専門家と共同開発!発達障害がある子向け学習机「イーチェスク」、集中力アップの独自設計を取材

発達障害がある子の学習やご家庭での療育の“困りごと”、ありませんか?気が散ってしまって「座っていられない」、「集中できない」というご家庭も多いのではないでしょうか。障害がある・発達が気になる子どものなかには、姿勢を保つことが難しい、注意がすぐにそれてしまうという子がいます。「イーチェスク」は、障害児教育に携わる専門家とともに開発された学習机。「イーチェスク」で正しい姿勢を保てる、集中して学習に取り組める理由を取材しました!

どうして集中できないの!?発達が気になる子の”家庭学習にまつわる特徴や悩み”とは?
家庭学習や療育に取り組む際に、子どもが「集中できないこと」に悩むご家庭も多いのではないでしょうか。周りの人の動きや物音、視界に入るモノなど、さまざまな刺激に反応して気がそれてしまう、座っていても床を足で蹴ったり、体を揺らしたりと、ソワソワしっぱなし、すぐに学習態勢に入れない…そんな困りごと、ありませんか。また、ADHDがあると周りの刺激に敏感に反応してしまい、注意力が散漫になってしまいがちです。
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/166半間幅のクローゼットの扉を外し、机として使っている。前と左右が壁なので、大きな音さえ立てなければ集中できる。
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/166三人姉妹弟、全く特性がバラバラなので 個々に合わせた環境作りをしてます。住宅事情により3人個室は無理ですが、つい弟妹に世話を焼いてしまい 勉強に集中出来ない長女には個室。次女と長男は同室ですが、気が散りやすい2人には机周りを高めのパーテーションで囲み事務所のようなシンプル空間。
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/166小2男児ですが、なかなか集中出来る環境を作ってあげられず、宿題が進みません。
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/166現在手詰まりです。集中力がないのですぐにいろんなものに気を取られて取り掛かることができません。ほぼつきっきりで注意がそれたら促します。
発達障害の子に合う学習机って?特徴や製作背景をクローズアップ
横山工房は、設計・製造から販売までを行うオーダー家具の工房。「イーチェスク」を開発するきっかけとなったのは、代表者の親戚に障害がある子がいたためだそう。なかなか姿勢保持ができなかったり、集中して勉強や課題に向かえない子どものために、どんな机なら無理なく学習できるだろうかと試行錯誤しながら、オリジナルの学習机をつくりはじめました。
その後、発達障害などにより学習に課題がある子どもたちのために使いやすい学習机をつくりたいと山陽学園大学の障害児教育の専門家・上地玲子先生との共同開発が始まりました。そして、岡山県の特別支援学校等で実証研究を重ね、開発から製作まで一貫して利用者の立場に立って製作を行い、「イーチェスク」が誕生します。
小学校入学を機に、家庭でも一人で勉強に取り組む機会が格段に増えますが、そうしたときに「集中して勉強に取り組めない」という親子の悩みを解消するために製作されました。「イーチェスク」は、一般的な学習机と同様、身長100~155センチ程度と、小学校入学前の子どもから高学年まで対応できるサイズとなっています。
では、この学習机の特徴とは…?
特徴1: 大きなパーテーションと、ぴったり設計のデスク
◆大きなパーテーションで視覚的な刺激を減らす
◆天板のくぼみに体がぴったりフィットする
という特徴があります。
大きなパーテーションによって視覚的な刺激を減らしたり、デスク部分には余計な棚なども設置していないことで、今やるべき課題に集中しやすい環境をつくりだせるよう工夫されています。
出典:http://www.sguc.ac.jp/uploads/page/unit/files/c182ce404633404eefd2c3f5dc...落ち着きのない児童にとっては視界遮蔽板がない場合は集中力を欠きやすく、様々なものに視点が移動してしまうため、目の前に置かれている課題に視線を向け続けることができなくなると考えられる。
