自己愛性パーソナリティ障害とは?特徴やタイプ、境界性パーソナリティ障害との違いって?

ライター:発達障害のキホン

自己愛性パーソナリティ障害は自己愛の未成熟から生じるパーソナリティ障害で、自己誇大や共感性の薄さ、他者からの評価に敏感といった特徴があります。今回は自己愛性パーソナリティ障害の特徴やタイプ、境界性パーソナリティ障害との違いについて解説していきます。

目次

自己愛性パーソナリティ障害とは

自己愛性パーソナリティ障害とは、自分に対して誇大なイメージを抱き、注目や称賛を求める一方で、他者からのマイナスな評価に対して過敏に傷つきやすく、他者に対する共感性が薄いことを特徴とする障害です。

◇自己愛って?
自己愛とは自分を大切にできる能力のことをいいます。自己愛は少なからず誰にでもあるものです。自己愛は年齢を重ねるごとに成熟していくといわれています。

この「自己愛の成熟」とは精神医学では自分を肯定して愛することができる状態といわれていて、さらに、成熟すると自分以外の他者にも愛情を注げるようになるといわれています。

◇自己愛性パーソナリティ障害は自己愛が未成熟な状態
自己愛性パーソナリティ障害の人は、自己愛が未成熟な状態にあると言えます。自己愛が未成熟な状態とは、ありのままの自分を受け入れ愛することができていない状態をいいます。その未成熟さの現れが「自己の誇大化」、「他者からの評価に対する過敏さ」、「共感性の薄さ」になります。

例えば自分自身が掲げる理想の姿が高く、「自分は特別」「自分はできる人間だ」という思い込みが強い傾向があります。そのために誇大な言動が表出します。「自分はできる人間だ」と思い込んでいるために他者からの評価を受け入れることができず、怒り出したり、過敏に傷つき、引きこもりやうつ病になったりすることもあります。

さらに共感性の薄さによって、相手の立場に立って物事を考えることができず、その場にふさわしくない言動をしていたり、自分の目的達成のために友人を利用したりするような対人関係がみられることをいいます。

以上の傾向に柔軟性がなく、持続的で、社会生活が困難になるほどの苦痛を引き起こしている場合に自己愛の歪みや未成熟さがあり、自己愛性パーソナリティ障害と判断されます。
参考:狩野力八郎/著『自己愛性パーソナリティ障害のことがよくわかる本』|(講談社,2007)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062594218

自己愛性パーソナリティ障害の特徴と2つのタイプ

自己愛性パーソナリティ障害には大きく分けて3つの特徴と、表出する2つのタイプがあります。以下にそれぞれを紹介します。

自己愛性パーソナリティ障害の特徴

◇誇大な言動
・自分は才能がある特別な人間だと思い込み、それに伴った言動が目立つ
・有名人や権威のある人と知り合いであることを自慢する(知り合いである自分は特別という裏打ち)

◇他者からの評価に過敏
・恥をかいたり、屈辱感を抱いたりするとカッとなって激しく怒り出す
・ときにはその憤り(いきどおり)を超えて、ひどく落ち込み、自殺を考えだすこともある

◇他者への共感性の薄さ
・病気で入院している人のところへお見舞いに行って、自分の健康自慢をするなど相手の状況を考えない言動をする
・自らの成果や目標達成のために、友人を利用したり裏切ったりという行為をする
・わがままかつ傲慢な性格のため、あまり自分の意見を言えない友達を従えてあたかも自分が一番偉いかのように振る舞う

自己愛性パーソナリティ障害の2つのタイプ

自己愛性パーソナリティ障害の人は「3つの自己」を持っているといわれています。

・誇大化させて形成された尊大で傲慢な自己
・自分は欠陥がある人間だというイメージを持った自己
・奥底に隠れている本当の自己

この「3つの自己」がどれか一方に偏っていると、「自分は特別な人間だ!」と思い込んだり、「自分は誰よりもダメな人間だ・・・」と思い込んだりしてしまいます。「3つの自己」の偏り具合によって表出する人物像が異なってきます。

根本にある自己愛の未成熟さや原因は共通ですが、その表出の仕方によって、自己愛性パーソナリティ障害は次の2つのタイプに分類されます。誇大的・自己顕示的で他者の反応に鈍感な「無自覚型」と他者の反応に敏感で注目されるのを避ける「過敏型」です。

◇周囲を気にしない「無自覚型」タイプ
このタイプの人は、自分はできる・自分は特別だと思い込み、社交的に振る舞いつつも他人のことには興味はなく自分の利益だけを考えています。このタイプの人が他者と親しく付き合うのは、自分に何かしらの利益があるからだと考えているためですが、自分の意向に沿わないときや責められると激怒することがあります。このような言動は本来の弱い自分を守るための防衛本能だといわれています。その他にも次のような特徴がみられます。

