専門家と共同開発!発達障害がある子向け学習机「イーチェスク」、集中力アップの独自設計を取材

ライター:発達ナビ編集部
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横山工房
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発達障害がある子の学習やご家庭での療育の“困りごと”、ありませんか?気が散ってしまって「座っていられない」、「集中できない」というご家庭も多いのではないでしょうか。障害がある・発達が気になる子どものなかには、姿勢を保つことが難しい、注意がすぐにそれてしまうという子がいます。「イーチェスク」は、障害児教育に携わる専門家とともに開発された学習机。「イーチェスク」で正しい姿勢を保てる、集中して学習に取り組める理由を取材しました!

どうして集中できないの!?発達が気になる子の”家庭学習にまつわる特徴や悩み”とは?

子どもが小学校にあがると、家庭でも机に座って宿題をするなど、家庭学習の時間が増えますよね。また未就学児でも、家庭での療育に学習机を使うことも多いでしょう。

家庭学習や療育に取り組む際に、子どもが「集中できないこと」に悩むご家庭も多いのではないでしょうか。周りの人の動きや物音、視界に入るモノなど、さまざまな刺激に反応して気がそれてしまう、座っていても床を足で蹴ったり、体を揺らしたりと、ソワソワしっぱなし、すぐに学習態勢に入れない…そんな困りごと、ありませんか。また、ADHDがあると周りの刺激に敏感に反応してしまい、注意力が散漫になってしまいがちです。
発達ナビユーザーへのアンケートでも、家庭学習で困っているという声があがりました。
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みんなのアンケート「発達が気になる子の、家での学習環境は?困っていることや工夫していることを教えて!」(2018年10月31日~11月20日実施、回答数273人)
半間幅のクローゼットの扉を外し、机として使っている。前と左右が壁なので、大きな音さえ立てなければ集中できる。
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/166
三人姉妹弟、全く特性がバラバラなので 個々に合わせた環境作りをしてます。住宅事情により3人個室は無理ですが、つい弟妹に世話を焼いてしまい 勉強に集中出来ない長女には個室。次女と長男は同室ですが、気が散りやすい2人には机周りを高めのパーテーションで囲み事務所のようなシンプル空間。
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/166
など、パーテーションやクローゼットを活用して学習環境を整えているという家庭や、教材面での工夫をしている家庭もある一方、
小2男児ですが、なかなか集中出来る環境を作ってあげられず、宿題が進みません。
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/166
現在手詰まりです。集中力がないのですぐにいろんなものに気を取られて取り掛かることができません。ほぼつきっきりで注意がそれたら促します。
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/166
そもそもの環境づくりが難しいために、宿題に取り掛かるのに時間がかかってしまったり、集中して取り組めなかったりと、家庭学習に困っているご家庭からの声もあげられました。

発達障害の子に合う学習机って?特徴や製作背景をクローズアップ

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発達障害がある子のための学習机として、デザイン・設計段階から障害児教育の専門家と共同で開発されたのが、横山工房の学習机「イーチェスク」です。

横山工房は、設計・製造から販売までを行うオーダー家具の工房。「イーチェスク」を開発するきっかけとなったのは、代表者の親戚に障害がある子がいたためだそう。なかなか姿勢保持ができなかったり、集中して勉強や課題に向かえない子どものために、どんな机なら無理なく学習できるだろうかと試行錯誤しながら、オリジナルの学習机をつくりはじめました。

その後、発達障害などにより学習に課題がある子どもたちのために使いやすい学習机をつくりたいと山陽学園大学の障害児教育の専門家・上地玲子先生との共同開発が始まりました。そして、岡山県の特別支援学校等で実証研究を重ね、開発から製作まで一貫して利用者の立場に立って製作を行い、「イーチェスク」が誕生します。

小学校入学を機に、家庭でも一人で勉強に取り組む機会が格段に増えますが、そうしたときに「集中して勉強に取り組めない」という親子の悩みを解消するために製作されました。「イーチェスク」は、一般的な学習机と同様、身長100~155センチ程度と、小学校入学前の子どもから高学年まで対応できるサイズとなっています。

では、この学習机の特徴とは…?

