小学校の先生がASDのある人の視覚世界をVR体験!「学校での配慮や工夫」を考えるワークショップを開催
ライター:LITALICO研究所
自閉スペクトラム症(ASD)者の非定型な知覚を疑似体験し、当事者への理解を深める「ASD知覚体験ワークショップ」。今年度は、「それぞれの場で実際にできることを考える」をテーマに、教育現場や企業などでワークショップを行っています。今回は、埼玉県戸田市立喜沢小学校で先生方を対象に行ったワークショップの様子を報告します。
小学校の先生に自閉スペクトラム症の疑似体験ができるワークショップを実施!
「CREST認知ミラーリングプロジェクト」では、VRを用いて自閉スペクトラム症(ASD)のある人の非定型な視覚を疑似体験するワークショップを実施してきました。その中で、発達障害の子どもをもつ保護者の方から、「ぜひ学校の先生に体験してほしい」という声を多くいただきました。
学校では、多様な子どもたちへの教育的ニーズにどのように対応していくかが重要な課題の一つとなっています。2012年の文部科学省の調査で、小・中学校の通常の学級に在籍する生徒のうち、発達障害の可能性があり特別な教育的支援を必要とする児童生徒が6.5%いるとされました。40人のクラスに2~3人いる計算になります。
多様な子どもたちが同じ場所で学ぶ小学校において、どのように子どもたちの教育的・生活的ニーズを理解し、応えていくことが可能なのでしょうか。そこで、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚過敏・鈍麻への理解を手掛かりにして、小学校の先生たちと一緒に考えました。
学校では、多様な子どもたちへの教育的ニーズにどのように対応していくかが重要な課題の一つとなっています。2012年の文部科学省の調査で、小・中学校の通常の学級に在籍する生徒のうち、発達障害の可能性があり特別な教育的支援を必要とする児童生徒が6.5%いるとされました。40人のクラスに2~3人いる計算になります。
多様な子どもたちが同じ場所で学ぶ小学校において、どのように子どもたちの教育的・生活的ニーズを理解し、応えていくことが可能なのでしょうか。そこで、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚過敏・鈍麻への理解を手掛かりにして、小学校の先生たちと一緒に考えました。
講義やVR体験、そして活発なディスカッションが
埼玉県戸田市は、県南部に位置する人口14万人の市で、荒川を境にして東京都に隣接しています。今回ワークショップを行った喜沢小学校は、戸田市の東部に位置する、児童数約370名、全14学級の小学校です。
ワークショップでは
1.ASDのある人の非定型な知覚についての講義
2.VRを用いたASDのある人の視覚世界の疑似体験
3.当事者が語る映像の視聴
4.感想やアプローチを議論するワーク
を行いました。
講義では、ASDのある人がどのように世界を見ているのか、なぜASDのある人には知覚の過敏や鈍麻が起こりやすいのかといったASDの非定型な知覚の背景にあるメカニズムについて学びました。VR体験では、まぶしい場所やにぎやかな場所でどのように見えているのか、実際に学校の教室がどのように見えるのかを疑似体験しました。
ワークでは、実際に小学校に在籍している児童の事例をもとに議論を行いました。子どもたちの行動を表層的に捉えるのではなく、目に見えている行動の背景にどのような要因があるか、そしてそれらの要因に対してどのようなアプローチが可能かを、先生たちと、発達が気になるお子さまの支援を行っているLITALICOジュニアのスタッフで一緒に考えていきました。
例えば、「ノートのマス目に合わせて文字を書くことに困難さがある」児童の背景にはどのような特性的要因や、物的・人的環境要因があるかを思いつくかぎりたくさん挙げていきます。
1.ASDのある人の非定型な知覚についての講義
2.VRを用いたASDのある人の視覚世界の疑似体験
3.当事者が語る映像の視聴
4.感想やアプローチを議論するワーク
を行いました。
講義では、ASDのある人がどのように世界を見ているのか、なぜASDのある人には知覚の過敏や鈍麻が起こりやすいのかといったASDの非定型な知覚の背景にあるメカニズムについて学びました。VR体験では、まぶしい場所やにぎやかな場所でどのように見えているのか、実際に学校の教室がどのように見えるのかを疑似体験しました。
ワークでは、実際に小学校に在籍している児童の事例をもとに議論を行いました。子どもたちの行動を表層的に捉えるのではなく、目に見えている行動の背景にどのような要因があるか、そしてそれらの要因に対してどのようなアプローチが可能かを、先生たちと、発達が気になるお子さまの支援を行っているLITALICOジュニアのスタッフで一緒に考えていきました。
例えば、「ノートのマス目に合わせて文字を書くことに困難さがある」児童の背景にはどのような特性的要因や、物的・人的環境要因があるかを思いつくかぎりたくさん挙げていきます。
先生方は、講義やVR体験を通して感じたこと、思ったことをもとにたくさんの背景要因を挙げ、活発な議論をしていました。さらに、VRで体験した視覚だけでなく、聴覚や固有受容覚などその他の知覚的要因も含めて考えていました。印象的だったのは、形を整えて文字を書くことが苦手な児童の事例に関して、ある先生が「もはや鉛筆とノートで授業を受けるという前提を問い直さなければいけないのではないか」と言っていたことです。
