「教室の問題児」は、なぜ「社会人」になれたのか?成長の決め手が見えてくる!かなしろにゃんこ。さん新著『発達障害で問題児 でも働けるのはワケがある!』

ライター:発達ナビBOOKガイド
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「教室の問題児」は、なぜ「社会人」になれたのか?成長の決め手が見えてくる!かなしろにゃんこ。さん新著『発達障害で問題児 でも働けるのはワケがある!』のタイトル画像

「リュウ太が就職しました!」というシーンから始まる新刊『発達障害で問題児 でも働けるのはワケがある!』。著者のかなしろにゃんこ。さんが描く、息子・リュウ太さんの成長記コミックエッセイはLITALICO発達ナビでも大人気。そのリュウ太さんの「就職」に至るまでの物語がこの新刊です。「あのころ、こう思っていたんだ」というリュウ太さん自身の振り返りエピソードもたくさん登場する一冊、見どころをご紹介しましょう。

「働く」経験は、子ども時代からスタートしている!

LITALICO発達ナビのコラムでおなじみ、漫画家かなしろにゃんこ。さんの新刊『発達障害で問題児 でも働けるのはワケがある!』をご紹介します。この本は、ADHDと広汎性発達障害があるリュウ太さんが就職し、職場で働き始めるまでを描いた作品です。

全9話のコミックエッセイを楽しみながら、各章末にあるキャリアアドバイザー・石井京子さんの解説で理解を深められる一冊となっています。
発達障害で問題児 でも働けるのはワケがある!
かなしろにゃんこ。 (著), 石井 京子 (監修)
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発達障害のある人が「働く」ということは、LITALICO発達ナビユーザーの皆さんにとっても、子どもの将来に関する一大テーマではないでしょうか。

かなしろにゃんこ。さんの息子・リュウ太さんは義務教育を卒業後、専修学校に進学しました。専修学校は、実践的な技術を習得することを目的とした5年制の学校で、リュウ太さんは自動車整備士の国家資格取得を目指していました。

この本に書かれているのは、リュウ太さんが国家試験を通過して、晴れて就職...という「ゴール」を迎えるまでの過程だけではありません。そのずっと以前から、「働く」ことを経験してきたリュウ太さん。専修学校時代のアルバイトもそうですが、小学校時代の「お手伝いしてお駄賃をもらう」ということが、「働く」のスタートでした。
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ただ単に、労働して報酬をもらうだけでなく、言葉や態度でねぎらわれたいという気持ちを感じたり、家事という仕事が、実際にやってみると大変だということを知ったりしました。

子ども時代のリュウ太さんは、お手伝いをするのは嫌いで、イヤイヤやっていたようです。けれど、二十歳になったリュウ太さんは、お母さんのかなしろにゃんこ。さんと買い物に行くと、荷物を自然と持ってくれる大人になりました。

「変わったよね」というお母さんに「おれを買い物に誘うってことは荷物持ちってことでしょ?」とさらりと返せるまでに成長したリュウ太さん。彼は「働く」ということについての認識をどのように変えていったのでしょうか。

アルバイトで家族以外の人と「働く」ことを経験する

リュウ太さんは、専修学校時代に3つのアルバイトを経験しています。ラーメン屋、スーパーマーケット、そして就職につながっていく自動車整備の現場です。それぞれの職場で試行錯誤をくり返し、多くの気づきを得てきたそうです。

たとえばラーメン屋のアルバイトでは、「話しかけることはこわいことじゃない」と学びます。
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スーパーのアルバイトでは、さまざまなワークハックスキルとも呼べる「ワザ」を習得していきます。

「ハキハキ謝ると先輩にそんなに怒られない」「中身を傷つけないように、カッターはやめて家の鍵を使って段ボールの開梱をする」「割れ物の扱いは慎重にする」「揺れない積み方にする」「売れ筋商品は早めに並べる」など、先輩のやり方を取り入れてマネすることを覚えました。
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こうして、学校や家庭だけでなく、働く場でしかできない経験を通じて成長していきます。単なる作業スキルではなく、「働く姿勢」が育っていったのです。なぜそんなふうに成長できたのでしょう?

職場には「社会の目」があることに気づいたからだ、とリュウ太さんは分析しています。
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しかし成長は、ときに痛みを伴います。アルバイトでイヤな目に遭い、頭の中がモヤモヤして眠れなかったり、イライラしたり。それを解決・克服していくのは、親でも先生でもなく、自分自身しかないという経験も、同時に重ねていきました。

親からは見えづらい、大人になっていく途上の姿がそこにはあります。
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「働く」ことのプロによる解説が各章末に

本書には、かなしろにゃんこ。さん親子の実体験だけでなく、キャリアアドバイザー・石井京子さんの解説が各章末にあります。
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石井京子さんは2010年に一般社団法人日本雇用環境整備機構を設立し、理事長を務めています。18年間にわたり人材紹介会社で700人を超える発達障害の方の就職・就業を支援、講演などの啓発活動にも積極的に取り組んでいて、『発達障害の人の就活ノート』(弘文堂)など多くの著作を贈りだしています。