特徴1: 大きなパーテーションと、ぴったり設計のデスク

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パーテーションは全面・側面、いずれからも開放が可能
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ADHDがある子どもの場合、五感への刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向があります。感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となる傾向があるとの説もあります。
参考:【図解】ADHDとは?イラストでわかりやすく紹介します!
https://h-navi.jp/column/article/35027124
「イーチェスク」は、
◆大きなパーテーションで視覚的な刺激を減らす
◆天板のくぼみに体がぴったりフィットする

という特徴があります。

大きなパーテーションによって視覚的な刺激を減らしたり、デスク部分には余計な棚なども設置していないことで、今やるべき課題に集中しやすい環境をつくりだせるよう工夫されています。
落ち着きのない児童にとっては視界遮蔽板がない場合は集中力を欠きやすく、様々なものに視点が移動してしまうため、目の前に置かれている課題に視線を向け続けることができなくなると考えられる。

『学習机と椅子が発達障がい児の 着座姿勢と学習活動に及ぼす影響について』山陽論叢 第24巻(2017)より引用
出典:http://www.sguc.ac.jp/uploads/page/unit/files/c182ce404633404eefd2c3f5dc...
また、「イーチェスク」のパーテーションは、前からも横からも自由に開け閉めができることが特徴です。一人で集中して学習に取り組んでほしいときは閉めておけばよく、必要なときだけワンタッチで開閉できるので、子どもに無用な刺激を与えなくてすみますね。

正面のパーテーションを開放すれば周囲の不要な刺激は遮断しつつ、保護者の声かけなどに集中しやすくなりそうです。サイドのパーテーションを開放すれば、ワークなどの問題を解く際、寄り添い学習もスムーズです。

より小さいお子さまの場合などは、前面を開放すれば、子どもに口元を見てもらいながらの音読の練習や、積み木遊びでの模倣などがしやすく、側面を開放すれば、書字や微細運動の訓練などで必要なサポートがしやすいでしょう。
また、イスがデスクにスライドインすることで、体がぴったりとフィットし、安定するように設計されています。そのため、姿勢がよくなり、より勉強に集中できるといいます。フィットすることで安心感も生まれ、落ち着けるという面もあるそうです。

共同開発者の上地先生は、発達障害がある子どもを対象に、「イーチェスク」と一般的な学習机を比較し、「イーチェスク」の効果を確認する調査を行いました。その結果、「イーチェスク」を使用した場合に、一般的な学習机を使用するより、集中して課題ができるようになったことが明らかになっています。
参考:『学習机と椅子が発達障がい児の 着座姿勢と学習活動に及ぼす影響について』山陽論叢 第24巻(2017)
http://www.sguc.ac.jp/uploads/page/unit/files/c182ce404633404eefd2c3f5dc5616df.pdf

特徴2: サイドガードと幅広のステップつきのイス

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足を置くステップは幅が広く、高さも調整可能。足裏をぴたっとつけられる
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イス部分にも工夫があります。広すぎずフィット感を感じることができるように適度な幅で設計されているうえ、サイドガードがついていて姿勢が崩れにくく、体を包み込めるよう考えられています。幅広の座面だと体幹の弱い子では足を組んだり猫背になったりと、姿勢が崩れてしまいがちだからです。また、足置き用ステップは幅広で奥行きがあるため、足裏をぴたっとつけやすく、フィット感を感じられるのもポイントです。

共同開発者の上地先生は、
・パーテーションを使うことで目の前の課題だけに意識を向けられる
・デスクやイスにぴったりフィットする感覚によって安心感が生まれ、適切な姿勢で課題に取り組める

ということから、集中力が高まるのではないかと、話します。
机と椅子が離れにくいため、そわそわと足を動かしても椅子が動かず、安定した着座姿勢を保つことができていた。また、視界遮蔽板を設置して使用する場合、周囲に気になるものがあっても視野に入りにくいため、離席したくなる衝動を軽減することにつながると考えられる。

