「障害児は天使」「才能を伸ばしたらいい」の励ましに追い詰められた私が、救われた言葉とは

2019/11/14 更新
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息子が幼い頃「こういう子は癒しになるよね。天使だよね」とよく言われました。でもいったん火が付くとパニックを起こし自傷する息子を、私はお世辞にも天使だとは思えませんでした。

また、障害のある子を育てていると、立派な人だとか聖人君子かのように言われてしまうことにも、違和感を感じていました。

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立石美津子
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障害があるわが子は天使?

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。
「障害を持っている子は天使だよね」「ピュアだよね」とよく耳にしますが、「障害=イコール個性」とざっくり言われると違和感がありました。

息子は19歳になります。昔よりは随分と落ち着いています。けれども幼児期は手が付けられないほど大変でした。暴れる、脱走する、奇声を発する、何かというとすぐにパニックを起こし自分の腕を引きちぎらんばかりに噛みつく。そんな毎日に疲れ果て、お世辞にも「天使」だなんて思えませんでした。あるとき、息子が渋谷で迷子になりました。心の中で「見つからなければいいのに」と思ってしまう自分がいました。

そんなとき、「障害がある子は天使よ」と他人から言われると「私の苦しみなんかわかっていないのに!」と思わずにいられませんでした。

そもそも、障害は障害で生まれもったもの、脳の機能障害だったり染色体異常だったりが原因です。性格だとか個性と言うものは、そうした素質の上に、育った家庭環境や学校環境、友人関係などが複雑に影響し作られていくものではないか――と私は思っています。

ですから、障害があるからピュア(という個性がある)、と簡単に言われてしまうことに違和感がありました。障害がある子はすべからく周りの人に癒しを与える存在なはず?確かに狡猾さはないかもしれない、でもどんな子もそれぞれ性格も違うし個性も違う。簡単にピュアだと決めつけてほしくないと思いました。

秘めた才能がある?

また、自閉症があるというと、「きっと何かすごい才能があるのでは?」という言葉をかけられることもあります。

かつての私は、“カラスの泣き声で種類を言い当てる耳がよい息子”の才能を伸ばそうと、ピアノ教室に通う日々を送っていました。そして、聴覚が過敏過ぎて音楽を嫌がる息子の才能の温泉堀りに挫折しました。
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周りからの「才能を伸ばすべき」という言葉に影響され、わが子の才能探しに必死になる、昔の私のような親御さんもいるでしょう。

また、「才能を生かした職業に就いたら」と励まされ、「今から職業のことも心配しなくてはならないのか!」と感じ、そのプレッシャーに押し潰されている親御さんもいるでしょう。

そんなとき、親の顔は眉間に皺の怖い顔、子どもが自分の思い通りにならないと悲しそうな顔になってしまいがちです。親がそんな風に思い詰めてしまうと、子どもはとてもつらいと思うのです。

そもそも、定型発達の人であっても才能を生かして自立し、職業に生かせている人はほんの一握りです。障害がある子は何か秀でた才能を生かさなきゃいけない、という思う必要はないのです。

存在しているだけでいいんだ

障害がある子を育てる友人が、あるSNSに書き込みをしていました。

「ちゃんとトイレに行けるようになったとか、
偏食が減ったとか、目的地まで歩けるようになったとか、
靴をそろえたとか、脱いだものをちゃんと洗濯かごにいれたとか、

そんなことを喜んで、育てて、暮らしてきました。

絵も描けません。字も書けません。すごい暗記力もありません。スポーツもできません。テレビ番組にも、パラリンピックにも、スペシャルオリンピックにも、出られません。ごく普通の障害者です。それでも、あなたがいてよかった。あなたでよかった。」

特別な才能がなきゃ存在する意味はないの?いや、そうじゃない。どんな人も、いるだけで尊い存在なんだ――友人の言葉に、改めてそう思えました。

障害者=頑張る人?家族の絆が深まる?障害者にまつわるイメージ

障害者に関するイメージの一つに、「夢を諦めないで頑張っている」というものがあるように思います。また、障害のある子の家族は絆が深まるといわれることもあります。

私はシングルマザーです。高齢の母親も頼れません。私のように一人で障害児の子育てに奮闘する親もいます。障害がある子がいると家族の絆が深まるという人もいるでしょう。けれども、家族に深い溝が出来てしまい一家がバラバラになり離婚に至ってしまう人もいるのです。

例えば
・子どもの障害を受け止められず母親が家を出て行ってしまい、父親一人で子育てしている
・夫、姑に理解されないで一人障害児の子育てに奮闘しているお嫁さん

また、病気や障害のある子の親は「立派な人」「子どものために尽くす親」というイメージ。通院や療育、学校とのやりとりや日々の生活の工夫をし、子どものために尽くす保護者もいますが、一方で虐待してしまう保護者もいるでしょう。

虐待を受けている子どもたちの中には、発達障害があると気づかれないまま、育てにくい子と思われ、虐待されてしまう例も含まれていると報道で耳にします。

救われた言葉と行動

買い物をしているとき、ママ友が「今のうちに買ってきたら」と息子を見ていてくれたり、バスの中で席をすぐに立ってしまいがちな息子を奥の席に座らせてくれたり、誕生日プレゼントに息子がはまっている国旗カードをくれたり…。その気遣いが心に染みました。

「大変そうだね。何か私に出来ることがあったら遠慮なく言ってね」この言葉だけで、心は軽くなります。

「天使だね」「才能を伸ばしたらいい」という言葉は、ときに障害がある子とその家族を追い詰めることがあります。

でも“今の自分の心や状況”に本当に寄りそう言葉や行動は、深く心にしみ、肩の力をふっと緩めることができます。私もそんな言葉をかけられる人でありたいと、思います。

著者親子がモデルとなった本

第8回(2019年度)日本医学ジャーナリスト協会賞で大賞を受賞。
「自閉症児を授かった母が、思い描いた『理想の子育て』から自由になっていく17年間の軌跡が、達意の文章で描き出される」「医の原点、命への畏敬であり、『真の啓発書』『異文化への入門書』」などと高く評価されています。
発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社

このコラムをかいた人の著書

子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
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