子どもの臨床心理アセスメントとは?目的やアセスメントシートの様式・記入例【専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
子どもの臨床心理アセスメントとは、心理検査や行動観察、面談などによってさまざまな角度から子どもの状態や特徴を把握し、それぞれに合った支援方法を見立てていく過程のことを言います。この記事では公認心理師などの専門家が子どもの特徴を把握する際の視点、関係する検査の種類、発達障害におけるアセスメントなどについて解説します。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
アセスメントとは?
アセスメントとは、「評価」や「査定」の意味を持つ言葉であり、福祉領域だけではなく、例えば「環境アセスメント」や「看護アセスメント」「リスクアセスメント」のように、さまざまな場面で使われています。アセスメントは、主に課題解決のために必要な情報を集め、評価や分析をする一連の過程を指します。
子どもの臨床心理アセスメントとは?
子どもの臨床心理の領域における「アセスメント」とは、子どもの支援が行われる際に、課題やニーズ、生活全体の情報を集め、どのような支援が望ましいか見立てる過程のことを言います。アセスメントの方法はさまざまありますが、主に「フォーマルアセスメント」と「インフォーマルアセスメント」に大別されます。
・フォーマルアセスメント:知能検査、発達検査など標準化された検査を実施する方法。検査の実施や評価の方法が定められており、信頼性(正確に測定できる)・妥当性(検査内容が測定の目的に合っている)が高く客観的な情報が得られる。
・インフォーマルアセスメント:行動観察や面接での言動、本人や保護者からの聞き取りなどから情報を集めていくこと。
フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントを組み合わせて情報を集めながら、子どもの状態や特徴を把握し、一人ひとりに合った支援方法を見立てていきます。
「臨床心理アセスメント」は、基本的には心理職が行うアセスメントを指しますが、実際の子どもの支援においては、心理職だけでなく子どもに関わる各分野の専門家が、それぞれの立場からアセスメントを実施し、本人の状態を多角的にとらえていきます。
・フォーマルアセスメント:知能検査、発達検査など標準化された検査を実施する方法。検査の実施や評価の方法が定められており、信頼性(正確に測定できる)・妥当性(検査内容が測定の目的に合っている)が高く客観的な情報が得られる。
・インフォーマルアセスメント:行動観察や面接での言動、本人や保護者からの聞き取りなどから情報を集めていくこと。
フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントを組み合わせて情報を集めながら、子どもの状態や特徴を把握し、一人ひとりに合った支援方法を見立てていきます。
「臨床心理アセスメント」は、基本的には心理職が行うアセスメントを指しますが、実際の子どもの支援においては、心理職だけでなく子どもに関わる各分野の専門家が、それぞれの立場からアセスメントを実施し、本人の状態を多角的にとらえていきます。
療育(発達支援)におけるアセスメントとは?
療育(発達支援)におけるアセスメントは、主に支援を受ける前に「支援が必要かどうか?」を評価するアセスメントと、実際に支援が始まる際に、子ども本人やご家族のニーズや課題の整理として行われるアセスメントがあります。
例えば、児童発達支援や放課後等デイサービスといった事業所を利用したい場合には、相談支援事業所によりアセスメントが行われ、障害児支援利用計画案が作成されます(保護者がセルフプランで作成することもあります)。また、事業所に通い始めると、主に児童発達支援管理責任者によりアセスメントが行われ、個別支援計画が作成されます。
例えば、児童発達支援や放課後等デイサービスといった事業所を利用したい場合には、相談支援事業所によりアセスメントが行われ、障害児支援利用計画案が作成されます(保護者がセルフプランで作成することもあります)。また、事業所に通い始めると、主に児童発達支援管理責任者によりアセスメントが行われ、個別支援計画が作成されます。
障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)の種類や支援内容、利用の流れを紹介
一般的に、福祉職や心理職(スクールカウンセラーや公認心理師・臨床心理士など)といった専門家が「アセスメント」という言葉を使う場合が多いですが、お子さんの特性をさまざまな角度から捉えるという考え方や専門家の視点を知っておくことは、お子さんの支援を考えていく際にも役立つでしょう。
この記事では、子どもの状態や特徴を把握する際の専門家の視点、関係する検査、検査結果を日常生活に活かす方法についてご説明します。
この記事では、子どもの状態や特徴を把握する際の専門家の視点、関係する検査、検査結果を日常生活に活かす方法についてご説明します。
子どもの臨床心理アセスメントの目的
子どもの臨床心理アセスメントの目的は、子ども一人ひとりが自分らしく生活できるようになることです。そのためにお子さんの状態・特徴をさまざまな角度から把握し、お子さんに合った支援につなげる必要があります。
子どもの状態や特徴を客観的に知る方法の一つとして、知能検査や発達検査があります。検査は、社会性や認知、言語などのさまざまな領域の発達度合いを測っていくものです。子どもの特徴や接し方が客観的に把握できるというメリットがありますが、その数値結果や障害の診断名だけで子どもの特性は判断できません。あくまでお子さんを知るための方法の一つと言えます。
アセスメントには多角的な視点が大切です。そのため、検査だけでなく成育歴の確認や行動観察なども組み合わせ、支援に必要な情報を見極めながらお子さんがどのような行動をしているのか、なぜその行動をとるのかを把握していくことが大切です。
子どもの状態や特徴を客観的に知る方法の一つとして、知能検査や発達検査があります。検査は、社会性や認知、言語などのさまざまな領域の発達度合いを測っていくものです。子どもの特徴や接し方が客観的に把握できるというメリットがありますが、その数値結果や障害の診断名だけで子どもの特性は判断できません。あくまでお子さんを知るための方法の一つと言えます。
アセスメントには多角的な視点が大切です。そのため、検査だけでなく成育歴の確認や行動観察なども組み合わせ、支援に必要な情報を見極めながらお子さんがどのような行動をしているのか、なぜその行動をとるのかを把握していくことが大切です。
どんな時にアセスメントをするの?
