境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)とは?【医師監修】
境界性パーソナリティ障害は、他の人から見捨てられる不安が強かったり自己イメージが不安定だったりすることで、対人関係などにさまざまな問題が生じることがある精神疾患です。最近ではボーダーラインパーソナリティ症と称されることも多くなっています。今回は境界性パーソナリティ障害の主な症状や原因、治療法、周囲の対応法について紹介します。
産業医
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)とは?診断基準や主な特徴
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の多くは思春期から青年期・成人早期に発症すると考えられています。時間はかかりますが適切な治療を行うことによって症状を落ち着かせることができるといわれています。
パーソナリティ障害(パーソナリティ症)とは、症状やその影響で本人がひどく苦痛を感じていて、日常生活に支障をきたす考え方や対人関係のパターンが見られる場合に使われる用語です。
境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)もその中の一つに位置付けられています。
※境界性パーソナリティ障害は現在、「ボーダーラインパーソナリティ症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「境界性パーソナリティ障害」といわれることが多くあるため、以下では「境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)」と併記します。
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)とは
境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の有病率はばらつきがありますが、アメリカの調査によると有病率の中央値は人口の1.6%とされています。また、特徴として男性より女性の方が多い傾向があるといわれています。
診断は基本的に精神科や心療内科などで受けられます。自身や周りの方に、境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の症状に当てはまる様子があった場合、受診を検討してみるとよいでしょう。
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の診断
基準としては、対人関係や自己認識に乱れがあり、衝動的な行動を繰り替えることが挙げられています。
他にも以下の基準のうち5つ以上当てはまることが診断の条件です。
・他者から見捨てられないために過剰な努力をする
・理想化しているかと思えば激しく批判するなど対人関係の不安定さがある
・自分自身の認識に乱れがある
・例えば、浪費、性行為、薬物などの乱用、無謀な運転、過食など、自分を危険にさらす行動を2つ以上行う(自殺、自傷行為は含めない)
・自殺行動(そぶりや脅しも含む)や自傷行為を何度も行う
・エピソード的に起こる不快感や苛立ち、不安の不安定な表出が見られる
・慢性化した空虚感を感じている
・不適切な激しい怒りや怒りのコントロールが困難である
・自分は苦しめられている、自分は自分ではないといった認識を持つ
精神科などを受診すると、医師による問診などを元に、診断基準と照らし合わせて境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の診断を行っていきます。
境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の主な特徴をチェック
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)には、自身が信頼をおいている相手に依存する特徴がみられます。常に根底には自分が見捨てられてしまうのではないかという「見捨てられ不安」というものを感じることがあります。
自分の存在をあやふやに感じ、自分の相手をしてくれる人がいないと空虚感を感じるためではないかといわれています。そして、特定の相手から見捨てられると感じたときに強い恐れや怒りの感情を抱きます。
例えば、相手が約束に数分遅れただけでも憤慨したり、うまくいっている交際相手に対して少しの不安を抱いたことをきっかけに急にパニックになったりすることがあります。しかし相手に依存しているように感じる行動をする一方で、「相手が自分を大切にしてくれない」と感じると急に突き放すような態度をとる例もあります。
対人関係でのトラブルがあると、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の人は「見捨てられた」と感じ、「自分のせいだ」と自責する傾向があります。そのため、今度は見捨てられないために演技や自傷行為、相手を脅すなどの行動が見られることがあります。
さらにそれが過激になると、相手の興味を自分に引きつけたりするためにギャンブルや過食、過量の飲酒・服薬、自傷行為や自殺をほのめかすといった、極端な行動につながる可能性も指摘されています。
■自己イメージの混乱
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の人は、自己イメージが混乱していることが多いと言われています。自分を相手してくれる他者の存在がないと、自分自身が存在していないような空虚な感覚を抱いていることが多いようです。
そのため、それまで取り組んでいた仕事や友人関係を突然変えるといった行動を起こすことがあります。他にも、目標や価値観、意見なども突然まったく違うものに変えてしまうことがあります。周りの人は「前に言っていたことと全然違う」と戸惑うかもしれません。
