「自閉症ではないですよ」と言ってほしい――否定や才能探しに明け暮れ、揺れ動いた心。医師のある言葉にハッとさせられて

2020/10/18 更新
「自閉症ではないですよ」と言ってほしい――否定や才能探しに明け暮れ、揺れ動いた心。医師のある言葉にハッとさせられてのタイトル画像

我が子に発達障害があることがわかったとき、とうてい受け入れることができない親も多くいるのではないでしょうか。かつての私もそうでした。

(撮影:週刊女性・渡邉智裕)

立石美津子さんのアイコン
立石美津子
5539 View

受け入れられなった頃

次はキューブラー=ロスの“死ぬ瞬間”という書籍で書かれていることです。

【否認・隔離】
自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階である。

【怒り】
なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階である。

【取引】
なんとか死なずにすむように取引をしようと試みる段階である。何かにすがろうという心理状態である。

【抑鬱】
なにもできなくなる段階である。

【受容】
最終的に自分が死に行くことを受け入れる段階である。

これは、死を受け入れる過程として書かれていることですが、障害受容のときも同様ではないかと思います。

息子は2歳で自閉症と診断されました。私は、診断した医師を「ヤブ医者だ」と恨み、診断を受け入れることが出来ませんでした。

否認→怒り→取引→抑鬱→受容

・私も誤診と思い(否認)

・定型発達の子と比較して、「どうしてうちの子が」と(怒り)を感じ

・「自閉症ではないですよ」と言ってくれる医師を探しドクターショッピング、何かにすがろうと療育に期待しました(取引)。

でも、自閉症が治るわけではなく定型発達の子どもとの差はますます開くばかりで(抑鬱)状態に陥りました。

受容のきっかけ

受容のきっかけは、ある医師の言葉でした。

息子は当時、ある病院内で行われていた療育に通っていました。この病院は既に廃院となりましたが、入院病床が260床以上ある、精神科に特化した18歳までの子ども専門の精神科の病院でした。

ある日、療育開始時刻よりも早く到着してしまいました。時間を潰すため、病院内の敷地を散歩しているとき、ふと鉄格子が目に入りました。
病院の敷地内で遊ぶ息子
Upload By 立石美津子
「ここは精神科の病院だから鉄格子があるんだ」と思いました。近づいてみると、鉄格子越しに、小学校くらいのまだ幼い子が一人でいる姿が見えました。

部屋にはベットと椅子、そして自傷を防ぐために身体拘束をするためのベルトもありました。
息子の後ろに鉄格子付きの窓が見える
Upload By 立石美津子
鉄格子の窓の前に立つ息子
Upload By 立石美津子
私は診察時に医師に「まだ小さな子がなぜ、入院しているんですか?」と尋ねました。

医師は

「この病院には家族が障害を受容していないために適切な育成環境を与えられないなどが原因で、二次障害を起こし入院している子が多くいます。ベットはほぼ満床です。お母さまも気を付けて育ててください」
と言われました。

それまで、息子の障害を受容できず、抑鬱状態で悶々としていたて私でしたが、医師のその言葉でハッとしました。目の前にいるまだ幼い息子の将来を思い浮かべ「私が受容しないとダメなんだ」と目が覚めました。

障害受容はしたけれど…

医師からその言葉をかけられたのは、診断されてから1年経ったころでした。1年の間、否定したり怒りを感じたり、抑鬱状態に陥ったり――そんな状態の私でしたがこのことをきっかけにやっと一歩前進できました。

けれども、そう簡単に受容しきれたわけではありません。我が子が普通であることの呪縛からは逃れられず、「普通の子に近づけよう!出来ることを増やそう!」と躍起になりました。
障害は克服するもの?熱血指導の前に、安全基地を。支援者の「こうすべき」より大切にしたいことのタイトル画像

関連記事

障害は克服するもの?熱血指導の前に、安全基地を。支援者の「こうすべき」より大切にしたいこと

熱心な無理解者という言葉がありますが、私がまさにそうでした。

・「障害というハンディがあるのだから、今、辛くても頑張らせることが本人の将来のため、それが愛情だ」と思っている。

・こだわりはわがままの一種なのだから、応じてはならないと思っているところがある。

・努力すれば必ずできるようになると信じて疑わないところがある。

・苦手を克服させようと必死に努力させ、何でも一人でやらせようと試みる。

・「どうやったらこの子は○○ができるようになるのだろうか」とできないことばかりにスポットを当てがち。

・偏食を徹底して直そうとする。

・本人にとって難しいことであったとしても、みんなと同じことができるようにさせようとする。

・本人の意図を考えずに才能を開花させようと躍起になりがち。

・「やればできる」と過度な期待を抱きがち。

・「障害にともなう困難の改善」ではなく、「障害そのものの克服」を目的にしているところがある。

でも、熱心なあまり我が子のためと思っている行為が、結果としてわが子を苦しめていました。

更に「才能を見つけてそれを伸ばすのが親の務め」と考え、今の我が子の状態を受け入れられず躍起になり、紆余曲折がありました。
ピアノのレッスンをする幼い息子
Upload By 立石美津子
ピアノのレッスン中の息子
絶対音感を獲得する練習のために、ピアノ教室に通わせていた頃
Upload By 立石美津子
小学校で特別支援学校に入学してから、放課後等デイサービスに通い、きめの細かい温かい対応をしてくださる学校の先生方やデイのスタッフ、また同じ障害のあるママ友達との交流をしていくうちに、モーレツ母さんから徐々に卒業できた気がします。
放課後等デイサービスで楽しく過ごす息子
Upload By 立石美津子
その療育は誰のため?自閉症息子の育ちを振り返って――「みんなと一緒」より大切にしたいもののタイトル画像