学校では、皆が同じものを使って、同じ教科を同じペースで学びます。このような学校の「当たり前」に疑問を持ち、本来多様である子どもたちが、学びやすく過ごしやすい環境についてさまざまなアイディアを出し合っている先生たちは、とても楽しそうで生き生きとしていました。
多様な子どもたちに対してどのような手だてを行っていけばいいかということは、それぞれの教室によって、子どもによって異なるため、一律の答えやハウツーを出すことはできません。しかし、子どもたちの行動や発言の背景要因を探り、手立て・アプローチの「引き出し」を増やしていくことで、子どもたちが学びやすく過ごしやすい学校環境につながります。
学校では、皆が同じものを使って、同じ教科を同じペースで学びます。このような学校の「当たり前」に疑問を持ち、本来多様である子どもたちが、学びやすく過ごしやすい環境についてさまざまなアイディアを出し合っている先生たちは、とても楽しそうで生き生きとしていました。
多様な子どもたちに対してどのような手だてを行っていけばいいかということは、それぞれの教室によって、子どもによって異なるため、一律の答えやハウツーを出すことはできません。しかし、子どもたちの行動や発言の背景要因を探り、手立て・アプローチの「引き出し」を増やしていくことで、子どもたちが学びやすく過ごしやすい学校環境につながります。
参加した先生方に感想を伺いました
ワークショップに参加された先生2名に感想を伺いました。1人目は福田先生です。
―― ワークショップに参加されていかがでしたか?
福田先生:以前クラスにASDのある生徒がいたのですが、今日の内容をもっと早く勉強していたらその子への対応が変わっていたと思い、すごく反省しています…。保護者の方から「感覚過敏がある」と聞いていて、知識としては理解していたのですが、VR体験をするまで、ピンときていなかったなと思いました。やはり、経験してみないと分からないですね。先にVR体験をしていたら、座席配置を工夫するなど、もっと別のアプローチが可能だったと思います。今日の研修で、できることの引き出しが広がりました。ありがとうございました。
2人目は横地先生です。
福田先生:以前クラスにASDのある生徒がいたのですが、今日の内容をもっと早く勉強していたらその子への対応が変わっていたと思い、すごく反省しています…。保護者の方から「感覚過敏がある」と聞いていて、知識としては理解していたのですが、VR体験をするまで、ピンときていなかったなと思いました。やはり、経験してみないと分からないですね。先にVR体験をしていたら、座席配置を工夫するなど、もっと別のアプローチが可能だったと思います。今日の研修で、できることの引き出しが広がりました。ありがとうございました。
2人目は横地先生です。
―― ワークショップに参加されていかがでしたか?
横地先生:クラスに、聴覚過敏があり、小さな音でもすぐにびっくりする子が在籍していたことがあります。その子が音に驚くと、他の子どもたちも反応して、クラス全体が騒がしくなってしまいます。今日の研修で、聴覚過敏のある子には、同じ音でも、他の人よりも大きく聞こえているかもしれないということが分かりました。これまでは(驚いて騒いでしまう子や、それに反応して騒がしくなるクラス全体に対しても)静かにさせる方向で指導していましたが、なぜその子が驚くのか理解できたので、少し待ってみる、そもそも音が出にくいように教室の環境を工夫するなど、今後は別のアプローチも試してみようと思いました。
他の先生方からも、
「同じものを同じ場で同じように提供したとしても、人によって見え方、感じ方が異なってくることを頭に入れながら、今後の授業に生かしていきたいと思います」
「子どもの困難さの要因は、考え方次第ではたくさんあり、自分の考え方が少し広がったように感じます」
などの感想をいただきました。
今回のワークショップでは、同じ学校の先生同士で、実際に明日から学校でできる手立てを議論することができました。とても有意義な時間になったように思います。
横地先生:クラスに、聴覚過敏があり、小さな音でもすぐにびっくりする子が在籍していたことがあります。その子が音に驚くと、他の子どもたちも反応して、クラス全体が騒がしくなってしまいます。今日の研修で、聴覚過敏のある子には、同じ音でも、他の人よりも大きく聞こえているかもしれないということが分かりました。これまでは(驚いて騒いでしまう子や、それに反応して騒がしくなるクラス全体に対しても)静かにさせる方向で指導していましたが、なぜその子が驚くのか理解できたので、少し待ってみる、そもそも音が出にくいように教室の環境を工夫するなど、今後は別のアプローチも試してみようと思いました。
他の先生方からも、
「同じものを同じ場で同じように提供したとしても、人によって見え方、感じ方が異なってくることを頭に入れながら、今後の授業に生かしていきたいと思います」
「子どもの困難さの要因は、考え方次第ではたくさんあり、自分の考え方が少し広がったように感じます」
などの感想をいただきました。
今回のワークショップでは、同じ学校の先生同士で、実際に明日から学校でできる手立てを議論することができました。とても有意義な時間になったように思います。