子どもの状態や特徴をさまざまな角度から把握していくことは、課題やニーズの背景を分析する時、支援の計画を立てる時などにおいて欠かせません。ここでは医療、支援、学校の3つに分けてご説明します。
医療機関におけるアセスメント
医師が子どもの診断を行う際には、精神疾患の診断分類・診断基準である、ICD-10やDSM-5-TRをもとに行います。専門医のいる小児科や小児発達神経科、児童精神科で受診でき、思春期以降の場合は精神科での受診も可能です。
医療機関では、面談(観察)や認知・知能などの心理検査、生育歴や困りごとについての問診などから得た情報をもとに、総合的に判定されます。
また、医療機関に公認心理師などの心理職、作業療法士や言語聴覚士といったリハビリ職が在籍している場合は、それぞれの専門的立場からアセスメントが実施されることもあります。
どのようなアセスメントや継続的な支援を受けられるかは、医療機関によっても異なります。
医療機関では、面談(観察)や認知・知能などの心理検査、生育歴や困りごとについての問診などから得た情報をもとに、総合的に判定されます。
また、医療機関に公認心理師などの心理職、作業療法士や言語聴覚士といったリハビリ職が在籍している場合は、それぞれの専門的立場からアセスメントが実施されることもあります。
どのようなアセスメントや継続的な支援を受けられるかは、医療機関によっても異なります。
児童発達支援・放課後等デイサービスでのアセスメント
児童発達支援・放課後等デイサービス(障害児通所支援)では、個別支援計画を作成する際の情報収集として、アセスメントは位置づけられています。
子ども本人の状態や特徴だけでなく、家族や地域社会の状況、本人やご家族の願い・ニーズなどを把握していきます。アセスメントで得られた情報を「アセスメントシート」に整理していくことも多く、保護者の方に「アセスメントシート」を記入してもらう場合もあります。
アセスメントの項目は、明確に定められているわけではありませんが、「アセスメントシート」の様式を公開している自治体もあります。自治体によって実態や詳細の内容等が異なるため、気になる点や不明点は、お住いの自治体(あるいは事業所の所在地の自治体)にお問い合わせください。
例えば、大阪市では、児童発達支援・放課後等デイサービスのアセスメントシートの様式(エクセルファイル)の例が掲載されています。ほかに、障害児通所支援事業に関わるさまざまな様式が公開されています。
子ども本人の状態や特徴だけでなく、家族や地域社会の状況、本人やご家族の願い・ニーズなどを把握していきます。アセスメントで得られた情報を「アセスメントシート」に整理していくことも多く、保護者の方に「アセスメントシート」を記入してもらう場合もあります。
アセスメントの項目は、明確に定められているわけではありませんが、「アセスメントシート」の様式を公開している自治体もあります。自治体によって実態や詳細の内容等が異なるため、気になる点や不明点は、お住いの自治体(あるいは事業所の所在地の自治体)にお問い合わせください。
例えば、大阪市では、児童発達支援・放課後等デイサービスのアセスメントシートの様式(エクセルファイル)の例が掲載されています。ほかに、障害児通所支援事業に関わるさまざまな様式が公開されています。
東京都日野市では、児童発達支援・放課後等デイサービスで活用できるアセスメントシートの記入例を参考にできます。
以下、ほか自治体のアセスメントシートの例です。
学校におけるアセスメント
学校での困りごとがあった時には、担任の先生をはじめ、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、養護教諭、管理職の先生などに相談できます。なかでも、スクールカウンセラーは教育現場に近い立場でありながら、公認心理師や臨床心理士の資格を持っていることが多く、心理の専門家としての視点からアドバイスを受けることができるでしょう。
スクールカウンセラーは主にお子さんとの面接を通して、お子さんの状態や特徴を把握していきます。そのほかにお子さんの学校生活での様子を先生から聞いたり、場合によっては実際に授業の様子を観察したりして情報を得ます。また、知能検査などの検査結果も踏まえに、お子さんの発達や心理状態を見立てながら、保護者の方と一緒に学校や家庭での支援を考えていきます。
次の章からは公認心理師などの専門家が行動観察や面談、知能検査などの検査において、実際にどのような視点でアセスメントを行っているかを具体的に説明していきます。
スクールカウンセラーは主にお子さんとの面接を通して、お子さんの状態や特徴を把握していきます。そのほかにお子さんの学校生活での様子を先生から聞いたり、場合によっては実際に授業の様子を観察したりして情報を得ます。また、知能検査などの検査結果も踏まえに、お子さんの発達や心理状態を見立てながら、保護者の方と一緒に学校や家庭での支援を考えていきます。
次の章からは公認心理師などの専門家が行動観察や面談、知能検査などの検査において、実際にどのような視点でアセスメントを行っているかを具体的に説明していきます。