「ジッとしなさい!」と叱る前に。教室で活躍する「ペダルデスク」の存在からわかること

ライター:林真紀
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ADHDの子どもの特性である衝動性・多動性。このような特性のある子どもたちにとって何時間もジッと座って授業を受けるということは、苦行です。けれども海外で、「動きながら授業を受けることのできるツール」を取り入れたことにより、子どもたちの学業成績が大きく上がったという報告があります。今回は、その画期的なツールを紹介します!

ADHDの子どもの学校生活

ADHDの特性を持つ子どもにとって、6時間近くじっと座って授業を受けるということは、それだけで重労働です。我が家の小学校1年生の息子(ADHDの診断済)は離席こそしませんが、授業中は常に椅子をガッタンガッタン、貧乏ゆすり。

それについて叱られると、今度は鉛筆をガリガリと噛み始め、息子の鉛筆は書く側だけでなく反対側の端からも減っていきます。

また、姿勢をまっすぐに保ち続けることに大変な労力が必要なため、すぐに姿勢がぐにゃっと崩れ始めます。息子が口癖のように言うのは「僕は6時間もじっと座っているんだよ!褒めてよ!!疲れるんだよ!!」です。これは何の誇張でもなく、息子の素直な気持ちなんだと思います。

でもふと思うことはありませんか?

「ジッと動かないでいたほうが集中力って高まるんだろうか?」

息子の言葉を聞いて、自分が仕事をしているときのことを思い出してみました。確かに音楽や人の話し声などが聞こえてくると、集中力が削がれ、パフォーマンスは落ちます。

けれども、私自身、仕事で難しいところにさしかかり始めると、激しく貧乏ゆすりをしたり、身体を左右に揺れ動かしたり、それでもダメなときは部屋中をウロウロと歩き回ったりします。そのほうが、頭が回転するのを感じるのです。

実はこれ、海外の研究でも同じようなことが指摘されています。

海外でのユニークな取り組み

リンク先のアメリカの教育振興センター(Center for Educational Improvement)の記事を見ると、不思議な写真が掲載されています。1枚目のニコニコ笑顔の子どもが座っている学習机をよく見てみると、足元にペダルがついているのです。
The Kinetic Classroom: The Pedal-Desk, ADHD, and the Mind-Body Connection (活動的な教室―「ペダルデスク」「ADHD」「心と身体の関係」)
http://www.edimprovement.org/2015/06/kinetic-classroom-pedal-desk-adhd-mind-body-connection/
このペダルは何だろうと読み進めていくと、「ペダルデスク」と呼ばれているもので、実際にはフィットネス用のエクササイズバイクを子ども用に小さく改造し、さらに発生音を小さくしたものであるようです。海外では、ADHDなどの子どもに限らず、子どもたちの集中力を高めるために取り入れている学校もあるようです。

記事の中では、特にADHDとペダルデスクとの関係について触れられています。衝動・多動の特性があったり、集中力の維持が難しかったりするADHDの子どもたちにとって、ペダルデスクがエネルギーのはけ口としてとても役立つということが研究で明らかになっているというのです。

さらに、運動をすることで、集中力が高まり、気が散りにくくなることが最新の研究から分かったといいます。また、集中力のほかにも、記憶力や創造性が高まるという報告まであるようです。

「ジッと座って静かに授業を受けるほうが集中力が高まり、学業のパフォーマンスが上がる」というこれまでの常識を覆した研究が出てきたことにより、アメリカやカナダの学校で取り入れられるようになったのがこの写真にある「ペダルデスク」なのだそう。
Pedal power boosts N Carolina pupils' performance(ペダル・パワーで成績アップ-ノースカロライナ州)
出典:http://www.bbc.com/news/world-us-canada-37420834
こちらの記事は、「ペダルデスク」をアメリカのノースカロライナ州の学校に取り入れた例です。ペダルを漕がせながら授業に参加させることにより、子どもたちの学業成績は顕著に向上し、授業に積極的に参加するようになったと書かれています。

下の動画は、実際にペダルデスクを取り入れた学校を取り上げたものです。動画に出てくる女の子は、「すごく難しい問題を解くときなんかは、ペダルを高速で漕ぐのよ」と話しています。これは、「頭を回転させるためには、身体の運動が付随していたほうが良い」ということを表しているのかもしれません。

Students use pedal desks at school(実際にペダルデスクを取り入れた教室の様子)

「ジッとしなさい!」と叱るよりも前に

これまで、勉強しながら手足をモソモソ、鉛筆カミカミ、身体グニャグニャする息子に対して、私は何度「集中しなさーーーい!!」と声を荒げたことでしょう。このコラムを書きながら、大反省しています。

集中というのは、身体を動かしているほうができる場合もあるのでしょう。頭を高速回転させるときには、身体も一緒に動いてもおかしくないのかもしれません。これまでの常識が覆される思いです。

家庭でペダルデスクを取り入れることが難しいとしても、アメリカの教育振興センターの記事の中にはこんな記述があります。「10分程度の運動時間を取り入れるだけで、学習パフォーマンスの明らかな改善が見られる」「ADHDの子どもは長い時間集中することに苦痛を感じるため、都度休憩を入れることが学習の助けになる」というのです。
Scheduling breaks for exercise in the class for periods of as short as 10 minutes can show demonstrable improvements in academic performance and mood (Howie, 2013). For students with ADHD, extended attention can be particularly stressful and cognitively demanding so the very act of taking a break itself can be very helpful to them (Brock, 2002).
出典:http://www.edimprovement.org/2015/06/kinetic-classroom-pedal-desk-adhd-m...
こうしたアメリカでの取り組みや研究が、日本の子どもたちにも同じように当てはまるものなのかは、まだはっきりとはわかりません。

ただ、成績UPの効果はさておき、細切れに休憩を促したり、勉強の前に身体を思いきり動かす時間を作ることは、ADHDの子どもたちにとって心地よい配慮となるかもしれません。

運動や休憩の時間が、親子の楽しいコミュニケーションにもつながり、宿題の時間が今までとは違った時間になるかもしれませんね!
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