日本ダウン症会議ーダウン症のある人と専門家が「どんな人も豊かに生きられる社会」を考えた会議をレポート

2017/12/01 更新
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11月11・12日の2日間、東京の大正大学にて、第1回「日本ダウン症会議」が開催されました。会議にはのべ865人の参加がありました。

講演やシンポジウムのほか、医療・保育・教育・福祉・就労各分野の分科会が催され、専門家による最新の取り組みの紹介や活発な質疑応答がありました。

ここでは、その様子や、参加者の声などをお伝えします。

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日本ダウン症協会による、初めての全国的会議「日本ダウン症会議」の様子を徹底レポート!

2017年11月11日・12日の2日間にわたって開かれた、第1回 「日本ダウン症会議」。ダウン症のある人やその家族、現在第一線で活躍している専門家や研究者、支援者などが集い、「新しいダウン症像」を考えて意見交換をする、日本で初めての催しです。

シンポジウムや分科会、ダンスパフォーマンスや市民公開講座など…ときに真剣に、ときに楽しく、多くの人が集まり、交流した2日間、その見どころを徹底レポートします!
第1回 「日本ダウン症会議」が11月11日・12日に開催!のタイトル画像
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障害は強みや価値に変わるー「バリアバリュー」を掲げた特別講演、タレントあべけん太さんのサイン会も

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「LOVE JUNX」のメンバー11名による歌とダンスのパフォーマンス
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第1回日本ダウン症会議は、ダウン症のある人たちが活動する「LOVE JUNX」のダンスパフォーマンスで幕を開けました。キレのあるダンスに、会場からは感嘆の声が。

続いて、玉井邦夫大会長の挨拶と、株式会社ミライロで講演講師として活躍する岸田ひろ実さんによる特別講演が行われました。
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株式会社ミライロの岸田ひろ実さんによる特別講演の様子
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岸田さんは、16年前にダウン症のあるお子さんを授かりました。その後、パートナーの突然死、ご自身が病気の影響で下半身不随となるといった様々な出来事を乗り越え、現在は株式会社ミライロで活躍しています。

ご自身の体験をもとに、トラウマやコンプレックス、障害は克服すべきものではなく、強みや価値として生かしていこうという“バリアバリュー”の考え方や、さりげない配慮をしていこうという”ユニバーサルマナー”について語られました。
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開会式の前後に、タレントのあべけん太さんと岸田ひろ実さんのサイン会が催されました
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今日も一日、楽しかった ダウン症のイケメン・あべけん太
あべ けん太
朝日新聞出版
ママ、死にたいなら死んでもいいよ (娘のひと言から私の新しい人生が始まった)
岸田 ひろ実
致知出版社

2日間にわたり、医療・保育・教育・福祉・就労の各分科会が開催。最新の研究や取り組みが発表

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医療の分科会(1日目)の様子。専門家による発表が行われました
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分科会では、各分野でダウン症のある人に数多く関わる専門家による、研究や課題について発表がありました。

1日目の医療分野の分科会では「成人期の医療課題」について、ダウン症がある人のアルツハイマーやうつ、成人期の健康状態についてや、小児科からの引継ぎでの留意点などの解説がありました。会場からは、薬剤についての質問などのほか、「仕事・通勤のストレスから認知症を発症したようだ」という声も。

「ダウン症のある人は頑張りすぎる傾向がある。無理しすぎるとうつや認知症を発症することもあり、頑張らせすぎないようにしてほしい」という専門家のコメントがありました。

2日目の医療分野の分科会は、子どもの健康管理がテーマ。

メガネを嫌がる場合の慣れさせ方や、発語がない場合の視力検査の方法、靴選びの方法などが紹介されました。質疑応答では、発達障害などの併存についても意見が飛び交いました。

参加者には医師や研究者、支援者のほか、お子さんと一緒の保護者も大勢参加。会場は赤ちゃんや子どもの声も混じり和やかな雰囲気でした。参加したお母さん方は、「普段の短い診療時間では聞けない話が聞けた」「成長するとどうなっていくかイメージしやすくなった」「本には載っていない具体的なデータを知ることができた」と話してくれました。

そのほか、保育分野「就学前段階での実践事例」、教育分野「小学校段階での実践事例について」「中学・高校段階での実践事例」、福祉分野「障害児者をめぐる法的な動向」「本人の暮らしのための相談事例」、就労分野「就労の在り方について」の各分野の専門家から発表がありました。

ダウン症のある人を中心にした連携。本人や家族も自分の言葉で発表を

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それぞれの分科会では専門家だけではなく、ダウン症のあるご本人や家族の発表も行われたのが、今回の日本ダウン症会議の特色ともいえます。

多くの人の前での発表でしたが、新野さんはリラックスした様子で、入院時のエピソードや治療後に痛みなく働けるようになったことへの喜びを語りました。

大好きな演歌歌手・氷川きよしさんの話を織り交ぜるなど、ユーモアも。終了後には「家で1日2回練習してきました。緊張しないで話せた」と感想を語りました。

2日目の医療分野の分科会の座長を務めた埼玉県立小児医療センターの大橋博文先生は「医療関係者、家族、ダウン症のある人が、本人を中心に置いた視点で集まっている。発表や質問も、ダウン症のある人のよりよい健康や暮らしに向けた連携が見られたのが、今回の日本ダウン症会議でよかった点」と手ごたえを感じている様子でした。

元気でかわいい親子のフラダンスで市民公開講座が幕開け

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市民公開講座では、横浜のダウン症児サークル「オハナフラかながわ」のフラダンスがオープニングを飾りました。