『学習机と椅子が発達障がい児の 着座姿勢と学習活動に及ぼす影響について』山陽論叢 第24巻(2017)より引用
正面のパーテーションを開放すれば周囲の不要な刺激は遮断しつつ、保護者の声かけなどに集中しやすくなりそうです。サイドのパーテーションを開放すれば、ワークなどの問題を解く際、寄り添い学習もスムーズです。
より小さいお子さまの場合などは、前面を開放すれば、子どもに口元を見てもらいながらの音読の練習や、積み木遊びでの模倣などがしやすく、側面を開放すれば、書字や微細運動の訓練などで必要なサポートがしやすいでしょう。
共同開発者の上地先生は、発達障害がある子どもを対象に、「イーチェスク」と一般的な学習机を比較し、「イーチェスク」の効果を確認する調査を行いました。その結果、「イーチェスク」を使用した場合に、一般的な学習机を使用するより、集中して課題ができるようになったことが明らかになっています。
特徴2: サイドガードと幅広のステップつきのイス
共同開発者の上地先生は、
・パーテーションを使うことで目の前の課題だけに意識を向けられる
・デスクやイスにぴったりフィットする感覚によって安心感が生まれ、適切な姿勢で課題に取り組める
ということから、集中力が高まるのではないかと、話します。
出典:http://www.sguc.ac.jp/uploads/page/unit/files/c182ce404633404eefd2c3f5dc...机と椅子が離れにくいため、そわそわと足を動かしても椅子が動かず、安定した着座姿勢を保つことができていた。また、視界遮蔽板を設置して使用する場合、周囲に気になるものがあっても視野に入りにくいため、離席したくなる衝動を軽減することにつながると考えられる。
『学習机と椅子が発達障がい児の 着座姿勢と学習活動に及ぼす影響について』山陽論叢 第24巻(2017)より引用
「イーチェスク」で無理なく学習できるようになった!利用者の声
足をバタバタしたりほおづえすることもなくなり、長時間学習できるように!
「普通の机では前のめりになったり、足をばたつかせたり、イスから降りてしまったりしていたけれど、この学習机だと落ち着いて取り組める。足の裏がステップにしっかりつくのがよいみたいです。ほおづえをつくこともなくなりました。『勉強しよう』と声をかけると、自分からすすんで机に座るようになりました。側面について勉強を教えています」
姿勢が良くなり、集中力UP!勉強への気持ちの切り替えも早く
「発語の練習では前面のパーテーションを開けると、パーテーションで囲まれたところから、注目してほしいママの顔だけがぱっとあらわれるので、口元をみながらの模倣などもしやすいです。棒さしなどの微細運動の訓練では、側面のパーテーションを開けて、横から少しだけ手を添えるなどもやりやすい。ワンタッチで開けられるから、集中モードにさせたいときはさっと閉めておけて便利です」
このように、座って学習できなかったり、なかなか集中できなかった子どもが、落ち着いて学習に取り組めたという声が寄せられています。
「イーチェスク」の作り手・株式会社 横山工房が描くやさしい未来
現在、横山工房では、学習机だけでなく発達障害に配慮したドアや壁紙の開発も進めているそうです。それは、「人にやさしく 地球にやさしい家具づくり」という企業理念のもと、ぶれない姿勢でものづくりに真摯に取り組んでいるからなのでしょう。横山工房・療育事業部の理念でもある「日本の未来を担う子供たちの為に、より良い環境を創造する」ために、その高い技術力を生かして、常に未来を見据えた製品開発を行っているのです。
「落ち着きのない子は、集中できないのではない。環境を整えれば集中して学習できる」という横山工房。発達障害のある子どもたちへのあたたかな思いと丁寧な技術に裏打ちされた横山工房の「イーチェスク」で、ご家庭での学習環境を整えてみませんか。
イラスト/モンズースー
取材協力/山陽学園大学 上地玲子先生
写真提供/株式会社 横山工房

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