真面目さを個性に変えて…

様々なトラブルを抱えながらも彼は三年生になりました。一、二年生の頃は特異な存在と見られがちで、周りと距離があった彼ですが、三年生になって少しずつ変化が出てきました。

彼が三年になった時に、担任を受け持つ事になりました。私は、彼の話の聞き役を私以外にもやってもらったらいいのではないかと、考えました。

そこで、クラスの学級委員長のR君に、「A君が困っているみたいやから、話を聞いてあげて」と声をかけてみました。はじめ、R君はA君と話す事に苦戦していましたが、子供は柔軟です。そのうち話を整理しながら聞くという事を自分で考えて実践していきました。

R君が、A君が困っている時に助けるという構図ができだしてから、何かあったらR君がA君とみんなの間に入って話をしていきました。そうするうちに、周りの生徒もA君の苦手なこと、得意なことがわかるようになり、上手に交流を持てるようになりました。

それでもトラブルが起こってしまう時は私が話をしたりしましたが、基本的には生徒達の中で解決される事が多くなりました。

本人も三年生にしてようやく居場所ができた事が嬉しいらしく、周りが投げてくる笑いのネタに対して、自分なりにパフォーマンスするなどして周囲を笑わせていました。

真面目で硬い性格のA君がちょっとおかしなことをするのが面白いらしく、周囲の生徒達も少しずつ関わりを多く持つようになっていきました。

他にも、クラスの生徒はA君の真面目さによく気がつきました。誰もが嫌がる事を引き受けたり、みんながうっかり忘れていた大事な提出物を良く覚えていて先生に確認して、クラスの生徒が助けられるといった経験から、生徒達の中でA君は「真面目で、いつも一生懸命なちょっと個性的な子」として、位置づけられるようになりました。

クラス経営において、私がしたのはクラスの中心となる生徒にA君に対して声をかけるようお願いすることと、その活動を見守ることでした。

きっかけさえ作れば生徒達は自分達でお互いをフォローしあえるようになるのです。もちろん、一、二年生の時の接し方やそこから得られたA君自身の成長もあり、三年生でうまくいったという事もあるのでしょう。

みんなで支え合う相互理解の社会へ

大小含めて発達に課題がある生徒は、私が受け持つクラスの40人中、10人ほどいます。

その中で同じ方向を向いて共同生活を行う上で大事なのは、お互いに理解し合うことです。

できない、苦手な部分を個性とし、できる部分を伸ばしていくこと。できない部分はみんなでフォローして、できる部分でみんなを助けてもらうこと。それが相互理解に大事な行動だと思います。

そのためには、本人や教師、保護者だけが頑張るのではなく、周りの生徒も巻き込んで、居場所を作っていく。そうするとみんなで支える姿勢を作ることになります。

今の社会はまだ、特異な存在に対する風当たりが強いです。しかし、相互理解を学んだ生徒がこれから成長し、作っていく未来の社会はきっと今よりも優しくなります。

そんな社会のために私たち教員は、「生徒が支え理解し合える、違いを認め合える環境作り」をしていく事が使命だと感じています。
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