子どもの臨床心理アセスメントとは?知能検査や行動観察からどうやって子どもの特性を把握していくの?

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子どもの臨床心理アセスメントとは、知能検査や行動観察、面談などによってさまざまな角度から特性を把握し、それぞれに合った教育方法を見つけていくことを言います。この記事ではカウンセラーなどの専門家が子どもの特性を把握する際に持っている視点、関係する検査の種類、発達障害におけるアセスメントなどについてご説明します。

発達障害のキホン
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目次 アセスメントとは? 子どもの臨床心理アセスメントの目的 どんな時にアセスメントをするの? 子どもの行動観察の時のアセスメント カウンセラーと子どもの、面接時のアセスメント 知能検査などの検査時のアセスメント 発達障害におけるアセスメント まとめ

アセスメントとは?

アセスメントとは、ある問題を解決するために情報を集め、それをもとに問題解決の方法を計画していく一連の流れのことです。アセスメントという言葉は世の中のさまざまな場面で使われており、例えば「環境アセスメント」や「看護アセスメント」のように解決する課題に応じて使われています。

・子どもの臨床心理アセスメントとは?
上記の様々なアセスメントと同じく、子どもの臨床心理においても「アセスメント」という言葉が使われています。例えば病院で発達障害の診断を受ける前に行う場合、知能検査などの検査だけでなくカウンセリングにおける行動観察・面談などの方法によって情報を集め、子どもの特性を把握し、一人ひとりに合った方法を見つけていくことを言います。

一般的にスクールカウンセラーや臨床心理士などの専門家がアセスメントという言葉を使う場合が多いですが、お子さんの特性をさまざまな角度から捉えるという考え方や専門家の視点を知っておくことは日常生活にも役立つでしょう。

この記事では、子どもの特性を把握する際の専門家の視点、関係する検査、検査結果を日常生活に活かす方法についてご説明します。

子どもの臨床心理アセスメントの目的

子どもの臨床心理アセスメントの目的は、子ども一人ひとりが自分らしく生活できるようになることです。そのためにお子さんの特性をさまざまな角度から把握し、それをお子さんに合った教育方法につなげる必要があります。

子どもの特性を知る代表的なツールとして知能検査や発達検査があります。客観的に子どもの特性を知ることができるというメリットがありますが、その結果や障害の診断名だけで子どもの特性を決めつけてはいけません。あくまで特性を知るための方法の一つなのです。

検査結果を参考にしつつ、お子さんがどんな行動をしているのかやなぜその行動をとるのかを把握していくことが、アセスメントの目的です。

どんな時にアセスメントをするの?

お子さんの特性をさまざまな角度から把握していくことは、ニーズを見極める時、障害があるかを判断する時、支援の計画を立てる時などにおいて欠かせません。ここでは医療、支援、学校の3つに分けてご説明します。

・医療におけるアセスメント
医師が子どもの発達に障害があるかを判断する時には、アセスメントが行われます。子どもの場合は専門医のいる小児科や小児発達神経科、児童精神科で受診できます。また、思春期以降の場合は精神科での受診も可能です。

医療機関では、面談(観察)や脳波などの生理学的検査、認知・知能などの心理検査、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答などから得た情報をもとに、総合的に発達障害かどうかを診断されます。

・支援の場におけるアセスメント
未就学の子どもの場合、発達相談においてアセスメントが行われます。例えば、ソーシャルワーカーとの面談、医師による診察(任意)、発達検査・知能検査が行われ、療育プランが検討されるといった流れとなります。

就学しているお子さんの場合は、通級・特別支援学級などの就学先に通う時や放課後等デイサービスなどの施設を利用する時において同じようにアセスメントが行われます。お子さんの特性をさまざまな角度から把握し、一人ひとりに合った支援方法につなげます。
・学校におけるアセスメント
学校での困りごとがあった時に相談しやすいのがスクールカウンセラーです。教育現場に近い立場でありながら、臨床心理士の資格を持っていることが多く、客観的なアドバイスをもらうことができるでしょう。

スクールカウンセラーは主にお子さんとの面接を通して、特性を把握します。そのほかにお子さんの学校生活での様子を先生から聞いたり、場合によっては実際に授業の様子を観察したりして情報を得ます。また知能検査などの検査結果をこれらの情報をもとに、お子さんの発達や心理状態に関するアドバイスをもらえます。