関連記事

その療育は誰のため?自閉症息子の育ちを振り返って――「みんなと一緒」より大切にしたいもの

自立とは

何でも一人で出来るようになることが自立ではないと思っています。人は出来ないことの方が多いのですから、どうしても出来ないことは、出来る人に頼ればいいのです。生まれつきの障害があるのならば尚更です。

成人した息子は計算が出来ません。でも、コンビニで好きなお菓子を買うことが楽しみになっています。何故、計算できないのに買い物ができるのか?それは、レジの人に助けてもらっているからです。
買い物をする息子
Upload By 立石美津子
親は子どもといつかお別れする日がやってきます。いつまでも世話をしてやれないのですから、他人に頼ることは、親亡き後のことを考えたら必要な力だと思っています。

出来ないことは誰かに助けてもらって生きる、これも自立の形だと思います。頼れる人をたくさんつくっておくことも自立です、人に迷惑をかけない子ではなく、できないことはSOSを出せる子に育てることもが大切だと思います。
自閉症の息子が「一人で買い物」、身につけるべきスキルはお金の計算じゃなかった!のタイトル画像

関連記事

自閉症の息子が「一人で買い物」、身につけるべきスキルはお金の計算じゃなかった!

真の受容とは

真の受容とは、今まで持っていた親の古い価値観を捨てること。我が子に対して「あなたは、あなたのままでいい」と承認すること。

この作業は、「普通」であることの呪縛を断ち切り、「世間体」とか「世間並み」といった横並びの生き方と決別し、我が子にとって最も幸せな生き方を理解し寄り添うことなのではないでしょうか。

私の最大の願いは(私はもう、この世にはいませんが)息子が人生を最後の日を迎える時、「僕の人生は幸せだった」と呟いて天国に行けることです。

皆さんの願いはなんですか。その答えがきっと答えを出してくれると思います。

このコラム書いた著者親子がモデルの本

発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社

このコラムを書いた著者の本

子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
自閉症の子どもの接し方は?子育ての困難と対処法まとめのタイトル画像

関連記事

自閉症の子どもの接し方は?子育ての困難と対処法まとめ

児童発達支援とはどんな施設?サービス・利用方法・費用・受給者証手続きの流れをご紹介のタイトル画像

関連記事

児童発達支援とはどんな施設?サービス・利用方法・費用・受給者証手続きの流れをご紹介

発達ナビPLUSバナー
当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
あわせて読みたい関連記事

あわせて読みたい関連記事

この記事を書いた人

立石美津子 さんが書いた記事

「他の人に怒られるよ」で叱るのは責任転嫁!?王道のしつけにこだわらなくていい。自閉症長男とのバトルから感じることのタイトル画像

「他の人に怒られるよ」で叱るのは責任転嫁!?王道のしつけにこだわらなくていい。自閉症長男とのバトルから感じること

「ほら、大声で騒ぐと運転手さんに怒られちゃうよ」、「みんなうるさいなぁって見てるでしょ?静かにしなさい」...、子どもを叱るとき、つい言い...
発達障害のこと
10091 view
2020/10/05 更新
外見でわかる障害・わかりにくい自閉症――お年寄りから座席を譲られたクラスメートとパニックで怒鳴られる息子、それぞれの葛藤のタイトル画像

外見でわかる障害・わかりにくい自閉症――お年寄りから座席を譲られたクラスメートとパニックで怒鳴られる息子、それぞれの葛藤

肢体不自由やダウン症など外見で「障害がある」のがわかりやすい障害と、自閉症のように見た目でだけではわかりにくい障害があります。息子がまだ幼...
発達障害のこと
14045 view
2020/09/22 更新
「息子さんがパニック」就労支援事業所からの電話に「家でも暴れるかも」と覚悟したけれど。まっすぐ帰宅しなかった息子の変化のタイトル画像

「息子さんがパニック」就労支援事業所からの電話に「家でも暴れるかも」と覚悟したけれど。まっすぐ帰宅しなかった息子の変化

自閉症の息子は就労移行支援事業所に通所しています。支援員から「パニックになっている」と電話がありました。 今までの経験から、「家でもパニ...
身のまわりのこと
14557 view
2020/09/01 更新
放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOメディア&ソリューションズがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOメディア&ソリューションズは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOメディア&ソリューションズの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。