成年後見制度は、利用すべき?

立石
支援する人を確保するという点で、成年後見人についても検討することになると思います。ちなみに、どの段階で成年後見人をつけることを考えたほうがいいですか?

渡部
成年後見人をつけると、たとえ親であっても子どもの財産を動かすことが難しくなります。報酬は財産額にもよりますが、月1~2万円かかるので、保護者が元気なうちはつけなくてもいいのではと考えています。親なきあとのことを見据えて、どの人に成年後見人をお願いできそうか考えておく、相談窓口がどこなのか知っておくくらいでいいと思います。

成年後見人は高齢者には有効な制度だと思いますが、若い障害者の場合は、住んでいる場所もそれぞれですし、就労する場所もさまざま。福祉サービスでヘルパーを利用していたりもします。

立石
高齢者の場合は老人ホームに入っていて、仕事をしていない場合がほとんどだけれど、障害者の場合はいろんなパターンがあるということですね。

渡部
そうです。本来はそうした事業所をとりまとめて、障害のある人の暮らしを支援するのが成年後見人であるべきなのですが、法律の専門家ではあっても福祉の専門家ではないため、難しいのが現状です。ですので、保護者がまだ元気なうちは、つけなくていいかなというのが私見です。

将来、信託や成年後見制度を利用することを頭に置いておいて、その制度について相談できる窓口を見つけておくぐらいでいいと思います。成年後見であれば地域の社会福祉協議会が相談窓口を開いている場合が多いですし、近くに法人後見を行っている団体があればそういったところとつながっておくことも大事です。

また、親の会などに入っていれば、さまざまな情報が入ってきますので、ぜひいろいろなところと接点を持っておいてください。
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成年後見制度とは?わが子の将来に備えるためにぜひ活用したい制度を紹介【行政書士監修】

つながりをつくる、外に出ていく。保護者が、まずすべきこと

親なきあと、障害のある子はどう暮らす?お金は足りる?行政書士・渡部伸先生×立石美津子さん対談【後編】の画像
さまざまな情報を得るためにも、行政や団体、友人とのつながりが大切という渡部先生。
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編集部
親なきあとに向けて、やっておくべきことって本当にいろいろありますよね。法制度も過渡期なので、子育てもがんばりながら、最新の情報をキャッチするのも大変…。

渡部
ですから、たくさんつながりをもつことが大切なんですよ。同じ障害の子を持つママ友でもいい、親の会に入ると会報なんかでもたくさんの情報を送ってきてくれるし、専門家を招いた勉強会も催していたりする。まずは、情報が入ってくるつながりづくりからはじめるといいですよ。

立石
つながりがあると、親なきあとも、福祉の網の目からこぼれ落ちる前に、セーフティーネットにもなりますよね!何かあったときも、SOSに気づいてもらえる。

渡部
それから、子どもにどんな支援が必要かを書き留めておくと、親なきあとのサポートもスムーズになると思います。子どもの特性に加えて、障害福祉サービス受給者証の番号や利用している医療機関や施設なども書いておくといいですよ。

「親心の記録」などの冊子を活用すると何を書いておけばいいか分かりやすいと思います。
参考:「親心の記録」について・お申し込み|日本相続知財センターHP
https://yukari-tokyo.jp/about-us/parent/oyagokoro-no-kiroku/
※「親心の記録」は団体向けに寄贈されています。個人で希望する方は、上記ウェブサイトよりお問い合わせください。
渡部
「もっとこんなこと知りたい」とか、「うちの場合はどうなるの」、「どうやって資産をのこせばいいの」など迷うことがあったら、私や私の仲間たちがやっている「親なきあと」相談室みたいな場所へ、相談に来てほしいなと思っています。

障害者福祉は、窓口がいろいろ分かれていて、何をどこに相談したり申請すればいいのかが分かりづらかったりしますよね。保護者の皆さんは、子育てだけでも大変なのに、さまざまな窓口に行って聞くのは本当に大変だと思います。「親なきあと」相談室はよろず相談室なので、なんでもお伺いしますし、どこの窓口に申請したらいいのかなどもアドバイスしています。

立石
心強い!私もまた相談させてくださいね。
参考:「親なきあと」相談室
http://www.oyanakiato.com/

親なきあとの住まい・支援者についてのポイント

「親なきあと」の住まい・支援者についてまとめると、次のようになりそうです。

・住まいについての法制度は変革期(居宅介護などが充実、軽度から中度の場合は自宅で)
・成年後見制度などの利用を念頭におき、相談窓口を見つける
・支援者がサポートしやすいような引継資料をつくる など

           
住まいや支援についての法制度は過渡期にあります。さまざまな情報に触れたり、相談できるように、まずは保護者が”知る”ことや”つながる”ことが大切です。保護者が動けるうちに行動しておければ、自然と情報も入ってきます。

渡部伸先生・立石美津子さんのご紹介

渡部伸先生
渡部行政書士事務所代表。「親なきあと」相談室主宰。
慶応義塾大学法学部法律学科卒業。出版社でさまざまな事業を担当後、行政書士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。
著書に『障害がある子の家族が知っておきたい「親なきあと」』(主婦の友社)、『障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本』(主婦の友社)。

立石美津子さん
講演家・ライター。
聖心女子大卒業。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営。自閉症児の母。
著書に『1人でできる子になるテキトー母さん流子育てのコツ』(日本実業出版社)、『はずれ先生にあたったとき読む本』(青春出版社)、『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』(すばる舎)など多数。
立石美津子さんのページ
https://h-navi.jp/user/23
対談写真撮影:田島寛久
http://manazasuhito.mystrikingly.com/
障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本
渡部 伸
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立石美津子
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