また、それは対人関係にも現れ、特定の人に強い愛情を求めていたのに、ある瞬間から「理不尽な扱いを受けた」と怒り出すといったことも起こりえます。これも、周りから見ると突然の変化に映るため、驚くことでしょう。
例えば、卒業の直前に学校を退学したり、築いてきた人間関係を壊したりと、目標が達成される直前に自ら台無しにするような行動を取ることもあります。
■感情のコントロールができない
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)は自己イメージの混乱や見捨てられることに不安や恐怖を常に感じるという特徴を持つことから、感情の波が激しく変動し、自分でコントロールすることができなくなることが多くあります。そのため、親しい人にも口癖のように皮肉や嫌味、批判などの言葉をぶつけてしまうということもあります。
激しい怒りやひどい落ち込みや空虚感を感じることから、それを解消しようと暴力や暴言を吐いたり、リストカットなどの自傷行為や大量の薬物摂取、大量の飲酒、過食などに走りやすくなります。これらを繰り返すことで日常化していくと、薬物依存やアルコール依存などに発展していくこともあります。さらに強いストレスにさらされ続けると解離性症状が表出する場合もあります。
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境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の治療とは?治るきっかけにはどんなものがある?
精神療法
■認知行動療法(CBT):
認知行動療法とは、何か困ったことにぶつかったときに浮かぶ思考に注目した治療法です。この思考のことを認知と呼んでいます。
境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の人などで、認知が歪んでいることで現実に即していない言動をとる場合、まずはカウンセラーと一緒に認知のゆがみを確認します。そのあと、そう感じる原因やどうすれば適応的な思考ができるかなどについて、時間をかけて治療していきます。
最終的には、必要以上に怒りや悲しみなどを感じることなく、感情をコントロールして本来の自分の力を発揮できるようにすることが目的です。
■弁証法的行動療法(DBT):
弁証法的行動療法とは、マーシャ・リネハンによって開発された、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)に効果的であるといわれている心理療法です。以下の4つの治療法を組み合わせることで、考え方のクセに気付かせ、バランスの良い考え方や反応ができるようにすることが目的です。
・苦悩耐性スキル
・マインドフルネススキル
・感情調整スキル
・対人関係スキル
この4つのスキルを取得するために、グループセッションが行われます。セッションは基本的に週1回、2時間半ずつ実施され、別途個人セッションが行われる場合もあります。
その他にも、日常生活で衝動性が現われたときのための24時間電話サポートなどがあり、合計して1年間ほどのセッションで終了となります。
しかし、欧米を中心に発達した治療法であり、日本で受けられる場所はまだ限られています。
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薬物療法
薬物療法の第一選択は、中等量の非定型抗精神薬ですが,その他の薬についても少量にとどめることが望ましいと考えられています。
抗うつ薬や気分安定薬は、抑うつ気分、不安や怒りの感情を抑えるために処方されることがあります。
薬には副作用もありますし、人によって薬が合わないこともあります。低年齢の子どもの場合はより慎重に進めるべきという専門家もいます。主治医の先生と信頼関係を築き、よく相談した上で納得して治療を進めることをおすすめします。
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の症状がある人との接し方
本人の治療のために協力体制をつくる
そういったときも「まだ良くならないの?」「病院変えたほうがいいんじゃない?」など否定的な言葉は控え、本人の不安に寄り添った接し方をすることが大事です。
周りの人が本人に振り回されないように気をつける
そのようにならないためには、本人に振り回されすぎないことが大切です。まずは境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の症状について周りの人も知識を学んでみましょう。過剰な言動なども症状によって起こされたものだと分かると、受け取りやすくなります。
境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)は自覚がないことも多い障害ですが、周りの人が困っている場合には「心配している」ということを伝えたうえで、病院の受診を促すといいでしょう。
もし、本人が拒否する場合は周りの人や家族だけでも受診できる病院もあります。受診はハードルが高いと思ったときは、電話などで相談できる窓口もありますので活用していくといいでしょう。
本人と一緒に周囲も変わる
本人の回復を支援するために、家族や周囲の人自身が無理矢理変わらなければならないということではありません。「できないことはできない」と言うことも、当事者と関わっていくためには大切なことです。
長年築いてきた関係を改善するには時間がかかります。一気に問題を解決しようとは考えずに、焦らず少しずつでも変わっていくことを意識してみましょう。
相談する相手をもつ
身近な人から拒絶されることで、根本的な治療を行うことができなくなる場合があります。関係性が悪化する前に、定期的に他の人に相談して助言をもらうことは重要です。周囲に安心して相談できる相手がいない場合は、心理カウンセラーなど専門家のサポートを求めることも考えましょう。
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の原因とは?
