脊髄小脳変性症(SCD)の進行・予後は?

脊髄小脳変性症の進行は、病型ごとに傾向があります。小脳症状のみがみられる病型の場合、孤発性、遺伝性を問わず、おおむね10〜15年など長い時間をかけてゆっくり進行します。発症年齢が高齢の場合は、余命にあまり影響を与えない場合もあります。ただし、小脳だけでなく多系統を障害するタイプの病型では、孤発性、遺伝性の両方で、進行が早く重症になることが分かっています。
出典: 独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 『難病ケアガイド』(日総研出版・2005年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4776010593

孤発性の病型の予後

多系統萎縮症の予後は個人差はあるものの、一般的には、発症から3年ほどで歩行補助具、5年ほどで車いすが必要となります。その後は、発症から10年程度のうちに寝たきりとなり、血圧や呼吸、排尿、嚥下などの機能が衰えることで、肺炎や窒息などによって死亡する場合があります。
出典: 月刊 難病と在宅ケア4月号 脊髄小脳変性症のすべて「多系統萎縮症の現状と課題」(日本プランニングセンター・2018年)
https://www.jpci.jp/file/nanback/2018-04.html
対して同じ孤発性でも、皮質性小脳萎縮症では、歩行時のふらつきや字がうまく書けないといった上肢の運動失調、ろれつが回りにくいなどの小脳症状のみがみられます。発症から4〜5年後に一人で歩ける人は76%だったという国内の研究の報告もあります。長い年数をかけてゆっくりと進行し、多くのケースで車いすが必要になります。
出典: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4524246177

遺伝性の病型の予後

遺伝性も同様で、常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症のなかでも、小脳症状のみがみられる脊髄小脳変性症6型(SCA6)や脊髄小脳変性症31型(SCA31)は、発症から車いすが必要になるまでの平均が20年余りという報告もあり、進行はゆるやかであることが多いです。
出典: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)
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脊髄小脳変性症(SCD)の治療やリハビリは?

さまざまなアプローチで、根本的治療の実現に向けて研究が進められていますが、まだ確立した治療法はありません。薬で症状を和らげる対症療法や生活の質を維持していくためのリハビリが中心となっています。

薬物治療

一般的に、薬剤による治療開始は早ければ早いほど、運動機能が維持でき、身体機能も良好な状態をより長く保つことができる可能性があります。

主症状である運動失調に対しては以下のような薬が使用されます。
注射液…プロチレリン酒石酸塩(ヒルトニン®)
錠剤…タルチレリン水和物(セレジスト®)

その他、足のつっぱり感、めまい感など、症状に応じて薬で治療します。
参考:ヒルトニン1mg注射液/ヒルトニン2mg注射液 | 独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/7223401A2020_2_02/
参考:セレジスト錠5mg |独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/400315_1190014F1033_1_05

リハビリテーション

うまく体が動かせなくなっていくことで、症状の進行とともに患者が転倒などを恐れて動く時間が減っていく傾向があります。それに伴い、筋力や体力の低下につながり、さらに症状を悪化させます。

しかし、小脳失調を主体とする脊髄小脳変性症に対して、バランスや歩行に対する理学療法を集中的に行うと、小脳失調や歩行が改善することができます。病院などでのリハビリテーションをはじめ、自宅での日常生活でも自分でできることを継続的に行うなど前向きに体を動かしていくことが大切です。

家族が在宅での介護負担を減らすために

介護者が専門的技術を指導してもらうことも、介護者負担を軽減するために重要です。外来や訪問リハビリテーションの際に歩行時や車いすなどへの移乗時の介助方法に関して、介護者が指導を受けて習得することで、負担感の軽減、腰痛や転倒事故の予防にもつながることが期待されます。
参考書籍: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)
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家族も知って安心。利用できる福祉制度・相談先

脊髄小脳変性症は、厚生労働省の認可する指定難病に認定されており、医療費の補助や福祉・介護サービスなどを受けることができます。

患者本人や家族の生活を支えてくれる制度や相談先を知り、頼るようにしましょう。
◇医療ソーシャルワーカー
病院の医療ソーシャルワーカーは、病気やけがで生じる心理的・社会的問題、経済的問題を患者や家族が解決できるようにお手伝いしてくれます。

診断された本人や家族がどう受け止めたらいいか悩んだり、進行して働くことができなくなる不安、身の回りのことが一人でできにくくなっていくといった問題に専門的な立場から寄り添い、改善の糸口を考えてくれます。
参考: 医療ソーシャルワーカーとは|公益社団法人 日本医療社会福祉協会
https://www.jaswhs.or.jp/#nintei_sw
◇特定医療費(指定難病)受給者証
認定申請によってお住まいの都道府県から交付されます。受給者証があると、医療費について、所得に応じて一部が助成されます。
◇障害者総合支援法
「障害者総合支援法」では、障害者の定義に難病等も含まれます。そのため身体障害者手帳を持たない難病患者にも、障害福祉サービスが公費負担されます。

お住まいの市町村区の担当窓口で申請をすると、障害福祉サービス・相談支援・補装具及び地域生活支援事業 (障害児の場合は、障害児通所支援と障害児入所支援も含む)が利用できるようになります。
参考: 障害者総合支援法が施行されました| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html
◇介護保険
介護を必要とする人に対し、その費用の給付を受けられます。介護保険に必要な要介護認定は本来、65歳以上が対象ですが、脊髄小脳変性症は40歳以上から対象となります。お住まいの市区町村の窓口で要介護認定を申請してください。

医療保険と介護保険で重複しているサービスは介護保険が優先されます。ただし、訪問看護は医療保険となります。
参考: 特定疾病の選定基準の考え方 | 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
◇傷病手当金
病気療養のために仕事を休み、給料が減った・もらえないなどの場合、健康保険から支給されます。
◇障害年金
国民年金の加入者が、病気やけがで障害が残った時に受け取れる障害基礎年金と障害基礎年金に上乗せして支払われる障害厚生年金があります。

脊髄小脳変性症では、障害が重くなり仕事を継続することが困難になった際などに申請できる場合があります。障害認定日や障害程度、年金の加入期間など、細かい決まりがあるので病院で相談してみてください。
障害年金を受けるための要件や認定基準、障害年金の申請方法についてまとめましたのタイトル画像

障害年金を受けるための要件や認定基準、障害年金の申請方法についてまとめました

参考: 難病対策| 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nanbyou/index.html
参考: 指定難病患者への医療費助成制度のご案内 | 難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460
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