ネグレクトが子どもに与える影響は?
虐待の一つであるネグレクトは、子どもにさまざまな悪影響を与える可能性があります。本章では、身体的影響・知的発達面への影響・心理的影響の3種類に分類してネグレクトが子どもに与える影響について解説します。
身体的影響
ネグレクトが子どもに与える身体的影響としては、十分な食事が与えられず栄養障害になってしまったり、愛情不足により成長ホルモンが抑えられて成長不全を引き起こしたりという身体的発育への悪影響のほか、保護者の監督不十分により子どもが事故に巻き込まれたり、保護者の関心あるいは知識不足によって治療すべきケガ・病気が放置され悪化したりという直接的な悪影響が挙げられます。
事故に巻き込まれた結果、大きなケガを負ったり、命を落としてしまったりするケースも報告されています。
事故に巻き込まれた結果、大きなケガを負ったり、命を落としてしまったりするケースも報告されています。
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知的発達面への影響
ネグレクトのなかには、子どもが学校に行けていないケースも存在します。そのようなケースでは、子どもの言語発達に遅れが生じたり、学力が同年代の子どもと比べて低くなる場合があるといわれています。学年に応じた学力が身に付かないことで、その後の進学や就職において困難を抱えてしまうことが予想されます。
心理的影響
ネグレクトが原因で、親との間に適切な愛着関係が築けないと、愛着障害や感情のコントロールに関する障害を発症することが多く、そのために対人関係で困難を抱えるようになってしまうことがあります。
また、ネグレクトされた経験がトラウマとなり、長い間苦しむこともあります。
さらに、保護者からの愛情・関心を十分に受けることのなかった子どもは極端に自己肯定感が低いことも少なくなく、自分自身を大切に思えない感情から自傷行為をしたり、自殺を試みたりする確率が高いといわれています。
また、ネグレクトされた経験がトラウマとなり、長い間苦しむこともあります。
さらに、保護者からの愛情・関心を十分に受けることのなかった子どもは極端に自己肯定感が低いことも少なくなく、自分自身を大切に思えない感情から自傷行為をしたり、自殺を試みたりする確率が高いといわれています。
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ネグレクトを引き起こす要因
子どもの虐待は、身体的、精神的、社会的、経済的などいくつもの要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。そのためネグレクトを解決するためには、単純に虐待をする側を罰したり責めたりするだけでは解決しないことが少なくありません。
虐待をしてしまう状況に陥りやすいリスクに早く気付き、そこに支援の手を差し伸べることが、結果的に子どもを虐待から守ることにもつながります。
虐待をしてしまう状況に陥りやすいリスクに早く気付き、そこに支援の手を差し伸べることが、結果的に子どもを虐待から守ることにもつながります。
保護者側のリスク要因
保護者側の要因としては、さまざまなものが考えられます。
まず要因の一つとして、親が子どもを受け入れられていないことが挙げられます。残念なことに、望まない妊娠であったり、子どもが何らかの障害や疾患などを持って生まれてきたりしたために、子どもをわが子として受け入れられず、ネグレクトに至ってしまうケースがあるのです。ほかにも、「再婚相手の連れ子だから」という理由で子どもを愛せず、ネグレクトをしてしまう事例も報告されています。
そのほかには、保護者の知識不足がネグレクトの要因となることもあります。育児知識が不足しているために子どもに与えるミルクの量が不適切だったり、子どものケガや病気に対して、例えば病院に連れていくなど適切な対応を取れていなかったりする場合もネグレクトとなります。
また、保護者自身が虐待を受けて育った場合、自分の子どもに対しても虐待をおこなう可能性が高いとされています。
まず要因の一つとして、親が子どもを受け入れられていないことが挙げられます。残念なことに、望まない妊娠であったり、子どもが何らかの障害や疾患などを持って生まれてきたりしたために、子どもをわが子として受け入れられず、ネグレクトに至ってしまうケースがあるのです。ほかにも、「再婚相手の連れ子だから」という理由で子どもを愛せず、ネグレクトをしてしまう事例も報告されています。
そのほかには、保護者の知識不足がネグレクトの要因となることもあります。育児知識が不足しているために子どもに与えるミルクの量が不適切だったり、子どものケガや病気に対して、例えば病院に連れていくなど適切な対応を取れていなかったりする場合もネグレクトとなります。
また、保護者自身が虐待を受けて育った場合、自分の子どもに対しても虐待をおこなう可能性が高いとされています。
子ども側のリスク要因
子ども側の要因として共通してポイントとなるのは、「養育者にとって何らかの育てにくさを持っている」ことです。子育てにおける「困りごと」によって親のストレスなどがたまり、ネグレクトへとつながってしまうことがあるのです。
養育環境のリスク要因
養育関係の要因としては、家庭の経済的困窮と社会的な孤立が大きく関係しているとされています。
経済的な困窮のために医療費が払えず、治療を必要とする子ども病院に連れていくことができないケースや、なんとか生計を立てるために保護者が長時間・夜間労働をしている間、子どもが「放置状態」になってしまうケースなどがあります。
孤立した家庭は子育てに関する知識・情報を持たなかったり、そうした情報にアクセスしにくかったりするほか、頼りにできる人がいないために保護者が精神的に追い詰められてしまうなどの理由で、ネグレクトを含む虐待全般が生じるリスクが相対的に高いと考えられています。
経済的な困窮のために医療費が払えず、治療を必要とする子ども病院に連れていくことができないケースや、なんとか生計を立てるために保護者が長時間・夜間労働をしている間、子どもが「放置状態」になってしまうケースなどがあります。
孤立した家庭は子育てに関する知識・情報を持たなかったり、そうした情報にアクセスしにくかったりするほか、頼りにできる人がいないために保護者が精神的に追い詰められてしまうなどの理由で、ネグレクトを含む虐待全般が生じるリスクが相対的に高いと考えられています。
ネグレクトされている可能性のある子どもを見つけたら?