「まだ発音もハッキリしなくて言葉も出ない子も、ハンドサインに似た要素があるフラの振り付けは覚えやすいのか、いつの間にか覚えていて驚かされます。体幹も鍛えられるように思います。踊っていると自然と笑顔になれることがなによりの魅力です」と、ハマヒアポの佐々木さん。

フラダンスの練習は月に2回。ダウン症のある子やきょうだい、保護者も一緒に踊っています。

司会の長谷部真奈見さんに「お母さんと踊るフラはどうでしたか?」と聞かれた佐々木梨優さんは「すごく、すごくうれしくなる!」と笑顔で答えてくれました。
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日本ダウン症協会として「出生前検査(診断)」について考える初のシンポジウム

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今回のシンポジウムのテーマは「出生前検査(診断)」。

2012年に新型出生前診断が導入されて以来、公益財団法人日本ダウン症協会は、声明や取材に応じるなどしてその立場や考え方を表明してきました。しかし、主体的に発信することや考える場を持つのは、今回の日本ダウン症会議が初めての試みです。

座長を大阪医科大学の玉井浩先生、日本ダウン症協会の水戸川真由美さんが務め、足立病院院長の畑山博先生やお茶の水女子大学教授の三宅秀彦先生が産婦人科、遺伝科の医師としての専門的な立場から、出生前検査の問題をわかりやすく伝えました。

出生前診断では、妊娠中にダウン症をはじめとする遺伝子疾患の可能性がわかります。検査を希望する人も年々増えています。

検査の結果によって妊娠の継続をあきらめるというケースも少なくありませんが、両親が、正確な情報を得、自分たちなりの選択をできることが重要である。そのうえで、どんな選択をしても後悔させない、許容される社会にしていくことを目指すべきとの言葉が印象的でした。

また、出生前診断は生まれてくる赤ちゃんを早い時期から受け入れる準備をするためにも役立つということ。その観点から母親と家族の障害受容と産後のケアについて、助産師の立場から山梨大学教授の中込さと子先生が、山梨県の取り組みを紹介しました。
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最後に、ダウン症のタレントとして活躍するあべ けん太さんが登壇。満員電車に揺られ通勤する仕事のこと、休日に楽しむビールやゲームのことなど日常の姿をユーモアたっぷりに教えてくださいました。

厚生労働省の研究班の社会調査でも、ダウン症のある人の9割以上が「毎日幸せ」と感じているという意識調査があります。

あべさんの「おかん、産んでくれてサンキュー!」という力強い言葉や毎日を楽しく精力的に過ごす姿、そして「ダウン症のことを知ってもらうために、世界中の人に会い、テレビにも出たい!夢は世界制覇です!」という言葉は、まさにこの調査結果を裏付けるものでした。

ダウン症のある人、家族、専門家が交流できた交流会

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1日目の夜、大正大学内の会場で、交流会が催されました。交流会には、分科会に登壇した専門家だけでなく、日本全国から集まったダウン症のある人やそのご家族の参加も多数あり、120名以上の参加がありました。ダウン症のある人も参加するヘルマンハープの演奏でスタートし、料理を囲みながら日本各地の会員同士や、専門家との交流が生まれていました。

発達ナビ編集部は、交流会に参加されていた、日本ダウン症協会の会員家族3組にお話を伺いました。
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新潟県から参加の滝沢さん(左)、五十嵐結花さん(中)、お母様(右)
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2日目の分科会で登壇し、学校教育について話す五十嵐結花(17歳)さんは新潟県からの参加。

「赤ちゃんが好き。赤ちゃんをお世話する様子の動画を見るのも好き」という結花さん。「トミカも大好きで、60台以上集めている。運転免許を取って車を運転したい」と夢を語ってくれました。
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愛媛県から参加の中川さんご家族
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愛媛県から参加の中川智仁(19歳)さんとそのご家族。お母様は「就労の分科会に参加しました。障害のある方たちの居場所づくりのために、地元で小規模作業を運営しているので勉強になりました」。お父様は、「医療の分科会に参加し、成人期の経過や気を付けるべきことが分かった」と話してくれました。
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熊本県から参加の平田さん。幸一さんの身に付けているアクセサリー類はご本人手作り!
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熊本県から参加した平田幸一(33歳)さんとお母様からは、「日本ダウン症協会の総会がここ数年なかったので、久々に全国の仲間と交流することができてとても有意義でした」と、喜びの声。

平田さんは熊本県で支部で活動しており、毎月、体操や喫茶店体験、ボーリング、キャンプなど、余暇活動を企画しているそう。幸一さんは、水泳やバンド活動、ダンスなど多趣味。「料理が好き。カフェをやりたい」という夢もあるそうです。

取材を通し、ダウン症のある人やそのご家族の、生き生きとした暮らしぶりの一端に触れることができました。

また、交流会は、参加者同士交流を生み、そこからまたつながりや実践への新たな一歩が踏み出される予感を感じさせるものでした。

さまざまな人がつながり、発信し続けていく大会に

日本ダウン症協会は「これからの私たち~新しいダウン症像を求めて~」と題した日本ダウン症会議を催し、シンポジウム「出生前検査(診断)をめぐって」などを通して、社会へ向けての発信を主体的に行いました。

医療の技術の進歩とともに、出生前検査(診断)や新薬の開発などが進んでいます。また、世界的に、障害のみでなく、民族や宗教など、社会の不寛容が広がりつつある現実もあります。

その中での、障害のある方や支援者らによる、主体的な発信は大きな意義のあるものです。

ダウン症のある人や家族だけでなく、専門家や支援者も一緒に「ダウン症のある人をはじめ、どのような人にとっても豊かに生きられる社会とは何か」を問い、多様性のある社会の豊かさについて発信し続ける決意を感じられる会議でした。
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