「なんでせかい中、こんなにおおさわぎしてるんだろう」耳ふさぎは、自己防衛の手段。聴覚過敏があった次男の繊細で豊かな世界

ライター:楽々かあさん

現在中学2年生のうちの次男には、小さなころ「聴覚過敏」がありました。そのため、人の多い場所には、行って帰ってくるだけでもぐったり疲れていたのですが、今では、成長と共に過敏さはかなり緩和されつつあります。…でも、私はそんな次男の成長を喜ばしく思う反面、少しだけ、寂しいような、もったいないような気持ちにもなるのです。それでは、次男に聞こえていた「聴覚過敏」の繊細で豊かな世界とは、一体どんなものなのでしょうか。

世界中が大騒ぎ。聴覚過敏の次男の世界

こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。

現在中学2年生のうちの次男には、小さなころ「聴覚過敏」がありました。そのため、園や学校、お出かけ先などの人の多い場所には、行って帰ってくるだけでもぐったり疲れてしまっていたので、引っ込み思案で積極的に人と関わることも苦手でした。

ですが今では、本人の自然な成長と、家庭でのケアと工夫、周囲のサポートなどもあって、次男の聴覚過敏はかなり緩和されつつあるようです。人より多少疲れやすくはあるものの、日常生活に大きな支障はなく、中学では特別な配慮をお願いしなくても、ほとんど欠席もせず、友達とワイワイとにぎやかに遊べるようにもなりました。

でも、私はそんな次男の成長を喜ばしく思う反面、少しだけ、寂しいような、もったいないような気持ちにもなるのです。
なぜなら、過敏症からくる繊細さは「感受性の豊かさ」の表れでもあるように思えるからです。

では、次男に聞こえていた「聴覚過敏」の世界とは、一体どんなものなのでしょうか。
「なんでせかい中、こんなにおおさわぎしてるんだろう」耳ふさぎは、自己防衛の手段。聴覚過敏があった次男の繊細で豊かな世界の画像
「ねえママ。なんで せかい中、まい日こんなにおおさわぎしてるんだろうね」
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うちの次男は、「発達障害」の診断がつくほどではないものの、ややASDの傾向があるグレーゾーンで、聴覚過敏がありました。

そんな次男が幼稚園のころの、ある日の帰り道。

「ねえ、まま。なんでせかい中、まい日こんなに おおさわぎしてるんだろうね…?」

と、彼は私の背中でぽつりと言いました。

あたりは公園帰りの親子連れがちらほらいる程度の人もまばらな夕暮れどきで、到底「おおさわぎ」だとは思えませんでしたが、きっと私には聞こえない音の洪水で、次男の世界は騒々しく溢れているのだろうな、と思いました。

実は私自身も、小学校高学年くらいまでは似たような聴覚過敏の傾向があり、当時をよくよく思い出せば、次男の言わんとする感覚は、なんとなく想像できました。

ザワザワと葉っぱを揺らす風の音、ゴーッと遠くの道を通り過ぎる車のタイヤ音、行き交う人々の笑い声、近所の家の赤ちゃんが泣く声、お散歩中の犬同士の喧嘩、カラスの羽ばたき……。

大人から見れば「雑音」の一言でまとめてしまえるような、これらのごく普通の日常生活に溢れる音たちが、大事な情報も、そうでない情報も、分別されることなく、鮮烈なまま同じ重さで次男の耳から入ってきていたのです。

……そりゃあ、疲れるよね。

そして、これは本人の意思ではどうにもならないことでもありました。

例えば、当時、兄弟でハマってめちゃくちゃ楽しみにしていた大好きなライダーたちが大集合する特撮映画も、大迫力の爆発音に顔面蒼白で固まってしまい、母と一緒に泣く泣く無念の途中退場を余儀なくされたこともあったほどです。

ですから、これは決して「ワガママ」や「気にしすぎ」などではなく、本人の努力や気の持ちようでは解決できない、体質的なものなのだと私は実感しました。

こんな調子だったので、次男はうるさい場所やザワザワした場所が特に苦手で、おでかけにも消極的……。
「園・学校は別に嫌いなワケじゃない」とは言うものの、人が多い場所であること自体に負担が大きいのでしょう、登園・登校も毎日なんとなくしぶりがちでした。
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耳ふさぎは、自己防衛の手段

「じょうぶなおうち」次男6歳ごろの作品。絶対に壊れない家をイメージして作った立体工作。
「じょうぶなおうち」次男6歳ごろの作品
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そして、次男は時折耳ふさぎをしていました。