次の章からはカウンセラーなどの専門家が面談や行動観察、知能検査などの検査において、実際にどんな視点でアセスメントを行っているかを具体的に説明していきます。

子どもの行動観察の時のアセスメント

子どもの特性を知るための最も基本的な情報収集として、カウンセリングにおける行動観察があります。服装、姿勢、態度、発言などをチェックすることが、特性を知るヒントになるのです。カウンセラーは、例えばお子さんが目線を合わせられるか、質問に対して答えられているか、極度なやせや肥満ではないか、などについてチェックしています。

カウンセラーなどの専門家による行動観察の方法は、大きく分けて自然観察法と実験観察法の2つがあります。

・自然観察法
子どもの自然な姿を観察する方法です。例えば、待合室での子どもの様子を観察し、参考にするといったことが挙げられます。

・実験観察法
例えば一定の時間子どもをグループで遊ばせて、その様子を観察する方法などがあります。チェックされているポイントは集団で遊べているか、友達とけんかをしたかどうか、乱暴をしていないか、独り言を言っていたかどうかなどです。

小さいお子さんの場合は、遊戯療法室で1人で遊んでいる様子を観察したり、親子や集団で遊んでいるところを観察したりします。母子分離不安が強いかどうか、多動、かんしゃく持ちなどの特徴があるかどうかなどが見つかります。

また親子遊びでは、親御さんがお子さんとどのように関わっているかについてもチェックされています。例えばどのように指示を出しているか、どのように子どもの要求を受け止めているかなどです。これをもとに、カウンセラーからお子さんの接し方に関するアドバイスをもらえます。

行動観察により、子どもの発達状態や、対人傾向、行動傾向などの情報を得ることができるのです。

カウンセラーと子どもの、面接時のアセスメント

子どもの特性を把握する手段の一つとして、面接があります。面接では、カウンセラーが子どもと対面で話すことで特性を把握します。話している内容はもちろん、話し方、表情、身振り、視線、手足の動きなど、総合的に判断していきます。

例えばカウンセラーが「おいくつですか?」と聞いたときに、お子さんが「おいくつですか?」とオウム返しをしてきたり、視線を合わせなかったりした場合、自閉症スペクトラムの可能性があるという仮説を立てることができます。しかしこの情報だけで決めつけることはなく、検査結果や行動観察で得た情報を踏まえて、特性を捉えていくのです。

面接ではカウンセラーと子どもの間に信頼を築くことが大切であるため、子どもが緊張しないように座る位置などの工夫がされています。例えば視線恐怖がある子どもの場合、カウンセラーは横並びに座ったり直角に座ったりして、話しやすい環境が整えられています。

また初回の面接はお子さんとカウンセラーとで行う面談の他に、どんな悩み事があるのかや、なぜこの相談機関を選んだのか、さらに家族構成や病歴といった基本的な情報を親御さんと共有する場が設けられます。

今後の治療について、適用される支援、相談機関の特徴などについても聞くことができます。心配な点があれば、面接の際に質問するとよいでしょう。

知能検査などの検査時のアセスメント

特性を知るためには、知能検査や発達検査などの検査を受ける場合が多いです。しかし記事の前半でもご説明したように、検査結果だけで子どもの特性を判断してはいけません。このような検査は特性を客観的に把握したり、面談や行動観察だけでは分からない特性を見つけたりすることが目的です。

ここでは子どもが受ける検査の中でも、代表的な検査をご紹介します。

知能検査

・ビネー式知能検査
対象年齢:2歳~成人検査

ビネー式知能検査は精神年齢(MA)と生活年齢(CA)の比である比例知能指数(比例IQ)を算出します。生活年齢(CA)とは生まれてからの暦の上での年齢(暦年齢)を指します。一方精神年齢(MA)は、検査で解答できた問題の難易度がどの年齢のレベルにあるかによって判定されます。

