自閉症子育て歴20年。友人の孫自慢、企業就労話に嫉妬…いまだ「比べる病」から卒業できなくて

2020/12/03 更新
自閉症子育て歴20年。友人の孫自慢、企業就労話に嫉妬…いまだ「比べる病」から卒業できなくてのタイトル画像

子どもが生まれたとき「生まれてきてくれてありがとう」と多くは望まなかったのに、次第に「あの子に比べてあれもできない、これもできない」と比べる病にかかってしまうことがあります。

立石美津子さんのアイコン
立石美津子
21252 View

孫自慢についていけない

私は59歳、来年は還暦です。孫がボチボチ生まれる友人も多くなってきました。友人とお茶をするとスマホを出し、孫の写真を見せ合う“孫自慢”が始まります。

そんな空間にいると、ふと「私にはこういうことは生涯巡ってこないんだなあ…」と悲しい気持ちになってしまいます。

息子は知的障害のある自閉症なので「結婚することはできないだろう」と思ってしまうからです。

不妊症、そして…

30年前、友人たちが結婚し出産ラッシュだった頃、シングルの私は焦っていました。今、孫自慢についていけないように、あの頃の私は、わが子の話題についていけなかったからです。

その後、パートナーが見つかり、妊娠。息子が生まれて喜んだのも束の間、息子に障害があることがわかってからは…

・お座りができたのが早い、遅い
・立って歩くのが早い、遅い
・離乳食をモリモリ食べる、食べない
・言葉が早い、遅い
・オムツがとれた、とれない

など定型発達の子を育てるママ友の話題にすぐについていけなくなりました。

イヤイヤ期、習い事、中学受験、進路の悩みとママ友の話題は、子どもの年齢と共に変化していきましたが、息子には無縁のことだったので、友人の集まりから次第に足が遠のいていきました。

息子の進路選択でも胸が苦しくなり

特別支援学校高等部の3年生だった頃、障害児を育てるママ友との話題は、もっぱら卒業後の進路のことでした。(特別支援学校高等部卒業後の進路)

・障害者雇用枠での就労
・就労移行支援事業所
・就労継続支援A型
・就労継続支援B型
・生活介護

企業就労する子の話を聞くと、私は「おめでとう。良かったね」と言いながら、胸が苦しくなりました。息子は企業での障害者雇用枠での就労は難しかったからです。実際、企業実習も上手くいきませんでした。

でも、「生活介護に行く子の親は、就労移行支援事業所に行く息子のことを聞いて、胸がザワザワしているのかもしれない」とも思いました。
スーツを試着する息子
スーツを作ったが就労は叶わなかった
Upload By 立石美津子
スーツ姿の息子
Upload By 立石美津子
実習先企業からの「不合格」宣告で気づけた、一番大切にすべきこととは…のタイトル画像

関連記事

実習先企業からの「不合格」宣告で気づけた、一番大切にすべきこととは…

SNSに息子が福祉サービスを受けていたり、特別支援教育の中で手厚い指導を受けていたりすることをアップすると、障害が軽い子の親から次のようなコメントがくることがあります。

「知的障害のない発達障害のわが子は支援の網の目から、零れ落ちてしまっている。立石さんが羨ましい…」
「グレーゾーンではなく、しっかりと知的障害のある自閉症だったら、どんなに良かったか」

私は心の中で「知的障害がなかったら、一人で買い物できるでしょう。親なき後のことを考えて、グループホームを探さなくてもいいでしょう」とつぶやき、胸が苦しくなります。

“比べる病に侵される”のは人間のサガなのかもしれません。

脳科学者の茂木健一郎さんの本でも「他者との比較で自分の立ち位置を確認する」と書かれていました。

周囲より自分が抜きん出ていれば幸せだけど、周囲も同じ生活レベルなら特別に自分が幸せだとは思わない。
このように、私達が常に他人との比較において幸福を感じるのだとしたら、幸せとは絶対的なものではなく相対的なものということになります。(中略)
友達がどんどん結婚していき子どもに恵まれる中、自分一人がずっと独身でいると焦燥感にかられることもありますね。

『幸福になる「脳の使い方」』茂木健一郎著(PHP新書)より

出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4569809456

たとえ就労できたとしても

障害者雇用実態調査をみると、民営事業所での雇用実態において、身体障害のある人は正社員の割合が5割を超えていますが、それ以外の障害の場合は正社員の割合は2~3割で、半年更新や3ヶ月更新の有期雇用の割合が多いようです。勤続年数も、知的障害の場合は7年程度ですが、発達障害や精神障害のある人は平均3年程度だとわかります。

実際に私の周りでも、職場で理解されず、なかにはいじめにあうなどして、就労移行支援事業所や福祉作業所に戻ってきている知人の子もいます。

そうなると「企業就労おめでとう」と喜んでいられるのは一時のことなのかもしれません。でも、こういう書き方をしてしまうこと自体が負け惜しみで、「“比べる病”を未だに卒業できていないな」と自分の小ささをシミジミ感じます。

青い鳥を探して

みなさんもご存じだと思いますが、「幸せの青い鳥」という童話があります。

“クリスマスの前の晩、貧しい木こりの息子チルチルと妹のミチルは、魔法使いのおばあさんにたのまれ、光の精や水の精などの妖精に導かれながら、夢の中の世界へ青い鳥をさがしに出かけます。

けれども、思い出の国へ行っても、幸福の国へ行っても、未来の国へ行っても青い鳥はみつかりません。やっと青い鳥をつかまえたと思うと、すぐ色がかわってしまったり、死んでしまったりします。

やがて、朝になり、ふたりは目をさましました。するとどうでしょう、青い鳥は、木こり小屋の鳥かごの中にいるではありませんか。ほんとうの青い鳥(しあわせ)は、すぐそばの、自分たちの生活のなかにあったのです”

私は長く独り身で、パートナーができてからも不妊症で治療していました。なかなか子どもを授からず、このままずっと自分だけのために生きるのかと思い、何とも言えない気持ちになっていました。

でも、身勝手なことですが、今は発達障害のある息子のことで毎日悩んでいます。子どもは自分の命であり、宝であり、生き甲斐ですが、同時に心を掻き乱す原因でもあります。でもそれが親になるということ、自分が選んだ道なのだと感じています。

仮に子どもが事故にあったり、縁起でもありませんがもしも誘拐されてしまったりしたら…と考えると、文句を言っていたことを反省するでしょう。

自分以外の誰かのために生きるのは大変なことですが、もしかしたら幸せなことなのかもしれません。それから、わが子であっても自分以外の人間のことを常に考えているというのは、人として修業していることなのかもしれないと思います。

目の前に居るわが子は、実は、青い鳥なのかもしれません。

LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
https://h-navi.jp/column
息子とのツーショット
Upload By 立石美津子

このコラムを書いた著者親子がモデルの本

発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年
松永正訓
中央公論新社

このコラムを書いた人の著書

子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
発達障害とは?発達障害の分類・症状・特徴・診断方法はどのようなもの?のタイトル画像

関連記事

発達障害とは?発達障害の分類・症状・特徴・診断方法はどのようなもの?

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?のタイトル画像

関連記事

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?

発達ナビPLUSバナー
当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
あわせて読みたい関連記事

あわせて読みたい関連記事

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOメディア&ソリューションズがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOメディア&ソリューションズは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOメディア&ソリューションズの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。