ドライヤーやトイレのエアータオルの空気がブォーンと吹き出す音、広い体育館やプールやホールの反響音、拍手やパンパンと手を叩くときの音、テレビやDVDで使われる幾つかの特定の効果音、ゴボゴボという排水音、大勢の人の笑い声、パパのくしゃみ…。

こんな日常生活の至るところに、強く「怖い」「耐えられない」と感じる音が多かったので、そこから自分を守るための手っ取り早い手段として、次男は自分の両手で耳をふさいでいたのです(パパもくしゃみをする度に、隣の部屋に駆け込んでくれました)。

ただし、これらは本人にとっては負担が大きく、不便で不愉快極まりないことではあるものの、私は耳ふさぎをする次男を見ていると、「想像力が豊か過ぎるから」でもある気がしました。

なぜ、彼がほかの人にとっては何でもない音を「怖い」と感じていたか、というと、そこから瞬時にいろんなことを連想し、想像してしまうから…ではないかと思うのです(私もそうでした)。

例えば子どものころ、台風の日などに、夜中にびゅうびゅうと吹き込む風の音が人の叫び声のように聞こえて、なかなか眠れなかった経験などがある方もいるでしょう。

あるいは、運動会のピストルの合図や、パーティクラッカーのパアンと弾ける音に、「心臓が止まりそう!」と感じて、ついビクッとしちゃう…という方も多いのではないでしょうか。

聴覚過敏のある子は無意識に、こういった想像力がもっと広い範囲の種類の音に咄嗟に強く働いてしまうからこそ、「怖い」「苦手」「不安だ」と感じる場面が多いように思います。

次男はいくら静かな場所が好きでも、完全に一人きりになることをとても恐れ、全くの無音状態も不安になるようなので、ヘッドフォンで好きな音楽を聴いたり、小さな音でテレビをつけっぱなしにしたり、家族となんとなく一緒にいることで安心できるようでした。

人一倍優しく繊細だからこそ…

「耳がとってもいい子のおはなし」筆者作成の啓発用配布ツールの手紙の画像
「耳がとってもいい子のおはなし」(筆者作成の啓発用配布ツール)
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そして、次男が小学校に上がってからは、クラスがにぎやか過ぎると体調を崩すので、合理的配慮をお願いし、負担が大きなときだけイヤーマフを持ち込ませてもらって大丈夫だったこともあれば、しばらく欠席が続いたこともあります。

学校というのは、次男にとっては常にザワザワとして騒々しい場所であり、仲良しの友達が同じクラスにいようが、担任の先生の指導力が高かろうが、負担が大きなことには変わりなく、帰宅してからはいつもぐったりとしていました。

ですが、こんな次男の「耳の敏感さ」は、「ほかの人の心への敏感さ」と、根っこは同じものではないか、と私は思っています。親から見れば、次男は人一倍優しく、繊細で、共感力が高い気がするのです。

そして、近くに先生から大きな声で怒られている子がいると、自分までも辛くなってしまっていました。

例えば、次男は慎重で注意深く滅多に忘れ物をすることはありませんでしたが、クラスに忘れ物を叱責された子がいると、自分までも不安になって何度も何度も、持ち物を確認せずにはいられませんでした。

そうかと思えば、クラスが大騒ぎとなって先生が大変そうな時期が続くと、「〇〇先生、大丈夫かな」と心配しては、登校前になんだか胃を痛めて食欲を無くしたり、お腹の調子が悪くなってトイレから出れなくなってしまうことも…。

そして、そういったつらさや不安も、毎日3人の子育てと在宅ワークで大変そうにしている私を気遣って、なかなか言い出せずに遠慮して、一人で溜め込んでしまいがちでした。

一般的には、「優しい」というのは素晴らしい長所です。

でも、そんな次男の姿を見ていると、毎日整腸剤を飲みながらの生活と引き換えの優しさは、彼にとって本当にいいことなのだろうか、と母である私は思わずにはいられませんでした。

いっそ、「人は人、おれはおれ」と、アッサリ割り切れてしまう長男のほうが、適応力という点ではマシなのかもしれません。

だけど、かつての私がそうであったように、子どもに「強くなれ」「気にするな」といったところで、できません。だって、本人には「どうしたら、気にならないか」が分からないし、耳から音と一緒に流れ込んでくるいろんな人のいろんな感情は、自分ではコントロールができなかったからです。
次ページ「成長と共に和らぎ、失われていく次男の世界」

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