人(まさと)さんと結婚し、光くんを出産。喜びと幸せに満ち満ちた東家の日常から物語が始まります。

光くんにはこの頃から抱っこを嫌がる、夜泣きがひどいといった様子が見られていたものの、最初はそこまで気にしていなかった幸子さん。ですが、久しぶりに集まった母親学級の友人たちの子は、我が子とは全く違う落ち着いた様子。

わずかな不安を抱えながらも迎えた一歳半検診。

おもちゃの音にも母親の呼びかけにも反応しない光くんの様子に、保健師さんが一言
「この子、耳聞こえてませんよ」

そんなはずはないと主張する幸子さんに、保健師さんは淡々と病院への紹介状を渡します。
「よかったわね、早く障害が見つかって」
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「光に障害が…?」きっと何かの間違いだと祈りながら病院へ…
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「光に障害があるなんて…」

きっと何かの間違いだと祈りながら病院に向かった幸子さんを待ち受けていたのは、さらなる衝撃でした。

「自閉症かもしれませんよ」

自閉症は、先天的な脳の機能障害から起こると言われている発達障害の1種ですが、まだはっきりとした原因は解明されていません。

耳ははっきり聞こえている。だけど、他人や物事への興味が独特で、発語やコミュニケーションにも遅れがある。そんな光くんの様子をみて自閉症の可能性を指摘する診察医。

「光は普通の子よ。そのうち"ママ"って言ってくれるわ!」

医師の説明を聞き、渡された資料を読み込んでみても受け止められない幸子さん。

しかし……


「なんとかしろよ自分の子供だろ」仕事一筋で家庭を顧みない夫
「あなたのしつけが悪いのよ!」という姑からの叱責
「光くん、一緒の幼稚園は無理じゃない?」何気ない友人の一言


「誕生・幼児編」の前半では、周囲の理解を得られず孤立する幸子さんの心が克明に描かれます。

もちろん、自閉症と言っても、その症状は十人十色で、『光とともに…』の光くんのような症状がすべての自閉症児に現れるわけではありません。また、保護者や周囲の人々の関わりも、家庭環境や地域の資源・文化によって様々でしょう。

ですが、「発達障害かもしれません」と言われた時の、不安と戸惑い、拒絶と楽観の入り混じる親の心境や、自分が直面している現実を他者と分かち合えない孤独感は、似たような経験をしてきた人にとっては強く共感するところでしょうし、そうした経験がない人にとっても、自閉症児の親が抱える痛みを想像には十分すぎるエピソードかもしれません。

この子は他の子とは違うかもしれない…それでもこの手のぬくもりが愛おしい

胸が痛くなるような幕開けの「誕生・幼児編」ですが、それでも光くんとともに、幸子さんは一歩ずつ前へと進んでいきます。

たった一人で全てを背負いこんでいた日々から、「困った時は頼ってくださいね」と声をかけてくれる療育センターの先生たちとの出会いや、同じく発達障害のある子どもたちやその親たちとのつながりが生まれていきました。
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「今まで一人で頑張って来たんでしょ?」センターの先生の言葉に思わず…
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互いを責め合い、一時は冷え切ってしまった夫の雅人さんとの関係も、とある出来事がきっかけで、再び共に手を取り合うように。

もちろん、日常生活でのトラブルは決してゼロにはならず、園でも病院でもお出かけ先でも、いつだって油断のできない日々が続きます。

それでも、もう幸子さんは一人ではありません。

「うちの子は自閉症なんです」

相手の目をはっきりと見て我が子の特性を説明をする幸子さん・雅人さんの姿勢には、「この子と共に生きていく」という、静かな覚悟が伝わってきます。
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病院の待合室で泣き叫ぶ光くん。「テレビで見たことがある」と理解してくれる人も
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他の子どもたちとは違うかもしれない。それでも、光くんは光くんとして、彼のままにまっすぐに成長してゆきます。
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絵カードを使った視覚支援。声をかけながら見せることで、行動と時間が定着するように
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目を合わせることも、"ママ"と呼んでくれることもない。

それでもいい。この子はこの子なりの成長をしていく。そう信じながら、懸命に工夫と働きかけを続ける幸子さんと雅人さん。

そしてついにある日…
 
 
 
 
 
ここから先は、ぜひ書籍を直接手にとって確かめてみてください。

新装版で発売された2巻は、「小学校低学年編」までの収録ですが、そこから先も、小学校・中学校と光くんの成長の日々は続きます。

15年の時を経て再び刊行された『光とともに…』

はじめての方も、懐かしい思い出とともに読み返す方も。きっと温かい気持ちになれる物語です。
新装版 光とともに・・・~自閉症児を抱えて~<誕生・幼児編/保育園編> (ACエレガンスα)
戸部けいこ(著)
新装版 光とともに・・・~自閉症児を抱えて~<小学校低学年編> (ACエレガンスα)
戸部けいこ(著)

新装版『光とともに・・・』書籍情報

●新装版「光とともに…~自閉症児を抱えて~」<誕生・幼児編/保育園編>
●新装版「光とともに…~自閉症児を抱えて~」<小学校低学年編>
4月14日(金)2冊同時発売
定価:本体640円+税 AC エレガンス 新書判 発行:秋田書店

記事中画像全て: ©戸部けいこ・秋田書店
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