・わがまま・傲慢な態度をとる
・自分に夢中で他人のことは全く考えない
・注目の的でないと気に入らない
・他者に対する言葉づかいは常に攻撃的
・他者の反応を気にしない/怒りに表わすことで気にしないことにしている
・他者の気持ちを傷つけても平気

◇周囲を過剰に気にする「過敏型」タイプ
このタイプは身の丈に合わない理想化した自分自身を掲げますが、現実の自分との間にあるギャップに悩みます。他者からの評価に過敏ですぐに傷つきますが、自分には本当は才能があるという思いを持ち続けています。それゆえに自分自身を責めて落ち込んでいくサイクルが続きます。他にも次のような特徴がみられます。

・内気で恥ずかしがり屋
・自分の意見や感情を出さない
・傷つけられたと感じやすい
・注目の的になるのを避ける
・他者の反応に対して敏感に落ち込む
・他者からの評価を気にする

この障害がある人が自分を誇大化する理由は、本当の自分に自信が持てないなどの理由があります。本当の意味で自分自身を受け入れることができていない状態なのです。
参考:『コフートの自己心理学に基づく自己愛的脆弱性尺度の作成』|パーソナリティ研究 2005 第14巻 第1号80–91 上地雄一郎 宮下一博
https://ci.nii.ac.jp/naid/110001844985
参考:狩野力八郎/著『自己愛性パーソナリティ障害のことがよくわかる本』|(講談社,2007)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062594218
参考:『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』|(岡田尊司,2004)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569635253

自己愛性パーソナリティ障害の原因はなに?

自己愛性パーソナリティ障害の原因を「これだ」とはっきり断定することは難しいといわれていますが、現時点では2つの仮説が提唱されています。

自己愛性パーソナリティ障害は、生まれながらに持っている気質的要因に環境的要因が影響し、パーソナリティ(人格)が形成されていくという精神分析学者のカーンバーグの説と、環境的要因が最も作用しパーソナリティが形成されているという国際精神分析学会のコフートの説があります。

気質的要因って?

気質的要因とは、人にもともと備わっているものの見方、感情の動きのことを言います。気質は先天的な特性と、あるいは後天的な経験が組み合わさりながら成り立っていると考えられています。

例えばある物事をどのくらい細かくみられるか、どのくらい面白がれるか・関心を持てるか、没入できるかなどは人それぞれで、その度合いも異なります。物事に細かい神経質な人もいますし、その反対に大ざっぱな人もいますよね。気質として自己愛が低い人がいることがあってもおかしくありません。その感覚は人それぞれですが、家族でその気質は似ることもあります。
参考:『意志気質検査の要因分析的研究』|久芳忠俊 山口大学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/3/3/3_37/_article/-char/ja/

環境的要因(家族環境・親と子どもの関係性)って?

ここで述べる環境的要因とは親と子どもの関係性や家族環境のことを指しています。環境的要因に関してはコフートとカーンバーグの考え方をそれぞれ紹介します。

◇コフートが考える環境的要因
コフートは例えば、幼少期の子どもの「お母さん(お父さん)見て!」という承認欲求に対して、親が肯定的に応えて「共感」の態度をとることは、自己愛の形成に大きな影響を与えているといいます。

幼い子どもはみな誇大な自己を持っていて、なんでもできる気になっています。そして親に褒められたいと思うようになり、顕示し承認されることで自己愛を育みます。そして成長に伴ってその理想像が変化し、親から褒められることがそれほど重要なことと思えなくなっていきます。それがまさに自己愛の成熟の過程の一部です。

しかし親が子どもへの「共感」の態度を示さないと共感不全の状態に陥り、自己愛が育ちにくいといわれています。自己愛が未成熟のまま成長すると親だけではなく他人からの称賛や注目を集めて自己愛を満たそうとしますが、それで自己愛が成熟することはありません。コフートは必要な精神療法を用いて自己愛を成熟させる治療は可能だと考えています。

◇カーンバーグが考える環境的要因

カーンバーグは本人の気質的要因と家族がつくりだす環境的要因の2つが作用していると考えています。気質的要因はこれまで述べた通りです。環境的要因として過剰な期待をのせて、才能を褒め立てて「特別な子ども」と言い聞かせて育てたり、体の弱い子に対して過保護になったりすることが挙げられます。

良かれと思っていても過度にそういった行動をすると自己愛が成熟せず、未成熟の状態が続いてしまいます。

以上のことから先天的な気質要因と後天的な環境要因の影響が加わって、人格および自己愛が形成されていくといわれています。
参考:『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』|(岡田尊司,2004)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569635253
参考:狩野力八郎/著『自己愛性パーソナリティ障害のことがよくわかる本』|(講談社,2007)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062594218


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