境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の原因とは?

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の原因はさまざまな説があり、定まっていません。原因は本人の生物学的な気質要因と環境的要因の相互作用によって生じるという考え方が有力です。

生物学的気質要因

生まれつき遺伝的にストレスに上手に対応できない傾向のある人は、境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の発症の可能性が高まると言われています。それと共に、境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)は家族内で受け継がれることもあるため、遺伝が関係している可能性が指摘されています。

また、脳や神経ペプチド系の調節機能に何らかの問題があることも指摘されていますが、まだはっきりしています。

どちらにしても、生物学的要因だけで境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)が発症するわけではありません。

環境的要因

次に環境的要因として、子どもの頃のストレスが発症に関わっているという説があります。

境界性パーソナリティー障害の人は、幼少期に養育者と離別したり、片親を失ったりといったストレスを経験していることがあります。さらに身体的虐待やネグレクトなどを受けている場合もあると指摘されており、幼少期の養育者との愛着の形成がうまくいかなかったことが境界性パーソナリティー障害(ボーダーラインパーソナリティ症)につながっている可能性があります。

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)と合併症・併発症

■うつ病などと合併することがある
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の方には数多くの併存症が見られます。例えば、うつ病や双極性障害(双極性症)などがあります。他にも、パニック障害(パニック症)などの不安症や過食などの摂食症が併存することが多いと言われています。

また、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)だけでなく、他のパーソナリティ障害(パーソナリティ症)を発症する可能性もあることが指摘されています。


■ADHD(注意欠如多動症)との合併の可能性がある
境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)がある人はADHD(注意欠如多動症)を小児期または同時に発症している可能性があると、近年の研究によりいわれるようになりました。イギリスのある研究では、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)の人の中でADHD(注意欠如多動症)の発症率は小児41.5%、成人16.1%と高いという結果が出ています。

また発達障害の中には境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)と似た症状が現れるものもあるため、臨床現場では障害同士の鑑別が難しいとも言われています。
参考:『Attention-deficit hyperactivity disorder as a potentially aggravating factor in borderline personality disorder』|BJPsych
https://www.cambridge.org/core/journals/the-british-journal-of-psychiatry/article/attentiondeficit-hyperactivity-disorder-as-a-potentially-aggravating-factor-in-borderline-personality-disorder/8D58904699C50C1ABECC6C46039777B8
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■自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ症)との合併が混在することがある
自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ症)とは、自分に対して誇大なイメージを抱き、注目や称賛を求める一方で、他者からのマイナスな評価に対して過敏に傷つきやすく、失敗しやすい場面を回避するなどの傾向があります。

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)は、自己中心的で対人関係の問題から情緒不安定をまねくことなどから自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ症)と共通点が多くあります。そのため、境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)と自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ症)は、パーソナリティ障害(パーソナリティ症)の中でも併存しやすいものとして知られています。
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境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)かも?と思った時の相談先と医療機関

パーソナリティ障害(パーソナリティ症)の診断は難しいものです。自身や周りの人が境界性パーソナリティ障害かもしれないと感じた場合は、一人で悩む前にまずは専門機関に相談するといいでしょう。

医療機関での受診先は精神科、心療内科などになります。ただ、いきなり病院を受診するのは抵抗があるという方も少なくないと思います。また、周りが受診をすすめても本人が望まないことも考えられます。

本人や周りの人が「もしかして境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ症)かも」と感じた際は、各都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センター、または各市区町村に設置されている保健所・保健センターの相談窓口へ相談してみてください。もちろん、本人だけではなく家族が電話などで相談することもできます。

次のリンクは全国の精神保健福祉センターの一覧になりますので、参考にしてみてください。
参考:全国の精神保健福祉センター一覧l厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html
また、本人が会社勤めの場合や高校や大学に通っている場合、学校や企業専属のカウンセラーに相談することもおすすめです。

企業や学校のカウンセラーは、その人が所属している組織の内情にも通じているため、より適切なアドバイスをもらうことができる可能性が高いです。また、連携している医療機関を紹介してもらえる場合もあります。
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