ビネー式知能検査の中でも代表的であるのが、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)です。検査対象が2歳から成人と幅広く、問題が年齢尺度によって構成されているため、通常の発達レベルと比較することが容易になっています。また、実施の手順が簡便であり、被検査者に精神的・身体的負担がかからないことが大きな特徴となっています。
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・ウェクスラー式知能検査
対象年齢:WISC-Ⅳ5歳~16歳11ヶ月、WAIS-Ⅲ16歳~89歳、WPPSI 3歳10ヶ月~7歳1ヶ月

ウェクスラー式知能検査は言語性IQと動作性IQという測定概念を用いて、個人内差(個人の得意不得意)の測定をします。年齢に応じて児童版のWISC、成人用のWAIS、幼児用のWPPSIの3種類があります。

個人の能力の特徴をより分析的に捉えることができ、知的障害や発達障害のある人の場合、検査結果に一定の傾向が見られやすくなっています。そのため、知的障害や発達障害の確定診断の際に、参考情報の一つとして用いられることがあります。

・K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー
対象年齢:2歳6ヶ月~12歳11ヶ月

K-ABC心理・教育アセスメントバッテリーは、子どもの知的能力を認知処理過程と知識・技能の習得度の両面から評価することが特徴の検査です。検査結果からその子どもが得意な認知処理様式を見つけ、それを実際の指導・教育に活かすことを目的としています。

同時処理(情報を全体的に捉える認知特性)と継次処理(情報を順番に理解する認知特性)の個人内の差を明らかにできることから、特異な認知パターンを持つ学習障害のような場合に適用されます。

発達検査

・新版K式発達検査
対象年齢:生後100日後から成人

年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。

なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。
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このように子どもが受ける検査にはさまざまな種類があります。心理検査は検査によって分かることも異なるため、どの検査を受けるかはカウンセラーなどの専門家に相談するとよいでしょう。
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発達障害におけるアセスメント

発達障害のあるお子さんの特性を知るためには、検査を受けることはもちろんのこと、特に行動観察が重要視されています。例えば暗記がとても得意なのに算数など苦手な教科に全く興味を示さないという学校での様子をきっかけに、学習障害だとわかったパターンなどがあります。

またお子さんの行動を観察することは日常生活においても欠かせません。お子さんのご家庭での様子を見て気になる点があれば、保健センター、子育て支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターなどに相談しましょう。早めに相談することが、お子さんにあった療育を見つけるきっかけとなるのです。

さらに年齢が上がってから特性が明らかになる場合もあるため、子どもの成長につれて、アセスメントも更新していく意識を持つことが大切です。

検査結果を日常生活に活かすためには?

検査結果を見ると障害の重さや数値に目がいきがちですが、それ以外の内容についても理解する必要があります。日常生活では検査結果をもとに、お子さんの苦手なことの原因を把握していくとよいでしょう。

例えば「時間の見通しを持てない」という結果が出ていた場合、急かしても子どもは何を急かされているか分からずパニックを起こしてしまうのだと解釈できるかもしれません。「本人の筋緊張が低く姿勢を長時間保てない」という検査結果が出ていたなら、怠けているのではなく、きちんと着席するのが難しいのだと判断できます。

このようにお子さんの困難の原因を知ることで、どんな工夫をすればよいのかの見通しにつなげられるでしょう。検査結果でお子さんの行動を見る視点を狭めないようにすることが大切です。

さらにお子さんに合った教育方法を見つけていくために、検査結果などの情報を保育士や幼稚園・学校の先生に共有し、お子さんのご家庭での様子と幼稚園や学校での様子の両方を把握するようにしましょう。

まとめ

子どもの臨床心理におけるアセスメントとは検査、行動観察、面談などによってさまざまな角度から子どもの特性を把握し、一人ひとりに合った教育方法を見つけていくことを言います。

アセスメントの方法の一つに知能検査などの検査がありますが、検査結果はあくまで客観的に特性を知るためのものです。障害の重さや知能指数の数値だけに注目するのではなく、検査結果をもとに行動と照らし合わせてお子さんの得意・不得意を把握していくことが大切です。

またお子さんの行動を知ることは日常生活においても欠かせません。面談や検査でのお子さんの様子を専門家から聞いて知る以外にも、学校ではどうなのか、さらにご家庭ではどうなのか、さまざまな角度から特性を理解してあげることが総合的なアセスメントであると言えるでしょう。
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