生物学的気質要因
また、脳や神経ペプチド系の調節機能に何らかの問題があることも指摘されていますが、まだはっきりしています。
どちらにしても、生物学的要因だけで境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)が発症するわけではありません。
環境的要因
境界性パーソナリティー障害の人は、幼少期に養育者と離別したり、片親を失ったりといったストレスを経験していることがあります。さらに身体的虐待やネグレクトなどを受けている場合もあると指摘されており、幼少期の養育者との愛着の形成がうまくいかなかったことが境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)につながっている可能性があります。
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)と合併症・併発症
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の方には数多くの併存症が見られます。例えば、うつ病や双極性障害(双極性症)などがあります。他にも、パニック障害(パニック症)などの不安症や過食などの摂食症が併存することが多いと言われています。
また、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)だけでなく、他のパーソナリティ障害(パーソナリティ症)を発症する可能性もあることが指摘されています。
■ADHD(注意欠如多動症)との合併の可能性がある
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)がある人はADHD(注意欠如多動症)を小児期または同時に発症している可能性があると、近年の研究によりいわれるようになりました。イギリスのある研究では、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の人の中でADHD(注意欠如多動症)の発症率は小児41.5%、成人16.1%と高いという結果が出ています。
また発達障害の中には境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)と似た症状が現れるものもあるため、臨床現場では障害同士の鑑別が難しいとも言われています。
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自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ症)とは、自分に対して誇大なイメージを抱き、注目や称賛を求める一方で、他者からのマイナスな評価に対して過敏に傷つきやすく、失敗しやすい場面を回避するなどの傾向があります。
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)は、自己中心的で対人関係の問題から情緒不安定をまねくことなどから自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ症)と共通点が多くあります。そのため、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)と自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ症)は、パーソナリティ障害(パーソナリティ症)の中でも併存しやすいものとして知られています。
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境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)かも?と思った時の相談先と医療機関
医療機関での受診先は精神科、心療内科などになります。ただ、いきなり病院を受診するのは抵抗があるという方も少なくないと思います。また、周りが受診をすすめても本人が望まないことも考えられます。
本人や周りの人が「もしかして境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)かも」と感じた際は、各都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センター、または各市区町村に設置されている保健所・保健センターの相談窓口へ相談してみてください。もちろん、本人だけではなく家族が電話などで相談することもできます。
次のリンクは全国の精神保健福祉センターの一覧になりますので、参考にしてみてください。
企業や学校のカウンセラーは、その人が所属している組織の内情にも通じているため、より適切なアドバイスをもらうことができる可能性が高いです。また、連携している医療機関を紹介してもらえる場合もあります。
まとめ
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)がある人を支えることは大変なことだと思います。ですが、本人も自身の言動や思考をコントロールできず苦しんでいます。本人や家族だけで解決しようとするのではなく、専門家の支援も受けながら、お互いに適切な距離を取りつつ、また一方で支え合いながら付き合っていくことが大切です。
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