『学習机と椅子が発達障がい児の 着座姿勢と学習活動に及ぼす影響について』山陽論叢 第24巻(2017)より引用
出典:http://www.sguc.ac.jp/uploads/page/unit/files/c182ce404633404eefd2c3f5dc...
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学習机・椅子の違いによる正しい姿勢保持率の表。「イーチェスク」と、一般的な学習机での姿勢保持率の違いを検証した
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引用:『学習机と椅子が発達障がい児の 着座姿勢と学習活動に及ぼす影響について』山陽論叢 第24巻(2017)
http://www.sguc.ac.jp/uploads/page/unit/files/c182ce404633404eefd2c3f5dc5616df.pdf

「イーチェスク」で無理なく学習できるようになった!利用者の声

実際に使っている人は、どんな風に活用しているのでしょう?そこで、利用した皆さんに、お子さまの学習の様子や、変化、どのように活用しているのかをアンケートしました。その一部を、ご紹介します。

足をバタバタしたりほおづえすることもなくなり、長時間学習できるように!

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多動傾向がある小学生の男の子は、足裏をしっかりとステップにつけられることで落ち着いて課題に取り組めるようになり、立ち歩きも減って、集中力もアップしたそうです。

「普通の机では前のめりになったり、足をばたつかせたり、イスから降りてしまったりしていたけれど、この学習机だと落ち着いて取り組める。足の裏がステップにしっかりつくのがよいみたいです。ほおづえをつくこともなくなりました。『勉強しよう』と声をかけると、自分からすすんで机に座るようになりました。側面について勉強を教えています」

姿勢が良くなり、集中力UP!勉強への気持ちの切り替えも早く

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なかなか机に向かえなかったという就学前の女の子も、落ち着いて課題に取り組めるようになったといいます。

「発語の練習では前面のパーテーションを開けると、パーテーションで囲まれたところから、注目してほしいママの顔だけがぱっとあらわれるので、口元をみながらの模倣などもしやすいです。棒さしなどの微細運動の訓練では、側面のパーテーションを開けて、横から少しだけ手を添えるなどもやりやすい。ワンタッチで開けられるから、集中モードにさせたいときはさっと閉めておけて便利です」

このように、座って学習できなかったり、なかなか集中できなかった子どもが、落ち着いて学習に取り組めたという声が寄せられています。

「イーチェスク」の作り手・株式会社 横山工房が描くやさしい未来

「イーチェスク」を開発・製造販売している株式会社横山工房は、開発から製造のすべての段階を自社でおこない、利用者のニーズに細やかに寄り添いながらものづくりを行っています。通常の家具製造の過程では、デザイン会社や工務店から送られてくるデザインをもとに家具を製造しますが、横山工房は自社のみですべての工程を手掛けられるのが大きな強みなのです。そして、その強みがいかんなく発揮され、誕生したのが「イーチェスク」です。

現在、横山工房では、学習机だけでなく発達障害に配慮したドアや壁紙の開発も進めているそうです。それは、「人にやさしく 地球にやさしい家具づくり」という企業理念のもと、ぶれない姿勢でものづくりに真摯に取り組んでいるからなのでしょう。横山工房・療育事業部の理念でもある「日本の未来を担う子供たちの為に、より良い環境を創造する」ために、その高い技術力を生かして、常に未来を見据えた製品開発を行っているのです。

「落ち着きのない子は、集中できないのではない。環境を整えれば集中して学習できる」という横山工房。発達障害のある子どもたちへのあたたかな思いと丁寧な技術に裏打ちされた横山工房の「イーチェスク」で、ご家庭での学習環境を整えてみませんか。
株式会社 横山工房ホームページ
https://yokoyamakoubou.com/
取材・文/赤沼美里
イラスト/モンズースー
取材協力/山陽学園大学 上地玲子先生
写真提供/株式会社 横山工房
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