その療育は誰のため?自閉症息子の育ちを振り返って――「みんなと一緒」より大切にしたいもの

2020/01/10 更新
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「あれ?何か違う?」発達に凸凹があることに気づいて療育に通わせる時期は主に幼児期だと思います。もうすぐ20歳を迎える自閉症の息子は、療育を小学校入学と共に辞めました。その理由とは…。

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立石美津子
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療育型の放課後等デイを選ばなかった理由

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションノベルのモデルとなった立石美津子です。
講演会で話をすると、多くの保護者から、療育について聞かれることがあります。

私が療育を受けさせたのは、息子が3~6歳でした。今でいう、児童発達支援の施設に通っていました。小学校は特別支援学校を選んだので「学校できめ細かくやってくれる」と考え、療育施設からは卒業しました。

その代わり通い始めたのは、療育型ではなく遊びがメインの放課後等デイサービスでした。

今は多くの放課後等デイがありますが、「うちの施設では漢字検定に力をいれています」「運動療育に特化しています」など、それぞれの特色をうたい、「放課後の居場所+療育」となっているところもあります。ですが、息子が小学生に上がった頃は数えるほどしかありませんでした。

私の場合、「特別支援学校でそれなりに緊張し頑張っているのだから、放課後はうんと遊ばせてくれる場所がいい」と思っていたので、数少ない選択肢の中から、いわゆる療育型ではなく、遊び中心の居場所型の放課後等デイを見つけて通わせました。

もちろん、特別支援学校に在籍していても、公立小学校に併設されている学童クラブに行くこともできました。ですが、見学してみたところ、特にプログラムも設けられておらず、子どもたちはそれぞれ自由遊びをしている光景を見て、自由な時間をうまく過ごすことができない息子は「僕は何をしたらよいだろう」となってしまうと感じました。ですからわが家では、うんと遊ばせてくれつつも、1日のスケジュールや、やることを分かりやすく明示してくれる放課後等デイを選びました。

知的障害がなく、通常学級に通う場合でも、発達障害がある子どもたちは、きっとそれなりにストレスを感じながら過ごしていると思います。放課後の居場所として、学童クラブ一択ではなく、受給者証がとれるのであれば、放課後等デイ、それも本人がリラックスできる居場所で過ごす時間を持たせてあげてもいいのでは、と私は思っています。
高校卒業するまで通った放課後等デイでの様子
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高校卒業するまで通った放課後等デイでの様子
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そもそも、療育ってなんだろう?

話は療育に戻りますが…

“療育”という漢字は“治療+教育”。ここで“療”という言葉を使っているため、「療育を受けさせると自閉症が治る、定型発達児に近づく」と思っている人もいるのではないでしょうか。

子どもが幼いうちは、自閉症など子どもの障害についての知識も少なく、将来に不安もあり、「今のうちになんとか親が頑張り、子どもにも努力させれば必ず変わる」と意気込むのも無理からぬことだとは思いますが…。

療育は、発達障害児を定型発達児にするために行うものではありません。本来の目的は、障害のある子ども自身が日常生活を送りやすくし、困りごとを減らすことにあります。療育とは人生がスタートした早い時期から、その子の特性を理解し、子ども自身が生きやすくなる方法を子どもとともに見つけていくことです。

現在はさまざまなタイプの児童発達支援や放課後等デイサービスがあり、療育をうたう施設もたくさんあります。でも、保護者が療育の本来の目的を忘れて、できないことをできるようにさせようと、焦りすぎないことが大事だと思います。子どもの生きづらさを軽減させられるようなサポートを、保護者と施設とでできたらいいのではないかと思います。

幼児期は療育に明け暮れていた

そんな私も、息子の幼児期には、約5年間療育に通わせました。自閉症の息子は人に全く関心を示さず、人の言葉の真似をすることもなかったので、5歳になっても言葉は出ませんでした。

そんなとき療育施設で先生が手を頭にやったら自分も手を頭に置く、先生がしゃがんだら自分も床に座るなどの模倣訓練を受けました。

これで息子は“人の真似”をすることを覚え、その後、先生が「リンゴ」と言ったら「リンゴ」と言えるようになりました。この訓練を受けていなければ言葉が出るのはもっと先になったかもしれません。でも、同じ療育を受けている子どもが皆、言葉を話すようになったかというと、高校生になっても言葉がない子もいました。

息子は今はたくさんの単語を言います。リンゴだって「紅玉・つがる・王林・世界一・ジョナゴールド・陸奥…等々」スーパーで目にしたラベルを記憶してずっとそれを羅列して喋ります。けれども、「ねえ、お母さん、このリンゴとっても美味しそうだね。僕食べたいな」と会話をすることは未だにありません。

「○○君、教室を出て行ったらダメでしょ!」と学校で担任がクラスメートに叱っている言葉を叫んでいたこともあります。けれども、それを使うシチュエーションが完全にずれていて、関係のない電車内で突然話し出したこともあります。一方通行の会話、オウムのようにただ真似て言葉を発するだけ…。隣に座っている見知らぬおじさんから怪訝そうな顔つきで見られたこともあります。

言葉を覚える訓練はそれなりに効果はありました。ですが、それだけで人とコミュニケーションがとれるようになるかといったら、そうとはいえません。遠い道のりだったりします。
この世は大勢の人が生きやすいようにできています。ですから、少数派の自閉症児が一般社会に適応しやすいようにする面が療育訓練には少なからずあります。そうすることで、生きづらさを軽減させる面もあるからです。

でも、よく考えてみれば本人にとっては「皆に合わせてあなたの思いをコントロールできるようになりなさい」と強制されているともいえます。

さらに、保護者に「自分のあるがまま」を認めてもらえず、「今のあなたのその行動は許さない。普通の子と同じようになりなさい」という親の全身から出るビームにさらされたとしたら…きっととても悲しくつらい気持ちになるでしょう。

あくまで本人が困らないように、生きやすいように練習する場であると考えることを忘れないようにしてもらえたら…。まだ幼い自閉症児の保護者から相談をうけるたび、そんな風に思うこの頃なのです。

このコラムをかいた著者親子がモデルとなった本

発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社

このコラムをかいた人の著書

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立石美津子
すばる舎
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