本書では、豊富な経験から培われた的確なアドバイスを読むことができます。

発達障害があったから、知ることができた自分の特性

さまざまな失敗をして立ち直り、バイト先の人々のサポートや𠮟咤激励によって成長していくリュウ太さん。でも、発達障害のためか、力のペース配分がうまくできず、目の前のことに全力で体当たりしたあと体調を崩してしまう場面もあります。
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どんな人にとっても、好きなこと・やりたいことが仕事につながるのは魅力的です。そのときに気をつけなくてはいけない体調管理、スケジュール管理についても、この本には詳しく書かれています。その多くは、働くなかで獲得していったスキルというより、リュウ太さんが学校生活を送る中で、また家庭で獲得されたもののようです。

学校や家庭で学んだこと・体験したことの全てが、社会に出てから役に立つわけではありません。でも、「発達障害で問題児」(←タイトルより)だった子が「働く大人」として自立するためには、自分の特徴や行動のクセを知り、うまく生きていくスキルを身につける時間が必要です。

その意味では、ムダに見えることも含めて「失敗してまた立ち直る」経験をたくさん積めたのは、有意義なことだったといえるでしょう。
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いよいよ就活。その中で気づいた大事な気持ち

卒業の半年ほど前から、学校では就活サポート授業が始まりました。リュウ太さんは、情報収集するなかで、インターネット上の会社員のネガティブな発信を真に受けてしまいます。勝手に嫌なイメージをもち、「働くなんて無理!」と就職活動にも乗り気になれない時期がありました。
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ところが、卒業2カ月前になって、アルバイト先の上司から「関連会社の就職試験を受けないか」と打診されます。あれこれ考えた末に、「(バイト先こそが)ぼくの理想の職場じゃないか!」と気づいたリュウ太さんは、「どうせ採用されないだろうと(挑戦する前から)あきらめていた」だけだったと気づきます。
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こうして、リュウ太さんは「働くこと=つらい・苦しいこと」というイメージを塗り替えていきます。アルバイトを経験したことや、周りの人にかけられた言葉、自分で努力してきたことから、進みたい道を見いだし、リュウ太さんは、働くことから導き出される暗いイメージを、自分の力で払拭していく強さを身につけていきます。

好きなことと得意なことは必ずしも一致するとはかぎりません。しかし、リュウ太さんのように、自分の「好き」を上手に追求するのは「賢明な選択」だと、「プロの視点」で石井さんはアドバイスしています。石井さんはこう書いています。
アルバイトにも向き・不向きがあることは、第3章ですでに説明しましたが、就職して一つの職種に就くと、バイトのとき以上に担当する業務が増え、責任も広がります。また、それが自立して生活する糧を得る手段になるわけですから、簡単に辞めるというわけにもいかなくなります。
だからこそ、社会に出るにあたっては、アルバイトのとき以上に慎重に「適性」を見極めることが必要になるのです。(P110)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4065216079
「自分の適性に合う仕事」は、「好き」の延長線上でこそ見つけやすいのです。再び石井さんの言葉。
自分の「不得意なこと・嫌いなこと」に取り組むのは、誰にとってもストレスです。したがって「不得意・嫌い」を仕事にしても長続きするはずがありません。
逆に、「得意・好き」なら、少なくとも気分よく取り組めるし、本人のモチベーションも高まるはずです。(P111)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4065216079
だからこそ、仕事を選ぶにあたっては「本人の得意なこと・好きなことにフォーカスするのがポイント」だと石井さんは指摘しています。

「障害者手帳」の取得についても考えてみた

ところで、就活の面接を受けたものの結果がなかなか出ず、このままアルバイトでもいいかな...と言い始めたリュウ太さんに、かなしろにゃんこ。さんは障害者手帳の取得について提案します。障害者雇用枠があること、職場での配慮を得やすくなることなどを聞き、リュウ太さんも自分で障害者手帳について調べてみました。
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そして、これまでの自分を振り返ったうえで、今は手帳はいらないと決断します。

手帳について提案するタイミングも、かなしろにゃんこ。さんは見計らっていたと言います。
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「本人が納得した上で選択のサポートをする」という支援の、お手本になりそうなエピソードです。障害者手帳の取得について、いつ話したらいいのだろうかと迷っている保護者にとっては、参考になるかもしれません。

「プロの視点」では、「支援制度を利用すれば、就職の可能性が広がる/困りごとがなくても『制度を知っておく』『支援とつながっておく』のは大事です!」として、障害者雇用の流れについての解説があります。「就労移行支援事業所」を利用するメリットやポイントなどもわかりやすく解説されています。はっきりとした障害と診断されていない場合でも、働くときに知っておきたい大事な情報です。

子どもが大人になるための最後のひと押しは、「世間さま」の役割

さて、こうして、リュウ太さんは無事就職を果たしたわけですが、その後の生活はどうなったでしょうか。それは本を読むときのお楽しみにしておきましょう。

いつのまにか親の手を離れて、自立していく子ども。学校を卒業して大人になっていくためのサポートは、親がするのではありませんでした。リュウ太さんの場合はアルバイト先の人たち、つまり「世間さま」が育ててくれたと、かなしろにゃんこ。さんは振り返っています。
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このシーンは、冒頭でもご紹介した第1章で買い物に行ったときの一コマです。世間に触れたリュウ太さんは、どのようにして大人になっていったのか。本書には紆余曲折に満ちた軌跡があますところなく描かれています。ぜひ読んでみてください。

文/関川香織
発達障害で問題児 でも働けるのは理由がある!
かなしろにゃんこ。 (著), 石井 京子 (監修)
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