障害は克服するもの?熱血指導の前に、安全基地を。支援者の「こうすべき」より大切にしたいこと

ライター:立石美津子
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障害のある子どもを育てていると、さまざまな場所・場面で、熱心なあまり、「障害を克服させよう」とする先生や支援者に出あうことがあります。子どもの立場になってみたら、ただでさえ生きにくい世界に、さらに恐怖までもたらす存在なのかもしれません…。

熱心な無理解者に苦しめられて

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルの立石美津子です。
障害のある子どもを育てていると、熱心な無理解者に出あうことがあります。

・「障害というハンディがあるのだから、今、辛くても頑張らせることが本人の将来のため、それが愛情だ」と思っている。
・こだわりはわがままの一種なのだから、応じてはならないと思っているところがある。
・努力すれば必ずできるようになると信じて疑わないところがある。
・苦手を克服させようと必死に努力させ、何でも一人でやらせようと試みる。
・「どうやったらこの子は○○ができるようになるのだろうか」とできないことばかりにスポットを当てがち。
・偏食を徹底して直そうとする。
・本人にとって難しいことであったとしても、みんなと同じことができるようにさせようとする。
・本人の意図を考えずに才能を開花させようと躍起になりがち。
・「やればできる」と過度な期待を抱きがち。
・「障害にともなう困難の改善」ではなく、「障害そのものの克服」を目的にしているところがある。

子どものことを思ってくれているのはわかる、熱心に支援をしてくれようとする…でも、こうした行為は子どもを苦しめてしまうことがあります。

熱心な無理解者という言葉は、児童精神科医の故・佐々木正美先生が提唱された言葉で、私の知人でもある公認心理師、臨床発達心理士、特別支援教育士スーパーバイザーの川上康則先生も「発達障害のある子どもについて【無理解・誤解・理解不足】などの状態にもかかわらず、熱心と言われるくらいの積極的な指導・支援を繰り返し、かえって当事者の状態を悪化させてしまう人のことを指す」とおっしゃっています。

たしかに、熱心であることは非常に重要です。しかし、「本人のため」「良かれと思って」の部分が前面に押し出されてしまうと、本人にとっては「苦行」のように感じられるのではないでしょうか。

自閉症の息子も、療育施設で苦手な音の克服の訓練をされた結果、その施設に行くことすら怖がるようになってしまいました。「本人のため」「良かれと思って」だけが一人歩きしない支援が必要だと常々感じています。
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子どもの気持ちを大切にする大人のあり方

では、子どもに寄り添い、子どもの気持ちを大切にする対応とはどんなものでしょう。

・できることを伸ばそうとする。
・偏食を無理に治そうとはしない。
・こだわりに十分に付き合い、信頼関係を築いた上で、こだわりの緩め方を一緒に考えてくれる。
・大人本位の「こうあるべき」にとわられすぎない。
・子どもの今の状態を受け入れている。

子どもにとって安心できる人は、このような対応をしているのではないでしょうか。

同じ場所で支援者によって対応が違うと、子どものさらなる混乱を招く

更に困ってしまうのは同じ場所でも上記の2種類のタイプの人がいて、子どもに対して全く違う対応をするケースです。子どもは無理強いされたり、許容されたりして「何が正しいのか」がわからず混乱してしまいます。こうした状況を「ダブルバインド」と言うそうです。子どものほうも相手により態度を変える(怖い大人の前でだけおとなしくし、やさしい大人にはからかいを多く出すなど)といった誤学習をしてしまうかもしれません。これは「偏食をわがままとして許さない父と、受け入れる母」など家庭内でもおこりがちです。
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