自閉症子育て歴20年。友人の孫自慢、企業就労話に嫉妬…いまだ「比べる病」から卒業できなくて

ライター:立石美津子
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子どもが生まれたとき「生まれてきてくれてありがとう」と多くは望まなかったのに、次第に「あの子に比べてあれもできない、これもできない」と比べる病にかかってしまうことがあります。

孫自慢についていけない

私は59歳、来年は還暦です。孫がボチボチ生まれる友人も多くなってきました。友人とお茶をするとスマホを出し、孫の写真を見せ合う“孫自慢”が始まります。

そんな空間にいると、ふと「私にはこういうことは生涯巡ってこないんだなあ…」と悲しい気持ちになってしまいます。

息子は知的障害のある自閉症なので「結婚することはできないだろう」と思ってしまうからです。

不妊症、そして…

30年前、友人たちが結婚し出産ラッシュだった頃、シングルの私は焦っていました。今、孫自慢についていけないように、あの頃の私は、わが子の話題についていけなかったからです。

その後、パートナーが見つかり、妊娠。息子が生まれて喜んだのも束の間、息子に障害があることがわかってからは…

・お座りができたのが早い、遅い
・立って歩くのが早い、遅い
・離乳食をモリモリ食べる、食べない
・言葉が早い、遅い
・オムツがとれた、とれない

など定型発達の子を育てるママ友の話題にすぐについていけなくなりました。

イヤイヤ期、習い事、中学受験、進路の悩みとママ友の話題は、子どもの年齢と共に変化していきましたが、息子には無縁のことだったので、友人の集まりから次第に足が遠のいていきました。

息子の進路選択でも胸が苦しくなり

特別支援学校高等部の3年生だった頃、障害児を育てるママ友との話題は、もっぱら卒業後の進路のことでした。(特別支援学校高等部卒業後の進路)

・障害者雇用枠での就労
・就労移行支援事業所
・就労継続支援A型
・就労継続支援B型
・生活介護

企業就労する子の話を聞くと、私は「おめでとう。良かったね」と言いながら、胸が苦しくなりました。息子は企業での障害者雇用枠での就労は難しかったからです。実際、企業実習も上手くいきませんでした。

でも、「生活介護に行く子の親は、就労移行支援事業所に行く息子のことを聞いて、胸がザワザワしているのかもしれない」とも思いました。
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実習先企業からの「不合格」宣告で気づけた、一番大切にすべきこととは…

SNSに息子が福祉サービスを受けていたり、特別支援教育の中で手厚い指導を受けていたりすることをアップすると、障害が軽い子の親から次のようなコメントがくることがあります。

「知的障害のない発達障害のわが子は支援の網の目から、零れ落ちてしまっている。立石さんが羨ましい…」
「グレーゾーンではなく、しっかりと知的障害のある自閉症だったら、どんなに良かったか」

私は心の中で「知的障害がなかったら、一人で買い物できるでしょう。親なき後のことを考えて、グループホームを探さなくてもいいでしょう」とつぶやき、胸が苦しくなります。

“比べる病に侵される”のは人間のサガなのかもしれません。

脳科学者の茂木健一郎さんの本でも「他者との比較で自分の立ち位置を確認する」と書かれていました。
周囲より自分が抜きん出ていれば幸せだけど、周囲も同じ生活レベルなら特別に自分が幸せだとは思わない。
このように、私達が常に他人との比較において幸福を感じるのだとしたら、幸せとは絶対的なものではなく相対的なものということになります。(中略)
友達がどんどん結婚していき子どもに恵まれる中、自分一人がずっと独身でいると焦燥感にかられることもありますね。

『幸福になる「脳の使い方」』茂木健一郎著(PHP新書)より
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4569809456
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