児童虐待の通告は国民の義務
虐待から子どもを救うためには、第一に虐待が行われている疑いがあることが外部に認識され、その情報が関係機関に伝えられる必要があります。虐待を受けているのではないかと思われる子どもを見つけた場合、その内容を児童相談所に連絡することを「通告」と言います。
速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。
そのため、虐待の通告は「児童虐待対応において極めて重要」とされており、したがって、児童虐待の防止等に関する法律では以下で示す通り、すべての国民に通告義務を課しています。
速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。
そのため、虐待の通告は「児童虐待対応において極めて重要」とされており、したがって、児童虐待の防止等に関する法律では以下で示す通り、すべての国民に通告義務を課しています。
(児童虐待に係る通告)
第六条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
2 前項の規定による通告は、児童福祉法第二十五条第一項の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。
3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。
通告の時点で通告者が本当に虐待であるかどうかを判断する必要はなく、「一般の人の目から見て主観的に子どもの安全・安心が疑われる場合」であれば通告してよいのです。
また、もし仮に通告の後で虐待の事実がないと判明したとしても、虐待の事実がないことを知りながら故意に虚偽の通告したという場合などを除けば、法的責任を問われることはありません。また、通告した人が特定されるような情報や通告内容が漏れることはありません。
また、もし仮に通告の後で虐待の事実がないと判明したとしても、虐待の事実がないことを知りながら故意に虚偽の通告したという場合などを除けば、法的責任を問われることはありません。また、通告した人が特定されるような情報や通告内容が漏れることはありません。
どこに報告すればいいの?
■「189」で電話相談しましょう
「189」は、児童相談所や市区町村が「いちはやく」児童虐待に対応できるよう設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。「189」に電話をかけ、音声ガイドに従うことで最寄りの児童相談所につながります。
「189」は、児童相談所や市区町村が「いちはやく」児童虐待に対応できるよう設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。「189」に電話をかけ、音声ガイドに従うことで最寄りの児童相談所につながります。
「189」への相談は24時間365日いつでもすることができます。電話の通話料金自体は相談者の負担となりますが、相談料などはいっさいかかりません。
また、相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所の担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。
また、相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所の担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。
通告は子どもだけでなく保護者も救う
しかし、いざネグレクトされている疑いのある子どもを見つけたとしても「自分の通告によって親子の関係を引き裂いてしまうのではないか」と不安に感じ、通告をためらってしまう方もいるのではないかと思います。
そのような感情を抱くのは自然なことですが、そんなときに知っておいてほしいのは、「児童虐待の通告は、子どもだけではなく、保護者をも救う」ということです。
多くの場合、ネグレクトが起きてしまう背景には「保護者が抱えている何らかの困難」が潜んでいます。ネグレクトをしてしまう保護者は、経済的に苦しい生活をしていたり、自分自身が病気や発達障害、精神疾患などを抱えていたり、子どもをしつける方法が分からなかったりという困難を抱えているにもかかわらず、身近に相談する相手もいなくて、社会的にも精神的にも孤立状態にあることが多いと考えられているのです。
通告によって行政がネグレクトの存在を知ることができれば、それは保護者にとって子どもとの関わり方を見直し、自分自身が抱える困難への対処を行うきっかけとなります。また、貧困や疾患が背景にある場合や子育て方法が分からない場合など、保護者自身への支援につながることもあるのです。
そのような感情を抱くのは自然なことですが、そんなときに知っておいてほしいのは、「児童虐待の通告は、子どもだけではなく、保護者をも救う」ということです。
多くの場合、ネグレクトが起きてしまう背景には「保護者が抱えている何らかの困難」が潜んでいます。ネグレクトをしてしまう保護者は、経済的に苦しい生活をしていたり、自分自身が病気や発達障害、精神疾患などを抱えていたり、子どもをしつける方法が分からなかったりという困難を抱えているにもかかわらず、身近に相談する相手もいなくて、社会的にも精神的にも孤立状態にあることが多いと考えられているのです。
通告によって行政がネグレクトの存在を知ることができれば、それは保護者にとって子どもとの関わり方を見直し、自分自身が抱える困難への対処を行うきっかけとなります。また、貧困や疾患が背景にある場合や子育て方法が分からない場合など、保護者自身への支援につながることもあるのです。
◇ネグレクトをやめたいと苦しむ親の相談先
こども家庭庁では「親子のための相談LINE」を開設しています。子育てや親子関係について悩んだときに、子どもや保護者がコミュニケーションアプリを使って相談できる窓口です。そのほかにも社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP)など、虐待防止を援助する民間団体などでも相談やグループケアなどのサポートを受けることができます。
こども家庭庁では「親子のための相談LINE」を開設しています。子育てや親子関係について悩んだときに、子どもや保護者がコミュニケーションアプリを使って相談できる窓口です。そのほかにも社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP)など、虐待防止を援助する民間団体などでも相談やグループケアなどのサポートを受けることができます。